循環器トライアルデータベース

ALLHAT
Antihypertensive and Lipid-Lowering Treatment to Prevent Heart Attack Trial

目的 冠動脈心疾患(CHD)のリスク因子を有する高血圧患者において,Ca拮抗薬amlodipine,ACE阻害薬lisinoprilによる降圧療法が利尿薬chlorthalidoneによる治療よりもCHDあるいは心血管疾患(CVD)を抑制するかを検討。

一次エンドポイントは致死性CHDまたは非致死性心筋梗塞(MI)。二次エンドポイントは全死亡,脳卒中,複合CHD(一次エンドポイント,血行再建術,狭心症による入院),複合CVD(複合CHD,脳卒中,入院を伴わない狭心症,心不全,末梢血管疾患),癌,左室肥大,末期腎不全,クレアチニン。

subtrial(ALLHAT-LLT):中等症の高コレステロール血症併発例において,HMG-CoA reductase阻害薬pravastatin投与が,死亡率を低下させるかを検討。二次エンドポイントは致死性CHD+非致死性MI,特定死,癌,Q波梗塞,健康に関連したQOL,コスト。
コメント JAMA. 2002; 288: 2981-97.へのコメント
今回の結果は,これまでのいくつかのトライアルがすでに示したように「利尿薬に優る降圧薬はいまだなし」を決定づけることになろう。Ca拮抗薬は心不全発症率が高かったこと以外は利尿薬と同等であったという点は予想通りともいえる。しかし,Ca拮抗薬と利尿薬を比較したわが国のNICS-EH試験のサブ解析から,Ca拮抗薬の方が血圧調整の容易さ,高尿酸血症,低K血症の発現を含めて忍容性が良好であることを考慮すると,本試験はCa拮抗薬にとってはやや有利な内容といえよう。ハイリスク高血圧例においては,まず利尿薬かCa拮抗薬が推奨され,ACE阻害薬はむしろ利尿薬に追加される形で使われるべきであることを示唆している。(桑島

→サブ解析(Hypertension. 2006; 48: 374-84.)へのコメント
すでに発表された本試験の結果は,Ca拮抗薬,ACE阻害薬とも降圧利尿薬との比較であったが,このサブ解析ではCa拮抗薬とACE阻害薬を直接比較している。脳卒中予防には,Ca拮抗薬が優れ,心不全予防にはACE阻害薬が優れているというすでに発表されているメタ解析などで明らかになっていることを確認している。しかし脳卒中予防におけるCa拮抗薬の優位性は黒人でのみ認められていることは,降圧薬の有用性には人種の違いが関与していることも示唆している。(桑島
デザイン 無作為割付け,二重盲検(2段階以降はオープンラベル),多施設(アメリカ,カナダ,プエルトリコ,アメリカ領バージン諸島の623施設),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は4.9年(ALLHAT-LLTは平均4.8年)。
実施期間は1994年2月~2002年3月。
対象患者 33,357例。年齢55歳以上,ステージ1あるいは2の高血圧以外にCHDのリスク因子(6か月前のMIあるいは脳卒中,心電図あるいは心エコー図での左室肥大,2型糖尿病,喫煙者,HDL-C<35mg/dLなど)を1つ以上有しているもの。
除外規準:症候性心不全の治療あるいは入院既往,EF<35%。
■患者背景:平均年齢67歳,女性47%,黒人35%,ヒスパニック19%,糖尿病36%,平均坐位血圧146/84mmHg,降圧薬服用90%。

ALLHAT-LLT
ALLHAT登録患者のうち10355例。LDL-C 120~189mg/dL(CHD例の場合100~129mg/dL),トリグリセリド(TG)値が<350mg/dL。
■患者背景:平均年齢66歳,平均総コレステロール224mg/dL, LDL-C 146mg/dL, HDL-C 48mg/dL, TG 152mg/dL,女性49%,黒人38%,ヒスパニック23%,CHD既往14%,2型糖尿病35%。
治療法 第1段階chlorthalidone群(15,255例):12.5~25mg/日,amlodipine群(9048例):2.5~10mg/日,lisinopril群(9,054例):10~40mg/日。第2段階(オープンラベル)reserpine:0.05~0.2mg/日,clonidine:0.1~0.3mg×2回/日,atenolol:25~100mg/日,第3段階(オープンラベル)hydralazine:25~100mg×2回/日。降圧目標は<140/90mmHg。

ALLHAT-LLT
