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特別企画 循環器デバイス治療の いま

第2回 デバイスによる心房細動管理

 東京医科大学病院不整脈センター センター長 里見 和浩 先生

1.無症候性心房細動の診断と治療

心房細動(AF)はたとえ無症候であったとしても, 心原性脳塞栓症のリスクとなりうる。むしろ無症候性のほうが, 診断までの時間を要することが多く, 偶発的に診断されるか, 発作性から持続性となって健診などで初めて発見される。初発症状として心原性脳塞栓症を呈することも決してまれではない。

無症候性発作性AFの診断として, 12誘導心電図, ホルターECG, イベントホルターなどが用いられるが, 診断率は決して高くない。一方, ペースメーカ, 植込み型除細動器(ICD), 心臓再同期療法(CRT)などの心臓植込みデバイス(Cardiac Implantable Electronic Devices : CIEDs)において, とくに心房リードが挿入されていれば, AFの診断率は非常に高い。
 CIEDsにより診断された, 比較的頻度の高い発作性AF[AFが記録された(時間の)割合が90%を超えることが1日以上あったケース]を基準とした場合, 24時間のホルターECGの診断率(感受性)は22.6%, 7日間ホルターでは30%だった 1)。ちなみに, 症状のみで診断を行った場合の診断率は52.9%であった。つまり, 典型的な症状があれば, ホルターで記録されなくてもAFである可能性が高いということになる。

近年, 原因不明の脳塞栓症, いわゆるESUS(Embolic Stroke of Undetermined Source)の原因検索目的で植込み型ループレコーダー(ILR)が保険適応となった。これは, 胸部に挿入されたデバイスにより体表面心電図のR波を感知して記録するものであるが, 特殊なアルゴリズムにより, AFの診断も十分可能である。ESUSは, 発症時に明らかな動脈硬化やAFがなく, 塞栓源不明の塞栓症である。ILRによりESUSと診断されたうち,3年間のモニタリングで30%においてAFが診断されている 2)
 また, Apple社のApple Watchのようなウェアラブル端末により, 心電図が記録可能で, 不整脈を検出する機能を活用して心房細動と診断されることも可能となった 3)(この機能は2020年6月現在, 日本では未承認)。

AFのスクリーニングについてはさまざまな進歩があり, 診断能も向上してきた。しかし, 偶発的に診断された心房性頻拍イベント(Atrial High Rate Episodes : AHRE)が臨床的に心房細動になっていくのか, またそうだとすれば, どの時点で介入を開始するのかが問題となってくる。いくつかの報告で, 1日のAFの累積持続時間(AFバーデン)によるリスク評価が行われている。
ASSERT試験では, 心房細動の既往がないCIEDs(ペースメーカもしくはICD)挿入例において, デバイスで診断されたAHRE(6分以上持続する心房性頻拍と定義されている)が3カ月間に10%認められた。AHREが認められた例では, その後の臨床的AFの発症リスクは5.56倍であった。また, 2.8年の経過観察により, 非AF群とくらべて脳梗塞のリスクが2.5倍高かったことが示された 4)
 SOS AF試験では, 抗凝固療法を行っていない患者において, 血栓塞栓症の発症をエンドポイントとした場合, CHADS2スコアで補正しても, AFバーデンが1時間以上確認された例で, ハザード比が2.11となると報告された 5)

少なくとも数時間持続するAFは, 血栓塞栓症のリスクを有すると考えられる。しかし現時点では, デバイスで診断されたAFに対する介入試験は行われておらず, どのような患者において抗凝固療法を開始するかは明らかになっていない。
 ペースメーカの記録を用いたBottoらの研究では, AFの持続時間が長く, CHADS2スコアが高いほど, 血栓塞栓症の発症リスクが高いことが示されている。CHADS2スコア1点ではAFが24時間以上持続した場合, CHADS2スコア2点以上ではAF持続時間5分以上で, 血栓塞栓症の年間発症率が5%を超える。このような例では, 抗凝固療法の開始を検討すべきと考える 6)

