循環器トライアルデータベース

SYNTAX
Synergy between Percutaneous Coronary Intervention with Taxus and Cardiac Surgery

目的 血行再建術のみが有効な重症冠動脈疾患(未治療の左主幹部病変,3枝病変)における至適な血行再建戦略を評価する。
CABGに対するPCI(薬剤溶出性ステント:DES)の非劣性試験。

一次エンドポイントは1年後の主要有害心脳イベント:全死亡,心筋梗塞(MI),脳卒中,血行再建術再施行の複合。
コメント N Engl J Med. 2009; 360: 961-72.へのコメント
SYNTAX試験は,PCI/CABGの既往例,急性心筋梗塞例,合併手術を要する患者という3項目のminimal exclusion criteriaで左主幹部疾患および3枝疾患をスクリーニングし(all-comer design),心臓外科医とインターベンション施行医がどちらの治療も施行可能と判断すれば,TAXUS™を用いたPCIかCABGに無作為に割り付けられ,どちらか一方の治療のみ可能という場合には,レジストリー群に登録され,追跡されるというプロトコルである。このきわめて重要で施行困難な試験を完遂させたSerruys先生を始めとする試験関係者の皆様に敬意を表したいと思う。
従来のPCIとCABGを比較するランダム化試験(RCT)では除外基準も多く,心臓外科サイドからはこれらのRCTはPCIを施行しやすい低リスクの患者を対象とした試験で,実地臨床における重症例には適応できないという批判があった。SYNTAX Trialはall-comer designを取ることでこの種の批判を受け付けず,試験結果の一般適用性を確保した。
再血行再建も含めた主要エンドポイントについてTAXUS™を用いたPCIはCABGに対して非劣性を達成することができなかった。SYNTAX 試験のフォーマルな結論としては「再血行再建を含めた1年のMACEの発生率について,CABGはTAXUS™を用いたPCIよりも優れている」ということになる。しかしながら,左主幹部疾患/3枝疾患で,死亡/心筋梗塞/脳卒中についてPCIとCABGで大きな差が認められなかったという事実は画期的である。「SYNTAX試験は死亡/心筋梗塞/脳卒中というハードエンドポイントを評価するに十分な検出力を有していない」と杓子定規に結論することは可能だが,それでも1800例の症例数というのは従来のCABG versus Stent trialsで最大規模の試験である。また英国で行われた糖尿病患者におけるCABG versus Stent trialであるCARDia試験でも,1年の死亡/心筋梗塞/脳卒中の頻度はCABG群10.2%,Stent群11.6%と有意差を認めていない(p=0.63)。個人的には,これらの結果は,今後報告されるFREEDOM試験やCOMBAT試験で再確認されると予想している。これらの試験ではハードエンドポイントが主要エンドポイントとなっており,またSYNTAX試験やCARDia試験も含めたメタ解析は強力なエビデンスとなるであろう。
我々としては,この重要な試験の結果を実地診療にどう生かすのかが求められる。まず左主幹部疾患/3枝疾患で,死亡/心筋梗塞/脳卒中についてPCIとCABGで大きな差が認められず,脳卒中はPCI群で有意に低かったという点は極めて重要である。2回のPCI施行の必要性と脳卒中リスクを伴う1回の大手術のどちらが多くの患者にとって魅力的かは自明のように思う。
また左主幹部疾患+0枝および左主幹部疾患+1枝のグループで再血行再建を含めた主要エンドポイントに差を認めなかった点は重要である。「左主幹部疾患に病変があればCABGの絶対適応」という常識の終わりの始まりであろうか。
1年という期間はPCIとCABGの長期成績を比較するに十分な追跡期間ではなく,CABGのイベント予防効果は経年的に増大するとの主張もある。確かにDESについてはvery late stent thrombosisやlate catch-upの問題があり,再血行再建を含めたエンドポイントについてはイベント発生率の差が経年的に拡大する可能性がある。しかしながら死亡率については従来のBMSとCABGの比較試験で1年以降にイベント曲線が乖離するという証拠はないし,BMSとDESの比較試験の結果も同様だ。もちろんSYNTAX試験の3年,5年の追跡結果をみることの重要性は言うまでもない。
本試験結果を日本の実地臨床に外挿するにあたってはいくつかの重要なポイントがある。まず,群間差はなかったものの,PCI群のステント血栓症の頻度が著しく高いことを指摘しなければならない。1年のステント血栓症(definite)発症率3.2%は従来の欧米からの報告では想定の範囲内であるが,日本の実地臨床では考えられないほど高い数字である。J-Cypher Registryに登録された患者でSYNTAX equivalentな患者の1年のステント血栓症の頻度は1%未満であった。SYNTAX試験のPCI群の1年死亡率は4.4%,CABG群は3.5%と群間差はなかったが,1ヵ月の死亡率はCABG群に比しPCI群で高い傾向がKaplan-Meier曲線から読み取れる。PCI群の早期死亡率がCABG群に比べ本当に高いとすれば,左主幹部疾患/3枝疾患におけるPCIの意義は低下せざるを得ない。今後,死因の詳細を評価する必要があるが,ステント血栓症が重要な死因の一つである可能性は十分に考えられ,心筋梗塞についても同様のことが言える。
