循環器トライアルデータベース
HOME
トライアル検索
フリーワード検索
*検索について
トライアル名検索
1 4 5
A B C D E F
G H I J K L
M N O P Q R
S T U V W X
Y Z
疾患分類検索
薬効分類検索
薬剤名検索
治療法検索
キーワード検索
掲載トライアル一覧
学会情報
meta-analysis, pooled analysis
日本のトライアル
Trial Review
用語説明
Topic
開設10周年記念座談会
開設5周年記念座談会
AHA2012/ISH2012特別企画
このサイトについて
ライフサイエンス出版のEBM関連書籍
Trial Review

2003.Apr
 高血圧 (所属は,執筆当時のものです)
東京都老人医療センター 循環器科(現東京都健康長寿医療センター副院長)  桑島 巌
はじめに
1. 高リスク患者を検討したトライアル
2. 脳卒中を検討したトライアル
3. 左室肥大合併症例を検討したトライアル
4. 虚血性心疾患既往例を検討したトライアル
5. 腎障害合併例を検討したトライアル
6. 老年者を検討したトライアル
おわりに
文 献
はじめに
 降圧薬治療の目的は単に血圧を下げることではなく,脳卒中や心筋梗塞などの血管合併症を予防することにあるが,近年の多くのエビデンスは血圧と合併症発症との関係はthe lower, the betterであり,積極的な降圧治療によって血管合併症が予防できることを明らかにした。また降圧薬治療のメリットは糖尿病などリスクを有している症例ほど大きいことも明らかにしている。さらに降圧薬の選択に関しても,臨床試験あるいはメタアナリシスの成績が相次いで発表されて病態に応じた降圧薬の選択に関してもエビデンスが集積しつつある。本稿では,現在までに集積されたエビデンスから高血圧の病態ごとに,至適降圧薬治療のありかたについて総説を行う。
UP
1. 高リスク患者を検討したトライアル
INSIGHT(International Nifedipine GITS Study: Intervention as a Goal in Hypertension Treatment) DBALLHAT(Antihypertensive and Lipid-Lowering Treatment to Prevent Heart Attack Trial) DB
 実際の医療現場では単に高血圧だけの症例はむしろ少なく,高血圧とともに高コレステロール血症,糖尿病,臓器障害などの危険因子を合併している症例を診ることの方が多い。特に冠動脈疾患の発症予防においては,高血圧のみならずこれらの危険因子をも抑制しながら降圧薬治療を押し進める必要があることから,高リスク高血圧例の降圧薬の第一選択についてのエビデンスが必要である。そのような中で欧州からはINSIGHT,米国からはALLHAT試験の成績が発表されている。

 INSIGHT[1]は,高血圧以外に心血管疾患リスクを1つ以上有する例(173/99mmHg・高コレステロール血症52%,喫煙者28%,心筋梗塞家族歴,糖尿病20%,左室肥大10.7%)で,心血管疾患合併症の発症および死亡予防効果を,Ca拮抗薬と利尿薬とで比較した初めての試験である。検討した薬剤は,長時間作用型Ca拮抗薬ニフェジピンGITSと配合利尿薬(ヒドロクロロチアジド+アミロリド)である。多くの症例において単剤で<140/90mmHgへと降圧し,一次エンドポイントである脳心血管疾患の予防効果に有意差はなかった。心筋梗塞や心不全例では利尿薬の方が予防効果に優る傾向があったが,代謝への影響はCa拮抗薬の方が優れており,優劣はつけられなかった。

 現在広く用いられているCa拮抗薬,ACE阻害薬,α遮断薬の脳心血管合併症予防効果を最も古くて安価な利尿薬と比較するために,史上最大規模で実施された大規模臨床試験であるALLHAT[2]の最終結果が2002年12月に発表され話題になった。冠動脈心疾患の危険因子を有する高血圧患者(146/84mmHg・アテローム硬化性心血管疾患52%,糖尿病36%,喫煙者22%,左室肥大21%)において,ACE阻害薬(リシノプリル),Ca拮抗薬(アムロジピン),α遮断薬(ドキサゾシン)の新規降圧薬が利尿薬(クロルタリドン)よりも心血管疾患を予防するかをみたものである。α遮断薬は利尿薬と比較して有意な有効性が認められず早めに試験を終了したため,残り3群での検討となった。平均降圧値は利尿薬133.9/75.4mmHg,Ca拮抗薬134.7/74.6mmHg,ACE阻害薬135.9/75.4mmHgで,利尿薬に比べCa拮抗薬は拡張期血圧が有意に低く,ACE阻害薬は収縮期血圧(SBP)が有意に高かったが,治療群間で一次エンドポイント(冠動脈心疾患死,心筋梗塞)の差はみられなかった。ただしACE阻害薬群でSBPが高かったことが,脳卒中などいくつかの二次エンドポイントの発症率が高かったことにつながったと思われる。INSIGHT同様,利尿薬の代謝への影響が気になるところである。ALLHATではCa拮抗薬の安全性への懸念が払拭され,さらに実地臨床で体験している併用投与の有効性が確認された。今後いくつかのサブ解析が発表されると思われるが,なかでも12,000例を超える糖尿病合併例のサブ解析が待たれる。

