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肺塞栓症患者における血栓溶解療法と全死亡,大出血,頭蓋内出血リスク
meta-analysis

肺塞栓症患者,特に血行動態は安定しているが右室機能障害を有する中等度リスク患者において,血栓溶解療法群は抗凝固療法群よりも死亡率が低く,大出血,頭蓋内出血のリスクが高かった
Chatterjee S, et al: Thrombolysis for pulmonary embolism and risk of all-cause mortality, major bleeding, and intracranial hemorrhage: a meta-analysis. JAMA. 2014; 311: 2414-21. PubMed

コメント

心エコー図検査にて心室中隔の軽度の圧排を認めるが,血行動態,自覚症状に大きな問題のない肺血栓塞栓症に対して,まず抗凝固療法による再発予防を行うことには異論が少ない。加えて血栓溶解療法を施行するか?,下大静脈フィルターを入れるか?などの判断は施設により,医師によりばらつきがある。本研究は過去のランダム化比較試験をメタ解析して,血栓溶解療法施行群と非施行群の比較を行った。血栓溶解療法施行群では重篤な出血合併症リスクが高い。出血イベントを起こす症例の死亡率が高いことが多いが,本研究では同群にて死亡率が低いことが興味深い。一般に,血栓溶解療法施行後にはトロンビンが活性化して血栓性が亢進する。その予測を反映して,「静脈血栓塞栓症」をエンドポイントにした試験では,血栓溶解療法後に再発が多いことを示唆した試験が多い。本研究では血栓溶解療法施行群において肺血栓塞栓症の再発率も低かった。全身性にトロンビンが産出されても大きな血栓ができ難いのかもしれない。臨床医の実感として,血栓溶解療法施行後には頭蓋内出血リスクが高い。本研究も臨床医の実感を支持した。中等症程度の肺血栓塞栓症に対する血栓溶解療法の適応は,臨床的条件に応じて個別に判断する必要がある。(後藤


目的 肺塞栓症(PE)患者に対する血栓溶解療法は入院中の死亡と血行動態を改善することが示されているが,死亡を検討した十分な検出力を備えた研究はこれまでなかった。とくに右室機能障害を認めるが血行動態は安定した中等度リスクの患者に対する血栓溶解療法については,死亡をエンドポイントとした複数の研究が実施されたものの,明確なエビデンスは得られていない。
急性PE患者,特に中等度リスクの患者において,血栓溶解療法による死亡の抑制と出血リスクを抗凝固療法と比較したランダム化比較試験(RCT)を用いて,メタ解析を実施した。
有効性の一次エンドポイントは全死亡。
安全性の一次エンドポイントは大出血。
対象 16試験*・2,115例。PE患者において血栓溶解療法と抗凝固療法(低分子量heparin,ビタミンK拮抗薬,fondaparinux,未分画heparin)を比較したRCTで,死亡の転帰が報告されたもの。
* PEITHO(1,005例),MOPETT(121例),TOPCOAT(83例),ULTIMA(59例)など。
■患者背景:血行動態安定・右室機能障害がない低リスク210例(9.93%),血行動態安定・右室機能障害がある中等度リスク1,499例(70.87%),血行動態不安定・収縮期血圧<90mmHgの高リスク31例(1.47%),リスク分類不能385例(18.20%)。
方法 PubMed,Cochrane Library,EMBASE,EBSCO,Web of Science,CINAHLを検索(2014年4月10日まで)。
固定効果モデルを用いて,Petoオッズ比(OR)を推定。number needed to treat(NNT)とnumber needed to harm(NNH)も算出。
結果 [一次エンドポイント]
平均追跡期間は81.7日。
血栓溶解療法群は全死亡リスクが低く(オッズ比0.53;95%信頼区間0.32-0.88,2.17%[23/1,061例] vs 抗凝固療法群3.89%[41/1,054例]:NNT=59,P=0.01),大出血リスクが高かった(2.73;1.91-3.91;9.24%[98/1,061例] vs 3.42%[36/1,054例]:NNH=18,P<0.001)。

[二次エンドポイント:PE再発,頭蓋内出血(ICH)]
血栓溶解療法群はICHのリスクが高く(4.63;1.78~12.04,1.46%[15/1,024例] vs 0.19%[2/1,019例]:NNH=78,P=0.002),PE再発リスクが低かった(0.40;0.22-0.74,1.17%[12/1,024例] vs 3.04%[31/1,019例]:NNT=54,P=0.003)。

[サブグループ]
>65歳では,全死亡に有意差を認めず(0.55;0.29-1.05),大出血リスクは血栓溶解療法群が有意に高かったが(3.10;2.10-4.56),≦65歳では全死亡,大出血(1.25;0.50-3.14)ともに有意差を認めなかった。
中等度リスクPE患者を対象に含めた8試験では,血栓溶解療法群は抗凝固療法群にくらべ死亡率が低く(0.48;0.25-0.92,1.39%[12/866例] vs 2.92%[26/889例]),大出血イベントが多かった(3.19;2.07-4.92,7.74%[67/866例] vs 2.25%[20/889例])。

[その他]
試験間の異質性は低く(I ²<25%),出版バイアスは認められなかった。

(収載年月2014.08)
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