循環器トライアルデータベース

PROGRESS
Perindopril Protection against Recurrent Stroke Study

目的 一過性脳虚血発作(TIA)あるいは脳卒中の既往患者において,ACE阻害薬単独あるいは利尿薬追加が,脳卒中を予防できるか否かを検討する。

一次エンドポイントは致死性あるいは非致死性脳卒中。
コメント 本試験の結果で注目すべき点は,まず第一に高血圧群(平均159/94mmHg),非高血圧群(136/79mmHg)ともに,perindopril+indapamide併用療法によってほぼ同等の降圧(各9.5/3.9mmHg, 8.8/4.2mmHg)と脳卒中発症率(32%, 27%)の減少が得られていることである。このことは少なくとも127.2/74.8mmHgまでは降圧によって脳卒中予防効果が明らかであることを示唆している。第二にACE阻害薬と利尿薬の併用の相乗効果である。すなわち併用例にのみ限ったサブ解析では脳卒中の減少率は43%,主要な心血管イベントは40%と著しい予防効果が認められていることは注目に値する。
我が国のガイドラインでは脳卒中既往例ではより高めの降圧目標値が示されていたが,降圧目標値を大幅に変更すべきであろう。また併用療法についてはもっと推奨されるべきである。(桑島
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(オーストラリア,中国,日本,ニュージーランド,フランス,ベルギー,イタリア,イギリス,アイルランド,スウェーデン),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は3.9年。
対象患者 6,105例。アジア人2,352例,女性1,852例。過去5年間にTIAおよび脳卒中の既往のある例。血圧レベルは問わない。脳卒中またはTIA発症後2週間以上を経た例が望ましいとした。
治療法 ランダム化の前に,オープンラベルでperindopril 2mg/日を2週間投与後,4mg/日を2週間投与,耐薬性の悪い例を除いた。
実薬群(3,051例,うちアジア人1,176例,女性923例):ACE阻害薬perindopril 4mg/日に医師の判断で利尿薬 indapamide 2.5mg/日(日本のみ2mg/日)を追加;perindopril+indapamide(1,770例),perindopril単独(1,281例)。プラセボ群(,3054例,うちアジア人1,176例,女性929例):ダブルプラセボ(1,774例),シングルプラセボ(1,280例)。
結果 平均血圧:147/86mmHg,高血圧例は159/94mmHg,非高血圧例は136/79mmHg。高血圧例2,916例(48%),降圧薬療法を受けているもの3,064例。
実薬群はプラセボ群と比べ平均9.0/4.0mmHg(収縮期血圧/拡張期血圧)降圧した。この違いは追跡期間中持続した。perindopril+indapamide群はプラセボ群と比較して12.3/5.0mmHg降圧したが,この降圧度はperindopril単独群(4.9/2.8mmHg)の約2倍であった。高血圧群の降圧(9.5/3.9mmHg)と非高血圧群の降圧(8.8/4.2mmHg)とにあまり差は認められなかった。

脳卒中の発症は実薬群307例(10%),プラセボ群420例(14%)と実薬群で相対リスク(RR)が28%低下した[95%信頼区間(CI)17~38%, p<0.0001]。主要な血管イベントも実薬群の方がプラセボ群に比べ26%低かった(95%CI 16~34%)。
高血圧群,非高血圧群の脳卒中のリスク低下率は同様であった(いずれもp<0.01)。perindopril+indapamide群の脳卒中のRRは43%低下した(95%CI 30~54%)が,perindopril単独群では脳卒中のリスク低下は認められなかった。
★考察★本降圧療法は脳卒中あるいはTIA歴を有する高血圧例,非高血圧例いずれの場合も脳卒中のリスクを低下した。perindoprilとindapamideの併用投与の場合,降圧効果およびリスク抑制効果はperindopril単独投与より大きかった。脳卒中あるいはTIA既往例においては,血圧値に関係なくperindoprilとindapamideの併用投与をルーチンで行うことを考慮すべきである。

