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第72回米国糖尿病学会(ADA 2012)
2012.6/8〜12 フィラデルフィア

最大規模の糖尿病関連学会であるADA 2012が開催されました。
2,600万人。これはアメリカの糖尿病患者数。そのうち700万人が未診断で,前糖尿病(7,900万人)の多くは2型糖尿病を発症するリスクが高いことを知らないと言われています。
世界中から13,000人の専門家がフィラデルフィアに集結するADA 2012では,2,500を超える演題が発表され,Lancet誌に4報,Diabetes Care誌に6報が同時掲載されます。
ここでは,Lancet 誌とのジョイントシンポジウム,Special ADA/ The Lancet Symposiumから4研究,Late Breaking AbstractsからUKPDSの抄録を掲載いたします。

掲載トライアル
[Special ADA/ The Lancet Symposium]
EASIE  Evaluation of Insulin Glargine versus Sitagliptin in Insulin-naive Patients
EUREXA European Exenatide Study(コメント 弘世貴久)
DPPOS Diabetes Prevention Program Outcomes Study(コメント 弘世貴久)
Effectiveness of quality improvement strategies on the management of diabetes: a systematic review and meta-analysis
[Late Breaking Abstracts]
UKPDS UK Prospective Diabetes Study(コメント 弘世貴久)

June 9
Special ADA/ The Lancet Symposium

EASIE
Evaluation of Insulin Glargine versus Sitagliptin in Insulin-naive Patients
ビグアナイド薬メトホルミン(metformin)で血糖コントロール不十分なインスリン投与経験のない2型糖尿病患者において,HbA1c低下が大きいのは?—持効型インスリン製剤のインスリン・グラルギン(glargine)vs DPP-4阻害薬シタグリプチン(sitagliptin)
背景・目的 大規模臨床試験から,2型糖尿病患者において早期にHbA1c<7%を達成することに より長期間にわたる細小血管症抑制が示され,大血管症の予防も示唆されている。腎機能障害を有する患者や胃腸障害に不忍容な患者を除き,metforminは第一選択薬であるが,多くの症例は併用薬を必要とする。
低血糖の頻度の低さ,体重に影響を及ぼさないなどにより,DPP-4阻害薬はSU薬に代わるmetfominへの追加薬,すなわち第二選択薬となりつつある。一方,metforminへの早期の基礎インスリン追加投与によるHbA1cの低下と良好な忍容性を示した研究も集積されてきている。
metforminで血糖コントロール不十分なインスリン投与経験のない2型糖尿病患者において,持効型インスリン製剤である基礎インスリンglargineとDPP-4阻害薬sitagliptinの追加薬としての有効性,忍容性,安全性を比較検証する。
一次エンドポイントはHbA1cの変化。
ランダム化,オープン,多施設(17ヵ国)◆24週間◆515例。35-70歳のmetformin投与例;HbA1c 7-<11%;6ヵ月以上前に2型糖尿病と診断されたもの;BMI 25-45kg/m²。■患者背景:平均年齢53.6歳,女性49%,BMI 31.1kg/m²,血圧130.8/79.7mmHg, HbA1c 8.5%,空腹時血糖167.4mg/dL,経口糖尿病治療薬投与期間2.9年,metformin投与量1,843mg,糖尿病合併症28%:冠動脈疾患10%;糖尿病性神経障害11%;糖尿病性腎症4%;糖尿病性網膜症4%。
併用投与例86%:β遮断薬21%;RAS阻害薬55%;脂質治療薬47%;抗血栓薬34%◆glargine群(227例):0.2単位/kg皮下注から開始し,自己測定空腹時血糖値が72-99mg/dLになるよう漸増投与。
sitagliptin群(253例):100mg/日を経口投与◆glargineの投与量は試験期間中に増加し,エンドポイント(HbA1c)評価時は0.49単位/kgあるいは41.4単位/日。
・一次エンドポイントであるHbA1cの低下はglargine群のほうが有意に大きかった(glargine群1.72%低下 vs sitagliptin群1.13%低下:平均差-0.59%;95%信頼区間-0.77--0.42,P<0.0001)。
・低血糖の頻度はglargine群のほうが有意に多かった(4.21回/患者・年 vs 0.50回/患者・年,P<0.0001)。重篤な低血糖は3例 vs 1例。
・感染,狭心症,下肢痛,新生物などの重篤な有害事象が1回以上発生したものは,15例(6%)vs 8例(3%)。有害事象による治療中止例は2例 vs 4例。

metforminで血糖コントロール不十分なインスリン投与経験のない2型糖尿病患者における追加薬はDPP-4阻害薬にくらべ基礎インスリンが効果の面で優れており,安全面でも大きな問題がないという結果であった。

