循環器トライアルデータベース

SCOPE
Study on Cognition and Prognosis in the Elderly

目的 老年軽症~中等症高血圧患者において,AII受容体拮抗薬candesartanによる降圧治療が心血管イベント,認知機能低下,痴呆を抑制するかを検討。一次エンドポイントは主要な心血管イベント(心血管死,非致死的心筋梗塞[MI]および脳卒中)。二次エンドポイントは認識機能および痴呆,および全死亡,心血管死,致死的および/あるいは非致死的MI,脳卒中,新規発症糖尿病,治療中止。
コメント 本試験は高齢者におけるAT II受容体拮抗薬(ARB)の脳心血管合併症予防効果を検討した最初の大規模臨床試験であり,結果が注目されていたが,ARBがプラセボよりも優れていると証明することができず,残念ながら不成功に終わった。その原因は,試験途中から高齢者といえども降圧目標値を低くという傾向がはっきりしたために自ずと多剤併用が率が高くなったことにより,intention-to-treat解析では純粋なARBとプラセボ間の比較が困難となったためである。特に利尿薬併用は両群とも高率であることも,ARBそのものの有用性を判定することを困難にしている。ただARB群の方がやや降圧度が大きかったことが,脳卒中の発症が少なかったという結果につながったと考えられる。認知機能障害や痴呆の予防効果についてもARBの有用性を証明することはできなかった。(桑島
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(主に欧州の15か国527施設),intention-to-treat(ITT)解析。
期間 平均追跡期間は3.7年。実施期間は1997~2002年。
対象患者 4964例。70~89歳,平均年齢76歳。降圧治療の有無は問わず,拡張期血圧(DBP)90~99mmHgおよび/あるいは収縮期血圧(SBP)160~179mmHg。Minimal Mental State Examination(MMSE)≧24。
除外基準:二次性高血圧,SBP≧180mmHg,起立性低血圧,観察期間にhydrochlorothiazide以外の降圧薬が必要なもの,6か月以内の脳卒中,MI,非代償性心不全など。
治療法 登録時にすでに降圧療法を受けていた者は,利尿薬hydrochlorothiazide(HCT) 12.5mg/日投与に切り換え,観察期間である1~3か月投与してから,candesartan群(2477例:8mg/日経口投与),プラセボ群(2460例)にランダム化。
SBPが>160mmHgあるいは開始時よりも10mmHg未満の低下,あるいはDBP>85mmHgの場合は,candesartanを倍量(8mg×2回/日)投与する。それでもSBP≧160mmHg,DBP≧90mmHgの場合は他の降圧薬をオープンラベルで追加投与(HCT 12.5mg/日から開始し,AII受容体拮抗薬,ACE阻害薬以外)を推奨。
結果 ITT解析例は4937例。
candesartanの平均投与量は11.6mg/日。
試験薬のみ:candesartan群25%,プラセボ群16%,試験薬+HCT 12.5mg:26%,18%,降圧薬追加:49%(利尿薬33%,β遮断薬17%,Ca拮抗薬18%),66%(44%,26%,28%)。
candesartan群で166.0/90.3mmHg→ 145.2/79.9mmHg,プラセボ群で166.5/90.4mmHg→ 148.5/81.6mmHg(p<0.001)。
一次エンドポイントはcandesartan群242例(26.7イベント/1000例・年),プラセボ群268例(30.0イベント/1000例・年)と,candesartan群のリスク減少率は10.9%(95%信頼区間[CI]-6.0~25.1,p=0.19)。同群で非致死的脳卒中が27.8%(95%CI 1.3~47.2,p=0.04),全脳卒中が23.6%(95%CI -0.7~42.1,p=0.056)それぞれ低下した。心筋梗塞および心血管疾患死においては両群間に有意差はみられなかった。
平均MMSEスコアはcandesartan群で28.5→ 28.0,プラセボ群で28.5→ 27.9(p=0.20)。重大な認知機能低下(各群113/1000例・年,125/1000例・年)あるいは痴呆の発症(62/1000例・年,57/1000例・年)は両群間に違いは認められなかった。
★結論★candesartanのプラセボより大きな降圧は主要な心血管イベントを有意ではないものの若干抑制し,非致死的脳卒中を著しく抑制した。十分な降圧により認知機能は両群で良く保たれ,忍容性も良好であった。
文献
  • [main]
  • Lithell H et al for the SCOPE study group: The study on cognition and prognosis in the elderly (SCOPE); principal results of a randomized double-blind intervention trial. J Hypertens. 2003; 21: 875-86. PubMed
  • [substudy]
  • candesartanをベースとする降圧治療は他の薬剤による降圧治療と比べ降圧差はほとんどなかったが,脳卒中の相対リスクが42%有意に低下した:J Am Coll Cardiol. 2004; 44: 1175-80. PubMed

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収載年月2001.06
更新年月2004.10