また日本においては慢性完全閉塞病変に対してPCIが施行されるケースが多く,現時点で少なくとも一部の施設ではSYNTAX試験におけるよりもはるかに高い頻度で左主幹部疾患/3枝疾患においてPCIが選択されていると推定される。PCI群で慢性完全閉塞病変を有する症例,特に慢性完全閉塞病変のPCIが不成功に終わった症例のアウトカムをぜひ知りたいところである。
今後の重要な課題としては左主幹部疾患/3枝疾患というくくりでPCIかCABGかを論じるのではなく,左主幹部疾患/3枝疾患の中でもどのような患者にCABGの有用性が高いのかということを突き詰める必要がある。論文中にもSYNTAX Scoreの高い患者では,PCI群において再血行再建の頻度が増大するのみならず,死亡/心筋梗塞/脳卒中の頻度も高くなる傾向が指摘されている。J-Cypher Registryのデータからも,シロリムス溶出性ステントを用いても総ステント長の長い患者における再血行再建の頻度は依然として高く,左主幹部分岐部で回旋枝起始部にもステントを留置するTwo-stents アプローチを採った患者で心臓死の頻度が高い可能性が指摘されている。SYNTAX試験では冠動脈病変の複雑化がCABG後の予後に影響しないことが明確に示されている。我々には,左主幹部疾患/3枝疾患の中でPCIを行うことで過剰なリスクをとることになる患者をきっちりと見極める能力が求められているのである。(木村
デザイン 無作為割付け,多施設(欧州17か国,米国の85施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は12か月。
登録期間は2005年3月~2007年4月。
対象患者 1,800例(欧州1,555例,米国245例)。CABG,PCIのいずれでも同等の解剖学的血行再建が達成できるもの;de novo病変;≧50%の狭窄;血管径>1.5mm;安定/不安定狭心症あるいは非典型的胸痛;無症候の場合は心筋虚血陽性反応が必要。
除外基準:PCI,CABGの既往;急性心筋梗塞;同時に心臓術を行う必要のあるもの。
■患者背景:平均年齢(CABG群65.0歳,PCI群65.2歳),男性(78.9%, 76.4%),糖尿病治療例(24.6%, 25.6%),インスリンが必要な例(10.4%, 9.9%),メタボリックシンドローム(45.5%, 46.0%),MI既往(33.8%, 31.9%),血圧≧130/85mmHg(64.0%, 68.9%;p=0.03),高コレステロール血症(77.2%, 78.7%),トリグリセライド≧150mg/dL(38.7%, 32.3%;p=0.007),HDL-C:男性<40mg/dL,女性<50mg/dL(52.5%, 46.2%;p=0.01),安定狭心症(57.2%, 56.9%);不安定狭心症(28.0%, 28.9%),EF<30%(2.5%, 1.3%;p=0.08)。
血管造影背景:SYNTAXスコア*(29.1, 28.4);病変数(4.4, 4.3),完全閉塞(22.2%, 24.2%),分岐部病変(73.3%, 72.4%)。
手技関連:施行までの時間(17.4日,6.9日;p<0.001),手技所要時間(3.4時間,1.7時間;p<0.001),手技後の入院期間(9.5日,3.4日;p<0.001),完全血行再建(63.2%, 56.7%;p=0.005)。
* 血管造影所見(病変部位や病変数,複雑病変など)によってスコア化し,冠動脈疾患の複雑構造を分類し解剖学的特徴を明確にするツール。スコアが高いほど複雑度が高い(≦22;低スコア,23~32;中間スコア,≧33;高スコア)。
治療法 心臓外科医とインターベンション心臓医が病変を評価。
CABG群(897例),PCI群(903例):paclitaxel溶出ステント(TAXUS ExpressあるいはTAXUS Liberte)。
ランダム化は左主幹部病変の有無,糖尿病治療(経口血糖降下薬,インスリン)例で層別した。
CABG,PCIのいずれかのみが適応な症例は並行して行われているnested 登録研究(CABG不適応例用のPCI登録研究,PCI不適応例用のCABG登録研究)に組込んだ。
結果 解析例はCABG群849例(94.6%),PCI群891例(98.7%)。
[手技後の循環器関連治療状況]
aspirin:CABG群(退院時88.5%→手技から1か月後85.4%→ランダム化から6か月後82.7%→ 12か月後84.3%),PCI群(96.3%→ 93.5%→ 93.2%→ 91.2%);いずれの時点もp<0.001。
チエノピリジン系薬剤:CABG群(19.5%→ 18.4%→ 16.1%→ 15.0%),PCI群(96.8%→ 95.5%→ 91.3%→ 71.1%);いずれの時点もp<0.001。
全抗血小板薬:CABG群(23.7%→ 21.2%→ 18.4%→ 17.2%),PCI群(97.0%→ 95.8%→ 91.4%→ 72.8%);いずれの時点もp<0.001。