文献
Aschner P et al on behalf of the EASIE investigators: Insulin glargine versus sitagliptin in insulin-naive patients with type 2 diabetes mellitus uncontrolled on metformin (EASIE): a multicentre, randomised open-label trial. Lancet. 2012 June 9. doi:10.1016/S0140-6736(12)60439-5. PubMed
UP
EUREXA
European Exenatide trial
metformin単剤で血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者における血糖悪化の抑制に優れるのは?-グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬エキセナチド(exenatide)1日2回皮下投与vs SU薬グリメピリド(glimepiride)
背景・目的 metformin単剤でコントロール不十分の2型糖尿病患者では,追加薬としてSU剤が使用されてきたが,SU剤は低血糖のリスクが高い。新しい2型糖尿病治療薬として確立しつつあるGLP-1受容体作動薬は,低血糖リスクが増加せず,体重減少や心血管マーカーの改善が示されている。そこで,metforminへの追加薬として,GLP-1受容体作動薬のexenatide 1日2回皮下投与とSU薬glimepirideのどちらが血糖コントロール悪化の抑制に優れるかを検討する。
一次エンドポイントは一定の治療時間に対する血糖コントロール不十分で他の治療が必要となる割合(3ヵ月後のHbA1c>9%,または6ヵ月後以降3ヵ月の間隔で2回連続して>7%)。
コメント 本試験はこれまでの一定期間の治療による平均のHbA1cの低下度の比較ではなく,一定期間の間に目標血糖コントロールを達成できない割合を1次エンドポイントにしたユニークな試験である。「期間を切って一定のコントロールができない場合は脱落」という観点で治療効果を測っており,日常臨床にありがちな「もう少し様子を診ている」のはすでに無効!と判を押し次のステップを促すという意味でおもしろい。コントロールが達成できない以外で中止となった理由で最も多かった「patient decision」に対する詳細な説明が欲しいところである(コメント 弘世 貴久)
ランダム化,オープン,多施設(14ヵ国128施設),intention-to-treat(ITT)解析◆平均治療期間は2年(exenatide群101.9週間,glimepiride群113.1週間)。試験期間は2006年9月5日- '11年3月29日◆1,029例。18-85歳,BMI 25kg/m²-<40kg/m²,最大忍容量のmetformin投与下でHbA1c 6.5-9.0%の2型糖尿病患者◆exenatide群(515例[ITT解析対象490例];5μg×2回/日朝夕食60分前皮下投与,4週後に10μg×2回に増量),glimepiride群(514例[487例];1mg/日朝食直前投与,忍容性に応じて4週毎に用量調節)。metforminは試験開始時と同用量を継続投与◆exenatide群で203例,glimeiride群で262例が目標期間内に目標血糖値に到達しなかった。よって治療不成功はexenatide群のほうが有意に少なかった(41% vs 54%:リスク差12.4%[95%信頼区間6.2-18.6];ハザード比0.748[0.623-0.899],P=0.002)。逆にHbA1c<7%達成例(44% vs 31%,P<0.0001),≦6.5%達成例(29% vs 18%,P=0.0001)はexenatide群のほうが多かった。体重はexenatide群で3.32kg減少,glimepiride群で1.15kg増加。症候性低血糖発生率はexenatide群が低く(20% vs 47%;P<0.0001),夜間低血糖,非夜間低血糖も同群で少なかった◆exenatide群174例,glimepiride群128例が試験治療を中止し,その割合はexneatide群で有意に高く,その内訳ではexnatide群における消化管症状が主であった。

metformin単剤でコントロール不十分の2型糖尿病患者では,exenatide 1日2回投与がglimepirideよりも血糖コントロール悪化の抑制効果に優れる。

