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PCI周術期のアウトカムに対するcangrelorの効果
meta-analysis

非チエノピリジン系の静注型P2Y12阻害薬cangrelorは,clopidogrel,プラセボにくらべPCI周術期の血栓性合併症を抑制するが,軽度の出血は増加する。
Steg PG, et al.; for the CHAMPION investigators. Effect of cangrelor on periprocedural outcomes in percutaneous coronary interventions: a pooled analysis of patient-level data. Lancet. 2013; PubMed

コメント

PCIを施行すると冠動脈の内膜が損傷され血小板の接着は不可避的に起こる。抗血小板薬は有効性と安全性が裏腹な薬剤であるため,本当に必要な時期にのみ使用されることが好ましい。もっとも必要な時期は冠動脈内膜の損傷されたPCI直後なので,直後には経静脈的に抗血小板薬を大量投与することは理にかなっている。経静脈的な抗血小板薬として以前から使用されていたGP IIb/IIIa受容体阻害薬は,先天的GP IIb/IIIa欠損症が重症の出血性疾患であることからも明らかなように,短時間であっても高度のGP IIb/IIIaの機能阻害は肺胞出血など非可逆的重篤出血のリスクに直結する。P2Y12 ADP受容体の場合には,先天的P2Y12欠損症は出血性疾患ではあるが,出血の重篤度は低い。PCI直後の血栓イベントリスクの高い1-2日にP2Y12を完全阻害したとしても,抗血栓効果の有用性は出血イベントリスクを上回ることは直感的に理解できる。日本にはGP IIb/IIIa受容体阻害薬がない。PCI施行中から血栓合併症に気付いた場合でも経静脈的に速やかに投与できる薬剤がない。cangrelorのような薬剤は実臨床にて「本当に困った症例」に役立つ可能性がある。(後藤


目的 PCI施行例における直接作用型P2Y12拮抗薬cangrelorの有効性は,これまでCHAMPIONプログラムの3つのランダム化比較試験(RCT)で検討されており,PCI施行時のcangrelor静注投与はプラセボまたはclopidogrelの経口投与にくらべ周術期の血栓イベントを抑制することが示されている。先に実施された2試験(CHAMPION-PCI,CHAMPION-PLATFORM)のpooled解析結果(Am Heart J. 2012; 163: 182-90. PubMed)はすでに報告されたが,今回さらにCHAMPION-PHOENIXを加えた3試験のデータを用いて,cangrelorによるPCI周術期の血栓イベント抑制効果をclopidogrelまたはプラセボと比較するpooled解析を行った。
有効性の一次エンドポイントは,48時間後の全死亡+心筋梗塞(MI)+虚血による再血行再建術+ステント血栓症(ST)の複合エンドポイント。
安全性の一次エンドポイントは,48時間後のCABG非関連のGUSTO基準による重度の出血。
対象 3試験*・24,910例(有効性のmodified intention-to-treat解析対象:cangrelor群12,475例,対照群12,435例)。PCI施行例においてcangrelorとclopidogrelまたはプラセボを比較したCHAMPIONプログラムの第3相RCT。
* CHAMPION-PCI(8,667例;安定狭心症,非ST上昇型急性冠症候群[NSTE-ACS],ST上昇型心筋梗塞[STEMI]),CHAMPION-PLATFORM(5,301例;安定狭心症,NSTE-ACS),CHAMPION-PHOENIX(10,942例;安定狭心症,NSTE-ACS,STEMI)。
■患者背景:年齢中央値63.0歳,男性72.3%,白人85.8%,STEMI 11.6%,NSTE-ACS 57.4%,安定狭心症31.0%。
方法 3試験の個別患者データを統合して解析。
結果 [有効性の一次エンドポイント]
48時間後の全死亡+MI+虚血による再血行再建術+STは,cangrelor群で有意に低下した(473例[3.8%] vs 579例[4.7%]:オッズ比0.81;95%信頼区間0.71-0.91,P=0.0007)。
30日後の結果も同様であった(5.3% vs 6.1%:0.87;0.78-0.97,P=0.0099)。

[安全性の一次エンドポイント]
解析対象は25,107例。
48時間後のCABGに関連しないGUSTO基準による重度の出血には,有意な群間差は認められなかった(0.2% vs 0.2%)。
GUSTO基準による中等度出血(0.6% vs 0.4%),輸血(0.7% vs 0.6%)についても結果は同様であった。ただし,GUSTO基準による軽度の出血はcangrelor群で有意に増加した(16.8% vs 13.0%:1.35;1.26-1.45,P<0.0001)。
ACUITY基準による重大な出血も同群で有意に増加(4.2% vs 2.8%:1.53;1.34-1.76,P<0.0001)し,5cm以上の血腫を除外しても有意であった(1.3% vs 1.0%:1.38;1.09-1.74,P=0.0071)

[二次エンドポイント]
48時間後のST(0.5% vs 0.8%:0.59;0.43-0.80,P=0.0008),48時間後の死亡+MI+虚血による再血行再建術(3.6% vs 4.4%:0.81;0.71-0.92,P=0.0014)のリスクは,cangrelor群が有意に低かった。
30日後のSTも同様の結果であった(0.9% vs 1.3%:0.69;0.54-0.88;P=0.0027)。

[その他]
全死亡は48時間後(0.3% vs 0.4%),30日後(1.1% vs 1.1%)ともに有意差を認めなかった。
一次エンドポイントにおけるサブグループ解析(ベースライン時のバイオマーカー高値例,糖尿病,75歳以上など)の結果も変わらず,PCI適応疾患(STEMI,NSTE-ACS,安定狭心症)とcangrelorの治療効果との交互作用は認められなかった(P=0.8663)。
治療による重篤な有害事象は両群で同等であったが(ともに2.2%),呼吸困難の発生率はcangrelor群が高かった(1.1% vs 0.4%,P<0.0001)。

(収載年月2014.01)
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