 高リスク例でもthe lower, the better,より積極的な降圧が必要であることを証明したことの他に,Ca拮抗薬やACE阻害薬,アンジオテンシンII受容体拮抗薬といった血管拡張薬一辺倒の昨今の降圧薬治療に利尿薬という全く異なった降圧機序を有する治療薬が著しく有効であることを証明し,一石を投じた成績である。
UP
2. 脳卒中を検討したトライアル
PROGRESS(Perindopril Protection against Recurrent Stroke Study) DB
 脳卒中の既往を有する症例における降圧治療の有用性を検討する目的で行われたのが,日本を含む世界10カ国で行われたPROGRESS[3]である。高血圧の有無は問わず,過去5年以内に一過性脳虚血発作を含む脳血管障害の既往を有する症例において,ACE阻害薬ペリンドプリルを投与,さらに主治医の判断により利尿薬インダパミドを投与し,脳卒中の二次予防効果をプラセボと比較した。一次エンドポイントは致死的および非致死的脳卒中である。
 結果は従来の多くの専門家が考えていた常識をくつがえすに足る衝撃的な内容であった。すなわち脳卒中発症に関して,治療群ではプラセボ群に比べ28%の相対リスの低下が認められ,心筋梗塞を含む主要な血管イベントの発症も実薬群で26%低下したのである。さらにペリンドプリル単独群とペリンドプリル+インダパミドの併用群別に分析すると,脳卒中の相対リスクは単独治療群では実薬群で5%の低下に過ぎなかったが,併用群では実薬群で実に43%という大幅な低下が認められた。併用群と単独治療群におけるリスク低下率の違いは,両群間における降圧度の違い(12.3/5mmHg対4.9/2.8mmHg)で説明が可能であり, ALLHAT[2]の結果でも示されたように,ACE阻害薬と利尿薬の併用による降圧が脳卒中の再発を強力に抑制しうることを示し,高リスク症例同様,積極的な降圧を支持するものである。
 本試験における実際の降圧度はプラセボ群との差異を示しているため,到達血圧レベルを正確に求めることは困難であるが,正常血圧例の治療開始前血圧値が136/79mmHgであったことから読み取ると,到達血圧値は130/75mmHg以下であると推定できる。従ってこのレベルまでは降圧の有用性が認められたことになる。日本高血圧学会は脳卒中の既往を有する高血圧例の降圧目標値を140〜150/90mmHgと高めに設定しているが,本試験の結果から得られたエビデンスをもとに速やかに降圧目標値を130/80mmHg以下と改訂すべきである。
UP
3. 左室肥大合併症例を検討したトライアル
 左室肥大は高血圧の最終帰結として,高血圧の重症度と持続期間を反映する最も確実な生体指標であり,放置すると拡張機能の低下から収縮機能の低下によって心不全を発症し生命予後を悪化させる。したがって左室肥大の退縮は高血圧治療の一つの目標である。左室肥大の退縮に関しては,メタアナリシスによってはACE阻害薬や利尿薬が最も強い退縮効果をもたらすとされていた[4]。しかしこれらの試験では対象症例が十分でなく,信頼性は必ずしも高いとはいえなかったが,ここへきてACE阻害薬や利尿薬以外の薬剤でも退縮効果を認めるトライアルが報告されている。
1) サルタン薬の有用性を証明
LIFE(Losartan Intervention for Endpoint Reduction in Hypertension) DB
 LIFE[5]は,55〜80歳の左室肥大を合併した心電図上左室肥大を有する坐位血圧が160〜200/95〜115mmHgの高血圧例において,古典的な降圧薬として心保護効果が証明されているβ遮断薬アテノロールを対照として,サルタン薬ロサルタンの脳心血管合併症予防効果を検討したものである。降圧度は,ロサルタン群30.2/16.6mmHg,アテノロール群29.1/16.8mmHgと両群ほぼ同等であった。しかし一次エンドポイントである死亡および心筋梗塞,脳卒中の発症はロサルタン群23.8/1000人・年であるのに対してアテノロール群27.9/1000人・年で,ロサルタン群で有意に少なかった。(相対リスク[RR]0.87,p=0.021)。また心筋梗塞発症は両群間に有意差はなかったが,脳卒中および糖尿病の発症率がロサルタン群で有意に低かった。
 脳卒中予防は降圧度に相関するが[6],本試験は降圧度がアテノロールと同等であるにもかかわらずロサルタンの方が脳卒中予防に優れていたという点で,同薬は単に降圧効果以上の有用性をもたらす可能性を示唆された。しかし,本試験では両群ともに第2選択薬として利尿薬が選ばれていることから,両薬剤の脳卒中抑制効果の差にはアンジオテンシンII受容体拮抗薬と利尿薬の組み合わせが,β遮断薬と利尿薬の組み合わせよりも優れていたという見方も可能である。
2) Ca拮抗薬の左室肥大退縮効果はACE阻害薬と同等
