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AHA2012/ISH2012特別企画] 糖尿病患者の降圧目標高齢者の治療至適血圧

Oct.4 2012

Scientific Session 28. Optimal BP
至適血圧

ガイドラインでは高血圧を管理するために<140/90mmHg,糖尿病合併症例などの高リスク患者では<130/80mmHgの降圧を推奨し,至適血圧は<120/80mmHgとしているが,さらなる心血管疾患(CV)抑制のための至適な血圧コントロールを実現するためには,血圧値のみを注意すればよいのか,管理すべきはどの血圧なのか,最適な投薬のタイミングはいつかなど検討すべき課題が少なくない。
ISH 2012の最終日(10月4日),至適血圧を巡るセッションが行われ(Scientific Session 28 Optimal BP:座長;オーストラリア・Geoffrey Head氏,日本・家森幸男氏),3本のキーノートレクチャーの他,ARB投与のタイミング,CKDでの24時間血圧コントロール,本態性高血圧でのspironolactoneの上乗せ効果が発表された。

医師は血圧測定法,患者のリスク評価の見直しを


Robert H Fagard氏

「降圧治療の目標と落とし穴」と題したキーノートレクチャーで,ベルギー・ルーバン大学のRobert H Fagard氏は,エビデンスに基づく妥当な降圧目標を高齢者,高リスク症例別に示し,血圧管理は医師側が努力すべきが多いが,降圧の難しさ,患者のアドヒアランスの低さに屈服してはならないと述べた。Zanchettiらのメタ解析,JATOS,HYVETなどの結果から健康な65歳以上では収縮期血圧<140mmHg,さらに高齢の健康な人では<150mmHgを目指すが,脆弱な高齢者は個人の状態に合わせた治療をすべきとし,ACCORD,HOTなどから糖尿病合併症例では<140/85mmHgを至適血圧としたFerraniniらに同意,高リスク症例では<130/80mmHgは正当だがエビデンスが必要だと述べた。また,適切なカフを使用し数回の測定値を平均して血圧値とする,血圧値のみをみるのではなく患者のリスクを考慮した治療をし,白衣高血圧は治療するべきではないが注意深く見守る必要があるなどの血圧管理における見落としがちな点を落とし穴と指摘し,医師がいま一度見直すべき点が少なくないことを指摘した。

3要素のコントロールによる24時間パーフェクトな血圧管理でさらなる心・腎血管保護を


苅尾七臣氏

高齢高血圧患者では,夜間血圧が低下しないnon-dipperと上昇するriserで心筋重量などの左室リモデリング指標が有意に増加し,モーニングサージ(MS)があると脳卒中,全死亡,心血管イベントが有意に増加する。続くキーノートレクチャーで,日本・自治医科大学の苅尾七臣氏は,概日リズム(夜間血圧10-20%低下),血圧変動性(MS<上位10パーセンタイル),24時間血圧(<130/80mmHg)の3要素のコントロールにより,24時間のパーフェクトな血圧管理が実現すれば心血管疾患をさらに予防できると述べた。なかでも24時間血圧の低下がもっとも重要だが,MSリスク低下のためにもパーフェクトな血圧管理の第一歩は,朝の収縮期血圧(SBP)<135mmHgを達成することとした。治療では降圧薬の夜の投与が有効な可能性を指摘し,その理由として家庭血圧に基づき降圧薬の投与時間の影響を検討したJ-TOP試験で尿中アルブミン/クレアチニン比が朝の投与にくらべ低下したこと,レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系活性が夜間に亢進することなどを挙げた。さらに診察室ではSBP 132-140mmHg例でよくみられる仮面高血圧を,24時間血圧では特に高リスク例でのストレス下高血圧,夜間高血圧を見逃さないことが重要とした。