◆ 2002年ISH・ESHにおいて痴呆に関する結果発表:脳卒中再発例でperindoprilは脳卒中後の痴呆を<50%低下。同様の有効性は認知機能の低下に対してもみられた。→学会情報
文献
  • [main]
  • PROGRESS collaborative group: Randomised trial of a peridopril-based blood-pressure-lowering regimen among 6105 individuals with previous stroke or transient ischaemic attack. Lancet. 2001; 358: 1033-41. PubMed
  • [substudy]
  • 抗血栓療法患者も含め,脳血管疾患患者の頭蓋内出血は降圧により減少。
    降圧と出血リスクの関係を抗血栓療法の有無により評価した結果(平均追跡期間3.9年):頭蓋内出血は119例,頭蓋外出血は123例発生。抗血栓療法患者(4,876例[80%])では,実薬群とプラセボ群の血圧差8.9/4.0mmHgで頭蓋内出血リスクが46%(95%信頼区間7~69%)低下,非抗血栓療法患者では血圧差9.3/3.8mmHgでリスクは70%(39~85%)低下した。抗血栓療法にかかわらず,降圧による頭蓋外出血リスクの有意な低下は認められなかった。抗血栓療法患者では頭蓋内出血リスクは収縮期血圧が低いほど低く(傾向のp=0.007),もっとも低い群(<120mmHg)でもっとも低下した:Stroke. 2012; 43: 1675-7. PubMed
  • 拡張期高血圧を合併した脳卒中患者における降圧治療の血管イベント抑制効果はその他の高血圧のタイプと同等。
    高血圧合併患者4,283例の結果:収縮期高血圧(ISH群:SBP≧140mmHg,DBP<90mmHg[1,923例]),拡張期高血圧(IDH群:<140mmHg,≧90mmHg[315例]),収縮期・拡張期高血圧(SDH:≧140mmHg,≧90mmHg[2,045例])。実薬群における主要血管イベント(非致死的脳卒中,非致死的MI,血管死)の相対リスク低下は,ISH群27%(95%信頼区間10~41%),IDH群28%(-29~60%),SDH群32%(17~45%)で,この効果の大きさに高血圧のタイプによる違いは認められなかった(p homogeneity=0.89):Stroke. 2011; 42: 2339-41.。 PubMed
  • CKD患者においても降圧によりベースライン時の血圧を問わず脳卒中の再発リスクが低下。
    ステージ3以上のCKD(1,757例[28.9%]:ステージ3が96.5%,4が 3.5%)は平均年齢(70歳)が非CKD(61歳)より有意に高く,女性が多く(45% vs 25%),収縮期血圧(SBP:149mmHg vs 146mmHg)は高く,拡張期血圧(DBP:84mmHg vs 86mmHg)は低く,降圧治療例が多かった(53% vs 49%)。
    ベースライン時の血圧による有効性の差はみられなかった。
    perindopril群をベースライン時のSBPでみると,CKD例(ハザード比[HR]0.65, p trend 0.21),非CKD例(0.73, p trend 0.15)いずれも脳卒中再発リスクがおよそ30%低下。CKD・ベースライン時のSBP<140mmHg例でもHR 0.65(0.42~1.00 vs 非CKD:HR 0.850.61~1.18);140~159mmHg(0.67;0.44~1.03 vs 0.70;0.51~0.95);≧160mmHg(0.58;0.38~0.89 vs 0.67;0.48~0.92)。
    DBPでみても,CKD例:HR 0.65(p trend 0.91),非CKD例:0.73(p trend 0.17),降圧による脳卒中再発リスクの低下が認められた。CKD・DBP<80mmHg:0.67(0.44~1.03) vs 非CKD(HR 0.78;0.52~1.19);80~89mmHg(0.58;0.38~0.89 vs 0.84;0.61~1.16);≧90mmHg(0.74;0.47~1.14 vs 0.65;0.50~0.86)。
    多変量解析後,CKD,非CKDいずれにおいて,達成SBP値と脳卒中再発リスクとにlog-linearな関連が認められた。関連は脳梗塞,脳出血同様である。SBP<120mmHgに降圧すると二次予防効果が大きい:Kidney Int. 2008; 73: 963-70. PubMed
  • MRIサブ解析(フランス):降圧治療により大脳白質病変(white matter hyperintensities:WMHs)の進展を抑制あるいは遅らせる可能性。