無作為割付けオープンラベル試験(513施設)。pravastatin群(5,170例):40mg/日,通常治療群(5,185例)。全例でNCEP(国民コレステロール教育プログラム) step 1の食事療法を実施。
結果 1. 治療薬遵守率の推移
chlorthalidone群:1年後のchlorthalidoneあるいは他の利尿薬服用87.1%,5年後80.5%に低下。Ca拮抗薬またはACE阻害薬の非併用率は67.5%
amlodipine群:1年後のamlodipineあるいは他のCa拮抗薬服用87.6%,5年後80.4%。
lisinopril群:1年後のlisinoprilあるいは他のACE阻害薬投与82.4%,5年後72.6%。
2. 血圧の推移
chlorthalidone群:ベースライン146.2/84.0mmHg→ 1年後136.9/79.3mmHg→ 5年後133.9/75.4mmHg・5年後の目標血圧達成率68.2%。
amlodipine群:146.2/83.9mmHg→ 138.5/78.7mmHg→ 134.7/74.6mmHg・66.3%。
lisinopril群:146.4/84.1mmHg→ 140.0/79.9mmHg→ 135.9/75.4mmHg・61.2%。
5年後の収縮期血圧はchlorthalidone群と比べ,amlodipine群(0.8mmHg, p=0.03),lisinopril群(2mmHg, p<0.001)で有意に高く,拡張期血圧はamlodipine群で有意に低かった(0.8mmHg, p<0.001)。
3. 臨床検査値の推移
(血清K)chlorthalidone群:ベースライン4.3(mEq/L)→ 4年後4.1,<3.5の割合;ベースライン3.4%→ 8.5%。
amlodipine群:4.3→ 4.4, 3.4%→ 1.9%(各p<0.001;vs chlorthalidone群)
lisinopril群:4.4→ 4.5, 2.6%→ 0.8%(各p<0.001;vs chlorthalidone群)
(糸球体濾過率)chlorthalidone群:ベースライン77.6(mL/分/1.73m2)→ 4年後70.0。
amlodipine群:78.0→ 75.1(p<0.001;vs chlorthalidone群)
lisinopril群:77.7→ 70.7(p=0.03;vs chlorthalidone群)
(空腹時血糖値)chlorthalidone群:ベースライン123.5(mg/dL)→ 4年後126.3。
amlodipine群:123.1→ 123.7(p=0.2;vs chlorthalidone群)
lisinopril群:122.9→ 121.5(p=0.002;vs chlorthalidone群)
4. エンドポイント
一次エンドポイントの発生は2956例で治療群間に有意差は認められなかった。
chlorthalidone群(一次エンドポイントの6年発生率11.5%)と比較した相対リスク(RR)は,amlodipine群0.98(95%信頼区間[CI]0.90-1.07,発生率11.3%),lisinopril群0.99(0.91-1.08, 11.4%)であった。
全死亡率も治療群間で差はみられなかった。
二次エンドポイントはamlodipine群,chlorthalidone群同様であったが,心不全の6年発症率はamlodipine群の方が有意に高かった(10.2% vs 7.7%;RR 1.38;95%CI 1.25-1.52)。
lisinopril群とchlorthalidone群の比較では,lisinopril群の方が複合CVD(33.3% vs 30.9%;RR 1.10;95%CI 1.05-1.16),脳卒中(6.3% vs 5.6%;RR 1.15;95%CI 1.02-1.30),心不全(8.7% vs 7.7%;RR 1.19;95%CI 1.07-1.31)の発症率が有意に高かった。
消化管出血による6年入院率はchlorthalidone群8.8%,amlodipine群8.0%,lisinopril群9.6%。血管性浮腫8例(0.1%) vs 3例(<0.1%) vs 38例(0.4%)でlisinopril群はchlorthalidone群に比べ有意に多かった(p<0.001)。
★結論★サイアザイド系利尿薬の方が1つ以上の主要な心血管疾患予防効果に優れ,経済的である。利尿薬は降圧治療の第一選択薬とするべきである。

ALLHAT-LLT
