欧州心臓病学会(ESC)2008がミュンヘンで開催されました。 掲載トライアル Hotline III SEAS Simvastatin and Ezetimibe in Aortic Stenosis▲UP 軽症〜中等症の無症候性大動脈弁狭窄症において,simvastatin/ ezetimibe(HMG-CoA reductase阻害薬+コレステロールトランスポーター阻害薬)による強力脂質低下治療の主要な心血管イベント(大動脈弁狭窄関連イベントを含む)の有意な抑制効果は認められなかったが,虚血性心血管イベントは有意に抑制された。 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(欧州7ヵ国173施設),intention-to-treat解析 ◆1873例。45〜85歳;無症候性;心エコーにより大動脈弁狭窄を評価,ドプラージェットの速度が2.5〜4.0m/秒;正常EF。除外基準:リウマチ性大動脈弁疾患,冠動脈疾患,糖尿病など。 ●患者背景:平均年齢(simvastatin/ ezetimibe群67.7歳,プラセボ群67.4歳),女性(38.5%,38.8%),血圧(146/82mmHg,144/82mmHg),総コレステロール:222mg/dL,LDL-C:139mg/dL,HDL-C:58mg/dL,トリグリセライド:126mg/dL,アポリポ蛋白B:1.31g/L ◆4週間のプラセボ/食事療法の後,ランダム化。simvastatin/ ezetimibe群(944例):simvastatin 40mg+ezetimibe 10mg,プラセボ群(929例) ◆追跡期間は4.5年(中央値) ◆LDL-C:simvastatin/ ezetimibe群はプラセボ群よりも76mg/dL,61%低下した。しかし,一次エンドポイント(主要な心血管イベント[大動脈弁狭窄関連イベントとの複合])は688例:simvastatin/ ezetimibe群333例 vs プラセボ群355例:ハザード比0.96(95%信頼区間0.83〜1.12,P=0.59)。さらに二次エンドポイントである大動脈弁狭窄症関連イベントも両群間に有意差はなかった(308例 vs 326例:0.97[0.83〜1.14,P=0.73])。しかし,アテローム性動脈硬化はsimvastatin/ ezetimibe群で22%有意に低下した:148例(15.7%)vs 187例(20.1%);P=0.02。忍容性は良好であった。 癌死は39例(4.1%)vs 23例(2.5%)で,simvastatin/ ezetimibe群のハザード比は1.67(調整前P=0.05)。→文献情報 presenter: Terje R. Pedersen, MD ( NO ) Hotline II CARDia Coronary Artery Revascularisation in Diabetes▲UP 糖尿病患者における1年後の死亡,非致死的心筋梗塞・脳卒中抑制効果においてPCIとCABGに有意差は認められず。 無作為割付け ◆510例。多枝疾患あるいは複雑1枝病変,PCI,CABGの両方に適応があるもの。除外基準:左主幹部病変,心原性ショック,最近発症したST上昇型心筋梗塞(MI)など。平均年齢64歳,女性26%,平均糖尿病罹病期間は10.2年,HbA1c7.9%,高コレステロール血症は約90%,3枝病変は約61% ◆PCI群(256例):DES(sirolimus溶出)施行が71%,BMSが29%。植込みステント数は平均3.5,平均ステント長71mm,CABG群(254例):左内胸動脈89%,平均グラフト数は2.8 ◆ 追跡期間は1年 ◆クロスオーバー:CABG群11例,PCI群1例。ランダム化から手技までの時間(中央値)はCABG群37日,PCI群64日。 1年後の中間報告:一次エンドポイント(死亡,非致死的MI,非致死的脳卒中の複合)は,CABG群10.2% vs PCI群11.6%(P=0.63)。各構成イベントも両群間に有意差は認められなかった:死亡(3.3% vs 3.2%,P=0.83),非致死的MI(5.7% vs 8.4%,P=0.25),非致死的脳卒中(2.5% vs 0.4%,P=0.09)。 二次エンドポイントである血行再建術再施行はCABG群で有意に抑制され(2.0% vs 9.9%,P=0.001),一次エンドポイントを加えた複合エンドポイントはCABG群で有意に低下した(11.0% vs 17.5%,P=0.04)。 