文献
Gallwitz B, et al. Exenatide twice daily versus glimepiride for prevention of glycemic deterioration in patients with type 2 diabetes with metformin failure (EUREXA): an open-label, randomized controlled trial. Lancet 2012; DOI: 10.1016/S0140-6736(12)60479-6. PubMed
UP
DPPOS
Diabetes Prevention Program Outcomes Study
前糖尿病者の正常血糖達成は前糖尿病状態の持続にくらべて糖尿病発症リスクを低下させるか?
コメント 2型糖尿病発症の予防には生活習慣介入が最強であったことを示したDPPの追跡試験。最も注目すべきは,生活習慣介入をしたのに前糖尿病から正常血糖に戻らなかった群で糖尿病発症リスクが高かったことであろう。糖尿病が生活習慣病である前に遺伝疾患であるということを間接的に示している結果である(コメント 弘世 貴久)
ランダム化比較試験(DPP* )の追跡観察研究,米国◆平均追跡期間5.4年◆1,990例。DPP試験参加者のうち追跡期間中に糖尿病を発症しなかった症例◆正常血糖達成例(894例;追跡中に1度でも正常血糖を達成した症例),前糖尿病例(1,096例;追跡中,前糖尿病状態が持続した症例)◆正常血糖達成例では前糖尿病例にくらべて糖尿病リスクが56%低下(ハザード比0.44:95%信頼区間0.37-0.55,P<0.0001)。DPPで生活習慣介入によっても正常血糖への寛解を認めなかった症例では,プラセボ群で寛解を認めなかった症例にくらべて糖尿病リスクが増大していた(1.31;1.03-1.68,P=0.0304)。糖尿病予防効果が認められた因子は,β細胞機能上昇,インスリン感受性。DPPOSにおける正常血糖達成の予測因子は,DPP試験期間中の正常血糖達成,β細胞機能上昇,インスリン感受性など。

* 糖尿病予防プログラム(DPP)試験では,耐糖能異常,空腹時高血糖を合併した過体重者3,234例を,生活習慣強化介入群,metformin群,プラセボ群にランダム化し,平均2.8年追跡した結果,生活習慣強化介入群で58%,metformin群で31%糖尿病発症が抑制されたと発表した(N Engl J Med. 2002; 346: 393-403.)。 DPPの対象をさらに7年追跡したDPPOSは,試験治療の継続を推奨した結果,ランダム化から10年後も糖尿病予防効果は持続していたと発表した(Lancet. 2009; 374: 1677-86.)。今回の発表は, 正常血糖への寛解が糖尿病発症リスクに及ぼす影響を検討した結果。

たとえ一過性であっても,正常血糖への寛解はその介入方法にかかわらず糖尿病発症リスクを有意に低下。特に生活習慣強化介入を行っても前糖尿病が持続した場合,糖尿病発症リスクが高い。

文献
Perreault L et al for the diabetes prevention program research group: Effect of regression from prediabetes to normal glucose regulation on long-term reduction in diabetes risk: results from the Diabetes Prevention Program Outcomes Study. Lancet. 2012 june 9.doi: 10.1016/S0140-6736(12)60525-X. PubMed
UP
Effectiveness of quality improvement strategies on the management of diabetes: a systematic review and meta-analysis
成人糖尿病外来において,ケアの質改善(quality improvement:QI)戦略*はHbA1c低下,血管リスク管理,細小血管合併症のモニタリング,および禁煙に有効か?

* 医療組織に対するQI(ケースマネジメント,チーム改革,電子患者登録,臨床医への情報伝達の促進,継続的QI),医療従事者に対するQI(監査とフィードバック,臨床医教育,臨床医へのリマインダー,報奨金制度),患者に対するQI(患者教育,患者自己管理の促進,リマインダー)。

