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心血管疾患の生涯リスク(Cardiovascular Lifetime Risk Pooling Project)
pooled analysis

心血管疾患(CVD)のリスク因子管理の差が,どの年齢においてもCVD生涯リスクの著明な差につながり,白人および黒人,またいずれの出生コホートでも違いはみられなかった。
Berry JD et al: Lifetime risks of cardiovascular disease. N Engl J Med. 2012; 366: 321-9. PubMed

コメント

米国の18のベースのコホート研究での約25万人のデータから,55歳で血圧,コレステロール,血糖,喫煙などを十分に管理していれば生涯にわたって心血管イベント発症リスクはかなり低いものであることを示した点で意義がある。逆にいえばこの世代での生活習慣管理,つまり血圧,脂質管理が不十分であれば生涯心血管合併症発症の生涯リスクが増大することを示している。しかもその結果は人種や国籍によらないという。(桑島


目的 CVDの負担軽減のための臨床・公衆衛生的な取り組みでは,短期間(一般に10年)の全般的リスク評価が重視されてきたが,短期のCVDリスクは低いとされる米国の成人の大部分が,実はその後の生涯を通じたリスクは高いのである。CVDの生涯リスクの推定では,高齢に達するまでのCVDリスクと競合リスク(癌による死亡など)が考慮されるため,現在および将来の負担をより包括的に評価できる。
生涯リスク推定の大半は,大部分が白人である集団における一つの年齢層で測定されたリスク因子のみの分析から得られたものであり,リスク因子レベルの経年変化に起因する出生コホートへの潜在的影響や,薬物治療の普及によるCVD率の顕著な低下は考慮していない。
Cardiovascular Lifetime Risk Pooling Projectは,過去50年に米国で実施された長期的疫学コホート研究のデータを収集しプールすべく計画されたものであり,一つのコホートデータでは実現し得なかった,複数の出生コホートを通じた年齢,性別,人種やその他のリスク因子によるCVDの生涯リスクを算出し得る。
対象 25万7,384例・18のコホート研究:67,890例(in-person examination 11万7,557回)は17研究の統合コホート,18万9,494例はMRFIT試験の登録例。
community-based/ population-based sampleまたは大規模なvolunteerコホートで,ベースライン時に1回以上の理学的・身体的な変数の直接測定を行っており,致死的・非致死的CVDを10年以上追跡したもの。
危険因子測定が45歳時(男性17,315例,女性12,679例),55歳時(25,595例,17,222例),65歳時(16,845例,14,250例),75歳時(6,137例,7,514例)。
方法 修正生存時間分析法により,各年齢(45,55,65,75歳の前後5歳ずつ)をリスク因子(糖尿病,喫煙,総コレステロール値,血圧値)により層別化し,イベント (CVD死,冠動脈心疾患[CAD]死,その他の死亡,および非致死的心筋梗塞[MI]・脳卒中)およびイベント回避生存率を算出し(競合リスクにより調整),CVDの生涯リスクを推定。
リスク因子による層別化は次の5段階。
  • 全リスク因子が最適(総コレステロール[TC]<180mg/dL,未治療血圧<120/80mmHg,非喫煙,非糖尿病),
  • 最適でないリスク因子が1つ以上(180~199mg/dLまたは/および120~139/80~89mmHg,非喫煙,非糖尿病),
  • レベル上昇のリスク因子が1つ以上(200~239mg/dLまたは/および140~159/90~99mmHg,非喫煙,非糖尿病),
  • 主要なリスク因子(高コレステロール血症の治療中で240mg/dL以上,高血圧の治療中で160/100mmHg以上,喫煙,糖尿病)が1つ,
  • 主要なリスク因子が2つ以上。
結果 [ベースライン時のリスク因子]
糖尿病(45歳時測定群: 男性2.8%, 女性3.0%→55歳時測定群: 5.6%, 6.2%→65歳時測定群: 9.2%, 9.7%→75歳時測定群11.7%,9.7%), 現喫煙例(51.0%,37.8%→45.1%, 29.1%→33.7%, 21.0%→20.7%, 13.5%), TC(214.3, 208.5mg/dL→214.6, 226.7mg/dL→211.7, 232.2mg/dL→203.1, 224.7mg/dL), 収縮期血圧(130.5, 124.6mmHg→132.7, 129.5mmHg→137.0, 135.5mmHg→140.8, 141.7mmHg)。
全リスク因子が最適: 2.9%, 7.1%→2.9%, 3.6%→2.8%, 1.7%→2.8%, 1.3%,
≧1因子が非最適: 9.5%, 14.4%→8.2%, 8.4%→8.8%, 6.6%→10.0%, 6.4%,
≧1因子がレベル上昇: 19.1%, 22.0%→18.8%, 21.5%→19.2%, 18.8%→20.4%, 18.2%,
主要な因子が1つ: 46.5%, 40.1%→45.9%, 40.7 %→44.2%, 41.6 %→43.3%, 43.3 %,
≧2つの主要因子: 22.0%, 16.4%→24.2%, 25.8 %→25.0%, 31.3%→23.5%, 30.8%。

[CVDリスク]

  • 55歳時測定例: 統合コホート(73万1,615人・年)で,CVD死5,912例,致死的・非致死的MI 5,061例,致死的・非致死的脳卒中2,295例,アテローム性CVD 9,391例;MRFIT(176万6,773人・年)でCVD死14,199例。
    CVDの生涯リスクは,いずれの年齢時でもリスク因子の負担の増加に従って上昇。
  • 55歳時にリスク因子がすべて最適であったものの80歳時の心血管死リスクは低い。
    55歳時の生涯リスク(80歳時のリスク;全リスク因子が最適層 vs主要リスク因子が2つ以上の層): CVD死(男性: 4.7% vs 29.6%, 女性: 6.4% vs 20.5%), 致死的CAD・非致死的MI(男性: 3.6% vs 37.5%, 女性: 0% vs 18.3%), 致死的・非致死的脳卒中(2.3% vs 8.3%, 5.3% vs 10.7%), アテローム性CVD(14.6% vs 46.8%, 10.1% vs 29.2%)。
  • 全般に,CVD死・CAD死・非致死的MIの生涯リスクは男性で女性の約2倍であったが,致死的・非致死的脳卒中の生涯リスクに男女の違いはほとんどなかった。
  • リスク因子の水準が同じ層内の同じ年齢のCVD死の生涯リスクは,黒人と白人で同様であった。
    CVD死の20年間の調整後リスクは,リスク因子の水準が同じ層内ではいずれの出生コホートでも同様であった。

(収載年月2012.12)
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