全死亡率はpravastatin群14.9%,通常治療群15.3%で両群間に差は認められなかった(RR 0.99;95%CI;0.89-1.11;p=0.88)。CHDイベント発生率にも9.3% vs 10.4%で両群間に有意差はみられなかった(RR 0.91;95%CI 0.79-1.04;p=0.16)。
★結論★pravastatinは通常治療に比べ,全死亡,CHDを有意に抑制しなかった。本結果がスタチンの心血管疾患予防効果を支持する以前のいくつかの試験と異なったのは,両群間の総コレステロール値,LDL-C低下率の差が大きくなかった(各9.6%, 16.7%低下)ことによるのかもしれない。
ClinicalTrials.gov No.:NCT00000542

ALLHATのホームページ
http://www.allhat.org
文献
  • [main]
  • The ALLHAT officers and coordinators for the ALLHAT collaborative research group: Major outcomes in high-risk hypertensive patients randomized to angiotensin-converting enzyme inhibitor or calcium channel blocker vs diuretic; the antihypertensive and lipid-lowering treatment to prevent heart attack trial. JAMA. 2002; 288: 2981-97. PubMed
  • The ALLHAT officers and coordinators for the ALLHAT collaborative research group: Major outcomes in moderately hypercholesterolemic, hypertensive patients randomized to pravastatin vs usual care; the antihypertensive and lipid-lowering treatment to prevent heart attack trial. JAMA. 2002; 288: 2998-3007. PubMed
  • 本試験はα遮断薬doxazosinを合わせた4治療群での比較であったが,2000年にdoxazosinの試験は中止された。
    doxazosin群9067例とchlorthalidone群15268例の比較試験の結果(1999年12月まで):各群の用量はchlorthalidone群(12.5, 12.5, 25mg/日),doxazosin群(2, 4, 8mg/日)。doxazosin群ではchlorthalidone群に比べ,追跡期間中央値3.3年で一次エンドポイントの発生において有意差は認められなかった(doxazosin群365例,chlorthalidone群608例:p=0.71)。死亡率においても群間差はみられなかった。しかし脳卒中の発症リスクは同群の方が高く,慢性心不全リスクも2倍であった結果を受け,2000年1月にデータreview委員会の勧告によりdoxazosinの試験は中止され,残りの3剤で試験が続行されることとなった:JAMA. 2000; 283: 1967-75. PubMed
  • 患者背景(登録期間は1994年2月14日~1998年1月31日・42448例):平均年齢67歳(60~69歳45.8%, 70~79歳28.6%, 80歳以上6.5%),男性53.2%,糖尿病36%,心血管疾患47%,喫煙者22%,白人25292例(59.6%);男性14698例;ヒスパニック5314例,黒人15094例(35.6%);6852例;1406例。
    降圧薬投与例90.2%。
    白人 vs 黒人:他の人種に比べ黒人は降圧治療期間が2か月以上長く,拡張期血圧(DTB)がやや高く,白人に比べ血圧コントロール(収縮期血圧<140, DBP <90mmHg)が不良であった:26.9% vs 29.8%。血圧コントロール率が最良だったのは白人男性:30.9%)。黒人は喫煙率,糖尿病既往率,血糖値,総コレステロール,LDL-C,HDL-Cが高く,トリグリセリドが低く,ECG上の左室肥大も多かった。白人(48%)は黒人(25%)に比べaspirin使用,女性におけるestrogenの使用率が高く(28.4% vs 11.4%),さらに冠動脈心疾患既往がおよそ2倍であった(33% vs 17%)。