メタ解析◆追跡期間中央値は12ヵ月◆48の群ランダム化比較試験(2,358群・84,865例)と94のランダム化比較試験(38,664例),ほぼ半数が北米。成人糖尿病外来患者の管理の改善を目的とした11のQI戦略を評価したランダム化比較試験,英語のみ◆Medline,Cochrane Effective Practice and Organisation of Care(EPOC)を検索(2003年7月-'10年7月)◆QI戦略では標準治療と比較してHbA1cが0.37%,LDL-Cが3.87mg/dL,収縮期血圧が3.13mmHg,拡張期血圧が1.55mmHg低下し,aspirinと降圧薬の使用が増加し,網膜症・腎症・足のスクリーニングが増加した。一方,QIのスタチン使用,降圧コントロール達成,禁煙,低血糖への影響は認められなかった。HbA1c値に対する有効性はベースライン値により異なり,>0.5%の低下を認めたのはベースライン値>8%の患者ではチーム改革,ケースマネジメント,患者教育,患者自己管理の促進,ベースライン値≦8%の患者では情報伝達の促進のみであった。

多くの試験がQIによる糖尿病ケアの改善を示した。糖尿病ケアの改善には,医療組織に対する介入と同時に患者へのQIを行うことが重要である。

文献
Tricco AC et al: Effectiveness of quality improvement strategies on the management of diabetes: a systematic review and meta-analysis. Lancet. 2012 June 9.doi: 10.1016/S0140-6736(12)60480-2. PubMed
UP

June 12
Late Breaking Abstracts

抄録のデータおよび結論はピアレビュージャーナルに文献が掲載されるまでは予備結果 (preliminary)とご理解ください。

UKPDS
UK Prospective Diabetes Study
UKPDSで示されたlegacy effectは,HbA1cと死亡,心筋梗塞(MI)の時間依存的関連で説明できるのか?
背景・目的 UKPDSでは,介入試験終了後の10年間にSU薬/インスリンによる厳格な血糖コントロール群と標準コントロール群とのHbA1cの差が消失したにもかかわらず,厳格コントロール群で糖尿病合併症,死亡,およびMIリスクの抑制効果が持続的に認められた(legacy effect)。本研究では,このlegacy effectが初期のHbA1c低下効果により説明できるかを,死亡とMIのハザード関数を推定することにより検討する。
コメント UKPDS 33,80にて「糖尿病と診断直後よりの厳格な血糖コントロール」が細小血管症だけでなく大血管症や死亡率に影響するということが証明されたが,果たして直後とはいつ?という問いに答える解析結果の発表である。VADT試験のサブ解析などでも示された通り,UKPDSにおいてもより早い介入がリクス逓減率に寄与していることが示されたようである(コメント 弘世 貴久)
3,849例。UKPDS参加者◆2型糖尿病の診断からの死亡およびMIの連続ハザード関数(continuous hazard function)を年齢,性別,HbA1c値,治療群と関連付けて推定◆HbA1cの1%低下による10年後,20年後のMIのハザード比はそれぞれ0.81,0.72,死亡は0.84,0.75。
(fitted model予測)たとえば,50歳で糖尿病と診断された60歳の男性の場合-
60-65歳で死亡する確率は,診断後にHbA1c を8%から7%に下げると17.9%↓
しかし,同じHbA1cの低下でも診断から10年後の60歳になってからの低下では,死亡リスクは3.0%↓
MIリスクの抑制は,それぞれ19.5%,6.9%。
同様に,60-70歳代での死亡確率は,診断後のHbA1c 8%から7%への低下により18.6%↓
しかし,HbA1c値低下が60歳代からとすると6.6%↓
MIの抑制は,それぞれ19.8%,10.5%。
女性の場合も死亡,MIのいずれも男性と同様の結果。

血糖コントロール改善の主要な効果はおよそ5-10年後に現れる。HbA1c値の低下がもたらすlegacy effectの大部分は,UKPDSで認められた長期の死亡率および心筋梗塞発症率の抑制により説明できる。初期の厳格な血糖コントロールがこの効果を最大限に得るために必須である。

Abstract No: 146-LB
Time-dependent Relationship between HbA1c and Subsequent Death or Myocardial Infarction may explain the UKPDS Legacy Effect.
authors: MARCUS LIND, ANDERS ODÉN, RUTH L. COLEMAN, OLLE NERMAN, RURY R. HOLMAN (Gothenburg, Sweden, Chalmers University of Technology, University of G, Sweden, Oxford, United Kingdom)
UP

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