DESサブグループ解析:一次エンドポイント(10.2% vs DES群10.1%;P=0.98),非致死的脳卒中はCABG群の方が多かったが(2.5% vs 0%;P=0.04),再血行再建術はDES群が多かった(2.0% vs 7.3%,P=0.01) 。 presenter: A Kapur, MD ( GB ) SYNTAX Synergy between Percutaneous Coronary Intervention with TAXUS and Cardiac Surgery▲UP 左主幹部病変,3枝病変において,薬剤溶出性ステントの1年後の主要脳・心有害イベント抑制効果はCABGを凌げなかったが,死亡,心筋梗塞に有意差はなく,脳卒中はPCIが有意に抑制した。 無作為割付け,多施設(欧州62施設,米国23施設),intention-to-treat解析 ◆新規病変3075例:ランダム化試験群(1800例),登録研究群(1275例):CABG群1077例(5年追跡群:12ヵ月追跡したもの633例,追跡なし428例),PCI群:12ヵ月追跡したもの191例 ◆ランダム化試験(CABG群897例,TAXUS群903例)の患者背景:平均年齢(CABG群65.0歳,TAXUS群65.2歳),SYNTAXスコア(病変数&部位,石灰化,血栓など9要素からなる病変複雑度)(29.1,28.4),平均治療病変数は3.6,植え込みステント数は4.6本,ステント長>100mm使用は33.2%,分岐部/trifurcationは84%,慢性完全閉塞22%,左主幹部病変34% ◆1年後の全死亡:TAXUS群4.3% vs CABG群3.5%(P=0.37),脳血管イベント:0.6% vs 2.2%(P=0.003),心筋梗塞:4.8% vs 3.2%(P=0.11),複合:7.6% vs 7.7%(P=0.98)。PCI群で有意に高かった血行再建術再施行(13.7% vs 5.9%)を加えた全主要脳・心有害イベント(一次エンドポイント):17.8% vs 12.1%(P=0.0015)。 CABG群の症候性グラフト閉塞は27例(3.4%),TAXUS群のステント血栓症は28例(3.3%)で同様であった(P=0.89)。→文献情報 presenter: F W Mohr, MD ( DE ), P W Serruys ( NL ) Hotline I BEAUTIFUL Efficacy of ivabradine in reduction of cardiovascular events among patients with stable coronary artery disease and left ventricular dysfunction▲UP 収縮機能の低下した冠動脈疾患患者における心拍数の重要性が示される。 If電流阻害薬ivabradineによる心拍数低下は全体では転帰を改善しなかったが,心拍数が70拍/分以上の症例で冠動脈疾患を抑制。 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検 ◆10,917例。EF<40%の冠動脈疾患(CAD)。87%がβ遮断薬を投与されていた ◆ガイドラインが推奨する薬物治療に試験薬を追加。ivabradine群(5479例):5mg×2回で投与を開始し7.5mg×2回/日に漸増投与,プラセボ群(5438例) ◆一次エンドポイント(心血管死,急性心筋梗塞による入院,心不全の新規発症あるいは悪化による入院)はivabradine群とプラセボ群は同等。 ベースライン時に心拍数>70拍/分だったものは至適治療にかかわらず心血管死,心不全および急性心筋梗塞による入院,血行再建術のリスクが有意に高かったが, ivabradineはこれらの例におけるCAD関連エンドポイント(全心筋梗塞による入院,血行再建術)を抑制した。→文献情報 presenter: Kim Fox, MD ( UK ) GISSI-HF Effects of n-3 PUFA in patients with symptomatic chronic heart failure▲UP 虚血性・非虚血性の症候性慢性心不全患者において,n-3多価不飽和脂肪酸の日常的使用により,死亡,心血管疾患による入院をわずかだが抑制できる。 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(イタリアの357施設),intention-to-treat解析 ◆6975例。