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一過性脳虚血発作,虚血性脳卒中後の早期再発リスクおよび重症度に対するaspirinの有効性
pooled analysis

一過性脳虚血発作,虚血性脳卒中患者における薬物治療の早期再発予防効果が示され,aspirinの早期の有効性は大きかった。
Rothwell PM, et al: Effects of aspirin on risk and severity of early recurrent stroke after transient ischaemic attack and ischaemic stroke: time-course analysis of randomised trials. Lancet. 2016; 388: 365-75. PubMed

コメント

オックスフォード大学は世界にて施行されたランダム化比較試験の結果を集積したメタ解析が得意である。本研究では,TIA,虚血性脳卒中の症例を対象に,アスピリンによる服薬早期のイベント抑制効果を検証した。ランダム化後6週間以内の脳卒中再発リスクはアスピリンの服用により60%低下した。各種抗血小板薬が臨床開発されているが,安価なアスピリンの効果は無視できない。ランダム化早期はイベント発症率が高い。その時期にはアスピリンの効果が強いとの事実を本メタ解析が示しているのであれば,急性冠症候群同様,急性虚血性脳卒中の症例は可及的速やかにアスピリンを服用すべきであろう。(後藤

目的 一過性脳虚血発作(TIA),軽度脳卒中発症後1週間の再発リスクは10%で,緊急の内科的治療でリスクが80%低下するとの発表がある。しかし,医療機関の受診は遅れることが多い。aspirinは長期再発リスクを13%低下した試験結果に基づき,TIA,虚血性脳卒中の二次予防に推奨されているが,重大な脳卒中再発リスクが非常に高いのは急性期のみで,観察研究からは早期治療の有効性は長期より急性期リスクに対するほうが大きいことが示唆されている。
aspirinの脳卒中再発リスクおよび重症度に対する有効性を発症から経時的に検証するために,TIA,虚血性脳卒中患者においてaspirinの二次予防効果を検討したランダム化比較試験(RCT)の患者データを用いて統合解析を実施した。さらに作用機序を検討するために,二次予防におけるaspirinとdipyridamoleの経時的な交互作用も評価した。
評価項目は,虚血性脳卒中再発,障害を伴う・致死的虚血性脳卒中再発,全脳卒中再発,全致死的脳卒中,脳内出血,急性心筋梗塞(AMI)。
対象 12試験・15,778例。TIA・虚血性脳卒中患者において,aspirin定期投与群(用量,その他の抗血小板薬との併用の有無は問わない)の脳卒中・その他の血管イベント二次予防効果を抗血小板薬・抗凝固薬非投与群と比較したRCT; 急性虚血性脳卒中患者において,aspirin(全用量)群の急性期治療および早期再発予防効果をaspirin非投与群(他の抗血栓薬の併用の有無を問わない)と比較したRCT; TIA・虚血性脳卒中患者において,dipyridamole定期投与(全用量)群の脳卒中・その他の血管イベント二次予防効果をdipyridamole非投与群(その他の抗血小板薬併用投与は問わない)と比較したRCT。
方法 2002年,’09年に発表されたAntithrombotic Trialists’(ATT)Collaboration,その後のシステマティックレビュー,Cochrane Collaborationを2016年1月31日まで検索。
患者の個人データが入手できない場合は,文献発表された血管イベントデータを抽出した。
ランダム化からの時間を3つに層別して(0~6週間,6~12週間,>12週間),aspirinの脳卒中再発,重症度への影響を経時的に検討した。
早期再発脳卒中の重症度の群間比較には,modified Rankin Scale (mRS)スコアのシフト解析を用いた。
結果 [虚血性脳卒中再発,重症度に対するaspirinの有効性]
aspirin単独群 vs 対照群(11試験・9,635例)
6週間の虚血性脳卒中再発リスクはaspirin群で60%低下し,12週後も同様の結果であった。なお12週後以降はaspirin群の有効性はみられなかった。
・0-6週間: 57/5,213例 vs 118/4,422例: ハザード比(HR)0.41; 95%信頼区間0.30-0.56(P<0.0001)。
・6-12週間: 29/5,133例 vs 42/4,272例: 0.60; 0.37-0.96(P=0.034)。
・0-12週間: 86/5,213例 vs 160/4,422例: 0.46; 0.35-0.60(P<0.0001)。
全aspirin群 vs 対照群(dipyridamole併用群 vs 対照群も含む)(12試験・15,778例)
aspirin群の有効性が最大だったのは0-2週間,TIA,障害を伴わない軽度脳卒中患者であったが,12週間後の有効性も示された。
・0-6週間: 84/8,452例 vs 175/7,326例: 0.42; 0.32-0.55(P<0.0001)。
・6-12週間: 48/8,334例 vs 72/7,105例: 0.60; 0.41-0.86(P=0.0060)。
・0-12週間: 132/8,452例 vs 247/7,326例: 0.47; 0.38-0.58(P<0.0001)。

aspirin単独群での6週間の障害を伴う・致死的虚血性脳卒中再発リスクは約70%低下(0.29; 0.19-0.46)し,有効性は12週後までみられたが,もっとも有効性が大きかったのは2週間以内であった。mRS 4-6の重度障害を伴う再発リスクは約75%低下したが,mRS≦2に対する有効性は小さかった。
また同群での早期の有効性には,6週間の再発脳卒中の重症度が同群で低かったこと(mRSシフト解析のオッズ比[OR]0.45; 95%信頼区間0.25-0.79,P=0.0057)が関係していた。mRS >2は12週後も同様の有効性(0.50; 0.30-0.86,P=0.0118)がみられた。

[dipyridamoleとの交互作用]
aspirin+dipyridamole群 vs 対照群の3試験を加えても結果に違いはなかった。
12週間以内の併用群のaspirin単独群とくらべた虚血性脳卒中再発(OR 0.90; 0.65-1.25),重症度(mRSシフトOR 0.90; 0.37-1.72)への効果もみられなかった。ただし,12週後以降は併用群で特に障害を伴う・致死的虚血性脳卒中(OR 0.64; 0.49-0.84),障害を伴う・致死的脳卒中(0.65; 0.51-0.84)リスクが有意に低かった。

[その他]
発症から48時間以内にランダム化された急性脳卒中患者のうち,神経学的欠損が軽度だった例で14日後の再発低下が最も顕著で,実質の低下は治療開始2日目からみられた。一方で,重度欠損例では低下はみられなかった。
その他のイベントの経時的HRは,全脳卒中(0-6週間: aspirin単独群 vs 対照群0.43; 0.32-0.59[全aspirin群 vs 対照群0.45; 0.35-0.58],6-12週間: 0.59; 0.37-0.94[0.58; 0.41-0.84],0-12週間: 0.47; 0.37-0.61[0.49; 0.40-0.60]),致死的脳卒中(0.46; 0.22-0.95[0.36; 0.20-0.63],0.53; 0.17-1.69[0.71; 0.30-1.65],0.48; 0.26-0.88[0.44; 0.27-0.70]),AMI(0.23; 0.09-0.63[0.21; 0.09-0.5],0.35; 0.15-0.85[0.39; 0.19-0.81],0.29; 0.15-0.56[0.30; 0.17-0.52])の早期リスクも,aspirin投与により低下した。

(収載年月2016.10)
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