非チエノピリジン系薬剤:CABG群4.8%,PCI群1.9%,warfarin:7.1%, 2.6%,スタチン系薬剤:74.5%, 86.7%,β遮断薬:78.6%, 81.3%(p=0.17),ACE阻害薬:44.6%, 55.1%,Ca拮抗薬:18.4%, 25.8%,ARB:7.0%, 13.3%,amiodarone:12.8%, 1.5%:β遮断薬以外の全p<0.001。
[一次エンドポイント:1年後の全死亡,MI,脳卒中,血行再建術再施行]
CABG群12.4% vs PCI群17.8%とCABG群の方が有意に抑制された(相対リスク[RR]1.44;95%信頼区間1.15~1.81, p=0.002)が,これは主にPCI群で血行再建術再施行率(5.9% vs 13.5%:RR 2.29;1.67~3.14, p<0.001)が有意に高かったためであった。再施行した手技は両群ともPCIが多かった:CABG群(CABG 1.3%, PCI 4.7%),PCI群(CABG 2.8%, PCI 11.4%)。
その他のエンドポイントは,死亡:3.5% vs 4.4%(RR 1.24;0.78~1.98, p=0.37);心原性死亡(2.1% vs 3.7%, p=0.05),脳卒中:2.2% vs 0.6%(RR 0.25;0.09~0.67, p=0.003),MI:3.3% vs 4.8%(RR 1.46;0.92~2.33, p=0.11)。
複合エンドポイントの経時的発生率:CABG群(入院中5.4%→ 30日後5.2%,6か月後9.9%),PCI群(4.4%→ 6.0%→ 12.4%);6か月後RR 1.26(0.96~1.64, p=0.09)。
[グラフト閉塞,ステント血栓症]
急性期(≦1日):CABG群0.3%,PCI群0.2%,早期(2~30日後):0.3%, 2.0%;p=0.001,晩期(31~365日):2.5%, 1.0%;p=0.02。
[SYNTAXスコアによる転帰]
CABG群では,低スコア例での一次エンドポイントは14.7%,中間スコア例12.0%,高スコア例10.9%と発生率に有意差はみられなかったが,PCI群では高スコア例(23.4%)は低スコア例(13.6%;p=0.002),中間スコア例(16.7%;p=0.04)と比べ有意に増加した。
手技とSYNTAXスコア間には有意な相互関連がみられた(p=0.01):低スコア,中間スコア例では一次エンドポイントにおける手技間差はなかったが,高スコア例ではPCI群で有意に増加した。
★結論★3枝病変,左主幹部病変の1年後の心血管疾患抑制においてPCIのCABGに対する非劣性は認められず,これらの病変ではCABGがいぜんとして標準治療である。
ClinicalTrials.gov No: NCT00114972
文献
  • [main]
  • Serruys, PW et al for the SYNTAX investigators: Percutaneous coronary intervention versus coronary-artery bypass grafting for severe coronary artery disease. N Engl J Med. 2009; 360: 961-72. PubMed
  • [substudy]
  • 左主幹部疾患/3枝疾患患者に対する第1世代DESを用いたPCIとCABGは,10年後の全死亡において,差を認めなかった。
    SYNTAX試験10年後の追跡調査結果(The SYNTAX Extended Survival:SYNTAXES)。10年時点の生存に関する情報は,2017年3月~2019年6月に収集。追跡調査完了率は,PCI群で841例(93%) vs. CABG群で848例(95%)。追跡期間中央値は,11.2年。
    [一次エンドポイント:10年後の死亡率]
    • PCI群244例(27%) vs. CABG群211例(24%)。HR 1.17(95%CI 0.97~1.41; P =0.092)。最大追跡期間でみると,PCIはCABGにくらべ,全死亡との関連がより強かった[PCI群303例(34%)vs. CABG群264例(29%),HR 1.18(95%CI 1.00~1.39)]。
    [疾患別および糖尿病の有無と治療の相関]
    • 左主幹部疾患:10年後の死亡に治療による影響は認められなかった[PCI群93例/357例(26%)vs. CABG群98例/348例(28%),HR 0.90(95%CI 0.68~1.20)]。
    • 3枝疾患:10年後の死亡は,CABG群にくらべPCI群で高かった[PCI群151例/546例(28%)vs. CABG群113例/549例(21%),HR 1.41(95%CI 1.10~1.80)]。
    • 糖尿病の有無:10年後の死亡に糖尿病の有無による差は認められなかった。
      糖尿病:HR 1.10(95%CI 0.80~1.52)。
      非糖尿病:HR 1.20(95%CI 0.96~1.51)。
    Thuijs DJFM, et al for the SYNTAX Extended Survival Investigators: Percutaneous coronary intervention versus coronary artery bypass grafting in patients with three-vessel or left main coronary artery disease: 10-year follow-up of the multicentre randomised controlled SYNTAX trial. Lancet. 2019 Sep 2. [Epub ahead of print]. PubMed