    MRIをベースライン時および平均36か月後に実施した192例(perindopril+indapamide vs プラセボ112例,perindopril vs プラセボ80例):実薬群89例,プラセボ群103例での検討。WMHsは1回目のMRIでの視覚評価:非WMH(86例:平均年齢55.9歳,血圧136.0/85.1mmHg),mild WMH(53例:59.7歳,144.6/90.0mmHg),moderate WMH(26例:61.1歳, 146.6/90.1mmHg),severe WMH (27例:65.5歳,149.3/88.9mmHg),降圧薬使用(30%, 51%, 58%, 67%),糖尿病(13%, 6%, 27%, 22%)。stroke scarが<15mmのsmallは41%,medium 30%,large 29%。
    追跡MRI実施時の実薬群のプラセボ群と比較した降圧差は-11.2/-4.3mmHg。新規のWMHsが認められたのは24例(12.5%)で,プラセボ群と比べ実薬群でリスクは43%低下(-7~89%)したが両群間に有意差はなかった(p=0.17)。新規WMHsの体積は同群で有意に少なかった(0.4mm³ vs 2.0mm³, p=0.012)。この差はベースライン時のsevere WMH例で最も大きかった(0.0mm³ vs 7.6mm³, p<0.0001)。身長,病型,血圧などで調整後も同様の結果であった:Circulation. 2005; 112: 1644-50. PubMed
  • 30例を4年間実薬治療することにより,disabilityを1例予防できる。
    介助を要する(disabled:Barthel Index score≦99/100)例は実薬群19%,プラセボ群22%(調整後のオッズ比0.76;95%信頼区間0.65~0.89, p<0.001), dependent(過去2週間で日常生活動作において常に介助が必要か?という質問に対し肯定的な回答の場合)例は,12% vs 14%(0.84;0.71~0.99, p=0.04)と,いずれもperindoprilをベースとした降圧治療によりリスクが低下した:Stroke. 2003; 34: 2333-8. PubMed
  • 脳卒中再発抑制により,実薬群で認知症および認知機能低下のリスクが減少。
    認知症は実薬群193例(6.3%) vs プラセボ群217例(7.1%):相対リスク低下12%(p=0.2),認知機能低下(Mini-Mental State Examination:MMSEスコアがベースライン時から3ポイント以上低下):9.1% vs 11.0%(リスク低下19%, p=0.01)。実薬群で脳卒中再発・認知症のリスクは34%低下(p=0.03),脳卒中再発・認知機能低下のリスクは45%低下(p=0.001)。この有効性は非再発例ではみられなかった:Arch Intern Med. 2003; 163: 1069-75. PubMed
  • 日本人のCTサブ解析[667例(実薬群328例,プラセボ群339例)]:患者背景;1回の脳卒中あるいは一過性脳虚血発作既往が82%,数回の発症が18%,ラクナ梗塞が347例;降圧治療例55%(使用率が最も高いのはCa拮抗薬52%);脳梗塞例の81%が抗血小板治療(aspirin 34%)あるいは抗凝固療法を受けていた。
    結果:単剤治療例は実薬群91.8%,プラセボ群94.7%。実薬群の降圧度は5.2/2.6mmHg。新規無症候性脳梗塞(SBI)が119例発症し(実薬群57例,プラセボ群51例),小型がそれぞれ91%, 94%,ラクナ梗塞15%, 16%。一次エンドポイント(症候性脳卒中の再発あるいは新規SBI)は25.9% vs 26.5%で両群間に有意差なし。大血管梗塞既往例でSBIを発症したものは実薬群は40例中なく,プラセボ群は55例中7例(p=0.020)。ベースライン時の拡張期血圧と新規SBIは有意に相関したが,病型は関連しなかった:Hypertens Res. 2004; 27: 147-56. PubMed
  • perindoprilの有効性は脳卒中の病型(すべての脳梗塞,出血性)を問わずにみられた:全体[実薬群307例,プラセボ群420例,リスク低下(RR)28%],全脳梗塞(実薬群246例,プラセボ群319例,RR 24%);ラクナ梗塞(64例,83例,RR 23%);心原性(20例,26例,RR 23%);大血管脳梗塞(32例,52例,RR 39%);病型不明(150例,184例,RR 19%),出血性(37例,74例,RR 50%),病型不明(42例,51例,RR 18%):Stroke. 2004; 35: 116-21. PubMed
  • 主要な冠動脈イベント発症率は実薬群3.8%,プラセボ群5.0%で実薬群でリスクが26%低下(p=0.02),うっ血性心不全は3.7% vs 4.9%と実薬群で26%低下した(p=0.02)。perindopril(+indapamide)治療は脳卒中だけでなく,心イベントのリスクも抑制する:Eur Heart J. 2003; 24: 475-84. PubMed

▲pagetop
EBM 「循環器トライアルデータベース®」
ライフサイエンス出版
ご不明の点はお問い合わせください
収載年月1999.09
更新年月2012.06