診察室血圧よりも家庭血圧,24時間血圧に基づく降圧治療を


Gainfranco Parati氏

CVリスク抑制のためには,診察室血圧(OBP),診察室外血圧いずれの血圧に基づいた降圧治療をするべきなのか。最後のキーノートレクチャーでイタリア・ミラノ-ビコッカ大学のGainfranco Parati氏が検証結果を発表した。まず,OBPは患者のおもな血圧パターンではなく,CVリスクを正確に予測できないので,OBPのみに基づいて高血圧診断をすべきではないとした。これに対し,診察室外血圧である家庭血圧(HBP)に基づく降圧治療のコンプライアンスは良好で血圧正常化率が高かったことをTeleBPCareから,Syst-Eur,PAMELAから自由行動下血圧(ABP)はCVリスクの予測に優れることを示した。ABPの利点として24時間の平均血圧値,血圧プロファイル,変動性,夜間血圧を把握できることや,治療による24時間の降圧パターンを評価できる点をあげた。ABPに基づく降圧治療によってCV保護効果が改善するかに関する長期のエビデンスはないが,SAMPLE試験からABPに基づいた降圧治療により左室肥大が退縮し,退縮と最も関連したのがABP,次いでHBP,OBPであったことを示した。ABPがイベントの最良予測因子であるとし,ABPに基づく治療が転帰を改善するかは長期介入試験が必要と結んだ。

ARBの夜投与は朝の投与よりも降圧効果に優れる


Zainuddin Khan氏

降圧治療患者の89%はすべての降圧薬を1日1回朝に服用しているとの報告がある。しかし,血圧は概日リズムに従って夜間に低下し,日中に上昇し,レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の影響を受ける。より良好な血圧コントロールのためには,いつARBを投与すればよいのか。インドネシア大学のZainuddin Khan氏は,高血圧患者を対象にARBの夜投与と朝投与を比較したクロスオーバー試験の結果を発表した。夜の投与は朝の投与にくらべて24時間,夜間,日中の血圧,モーニングサージのすべてにおいて優れた降圧効果を示した。氏は,夜の投与ではARB濃度が至適治療域に到達し,夜間のRAASおよび交感神経の活性化が抑制されたために良好な降圧効果が得られたとし,投与時間の調整が目標血圧の達成に有用である可能性を指摘した。

CKD患者における24時間血圧コントロールの特徴が明らかに


Sharon L H Ong氏

慢性腎臓病(CKD)患者の降圧目標は診察室血圧≦130mmHgであるが,心血管合併症や腎疾患進展の予防の観点から正確な血圧測定が重要である。オーストラリア・St. George HospitalのSharon L H Ong氏は,透析例を除くCKD患者と本態性高血圧患者において24時間自由行動下血圧(ABPM)と中心血圧を測定し,CKD患者の血圧コントロールを詳細に調査した。その結果,軽症CKDでは高血圧患者とのABPMの差は認められなかったが,重症CKD患者は夜間の収縮期血圧のコントロールが不良で,脈圧が増大しており,non-dipperが多く,降圧目標を達成するためにより多くの薬剤を要することなどがわかった。これらの結果から,氏はCKD患者の血圧コントロールの予測に中心血圧が重要な役割を果たす可能性を示唆した。

スピロノラクトンの血小板活性化の抑制を介した大動脈スティフネス改善の可能性


小池 勤氏

本態性高血圧では血小板が過剰に活性化され,血栓形成,血管構造の変化,アテローム性動脈硬化が促進される。アルドステロン受容体拮抗薬スピロノラクトンは,一部線溶系の改善を介して抗アテローム効果をもたらす。しかし,スピロノラクトンが本態性高血圧患者の血小板機能にどのような影響を及ぼすかはわかっておらず,その抗アテローム効果を抗血小板活性化の観点からみた研究もない。日本・富山大学の小池 勤氏は,コントロール不良の本態性高血圧患者にスピロノラクトンを1年間追加投与し,投与前後の血小板機能を比較した。その結果,投与後の収縮期/拡張期血圧と血小板活性化は有意に低下し,動脈スティフネスの指標であるβも有意に改善した。また,βの変化量と血小板フィブリノゲン結合比の変化量は有意に正相関した。これらの結果から小池氏は,本態性高血圧では,スピロノラクトンが血小板活性化を抑制することにより大動脈スティフネスを低下させる可能性があるとまとめた。

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