2.デバイスによる心房細動治療──抗頻拍ペーシング

CIEDsによるAF治療は, 2000年代前半から行われている。洞不全症候群(SSS)では, 心房ペーシングを積極的に行ったほうがAFを抑制できると報告されてきた。これは心房ペーシングによる, 期外収縮の減少, 心房リモデリングの改善などがその背景にあると考えられている。より積極的なAF抑制方法として, 高頻度心房ペーシングによるAFの抑制が検討された。SJM(St. Jude Medical)社のAF Suppression™ algorithmによる効果が2003年に報告されている 7)
 この試験は, AFを合併するSSS患者を対象に, AF Suppression™ algorithmのオンとオフで, 6カ月間のAFバーデンと治療されたAFエピソード数を比較したものであった。AF Suppression™ algorithmは, 自己心拍数よりも少し早いペーシングをつねに維持するものである。このペーシングにより, AFバーデンは25%抑制された。しかし, その後の報告では必ずしも有効性を示せておらず, またつねに速いレートでペーシングすることで, 動悸症状がむしろ増悪することが問題点であった。

メドトロニック社製ペースメーカは, AFに対する抗頻拍ペーシング機能(ATP)を有する。このReactive ATP™と言われる機能は, AFが発生すると, 頻拍周期の規則性が変化するたびに, ATPを繰り返すものである。MINERVA試験では, この機能で有意に慢性AFへの進行を抑制することが示された 8)
 AFは通常, 心房興奮の周期長が短く, 不規則であるため, ペーシングで捕捉するのはむずかしい。近年のAFのアブレーションによる知見からは, 左房が主なAF発生の主座であり, 右房の自由壁へのペーシング効果がなぜAF停止に有効なのかという機序はまだ不明である。
 実際, Reactive ATP™によるAF停止率にはまだまだ改善の余地があるが, 薬物治療, アブレーションに加えた3番目のAF治療として注目されている。

無症候性AFを早期に診断することで, 心原性脳塞栓症を減少できれば, 社会的なインパクトも大きい。積極的なAFスクリーニングと, それに対する介入の有効性の検討が求められている。

参考文献
  • Ziegler PD, et al. Comparison of Continuous Versus Intermittent Monitoring of Atrial Arrhythmias. Heart Rhythm. 2006; 3: 1445-1452. PubMed
  • Sanna T, et al for the CRYSTAL AF Investigators. Cryptogenic Stroke and Underlying Atrial Fibrillation. N Engl J Med. 2014; 370: 2478-2486 PubMed
  • Perez MV, et al. Large-Scale Assessment of a Smartwatch to Identify Atrial Fibrillation. N Engl J Med. 2019; 381: 1909-1917. PubMed
  • Brambatti M, et al; ASSERT Investigators. Temporal Relationship Between Subclinical Atrial Fibrillation and Embolic Events. Circulation. 2014; 129: 2094-2099. PubMed
  • Boriani G, et al. Device-detected Atrial Fibrillation and Risk for Stroke: An Analysis of >10,000 Patients From the SOS AF Project (Stroke preventiOn Strategies Based on Atrial Fibrillation Information From Implanted Devices). Eur Heart J. 2014; 35: 508-516. PubMed
  • Botto GL, et al. Presence and Duration of Arial Fibrillation Detected by Continuous Monitoring: Crucial Implications for the Risk of Thromboembolic Events. J Cardiovasc Electrophysiol. 2009; 20 : 241-248. PubMed
  • Carlson MD, et al; Atrial Dynamic Overdrive Pacing Trial (ADOPT) Investigators. A New Pacemaker Algorithm for the Treatment of Atrial Fibrillation: Results of the Atrial Dynamic Overdrive Pacing Trial (ADOPT). J Am Coll Cardiol. 2003; 42 : 627-633. PubMed
  • Boriani G, et al; MINERVA Investigators. Atrial Antitachycardia Pacing and Managed Ventricular Pacing in Bradycardia Patients With Paroxysmal or Persistent Atrial Tachyarrhythmias: The MINERVA Randomized Multicenter International Trial. Eur Heart J. 2014; 35: 2352-2362. PubMed
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