    各群の割付け例数はchlorthalidone群15268例,amlodipine群9053例,doxazosin群9067例,lisinopril9060例:Hypertnsion. 2001; 37: 19-27. PubMed
  • chlorthalidone vs doxazosin(2000年2月15日までの9232例/年,939CVDイベントを追加した結果):一次エンドポイント(RR 1.02;95%CI 0.92-1.15),全死亡(RR 1.03;0.94-1.13)において両群間に有意差は認められなかった。しかしchlorthalidoneに比べdoxazosinは脳卒中(RR 1.26;1.10-1.46),複合CVD(RR 1.20;1.13-1.27)のリスクが高かった。CVD抑制効果において利尿薬ベースの降圧治療はα遮断薬ベースを凌ぐことを追認した:Hypertension. 2003; 42: 239-46. PubMed
  • [substudy]
  • 高齢者において,サイアザイド系類似利尿薬による降圧治療群のACE阻害薬・Ca拮抗薬群にくらべた股関節・骨盤骨折リスクに対する有効性が示された。
    サイアザイド系類似利尿薬降圧治療例が非使用治療例にくらべ骨折リスクが低いかを,本試験終了後さらに5年追跡し(平均年齢70.4歳・女性43%;総追跡期間7.8年),VA施設治療例,医療保険メディケアのデータを使用して検証。サイアザイド系類似薬chlorthalidone群の股関節・骨盤骨折リスクがCa拮抗薬amlodipine群,ACE阻害薬lisinopril群よりも低いことが,post hoc解析から示された。
    1994年2月1日~2006年12月31日の入院,保険受給データのある16,622例(平均7.8年追跡)。本試験期間中,338件の骨折が発生し,chlorthalidone群のlisinopril群,amlodipine群とくらべた骨折の調整ハザード比は0.79(95%信頼区間0.63~0.98, p=0.04)。lisinopril群とは有意差があったが,amlodipine群とはなかった。一方,総追跡期間の骨折(骨盤70件,股関節576件)には,chlorthalidone群と他の2群間に有意差はみられなかった(0.87;0.74~1.03, p=0.10)。ランダム化の1年後を起点(薬剤の骨への影響を考慮)とした感度解析においても,本試験期間中,総追跡期間中も同様の結果だった:JAMA Intern Med. 2017; 177: 67-76. Epub 2016 Nov 21. PubMed
  • 肥満,血糖と全死亡リスク-IFG例はリスクが上昇する一方で,肥満パラドックスが認められた。ただし,低体重例,喫煙例を除外するとこの関係は消失。
    2型糖尿病・心血管疾患(CVD)非合併例(5,423例:65歳・女性45%・BMI 29.2kg/m²において,体重,喫煙,血糖と死亡の関連を検討した結果(追跡期間中央値4.95年):ベースライン時の空腹時血糖正常例3,980例(73%),空腹時血糖異常(IFG)1,443例(27%)。死亡は554例(10%),うちCVD死は37%。IFG例は全死亡リスクが高く(調整ハザード比1.23, p=0.033),肥満例は低かった(0.76, p=0.024)。しかし,低体重(BMI<22kg/m²)例(356例[6.6%])と喫煙例(72.8%)を除外すると,肥満,IFGのいずれにおいても全死亡との有意な関連は消失した。一方でIFGは,非肥満例(BMI 18.5~<25kg/m²)において,死亡リスクの増加と有意に関連。肥満パラドックスには低体重と喫煙が交絡している可能性が示された:J Clin Hypertens. 2014; 16: 451-8. PubMed
  • chlorthalidone群の糖尿病発症例は他の降圧治療2群の発症例よりも長期心血管リスクが低い可能性が示される。
