循環器トライアルデータベース

ANBP2
Second Australian National Blood Pressure Study

目的 高齢の高血圧患者において,ACE阻害薬と利尿薬との転帰を比較する。一次エンドポイントは全心血管イベントまたは全死亡。
コメント 2002年の国際高血圧学会で発表されたときは,さほど反響をよばなかったが,今回はALLHATの発表後まもなく,まったく違った結果ということで俄然注目された。高齢者の,特に男性ではACE阻害薬の脳心血管合併症が利尿薬よりも良かったという結果であるが,ALLHATも含めて人種差の理解なしには日本人にその結果の適応は難しいことが実感させられる。
ALLHATとの基本的な違いは,二重盲検法ではなく,本試験はオープン試験である。対象者がALLHATでは黒人が約35%占めるのに対して,本試験では主に白人である。降圧薬がALLHATでは非サイアザイドのchlorthalidoneに対して,本試験ではサイアザイドのhydrochlorothiazideが推奨されている。追加薬としてはALLHATではβ遮断薬,reserpine,clonidineなど交感神経抑制系であるのに対し,本試験ではβ遮断薬,Ca拮抗薬,α遮断薬である。5年間での他の降圧薬併用率が利尿薬40.7%,ACE阻害薬43.0%であったのに対して,本試験ではそれぞれ33%,35%であった。また治療前血圧も大きく異なり,ALLHATでは146/84mmHgであるのに対して,本試験では168/91mmHgと高い。リスク因子や合併症もALLHATでは脳心血管合併症をすでに有している例が52%前後であるのに対し,本試験では13%である。糖尿病もALLHATでは36%前後であるのに対し,本試験では7%にすぎない。
このような様々な臨床背景,プロトコールの違いが,異なった結果をもたらしたと考えられる。しかし二つの臨床試験が伝えるメッセージはどの降圧薬を選択するかではなく,しっかり血圧を下げることの重要性である。(桑島
デザイン PROBE:無作為割付け,オープンラベル(エンドポイントの評価は盲検),多施設(オーストラリアの家庭医1594施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は4.1年(中央値)。ランダム化期間は1995年4月~'98年6月。
対象患者 6083例。65~84歳。2回の来院による座位収縮期血圧(SBP)の平均が>160mmHg,または拡張期血圧の平均が>90mmHg(SBP>140mmHgの場合)で,6か月以内に心血管イベント非発症例。
除外基準:生命予後に影響のある疾病,ACE阻害薬または利尿薬の禁忌,血漿クレアチニン濃度>2.5mg/dL,悪性高血圧,痴呆。
■患者背景:平均年齢71.9歳,平均血圧168/91mmHg,白人95%,男性49%,高血圧治療例62%,BMI 27kg/m²,高コレステロール血症37%。
治療法 登録前に1週間以上,降圧薬の使用を中止した後,ACE阻害薬群(3044例):enalaprilで投与開始を推奨,または利尿薬群(3039例):hydrochlorothiazideを推奨にランダム化。
目標降圧は,SBPが>20mmHgの低下で<160mmHg(さらに忍容性があれば<140mmHg),DBPが>10mmHgの低下で<90mmHg(忍容性があれば<80mmHg)。降圧薬,用量は家庭医が決定。目標降圧達成のため,β遮断薬,Ca拮抗薬,α遮断薬の追加を推奨。
結果 試験終了時の降圧は両群で同様であった(26/12mmHg)。
一次エンドポイントの発生は,ACE阻害薬群695例(56.1例/1000人・年), 利尿薬群736例(59.8例/1000人・年)であった(ハザード比0.89,95%信頼区間[CI ]0.79-1.00,p=0.05)。
男性群のイベント発生は女性群の約2倍で(907例 vs 524例),ACE阻害薬群の全心血管イベントおよび初回心血管イベントのハザード比は,男性で0.83(95%CI 0.71~0.97,p=0.02),女性で1.00(95%CI 0.83-1.21,p=0.98),男女および治療群間の相互作用のp値は全心血管イベントまたは全死亡が0.15であった。非致死性心血管イベントおよび心筋梗塞の発症率はACE阻害薬群で低下したが,致死性脳卒中はACE阻害薬群で多く,脳卒中全体では両群間で差がなかった。
★結論★高齢の高血圧患者において,ACE阻害薬で降圧治療を開始した場合,利尿薬と比べ降圧効果は同等であるものの,特に男性において良好な転帰をもたらすと思われる。
文献
  • [main]
  • Wing LM et al for the second Australian national blood pressure study group: A comparison of outcomes with angiotensin-converting--enzyme inhibitors and diuretics for hypertension in the elderly. N Engl J Med. 2003; 348: 583-92. PubMed
  • [substudy]
  • 上腕SBPは利尿薬群145mmHg(治療前との比較-17mmHg),ACE阻害薬群143mmHg(-16mmHg),脈圧はそれぞれ72mmHg(-9mmHg),70mmHg(-7mmHg)で,利尿薬群とACE阻害群間に有意差は認められなかった。中心SBPは144mmHg(-15mmHg),144mmHg(-17mmHg),脈圧は71mmHg(-6mmHg),72mmHg(-8mmHg)で治療群間に有意差なし。上腕SBPと中心SBPで同様の結果だったのは,対象が高齢高血圧で血管スティフネスの上昇を反映していると思われる:Hypertension. 2007; 49: 1242-7. PubMed

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収載年月2003.03
更新年月2008.02