NYHA II〜IV度の慢性心不全 ◆追跡期間は3.9年(中央値)。n-3多価不飽和脂肪酸(PUFA)群は1g/日投与 ◆一次エンドポイント:全死亡はn-3 PUFA群955例(27%)vs プラセボ群1014例(29%):相対リスク低下9%(P=0.041)。心血管死,心血管疾患による入院は1981例(57%)vs 2053例(59%)。中央値3.9年で死亡1例を予防するNNTは56例,心血管死,心血管疾患による入院1例のNNTは44例。per-protocol解析によるn-3 PUFA群の死亡の相対リスク低下は14%(P=0.004)。安全性における問題は特にみられなかった。→文献情報(堀 正二) ClinicalTrials.gov No: NCT00336336 presenter: Luigi Tavazzi, MD ( Italy ) GISSI-HF Effects of statins in patients with symptomatic chronic heart failure▲UP 虚血性・非虚血性の症候性慢性心不全患者におけるスタチン系薬剤(rosuvastatin)の投与は安全だが,転帰への有効性は認められず。 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設,intention-to-treat解析 ◆4574例。平均年齢68歳。NYHA II〜IV度;病因,EFは問わない ◆追跡期間は3.9年(中央値) ◆rosuvastatin群(2285例):10mg/日,プラセボ群(2289例) ◆一次エンドポイント:全死亡はrosuvastatin群657例(29%)vs プラセボ群644例(28%):調整後ハザード比(HR)1.00(95.5%信頼区間[CI]0.898-1.122,P=0.943),心血管死,心血管疾患による入院は1305例(57%)vs 1283例(56%):調整後HR 1.01(99%CI 0.908-1.112,P=0.903)。→文献情報(堀 正二) ClinicalTrials.gov No: NCT00336336 presenter: Gianni Tognoni, MD ( Italy ) TRANSCEND A randomized placebo-controlled clinical trial evaluating the effects of telmisartan in high risk individuals without heart failure▲UP ACE阻害薬に忍容性のない高リスク患者におけるARB telmisartanの忍容性は良好であったが,心血管死,心筋梗塞,脳卒中,心不全による入院の有意な抑制は認められず。 無作為割付け,プラセボ対照,intention-to-treat解析 ◆5926例。ACE阻害薬に忍容性のない心血管疾患,end-organ damage(臓器障害)を伴う糖尿病,非心不全患者。大半の患者が有効性の証明されている至適薬物治療を受けていた ◆追跡期間は56ヵ月(中央値) ◆3週間のrun-in後にランダム化。telmisartan群(2954例):80mg/日,プラセボ群(2972例) ◆降圧はtelmisartan群はプラセボ群より−4.0/−2.2mmHg。一次エンドポイント(心血管死,心筋梗塞,脳卒中,心不全による入院)はtelmisartan群465例(15.7%)vs プラセボ群504例(17.0%):HR 0.92(95%信頼区間0.81-1.05,P=0.216)。 二次エンドポイントの一つである心血管死,心筋梗塞,脳卒中(HOPE試験の一次エンドポイント)は384例(13.0%)vs 440例(14.8%):HR 0.87(0.76-1.00,調整前P=0.048,調整後P=0.068),心血管疾患による入院は894例(30.3%)vs 980例(33.0%):相対リスク0.92(0.85-0.99,P=0.025)。脱落例はtelmisartan群の方が少なかった(P=0.055):639例(21.6%)vs 705例(23.8%)で,最も多かった理由は低血圧(29例[0.98%]vs 16例[0.54%])。→文献情報(桑島 巌,堀 正二) ClinicalTrials.gov No: NCT00153101 presenter: Salim Yusuf, MD ( Canada ) |
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