循環器トライアルデータベース

ASSERT
Asymptomatic Atrial Fibrillation and Stroke Evaluation in Pacemaker Patients and the Atrial Fibrillation Reduction Atrial Pacing Trial

目的 脳卒中の1/4は原因不明であり,無症候性心房細動が原因の一つである可能性がある。ペースメーカーは,無症候性の高頻度心房興奮(心房性頻脈)を検出することができる。
ほかに心房細動の所見のない患者において,植込みデバイスにより検出された無症候性心房性頻脈が脳梗塞のリスクに関連するか(観察研究),またペースメーカーの継続的心房オーバードライブペーシングは症候性/無症候性心房性頻脈を予防するか(ランダム化比較試験)を検討する。

観察研究の一次エンドポイントは,脳梗塞+全身性塞栓症。
ランダム化比較試験の一次エンドポイントは,体表面ECGにより検出された6分以上持続する心房性頻脈(自覚症状の有無は不問)。
本報はおもに観察研究の結果。
コメント 他に心房細動の証拠がなく,植込みディバイスで記録される無症候性の心房性頻脈の意義については十分には明らかにされてこなかったが,本研究ではこのような無症候性心房性頻脈がその後の血栓塞栓症の危険因子となることが示された。しかし,この無症候性頻脈が単に血栓塞栓症リスクの指標にすぎないのか否かは明らかではない。またこのような例に対して予防的な抗凝固薬を投与すべきか否かについて,今後明らかにされるべきである。(井上
デザイン 観察研究+無作為割付け,多施設(23か国),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は2.5年。
登録期間は2004年12月~’09年9月。
対象患者 2,580例(ペースメーカー植込み例2,451例,ICD植込み例129例)。65歳以上,治療を要する高血圧の既往があり,過去8週間以内に洞結節あるいは房室結節の障害のため2腔ペースメーカー,もしくは適応を問わずICDを植え込んだ患者。
除外基準: 5分以上持続する心房細動/粗動の既往,ビタミンK拮抗薬による治療を要する患者。
■患者背景:平均年齢(無症候性心房性頻脈検出例77歳,非検出例76歳),男性(56.3%, 58.6%),収縮期血圧(137mmHg, 138mmHg),心拍数(68bpm, 70bpm;p=0.001),BMI(28kg/m², 27kg/m²),心不全既往(14.9%, 14.4%),糖尿病(22.6%, 29.1%;p=0.03),心筋梗塞(MI)既往(12.3%, 18.4%;p=0.01),CHADS2スコア(2.2, 2.3),洞結節障害(49.8%, 41.6%;p=0.01),房室結節障害(50.6%, 55.2%),中隔への心房リードの留置(38.7%, 41.9%),高血圧罹病期間>10年(44.1%, 41.6%),デバイス植込み~登録までの平均日数(25日,29日;p=0.04),服薬状況(aspirin:61.3%, 61.7%;β遮断薬:36.0%, 36.6%;スタチン:43.3%, 48.0%)。
治療法 【観察研究】登録後,心房性頻脈(心拍数>190bpm)を検出できるよう設定し,ECG記録装置をオン,心房細動抑制アルゴリズムをオフにした。3か月後の受診時に,無症候性心房性頻脈(心房レート>190bpmが6分以上持続)の有無を確認し,その後平均2.5年間患者を追跡。
【ランダム化比較試験】3か月後の受診時に,ペースメーカー植込み例を継続的心房オーバードライブペーシングをオンにする群(1,164例)とオフにする群(1,179例)にランダム化した。
結果 ◆【観察研究】の結果
[無症候性心房性頻脈の検出]
最初の3か月間に植込みデバイスにより検出された無症候性心房性頻脈は261例(10.1%),同期間に症候性心房性頻脈を認めたのは7例であった。無症候性心房性頻脈例の心房性不整脈のエピソードは2回,心房レートは480bpm,最初のエピソード検出は35日後であった(数値はすべて中央値)。
[一次エンドポイント]
追跡不能例は14例(0.5%)。
追跡期間中の脳梗塞+全身性塞栓症の発症率は,最初の3か月間に無症候性心房性頻脈を検出した例で非検出例よりも高く(11/261例[4.2%;1.69%/年]vs 40/2,319例[1.7%;0.69%/年]),検出例はリスクが有意に高かった(ハザード比2.49;95%信頼区1.28~4.85, p=0.007)。この結果は脳卒中リスク因子で調整後も変わらなかった(2.50;1.28~4.89, p=0.008)。
[二次エンドポイント:血管死,MI,脳卒中,体表面ECG上の心房性頻脈]
追跡期間中に認められた体表面ECG上の症候性心房性頻脈は,無症候性心房性頻脈検出例41/261例(15.7%),非検出例71/2,319例(3.1%)で,検出例は症候性心房細動/粗動リスクが有意に高かった(5.56;3.78~8.17, p<0.001)。その他の臨床転帰については,無症候性心房性頻脈との関連性は示されなかった。
無症候性心房性頻脈は脳卒中または全身性塞栓症の人口寄与危険度が13%であった。
[CHADS2スコアとの関連]
3か月間の無症候性心房性頻脈検出例における一次エンドポイント発症率は,ベースライン時のCHADS2スコアの増加に伴い上昇し,1点が0.56%/年,2点が1.29%/年,3点以上が3.78%/年であった(傾向のp=0.35)。
◆【ランダム化比較試験】の結果
心房性頻脈の発生率は継続的心房オーバードライブペーシング・オン群が60/1,164例(1.96/100人・年),オフ群が45/1,179例(1.44/100人・年)で,継続的心房オーバードライブペーシングの心房性頻脈予防効果は認められなかった(1.38;0.94~2.03, p=0.10)。
★考察★高血圧の既往のあるペースメーカー植込み例において,無症候性心房性頻脈は高頻度に発生し,脳梗塞または全身性塞栓症のリスクであった。
ClinicalTrials gov. No: NCT00256152
文献
  • [main]
  • Healey JS et al for the ASSERT investigators: Subclinical atrial fibrillation and the risk of stroke. N Engl J Med. 2012; 366: 120-9. PubMed
    Lamas G: How much atrial fibrillation is too much atrial fibrillation? N Engl J Med. 2012; 366: 178-80. PubMed

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収載年月2012.05