  • 非糖尿病の多枝病変患者における至適血行再建戦略-5年後の全死亡・心臓死リスクは,CABGのほうがPCI(DES)より有意に低い。
    非糖尿病の多枝病変患者においてCABGとPCI(DES)の長期死亡・転帰を比較するため,SYNTAX(欧米人・paclitaxel溶出ステント)とBEST(アジア人・everolimus溶出ステント)試験を統合解析した(1,275例[年齢中央値65歳,男性79.3%];追跡期間中央値61か月)。
    CABG群(638例)はPCI群(637例)より全死亡(6.0% vs 9.3%:ハザード比0.65;95%信頼区間0.43~0.98, p=0.039),心臓死(0.41;0.25~0.78, p=0.005)のリスクが有意に低かった。両群間差は2年後から顕著となり,SYNTAXスコア低値例より中等度~高値例のほうが大きかった。サブグループ解析の結果も一貫していた。死亡・心筋梗塞(MI)・脳卒中(11.3% vs 16.6%, p=0.012),MI(3.3% vs 8.3%, p<0.001),再血行再建術もCABG群のほうが少なかったが,脳卒中には有意差を認めなかった。
    Chang M, et al: Long-Term Mortality After Coronary Revascularization in Nondiabetic Patients With Multivessel Disease. J Am Coll Cardiol. 2016; 68: 29-36. PubMed
  • PCI,CABG後の至適薬物治療-5年後の実施率は40%弱と低く,実施不十分は有害臨床転帰と関連。
    血行再建術(PCI,CABG)後の至適薬物治療(OMT)と転帰の関連を検討した結果(1,774例;追跡期間は5年):OMTは,≧1剤の抗血小板薬,スタチン,β遮断薬,ACE阻害薬/ARBの併用と定義し,OMTを時間依存共変量として解析。OMT実施率は血行再建術前29.1%,退院時41.3%(PCI群50.2%,CABG群31.2%),5年後はそれぞれ39.6%, 35.7%であった。ベースライン時のOMT実施例(平均64.6歳,男性76.5%)は高血圧,脂質異常症,心筋梗塞(MI)既往などの保有危険因子が多く,非実施例(65.3歳,78.1%)は慢性閉塞性肺疾患,末梢血管疾患,高SYNTAXスコア/EuroSCORE例が多かった。
    OMTは5年後の死亡(ハザード比[HR]0.64, p=0.002),死亡,MI,脳卒中の複合エンドポイント(0.73, p=0.007)のリスク低下と有意に関連した。死亡のHRは血行再建術で比較した治療効果より低かった(CABG vs PCI:0.74)。OMTの有効性は1年目がもっとも顕著であったが5年間持続した。OMTの薬剤すべてが転帰を改善した。
    Iqbal J, et al: Optimal Medical Therapy Improves Clinical Outcomes in Patients Undergoing Revascularization With Percutaneous Coronary Intervention or Coronary Artery Bypass Grafting: Insights From the Synergy Between Percutaneous Coronary Intervention With TAXUS and Cardiac Surgery (SYNTAX) Trial at the 5-Year Follow-Up. Circulation 2015; 131: 1269-77. PubMed
  • 喫煙と転帰-喫煙は血行再建5年後の転帰不良と関連。
    [背景]喫煙者は冠動脈疾患,特に心筋梗塞(MI)後の予後が非喫煙者と同等あるいはより良好とする「喫煙パラドックス」を示唆する報告がいくつかある。
    喫煙状況(現・過去・非喫煙)と複合エンドポイント(死亡,MI,脳卒中)およびMACCE(複合エンドポイント+標的病変再血行再建術)の関連を検証した結果(1,793例[99.6%];追跡期間5年):ベースライン時の現喫煙者は20.2%,血行再建後に60%が禁煙し,6か月後8.6%に低下したが,1年後(8.7%)以降とくにCABG群でわずかに増加(5年後10.8% vs PCI群8.7%)。追跡期間中に喫煙状況が変化したのは322例(17.9%),非喫煙者はほぼ不変。
    ベースライン時の喫煙は5年後の複合エンドポイント,MACCEと関連しなかったが,喫煙を時間依存共変量とすると両リスクと関連。喫煙の影響は主にMIに対するもので(調整ハザード比2.08;95%信頼区間1.30~3.32, p=0.002),死亡や再血行再建術とは関連せず,この結果はPCI・CABGを問わなかった。喫煙は複合エンドポイント(1.8;1.3~2.5),MACCE(1.4;1.1~1.7)の独立した予測因子であった。