    22,418例(ベースライン時糖尿病[DM]例,試験開始2年後のDM発症例[chlorthalidone群7.5%,amlodipine群5.6%,lisinopril群4.3%],DM非発症例)の平均6.9年後(本試験内で2.9年,さらに4年追跡)の結果(ALLHAT Diabetes Extension Study):心血管転帰のリスクはすべてのイベントでベースライン時DM例がDM非発症例よりも有意に高く,DM発症例は概ねその中間であった。DM発症例は非発症例よりも非致死的MI+致死的冠動脈疾患のリスクが有意に高く(ハザード比[HR]1.46;95%信頼区間1.09~1.96, p=0.01),そのリスクはchlorthalidone群(1.18;0.77~1.81)がlisinopril群(2.57;1.45~4.54, p=0.001)よりも低かった(交互作用p=0.04)。一次エンドポイント(心血管死)については,DM発症例 vs 非発症例のHRに有意な治療群間差はみられなかったが(1.04 vs 1.53 vs 1.33:交互作用p=0.24, p=0.46),chlorthalidone群は他の2群にくらべて低かった。非心血管死,全死亡も同様の結果であった:Circ Cardiovasc Qual Outcomes. 2012; 5: 153-62. PubMed
  • 降圧治療による1年後の低K血症発症は6.8%で死亡リスク↑,高K血症は2.0%でCVDリスク↑- 3治療群のうちchlorthalidone群では低K血症発症率が最大を示すも,死亡リスクは最小。
    ベースラインのカリウム(K)値が正常(3.5~5.4mmol/L)で,1年後にK値を再評価した19,731例において,K値と転帰との関係を評価した結果:1年後のK値正常例は17,982例。新規の低K血症(<3.5mmol/L)発症は1,351例(6.8%)で,chlorthalidone群(12.9%)がamlodipine群(2.1%;p<0.001),lisinopril群(1.0%;p<0.01)よりも多かった。
    高K血症(>5.4mmol/L)発症は398例(2.0%)で,lisinopril群(3.6%)がchlorthalidone群(1.2%),amlodipine群(1.9%)よりも多かった(ともにp<0.01)。
    低K血症群では死亡率が正常K値群にくらべ高かったが(ハザード比[HR]1.21;95%信頼区間1.02~1.44),HRには有意な治療群間差がみられた(chlorthalidone群1.21,amlodipine群1.60,lisinopril群3.82;交互作用p<0.01)。高K血症では複合CVDリスクの有意な上昇との関連がみられたが(1.58;1.15~2.18),治療との交互作用は認められなかった:Hypertension. 2012; 59: 926-33. PubMed
  • 心不全の発症は降圧薬を問わず死亡リスクを増大させる。
    試験実施中の心不全新規発症率はchlorthalidone群に比べamlodipine群,lisinopril群で高く,5年後の死亡率は,どの降圧薬群でも同等に高かった(≧50%)。2002年の試験終了後,national databaseを使用して2006年までの死亡率を検証した:試験開始から平均8.9年後,試験期間中に心不全を発症した1,761例中1,348例が死亡。心不全発症後の全死亡率における治療群間の有意差はみられなかった(amlodipine群のハザード比0.95;0.81~1.12,lisinopril群1.05;0.89~1.25 vs chlorthalidone群)。10年後の調整死亡率はそれぞれ86%, 87%, 83%。全死亡率に収縮機能低下例(84%)と保持例(81%)の差はなかった :Circulation. 2011; 124: 1811-8. PubMed
  • ベースライン時および追跡時の新規発症心房細動/粗動(AF/AFL)により心血管リスクが増大。AF/AFL抑制に降圧薬間(chlorthalidone, amlodipine, lisinopril),脂質低下治療(pravastatin)の有無による差はなし。
    ベースライン時のAF/AFLは423例(1.1%)で,男性(オッズ比1.72;95%信頼区間1.37~2.17),非黒人(2.09;1.58~2.75)で多かった。また加齢とともに増加(55歳以降10%/年,p<0.001)し,冠動脈疾患(CAD),心血管疾患,肥満,HDL-C<35mg/dLと関連していた。またベースライン時のAF/AFLは死亡(ハザード比2.82*;2.36~3.37),脳卒中(3.63*;2.72~4.86),心不全(3.17*;2.38~4.25),致死的CADあるいは致死的心筋梗塞(1.64;1.22~2.21, p<0.01)のリスク増大と有意に相関した(* p<0.001)。