PRESERVE(Prospective Randomized Enalapril Study Evaluating Regression of Ventricular Enlargement) DBELVERA(Effects of Amlodipine and Lisinopril on Left Ventricular Mass and Diastolic Function [E/A Ratio]) DB
 Ca拮抗薬の左室肥大の退縮効果はACE阻害薬と同等であるとの報告が相次いで発表された。1つはPRESERVE試験[7]であるが,これは長時間作用型のCa拮抗薬であるニフェジピンとACE阻害薬エナラプリルの退縮効果を比較した試験である。試験開始後24週と48週に心臓超音波検査で心臓の重量を評価したところ,いずれの時期においても両薬剤間で差がなかった。両群間における血圧の変化をみると,収縮期血圧,拡張期血圧ともニフェジピンGITS群のほうが早期に血圧が下がっていることが,圧負荷の解除を導き,左室肥大の退縮をもたらしたと考えられる。
 さらにELVERA試験[8]では,Ca拮抗薬アムロジピンとACE阻害薬リシノプリルというそれぞれ欧米では汎用されている薬剤同士の心肥大退縮効果を比較しているが,やはり退縮の程度は同等であった。薬剤間の長期的有用性を比較する試験の多くはintention-to-treat(ITT)という解析で行われている。一般にITT解析では最初に割り付けられた治療法から逸脱しても,最初の割付けに基づいて比較解析が行われるため,治療法同士を正確に比較しているとはいいにくい面がある。しかし本試験では降圧が不十分な場合でも他の薬剤を追加するのではなく,それぞれの割り付けられた薬剤の増量という方法に限定しているために,純粋にCa拮抗薬とACE阻害薬の比較が行われているという点で信頼性の高い試験結果といえよう。
UP
4. 虚血性心疾患既往例を検討したトライアル
PREVENT(Prospective Randomized Evaluation of the Vascular Effects of Norvasc Trial) DB
 すでに虚血性心疾患を有している高血圧症例で,従来,冠動脈疾患にはあまり好ましくないとされていたCa拮抗薬の有用性を証明したのがPREVENT[9]である。この試験は冠動脈造影で軽度から中等度の冠動脈狭窄が確認されている患者において,アムロジピンの長期的有用性をプラセボを対照として検討したが,冠動脈の狭窄度に両薬剤間で差は認められなかった。すなわちCa拮抗薬は冠動脈硬化を退縮させなかった。しかし興味深いことにアムロジピンは不安定狭心症,心不全の発症,血行再建術といった臨床的なイベントを有意に減少させた。
 この相反した結果は次のように解釈すると分かりやすい。すなわちCa拮抗薬は冠動脈硬化の器質的な退縮作用は有してはいないが,冠攣縮の予防,内皮機能の改善,血圧の下降による左室負荷の軽減など冠動脈イベントを抑制するなんらかの有効性を有していると考えられる。日本人は欧米人に比べて冠動脈の攣縮による安静時狭心症が多いとされているが,Ca拮抗薬が冠攣縮狭心症に特異的に有効であることを考慮すると,まさに日本人に適した心臓病治療薬であり,降圧薬でもあるといえよう

UP
5. 腎障害合併例を検討したトライアル
1) 降圧薬を使用している糖尿病性腎症でサルタン薬の有効性が示される
RENAAL(Reduction of Endpoints in NIDDM with the Angiotensin II Antagonist Losartan) DBIDNT(Irbesartan Diabetic Nephropathy Trial) DB
 糖尿病性腎症は糸球体腎炎とならんで我が国の末期腎不全の主要な原因疾患であるが,末期腎不全への進展予防におけるサルタン薬の有用性についてはまだ定かでない。
 RENAAL[10]は2型糖尿病腎症を対象にロサルタンが末期腎不全への進展を遅らせうるか否かを検討した大規模臨床試験である。本試験では腎障害を有する糖尿病例をロサルタン群とプラセボ群にランダム化して追跡した。一次エンドポイントは血清クレアチニン濃度の倍増+末期腎障害+死亡である。ロサルタン群における一次エンドポイントの発生はプラセボに比べて16%低く(p=0.02),ロサルタンは2型糖尿病腎症患者における有意な腎保護効果を示した。
 本試験の特徴は,すでにCa拮抗薬,利尿薬などの降圧薬を使用している糖尿病腎症の例にサルタン薬を追加することによって,腎障害の進展を予防できることを示した点にあり,実地臨床に則したものである。しかもサルタン薬の腎保護効果は降圧作用とは独立したものであることが示されている。しかし腎保護効果がACE阻害薬よりも優れているか否かについては今後の課題である。
 同じく2型糖尿病において,サルタン薬であるイルベサルタンとCa拮抗薬アムロジピンの腎障害の進展予防効果を比較したIDNT[11]の結果も発表されている。本試験でも一次エンドポイントである血清クレアチニンの倍増,末期腎不全への進行および死亡に関して,イルベサルタンはプラセボより20%減少,アムロジピンよりも23%も減少した。一次エンドポイントの差異は降圧度の違いでは説明できず,レニン-アンジオテンシン系の抑制が腎機能障害進展予防に重要であることを明らかにしている。