    Zhang YJ, et al: Smoking Is Associated With Adverse Clinical Outcomes in Patients Undergoing Revascularization With PCI or CABG: The SYNTAX Trial at 5-Year Follow-Up. J Am Coll Cardiol. 2015; 65: 1107-15. PubMed
  • 左主幹部病変の5年後転帰-MACCEはPCI群,CABG群で同等。PCI群では脳卒中リスクがCABG群より低いものの再血行再建術が増加。
    非保護左主幹部病変の5年後の転帰(705例:PCI群357例,CABG群348例):5年追跡率はPCI群96.9%,CABG群92.5%。
    一次エンドポイント(MACCE)は36.9% vs 31.0%(ハザード比1.23;95%信頼区間0.95~1.59)。全死亡も両群間に有意差はなかった(12.8% vs 14.6%:0.88;0.58~1.32)。脳卒中(1.5% vs 4.3%, p=0.03)はCABG群,再血行再建術(26.7% vs 15.5%, p<0.01)はPCI群がそれぞれ有意に多かった。
    SYNTAXスコア0~32の症例ではMACCEリスクは両群同等であったが,≧33の症例ではPCI群のほうが有意に高かった。
    Morice MC, et al: Five-year outcomes in patients with left main disease treated with either percutaneous coronary intervention or coronary artery bypass grafting in the synergy between percutaneous coronary intervention with taxus and cardiac surgery trial. Circulation. 2014; 129: 2388-94. PubMed
  • ステント血栓症,グラフト閉塞と転帰-5年後の発生率は同等であるが,死亡への影響はステント血栓症のほうが大きい。
    PCI後のステント血栓症(ST)およびCABG後のグラフト閉塞(GO)が転帰に及ぼす影響を,5年追跡を完了したPCIコホート(871/903例[96.5%]),CABGコホート(805/897例[89.7%])で検討した結果:ST発生は72病変で,他の病変血管にくらべると左主幹部(14病変[19%]),冠動脈近位部(37病変[51%])での発生が多かった。一方,GO発生は41病変で,右冠動脈遠位部での吻合グラフト(17例[42%])での発生が多かった。
    5年後のARC基準によるdefinite ST(48病変[7%])とARC-like definite GO(32病変[6%])の推定発生率に有意差はなかった。landmark解析による発生タイミングでみると,30日以内の発生はdefinite STのほうがARC-like definite GOより多かったが(2.7% vs 1.0%, p=0.033),31日以降5年までの発生に両者の差はなかった(4.2% vs 4.5%, p=0.78)。
    5年後の心臓死は,definite STの17/48例(35.4%)とdefinite/ probable STの31/75例(41.3%)に発生した一方,ARC-like definite GO例では非発生,ARC-like definite/ probable GO例で12/52例(23.1%)。
    ST,GOの予測因子はさまざまで,STと関連した因子は30日以内がPCI後の不十分な抗血小板治療,末梢動脈疾患など,30日以降が冠動脈造影上の可視血栓,三分岐部病変など。GOと関連したのはグラフト数など。
    Farooq V, et al: Short-Term and Long-Term Clinical Impact of Stent Thrombosis and Graft Occlusion in the SYNTAX Trial at 5 Years: Synergy Between Percutaneous Coronary Intervention With Taxus and Cardiac Surgery Trial. J Am Coll Cardiol. 2013; 62: 2360-9. PubMed
  • 解剖学的・臨床的8因子から成るSYNTAXスコアII-4年後の死亡予測能が高い。
    冠動脈疾患の複雑構造を分類し解剖学的特徴を明確にするツールであるSYNTAXスコアに,臨床変数である年齢,クレアチニンクリアランス,EF,末梢血管疾患(PVD),女性,慢性閉塞性肺疾患(COPD),解剖学的変数である非保護左主幹部病変(ULMCA)を加えた8予測因子から成るSYNTAXスコアIIの内的・外的妥当性を検証した結果:糖尿病は死亡の独立した予測因子ではないため臨床変数に含まなかった。