    追跡期間4.9年の新規AF/AFL発症はdoxazosin群を除いて537例(2.1%;AFLは32例)で,上記ベースライン時の因子の他,ECGの左室肥大とも関連。しかし,発症において治療群間に有意差は認められなかった(chlorthalidone群244例[20.9例/1,000人],amlodipine群155例[22.4例/1,000人],lisinopril群138例[20.6例/1,000人])。さらに脂質低下療法(pravastatin vs 通常治療)による違いもなかった。
    ベースライン時および新規発症AF/AFLにより死亡リスクがおよそ2.5倍(2.42;2.11~2.77, p<0.001):J Am Coll Cardiol. 2009; 54: 2023-31. PubMed
  • chlorthalidone群はamlodipine群,doxazosin群と比べ拡張性心不全,収縮性心不全の新規発症を有意に抑制し,lisinopril群より拡張性心不全新規発症リスクが低下した。
    左室駆出率(EF)が保持された(≧50%)心不全(拡張性心不全:HFPEF)は44.4%,EFが低下した収縮性心不全(HFREF)は55.6%。
    chlorthalidone群では他の3群に比べHFPEF発症リスクが低下:vs amlodipine群:ハザード比0.69;95%信頼区間0.53~0.91(p=0.009), vs lisinopril群:0.74;0.56~0.97(p=0.032), vs doxazosin群:0.53;0.38~0.73(p<0.001)。
    chlorthalidone群のHFREF発症リスク低下は,vs amlodipine群:0.74;0.59~0.94(p=0.013), vs doxazosin群:0.61;0.47~0.79(p<0.001), lisinopril群とは同等:1.07;0.82~1.40(p=0.596)。
    3群合わせた心不全後の死亡は新規発症HFPEF例で29.2%,HFREF例で41.9%(p<0.001,追跡期間中央値1.74年)。chlorthalidone群とdoxazosin群を合わせた心不全後の死亡はHFPEF例20.0%, HFREF例26.0%(p=0.185,追跡期間中央値1.55年):Circulation. 2008; 118: 2259-67. PubMed
  • 利尿薬とCa拮抗薬の効果の差は,心房性ナトリウム利尿因子の前駆体をコードするNPPA遺伝子のT2238C多型の影響を受けている。T2238CのCアレルのキャリアは利尿薬,TT型のキャリアはCa拮抗薬により心血管疾患が抑制される。
    一方,利尿薬とACE阻害薬の効果の差に遺伝子型による影響はみられなかった。
    G664A多型については遺伝子型と降圧薬の効果に関連は認められなかった:JAMA. 2008; 299: 296-307. PubMed
  • メタボリックシンドローム(MetS)例においても,非利尿薬群の方が代謝値が良好であるにもかかわらず,一次エンドポイント抑制効果で利尿薬群を凌げなかった。これは特に黒人で顕著。
    黒人:MetS例7327例,非MetS例5491例,非黒人:15,750例,8723例。
    4年後の脂質,カリウムは非利尿薬群が利尿薬群よりも良好。血糖値はMetS群・非利尿薬群で低下し,非MetS群で上昇したが,有意差がみられたのは,lisinopril群,doxazosin群の非黒人・MetSのみ。
    [amlodipine群 vs chlorthalidone群]
    黒人・MetS:複合CVDのハザード比(HR)1.14,心不全1.50とamlodipine群の方が高い。
    非黒人・MetS:心不全の相対リスク(RR)1.25でamlodipine群の方が高かったが,脳卒中は0.80と同群の方が低かった。
    非MetS:心不全(黒人RR 1.39,非黒人1.48)以外は両群同様。
    黒人での末期腎障害(ESRD):非MetSのHR 0.67 vs MetS 1.5。
    [lisinopril群 vs chlorthalidone群]
    黒人・MetS:複合CHDのHR 1.19,複合CVD 1.24,脳卒中1.37,心不全1.49と lisinopril群の方が高かった。
    非黒人・MetS:複合CVDのHR1.10,心不全のRR 1.20とlisinopril群で高かった。
    非MetS:黒人でも非黒人でも両群間差なし。
    黒人でのESRD:非MetSのHR 0.75 vs MetS 1.70.