2) 高血圧性腎障害の進展予防におけるACE阻害薬とCa拮抗薬の比較
AASK(African American Study of Kidney Disease and Hypertension) DB
 AASK[12]は腎疾患を有するアフリカ系アメリカ人高血圧例における腎機能障害の進展に及ぼす効果をACE阻害薬ラミプリル,Ca拮抗薬アムロジピン,β遮断薬メトプロロールで比較した試験である。2001年にラミプリル群とアムロジピン群の約3年間の中間報告が発表されたが[13],全体のコホートとしては腎障害の進展において両治療群に有意差はなかったが,尿中蛋白量/クレアチニン比が0.22以上の症例においては,ラミプリル群は比べアムロジピン群と比べ糸球体濾過率の平均低下が36%(2.02mL/分/1.73m2/年)遅く(p=0.006),また末期腎症,死亡の発生率もラミプリル群のほうが48%低かった(p=0.003)。
 この結果から,蛋白尿を伴う高血圧性腎不全患者における腎機能障害および蛋白尿の進展予防にラミプリルはアムロジピンよりも優れていることが示された。本試験の結果は,ACE阻害薬がアンジオテンシンIIによって惹起される糸球体高血圧を防ぐことによって,腎障害進展を抑制するのという考え方を支持するエビデンスである。末期腎不全のリスクが白人にくらべて約4倍高く,しかもその成因には重症高血圧が深く関与しているとされる黒人での成績であることや,試験参加者の46%が試験開始時にすでにジヒドロピリジン系Ca拮抗薬を服用していたことを考慮しても,腎機能障害と蛋白尿の悪化を予防するためにはACE阻害薬がCa拮抗薬より優れていることは確かであろう。この中間報告の結果を受けてアムロジピン群の試験は中止され,ラミプリル群とメトプロロール群の比較試験のみ継続となった。2002年に発表された最終結果
[12]によると,ACE阻害薬の方がβ遮断薬より腎機能障害および蛋白尿の進展予防に優れていた。
UP
6. 老年者を検討したトライアル
1) 積極的な降圧が心血管を予防
ALLHAT,ANBP2(Second Australian National Blood Pressure Study) DB
 先に紹介したALLHAT[2]は平均年齢67才。先頃発表されたANBP2[14]はオーストラリアで実施された高齢の高血圧患者におけるACE阻害薬エナラプリルと利尿薬ヒドロクロロチアジドとの転帰を比較した試験であるが,平均年齢71.9才である。この試験では平均血圧168/91mmHgから両群とも26/12mmHg降圧した。一次エンドポイントである全心血管イベントまたは全死亡は,ACE阻害薬群の方が少なかった(p=0.05)。高齢者の,特に男性ではACE阻害薬の脳心血管合併症が利尿薬よりも良かったという,ALLHATとは全く異なる結果になったわけであるが,様々な臨床背景,プロトコールや患者背景などの違いが異なった結果をもたらしたと考えられる。
 しかしこの2つの臨床試験が伝えるメッセージは,どの降圧薬を選択するかではなく,高齢者においてもthe lower, the better,しっかり血圧を下げることの重要性である。
2) サルタン薬の有用性を証明できず
SCOPE(Study on Cognition and Prognosis in the Elderly) DB
 サルタン薬カンデサルタンの高齢高血圧患者における脳心血管合併症予防効果と認知機能および痴呆予防効果を検討する目的で行われたSCOPE[15]は,70歳以上(平均年齢76.4歳,80歳以上約21%)の比較的後期の高齢者を対象としている点,最近関心の高まっている認知機能や痴呆をエンドポイントとした点などから注目されていた。実薬群,プラセボ群ともに他剤併用率が非常に高く,カンデサルタン単独投与例は25%,プラセボのみは16%に過ぎなかった。結果的にこのような他剤併用の多さが結果の解釈を難しくさせた。カンデサルタン群の降圧度は21.7/10.8mmHg,プラセボ群18.5/9.2mmHgであり,カンデサルタン群で有意に大きかったが,両群の差は3.2/1.6mmHgと小さいものであった。
 一次エンドポイントである脳心血管合併症はカンデサルタン群で11%少ないものの有意差には至らなかった。イベントでは非致死的脳卒中のみが同群で有意に少なかった(p<0.04)。併用薬剤を除いた各群の薬剤のみを服用していた症例のみで解析すると,両群の症例数は大幅に減少したにもかかわらず,カンデサルタンの心血管合併症発症は有意に少なかったとしているが,これは後付け解析でありエビデンスの信頼度は落ちる。途中でより低い降圧目標値になったために,他剤併用ケースが増えたと考えられる。このような点で本試験はサルタン薬を高齢者の第一選択薬とするエビデンスとしては十分でない。
3) Ca拮抗薬による痴呆予防
Syst-Eur(Systolic Hypertension in Europe)追跡研究 DB
 Syst-Eur[16]はCa拮抗薬の長期的心血管合併症予防効果を最初に証明したトライアルであるが,試験途中でCa拮抗薬の脳卒中予防効果が明らかになったため2年間で試験は中止された。