    外的妥当性を検証したコホートは,国際共同all-comers登録研究であるDrug Eluting stent for Left main coronary Artery; DELTA(非保護左主幹部病変2,891例:CABG 31.2%,第1世代sirolimus・paclitaxel溶出ステント68.8%,SYNTAXスコア≧33 30%,3枝病変26%,追跡期間中央値3.5年。
    4年後の全死亡は178例。SYNTAXスコアIIは4年後のCABGとPCIの死亡率の違いを有意に予測した(交互作用p=0.0037)
    4年後の死亡ハザード比
    ・SYNTAXスコア10ポイント上昇:SYNTAX試験(CABG 0.97, PCI 1.27[交互作用p=0.039]);DELTA研究(1.12, 1.32[交互作用p=0.083])。
    ・年齢(10歳加齢):1.88, 1.29(p=0.095);1.46, 1.34(交互作用p=0.56)。
    ・クレアチニンクリアランス(10mL/分上昇):0.91, 0.82(交互作用p=0.30);0.91, 0.93(交互作用p=0.82)。
    ・EF(10%増加):0.84, 0.56(p=0.053);0.59, 0.57(交互作用p=0.75)。
    ・PVD:2.79, 2.79(交互作用p=1.00);1.37, 1.77(交互作用p=0.59)。
    ・ULMCA:1.47, 0.82(交互作用p=0.062)。
    ・女性:0.59, 1.70(交互作用p=0.0059);0.52, 1.09(交互作用p=0.014)。
    ・COPD:2.84, 1.35(交互作用p=0.074);3.63, 1.97(交互作用p=0.23)。
    SYNTAXスコアII の内的妥当性のc統計量は0.725,外的妥当性は0.716で,SYNTAXスコアのみ(0.567, 0.612)よりも予測能は高かった。
    Farooq V, et al: Anatomical and clinical characteristics to guide decision making between coronary artery bypass surgery and percutaneous coronary intervention for individual patients: development and validation of SYNTAX score II. Lancet. 2013; 381: 639-50. PubMed
  • 5年後の結果-CABGが標準治療であるべきであるが,SYNTAXスコアが低い例ではPCIが選択肢となる。
    5年後の主要有害心・脳イベント(MACCE)の結果:同意の撤回はCABG群のほうがPCI群より多かった(50例 vs 11例)。
    Kaplan-Meier推定による5年後のMACCEはCABG群がPCI群より有意に低かった(26.9% vs 37.3%,p<0.0001)。
    心筋梗塞:3.8% vs 9.7%,再血行再建術:13.7% vs 25.9%といずれもCABG群で有意に低かった(p<0.0001)。一方,全死亡(11.4% vs 13.9%),脳卒中(3.7% vs 2.4%)は両群間に有意差はなかった。
    低SYNTAXスコア(スコア0~22)例ではMACCEについて両群間に有意差はなかった(28.6% vs 32.1%, p=0.43)。左主幹部病変例でも有意差はなかった(31.0% vs 36.9%, p=0.12)が,SYNTAXスコアが中程度(スコア23~32:25.8% vs 36.0%, p=0.008),高い(≧33:26.8% vs 44.0%, p<0.0001)ものではPCI群で有意に多かった。
    Mohr FW, et al: Coronary artery bypass graft surgery versus percutaneous coronary intervention in patients with three-vessel disease and left main coronary disease: 5-year follow-up of the randomised, clinical SYNTAX trial. Lancet 2013; 381: 629-38. PubMed
  • PCI,CABGにおける不完全な血行再建-予測因子である完全閉塞の有無を問わず,4年後の死亡を含むアウトカム不良と関連。
    all-comers(本試験でランダム化された1,800例,並行して行われたコホート内症例登録研究[nested registries:CABG不適応例のPCI登録研究198例,PCI不適応例のCABG登録研究649例]における後付け解析・4年追跡の結果:冠動脈造影での完全な血行再建が確認された例(CR)はPCI群52.8%,CABG群66.9%。
