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CKD患者における抗血小板薬治療の死亡,心血管疾患,出血に対する影響
meta-analysis

CKD患者における抗血小板薬によるベネフィットは明らかではない。出血リスクが有効性を上回っている。
Palmer SC et al: Effects of antiplatelet therapy on mortality and cardiovascular and bleeding outcomes in persons with chronic kidney disease: a systematic review and meta-analysis. Ann Intern Med. 2012; 156: 445-59. PubMed

コメント

本研究は規模の大きなメタ解析である。後ろ向きコホートを含むなど対象とされた症例の不均一性が大きい。
CKD一般に対する安易な抗血小板介入を戒める意味はある。(後藤


目的 世界の成人のおよそ10-15%,70歳以上の約50%,急性心筋虚血の33-50%は慢性腎臓病(CKD)患者で,糖尿病,肥満の増加で有病率は上昇している。CKDの早期の段階ですら若年での心血管疾患(CVD)発症リスクは25-30%増大する。抗血小板薬はCVD予防のために幅広く使用されている。しかし,CKD患者は非アテローム性疾患(心不全,突然心臓死,不整脈)を合併することがより多いため,抗血小板薬治療の有効性は疑問がある。さらに,CKD患者では止血能が正常に機能しないために抗血小板薬による出血リスクが大きい可能性もある。
CKD患者における抗血小板薬治療について,心血管イベント,死亡,出血の観点からベネフィットと有害性を検証するためシステマティックレビューを実施した。
対象 2万942例:36のランダム化比較試験(RCT)の登録患者。
うち,9,969例は9つのRCTを後ろ向きに解析したCKDサブグループで,急性冠症候群あるいはPCI施行例,1万1,701例は31トライアルの安定CVD例,CVD非発症例。
方法 Embaseおよびコクランデータベースで,1980-2011年11月に登録された追跡期間が2ヵ月以上のRCT(CKD患者における抗血小板薬治療 vs プラセボ,標準治療,治療非実施)を選択した。
患者背景,介入,転帰(致死的・非致死的心筋梗塞[MI]あるいは脳卒中,死亡,血行再建術,大・小出血),末期腎障害,全入院,脱落のデータを抽出した。
感度解析は追跡期間が1年以上のRCTのみで実施し,エビデンスの質はGrading of Recommendations Assessment,Development, and Evaluation ガイドラインで評価。
結果 ・追跡期間の中央値は12ヵ月。
・使用抗血小板薬
GP IIb/IIIa受容体拮抗薬(abciximab, eptifibatide, tirofiban): 7トライアル・5,471例, clopidogtrel: 2トライアル・4,498例, heparin併用の有無を問わず全例がasprinを投与。
さまざまな抗血小板薬(aspirin, dipyridamole, clopidogrel, sulfinpyrazone, ticlopidine, picotamide)が投与されていたのは,透析中あるいは透析導入が近い患者: 17トライアル・4,471例で追跡期間は短め(中央値6ヵ月)。

[ACS,PCIが必要な例における血管イベントへの影響]
・致死的・非致死的MIあるいは脳卒中:エビデンスの質は低い。
抗血小板治療+標準治療のMIに対する有効性は認められず(7トライアル・5,261例: 相対リスク0.89;95%信頼区間0.76-1.05), 有意な異質性はみられなかった。
GP IIb/IIIa受容体拮抗薬投与のトライアルのみでも同等の有効性であった(6トライアル・4,850例: 0.87; 0.74-1.03)。
致死的・非致死的脳卒中に関しては1トライアルが6/411例を報告したのみのため,影響は明らかではなかった。
・全死亡,心血管死: エビデンスの質は低い-非常に低い。
全死亡に対する有効性は認められず(8トライアル・9,347例: 0.89; 0.75-1.05),GP IIb/IIIa受容体拮抗薬投与トライアルのみでも同等の有効性であった(6トライアル・4,849例: 0.86; 0.69-1.07)。心血管死に対する影響は不明。
・有害事象: 脳出血を含む大・小出血
ACS,PCIが必要な症例(9トライアル・9,863例): エビデンスの質は低い。出血定義にばらつきあり。
標準治療に抗血小板薬を追加した大出血リスクは増大(1.40; 1.07-1.86), 小出血リスクも上昇(1.47; 1.25-1.72)。clopidogrelの2試験を除外しても影響は同等(大出血は7トライアル・5,365例: 1.36; 0.78-2.38, 小出血は1.38; 1.18-1.61)で同様の異質性がみられた。追跡期間が1年以上の試験に限ると大出血リスクが増大(5トライアル・5,868例: 1.47; 1.00-2.10)。脳出血に対する影響は明確ではなかった。

[安定CVD例での臨床への影響]
・致死的・非致死的MIあるいは脳卒中: エビデンスの質は中等度。
抗血小板薬治療によりMIが低下(10トライアル・9,133例: 0.66; 0.51-0.87)したが,脳卒中への影響は明らかではない。有意な異質性はみられなかった。
・全死亡,心血管死: エビデンスの質は低い。
全死亡(21トライアル・10,632例: 0.87; 0.61-1.24), 心血管死(16トライアル・8,706例: 0.91; 0.60~1.36)への影響は明確ではなく,有意な異質性はみられなかった。
・有害事象:脳出血を含む大・小出血: エビデンスの質は低い。出血定義にばらつきあり。
小出血リスクは有意に上昇した(1.70; 1.44-2.02)が,大出血リスクへの影響は明らかではなかった。異質性はなかった。1年以上追跡したトライアルでは大出血リスクが増大(10トライアル・8,696例: 1.55; 1.07-2.26)。

[限界]
合併症を有するさまざまな症例からのCKDの後ろ向き解析によるものが少なくない。
出血性イベントの定義および追跡期間の異質性が高い。

(収載年月2012.05)
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