 その後,オープン試験に切り替えてさらに4年間追跡したSyst-Eur追跡研究[17]によって,Ca拮抗薬による痴呆の予防効果が示唆された。すなわち4年後における痴呆の発現は過去の2年間にプラセボに割り付けられた群(元プラセボ群)では43例(7.1件/1000人・年)であったのに対して,元実薬治療群では21例(3.3件/1000人・年)と,約55%のリスク減少が認められた(p=0.0008)。このことから2年間にCa拮抗薬による治療を受けなかったことが,その後4年間におよんで痴呆の発現に影響を与えたことが示唆された。また痴呆のタイプ別では両群ともアルツハイマー型が64例中41例と約2/3を占め,血管性は19例とその半数にすぎなかった。このことは高血圧とは無関係とされているアルツハイマー痴呆さえもCa拮抗薬によって予防が可能なことが示唆された。
UP
おわりに
 以上のような大規模臨床試験の結果に加え,NICS-EH,PATE,J-MUBAのような日本人のエビデンス,患者の忍容性,臨床経験などを踏まえた上で,実地臨床でどのデータをどのように個々の患者に活用すればよいかを評価しながら治療していくのが,真のEBMといえるのではないだろうか。
UP
文 献
1 Brown MJ et al. Morbidity and mortality in patients randomised to double-blind treatment with a long-acting calcium-channel blocker or diuretic in the International Nifedipine GITS study: Intervention as a Goal in Hypertension Treatment (INSIGHT). Lancet. 2000; 356: 366-72.PubMed
2 ALLHAT Officers and Coordinators for the ALLHAT Collaborative Research Group. Major outcomes in high-risk hypertensive patients randomized to angiotensin-converting enzyme inhibitor or calcium channel blocker vs diuretic: The Antihypertensive and Lipid-Lowering Treatment to Prevent Heart Attack Trial (ALLHAT). JAMA. 2002; 288: 2981-97.PubMed
3 PROGRESS Collaborative Group. Randomised trial of a perindopril-based blood-pressure-lowering regimen among 6,105 individuals with previous stroke or transient ischaemic attack. Lancet. 2001; 358: 1033-41.PubMed
4 Dahlof B et al. Reversal of cardiovascular structural changes when treating essential hypertension. The importance of the renin-angiotensin-aldosterone system. Am J Hypertens. 1992; 5: 900-11.PubMed
5 Dahlof B et al for LIFE Study Group Cardiovascular morbidity and mortality in the Losartan Intervention For Endpoint reduction in hypertension study (LIFE): a randomised trial against atenolol. Lancet. 2002; 359: 995-1003.PubMed
6 Staessen JA et al. Cardiovascular protection and blood pressure reduction: a meta-analysis. Lancet. 2001; 358: 1305-15.PubMed
7 Devereux RB et al. Effects of once-daily angiotensin-converting enzyme inhibition and calcium channel blockade-based antihypertensive treatment regimens on left ventricular hypertrophy and diastolic filling in hypertension: the prospective randomized enalapril study evaluating regression of ventricular enlargement (preserve) trial. Circulation. 2001; 104: 1248-54.PubMed