    CR例にくらべ不完全な血行再建例(ICR)は左主管部病変が有意に少なかった(PCI群:45.2% vs 33.3%,CABG群:46.9 % vs 34.0%)が,解剖学的複雑構造(SYNTAXスコア: 26.3% vs 32.0%, 32.2% vs 34.0%),完全閉塞例(16.9% vs 36.8%, 35.0% vs 40.3%),合併症が有意に多く(術後の転帰予測を評価するEuroSCORE[4.0% vs 5.1%, 3.6% vs 4.6%],Parsonnet SCORE[8.8% vs 10.5%, 8.2% vs 9.6%]が高値),4年後の死亡(11.9% vs 15.9%, 8.3% vs 11.6%),再血行再建術(17.7% vs 26.8%, 8.4% vs 11.8%),PCI群でのステント血栓症(3.7% vs 6.5%),主要有害心血管イベント(29.6% vs 41.9%, 20.6% vs 26.2%)が有意に多かった。これは完全閉塞病変の有無を問わず一貫していた。
    ICRの最も強い予測因子は完全閉塞であった(ハザード比2.70;95%信頼区間1.98~3.67, p<0.001)。なお完全閉塞は840例・1,007病変でCABG群のほうが有意に多く(26.3% vs 36.4%, p<0.001),うち冠動脈の近位部から中間部の完全閉塞が68.1%。
    Farooq V, et al: The Negative Impact of Incomplete Angiographic Revascularization on Clinical Outcomes and Its Association With Total Occlusions: The SYNTAX (Synergy Between Percutaneous Coronary Intervention with Taxus and Cardiac Surgery) Trial. J Am Coll Cardiol. 2013; 61: 282-94. PubMed
  • 4年後の死亡関連因子-最も強く関連したのは,PCI群:手技後の抗血小板薬治療非実施,CABG群:退院時のaspirin非投与で,末梢血管疾患は両群で強い関連を示した。
    前向きにベースライン時,周術期,術後のデータを収集し,長期(4年後)の全死亡と独立して関連する因子を検討した結果:4年後の死亡率はPCI群104例(11.8%);うち入院中の死亡16例,CABG群74例(9.0%);12例で,両群間に有意差はなかった(p=0.063)。なお打ち切りデータは24例(2.7%),78例(8.7%)でPCI群で有意に少なかった(p<0.001)。
    死亡と最も強く関連した因子はPCI群(903例):手技後の抗血小板薬非投与(ハザード比152.16;95%信頼区間53.57~432.22, p<0.001),CABG群(897例):退院時のaspirin非投与(3.56;2.04~6.21, p<0.001)。その他の独立関連因子は,PCI群:退院時のamiodarone投与,手技前の低EF,消化管出血あるいは消化性潰瘍の既往,末梢血管疾患,加齢(10歳)など,CABG群:末梢血管疾患,COPD,消化管出血あるいは消化性潰瘍の既往,加齢(10歳)など。
    Farooq V, et al: Incidence and multivariable correlates of long-term mortality in patients treated with surgical or percutaneous revascularization in the synergy between percutaneous coronary intervention with taxus and cardiac surgery (SYNTAX) trial. Eur Heart J. 2012; 33: 3105-13. PubMed
  • 3年後の主要有害心イベントはCABG群に比べPCI群で有意に多かった。
    5年間の追跡を予定しているが,本報は3年後の結果:主要有害心イベント(死亡,脳卒中,MI,再血行再建術)はCABG群20.2% vs PCI群28.0%(p<0.001)。PCI群で次のリスクが増大:再血行再建術(10.7% vs 19.7%, p<0.001),MI(3.6% vs 7.1%, p=0.002)。
    安全性の複合エンドポイント(死亡,脳卒中,MI):12.0% vs 14.1%(p=0.21),脳卒中:3.4% vs 2.0%(p=0.07)は両群間に有意差なし。
    左主幹部病変サブグループにおける主要有害心脳血管イベントに両群間差はなかったが(22.3% vs 26.8%, p=0.20),3枝病変サブグループではPCI群でリスクが上昇した(18.8% vs 28.8%, p<0.001)。
    Kappetein AP, et al: Comparison of coronary bypass surgery with drug-eluting stenting for the treatment of left main and/or three-vessel disease: 3-year follow-up of the SYNTAX trial. Eur Heart J. 2011; 32: 2125-34. PubMed
  • 3枝および左主幹部疾患患者において,QOL評価による狭心症の発生頻度はCABG群でPCI群よりも有意に改善したが,両群間差はわずか。