    [doxazosin群 vs chlorthalidone群]
    黒人・MetS:複合CVDのHR 1.37,脳卒中1.49,心不全1.88とdoxazosin群の方が高かった。
    非黒人・MetS:複合CVD 1.18,心不全1.82:Arch Intern Med. 2008; 168: 207-17. PubMed
  • 非糖尿病例での検討(chlorthalidone群8419例,amlodipine群4958例,lisinopril群5034例):2年後の空腹時血糖値(FG)はchlorthalidone群で8.5mg/dL,amlodipine群で5.5mg/dL,lisinopril群で3.5mg/dL上昇し,chlorthalidone群と比較した糖尿病発症のオッズ比はamlodipine群0.73(95%CI 0.58~0.91),lisinopril群0.55(95%CI 0.43~0.70)。2年後のFGの変化と冠動脈疾患(CHD),脳卒中,心血管疾患,総死亡,末期腎疾患の発生とは相関しなかった。また2年後の糖尿病発症とCHD(リスク比1.64, p=0.006)を除く他のアウトカムとに有意な相関はみられなかった。このCHDのリスク比はchlorthalidone群では1.46と低く有意差もなかった(p=0.14):Arch Intern Med. 2006; 166: 2191-201. PubMed
  • 糸球体濾過率(GFR)が軽度(60~89mL/分/1.73m²)~重度(<60mL//1.73m²)の低下症例において,6年後のCHD発症率(15.4%)は末期腎疾患発症率(6.0%)よりも高い。ベースライン時のGFR<53mL/分/1.73m²は>104mL/分/1.73m²に比べ独立してCHDリスクの上昇と関連した。chlorthalidone群のCHD,脳卒中,複合CVDの抑制効果はamlodipine群と同様であったが,心不全抑制において優った。同群のlisinopril群と比べたCHD抑制効果は同様であったが,脳卒中,複合CVD,心不全予防において優った。これらは腎機能とは独立していた:Ann Intern Med. 2006; 144: 172-80. PubMed
  • 平均追跡期間4.9年の心不全(HF)はchlorthalidone群724例,amlodipine群578例,lisinopril群471例。chlorthalidone群と比較したamlodipine群の相対リスク(RR)は1.35(p<0.001),lisinopril群は1.11(p=0.09),amlodipine群のlisinopril群と比較したRRは1.22(p=0.09)。この差は早期(1年以内)に顕著であった。HFは死亡率6.6倍の上昇,心血管死11.7倍の上昇(いずれもp<0.0001)と相関。治療歴はHFの発症リスクに関連するが有意な相互関連は認められず,治療中の血圧とも相関しなかった:Circulation. 2006; 113: 2201-10. PubMed
  • lisinopril群とamlodipine群の比較。
    血圧,忍容性:追跡期間中の平均血圧はlisinopril群の方が1.5/1.1mmHg高かった。非黒人の男女で両群とも降圧は良好であったがamlodipine群に比べlisinopril群の方が高かった(男性は0.0/0.5mmHg,女性は1.3/0.9mmHg)。一方,黒人では非黒人に比べ両群で降圧度は低く,血圧はlisinopril群の方が高かった(黒人女性;2年後4.3/1.8mmHg,4年後2.4/1.1mmHg,追跡期間中の血圧差3.9/2.1mmHg,黒人男性;それぞれ2.6/1.7mmHg, 0.8/1.0mmHg, 2.7/1.6mmHg)。年齢別,非糖尿病例,CHD症例において両群間の差は小さく,糖尿病症例でlisinopril群の収縮期血圧が高かった。1年後,5年後の忍容性はamlodipine群に比べlisinopril群が低かった。忍容性が最も低かったのはlisinopril・女性・黒人群で,糖尿病症例は両群同様であった。2年後,4年後の併用降圧剤の数はamlodipine群が有意に少なかった(p<0.001)。
    血糖値,左室肥大(LVH),糸球体濾過率:空腹時血糖値,カリウムの変化における両群間差は小さく,正常血糖値から空腹時血糖異常(IFG),新規糖尿病までの進展において両群間に有意差は認められなかったが,ベースライン時,追跡時にIFGであった症例の非改善率および糖尿病発症率はamlodipine群の方が高かった。ECG上のLVHは両群とも低下傾向を示したが,両群間に差はなかった。
    一次・二次エンドポイント:一次エンドポイントと二次エンドポイント(全死亡,複合CHDの発生,イベント率)は両群で有意差はなかった。死因別の死亡率にも差はなかったが,脳卒中発症率はlisinopril群の方が有意に高く,これは年齢,糖尿病サブグループでも同様であった。さらに脳卒中はlisinopril・男女・黒人群,lisinopril・女性・非黒人群で高かったが,lisinopril・男性・非黒人では低かった。複合CVD,消化管出血,血管性浮腫はlisinopril群で多く,心不全は同群の方が少なかった:Hypertension. 2006; 48: 374-84. PubMed