8 Terpstra WF et al. Long-term effects of amlodipine and lisinopril on left ventricular mass and diastolic function in elderly, previously untreated hypertensive patients: the ELVERA trial. J Hypertens. 2001; 19: 303-9.PubMed
9 Pitt B et al. Effect of amlodipine on the progression of atherosclerosis and the occurrence of clinical events. Circulation. 2000; 102: 1503-10.PubMed
10 Brenner BM et al for RENAAL Study Investigators. Effects of losartan on renal and cardiovascular outcomes in patients with type 2 diabetes and nephropathy. N Engl J Med. 2001; 345: 861-9.PubMed
11 Lewis EJ et al for Collaborative Study Group. Renoprotective effect of the angiotensin-receptor antagonist irbesartan in patients with nephropathy due to type 2 diabetes. N Engl J Med. 2001; 345: 851-60.PubMed
12 Wright JT et al for African American Study of Kidney Disease and Hypertension Study Group. Effect of blood pressure lowering and antihypertensive drug class on progression of hypertensive kidney disease: results from the AASK trial. JAMA. 2002; 288: 2421-31.PubMed
13 Agodoa LY et al for African American Study of Kidney Disease and Hypertension (AASK) Study Group. Effect of ramipril vs amlodipine on renal outcomes in hypertensive nephrosclerosis: a randomized controlled trial. JAMA. 2001; 285: 2719-28.PubMed
14 Wing LM et al for Second Australian National Blood Pressure Study Group. A comparison of outcomes with angiotensin-converting-enzyme inhibitors and diuretics for hypertension in the elderly. N Engl J Med. 2003; 348: 583-92.PubMed
15 Hansson L et al. The study on cognition and prognosis in elderly hypertensives(SCOPE). 19th Scientific meeting of ISH(Prague) 2002
16 Staessen JA et al. Randomised double-blind comparison of placebo and active treatment for older patients with isolated systolic hypertension. The Systolic Hypertension in Europe (Syst-Eur) Trial Investigators. Lancet. 1997; 350: 757-64.PubMed
17 Staessen JA. Principal outcome results of the Syst-Eur follow-up study. 19th Scientific meeting of ISH(Prague) 2002.Link
Trial Reviewのトップへもどる

▲pagetop
    --------------------
(c) copyright 2001-. Life Science Publishing Co., Ltd
 
携帯版 EBM LIBRARY