    QOLについてのサブ解析結果:Seattle Angina Questionnaire(SAQ)で評価した狭心症発症率は,6か月後,12か月後ともにCABG群のほうがPCI群よりも有意に改善したが(p=0.04, p=0.03),両時点ともに群間の平均スコア差はわずかであった。Medical Outcomes Study 36-Item Short Form Health Survey(SF-36)で評価した全般的健康状態は,1か月後はPCI群のほうが良好であったが,6か月後以降に差は消失した。
    Cohen DJ, et al for the Synergy between PCI with Taxus and Cardiac Surgery Investigators: Quality of life after PCI with drug-eluting stents or coronary-artery bypass surgery. N Engl J Med. 2011; 364: 1016-26. PubMed
  • 新規左主幹部に対するPCIの1年後の有効性はCABGと同等。SYNTAX scoreはPCIの転帰を,EuroSCOREはPCI,CABG両治療の転帰を予測。
    未治療左主幹部病変(705例:PCI群357例・65.4歳,CABG群348例・65.6歳)での結果:PCI群ではCABG群に比べて喫煙例が少なく(17.9% vs 24.0%),高コレステロール血症が多かった(81.0% vs 75.4%)。また同群ではランダム化から手技までの所要時間,手技時間,手技後の入院期間が有意に短かったが,完全な血行再建率は低かった(64.5% vs 72.5%, p=0.02)。
    1年後の主要有害心イベント:PCI群15.8% vs CABG群13.7%:群間差2.1%;95%信頼区間-3.2~7.4%(p=0.44)。
    脳卒中はCABG群で有意に高く(0.3% vs 2.7%:2.4%;-4.2~-0.1%, p=0.009),血行再建術再施行はPCI群で有意に増加(11.8% vs 6.5%:5.3%;1.0~9.6%, p=0.02)。
    ベースライン時のSYNTAXスコアが高い症例はPCIの転帰が不良であったが,CABGとの関連はみられなかった。一方,EuroSCOREは両治療の転帰を有意に予測した。Morice MC, et al: Outcomes in patients with de novo left main disease treated with either percutaneous coronary intervention using paclitaxel-eluting stents or coronary artery bypass graft treatment in the Synergy Between Percutaneous Coronary Intervention with TAXUS and Cardiac Surgery (SYNTAX) trial. Circulation. 2010; 121: 2645-53. PubMed
  • 糖尿病患者では心血管リスクは血行再建術再施行増加によりPCI群で増大するが,血行再建術を除外すると糖尿病,非糖尿病いずれでもPCIとCABG間に有意差なし。
    糖尿病治療例452例(CABG群221例,PCI群231例):2型糖尿病患者が94%。インスリン治療182例(40.3%),経口血糖降下薬のみ270例(59.7%),非糖尿病1,348例(食事療法のみの糖尿病59例を含む)。
    糖尿病患者の1年後の一次エンドポイント:CABG群14.2% vs PCI群26.0%:相対リスク1.83(1.22~2.73, p=0.003),非糖尿病患者:11.8% vs 15.1%:1.28(0.97~1.69, p=0.08)。1イベントを抑制するためのCABGのNNTは糖尿病患者9例,非糖尿病31例。血行再建術再施行は糖尿病(6.4% vs 20.3%, p<0.001)・非糖尿病(5.7% vs 11.1%, p<0.001)いずれもPCI群が有意に多く,複合エンドポイントの増加につながった。
    安全性のエンドポイント(死亡,脳血管疾患,MI)は,糖尿病(10.3% vs 10.1%, p=0.96)・非糖尿病(6.8% vs 6.8%, p=0.97)いずれでもCABG,PCI群間に有意差はなかった。症候性グラフト閉塞,ステント血栓症も治療群間に差はなし。
    非糖尿病患者ではCABG群で脳卒中のリスクが増大(2.2% vs 0.5%, p=0.006)し,高度の複雑病変を有する糖尿病患者でCABG群に比べPES群で死亡リスクが上昇した。
    Banning AP, et al: Diabetic and nondiabetic patients with left main and/or 3-vessel coronary artery disease: comparison of outcomes with cardiac surgery and paclitaxel-eluting stents. J Am Coll Cardiol. 2010; 55: 1067-75. PubMed

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収載年月2009.03
更新年月2019.09