  • 2型糖尿病例(DM;13,101例),空腹時血糖異常例(IFG;1399例),正常血糖値例(NG;17,012例)での検討:DM例あるはNG例での一次エンドポイントのamlodipine群,lisinopril群 vs chlorthalidone群,あるいはIFG例でのlisinopril群 vs chlorthalidone群に有意差はみられなかった。IFG例でのamlodipine群 vs chlorthalidone群の相対リスク(RR)は1.73(p=0.02)。脳卒中はNG例でlisinopril群 vs chlorthalidone群のRR 1.31(p=0.003),心不全はDM例,NG例でamlodipine群(RR 1.39;p<0.001, 1.30;p=0.001)あるいはlisinopril群(RR 1.15;p=0.06, 1.19;p=0.03) vs chlorthalidone群と,chlorthalidone群を凌げなかった:Arch Intern Med. 2005; 165: 1401-9. PubMed
  • ベースライン時の糸球体濾過率(GFR)が正常あるいは高い例(≧90mL/分/1.73m²)8126例,軽度低下例(60~89mL/分/1.73m²)18,109例,moderate-severe例[<60mL])5,662例。末期腎疾患(ESRD)発症は448例。chlorthalidone群とamlodipine群間に有意差はなかった(GFR軽度低下例のchlorthalidone群の相対リスク[RR]1.47,moderate-severe例はRR 0.92),lisinopril群でも同様であった(それぞれのchlorthalidone群のRRは1.34, 0.98)。ESRD(amlodipine群のオッズ[OR]比0.96,lisinopril群1.13)もGFRの50%以上の減少(それぞれの群のORは0.85, 1.00)も有意差はなかった。GFRを層別した3群間,全例,糖尿病例でも,一次エンドポイントにおいて治療群間に有意差はみられなかった。4年の追跡後の推定GFRはchlorthalidone群に比べamlodipine群でベースライン時のGFRに依存して3~6mL/分・1.73m²高かった:Arch Intern Med. 2005; 165: 936-46. PubMed
  • GenHAT(Genetics of Hypertension-Associated Treatment) study:ACE I/D遺伝子は多型は降圧治療の感受性を予測する有用なマーカーとはいえない。ALLHAT試験の各群(chlorthalidone, amlodipine, lisinopril, doxazosin)におけるACE I/D遺伝子多型を解析し,遺伝子多型と薬剤感受性に関連があるかを検討した。ACE阻害薬はその他の薬剤に比べ,IDやIIよりもDDに対する応答性が高いという仮説に基づいて試験が行われた。しかし,得られた結果はこの仮定に反するものであり,lisinopril群における6か月後の降圧度(収縮期血圧)はDD(-3.95mmHg)よりID,II(-4.80mmHg)で大きい傾向が認められた。また,各薬剤群で一次エンドポイントおよび二次エンドポイントの発生をDDとID,IIで比較すると,すべての薬剤群で統計学的に証明される結果は得られなかった:Circulation. 2005; 111: 3374-83. PubMed
  • 一次エンドポイントにおいて人種(黒人,非黒人)の違いによりamlodipine群,lisinopril群がchlorthalidone群を凌ぐことはなかった。amlodipine群 vs chlorthalidone群:amlodipine群の方が有意に高かったのは心不全のみ[全体での相対リスク(RR)は1.37,黒人のRR 1.46(p<0.001),非黒人1.32(p<0.001)]。lisinopril群 vs chlorthalidone群:黒人でSBP(p<0.001)はchlorthalidone群の方が降圧度が大きく,脳卒中(RRは黒人1.40,非黒人1.00, p=0.01),複合CVD(それぞれ1.19, 1.06, p=0.04)はlisinopril群の方が有意に高かった。心不全は1.30, 1.13で人種による有意な違いは認められなかった。chlorthalidone群の有効性は黒人の方が非黒人より顕著なイベントもあった。黒人,非黒人を問わずchlorthalidoneは降圧治療の第一選択薬である:JAMA. 2005; 293: 1595-608. PubMed

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収載年月1999.09
更新年月2016.12