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日本を含む100万人以上のアジア人集団におけるBMIと死亡リスクの関連(Asia Cohort Consortium)
pooled analysis

アジア人全体では低体重と死亡リスク上昇の有意な関連性が認められた。東アジア人ではBMI高値と死亡リスクの相関がみられたが,インド人・バングラデシュ人ではみられなかった。
Zheng W et al: Association between body-mass index and risk of death in more than 1 million Asians. N Engl J Med. 2011; 364: 719-29. PubMed

コメント

東アジア人におけるBMIと死亡リスクの関係を検討した貴重なエビデンスである。日本人では,欧米人のような極度の肥満は必ずしも多くないが,小太りでもインスリン抵抗性は欧米人よりも上昇しやすいなどの特徴があると考えられていた。過体重の死亡リスクについて,欧米人と日本人で大きな違いがあるのか関心がもたれるところであるが,今回の検討では,日中韓ではBMIが35を超えると死亡のハザード比が1.5であったとしている。BMIが35を超えるような肥満でも1.5にとどまったともいえるが,BMIという指標の是非も考慮しなければならない。一方,BMIが15を下回るとハザード比2.8であることも明らかにされた。低BMIの死亡リスクを東アジアのポピュレーションで示したといえる(中村・中野・永井)。


目的 多くの疫学研究によりBMIとさまざまな慢性疾患との関連が示されているが,その大部分はヨーロッパ系の集団を対象とするものであり,世界の人口の>60%を占めるアジア人におけるBMIと死亡リスクとの関係は不明である。また,過体重(BMI≧25.0kg/m2),肥満(BMI ≧30.0kg/m2)の定義は欧米人を対象とした試験に基づいており,アジア人集団におけるこれら基準の妥当性は確認されていない。
そこで,Asia Cohort Consortiumの一環として,19コホート(100万人以上)のデータを用いたpooled analysisによりBMIと死亡のリスクの関係を検討した。
対象 19のコホート研究(インド2,バングラデシュ1,中国4,台湾2,シンガポール1,日本8*,韓国1)・114万1,609人(男性53万5,199人,女性60万6,410人)。
追跡期間5年以上,対象1万人以上(台湾の1研究を除く)で,ベースラインデータ(BMI,年齢,性別,喫煙歴)および追跡データ(全死亡)が得られたコホート研究。
除外基準:18歳未満,BMI>50kg/m2,生存データ無効例もしくは欠測例。
■患者背景:BMI 22.9kg/m2,喫煙34%。
*日本人コホート:43万7,004人;JACC,JPHC 1,JPHC 2など。
方法 2008年初めに文献のシステマティックサーチを実施し,選択した各コホート研究の研究担当医師に調査票を送付して,本解析対象としての適格性を評価した。
BMI>25.0kg/m2を過体重,>30.0kg/m2を肥満と定義。BMI≦15.0kg/m2から>35.0kg/m2まで2.5kg/m2間隔で10群に分類し,22.6~25.0kg/m2群を参照群として,Cox比例ハザード回帰モデルにより,交絡因子(年齢,性別,教育,居住地域,婚姻,喫煙歴,疾患)による調整後,その他の群の死亡ハザード比および95%信頼区間を算出した。解析は,インド人+バングラデシュ人集団と東アジア人集団(中国人,日本人,韓国人)に層別して行った。
結果 平均追跡期間9.2年で,死亡は約120,700例(心血管疾患35.7%,癌29.9%,その他の原因34.3%)。
東アジア人集団では,全死亡のリスクはBMI 22.6~27.5kg/m2の群が最も低く,BMI>35.0kg/m2群で1.5倍,BMI≦15.0kg/m2群で2.8倍に上昇した。癌死,心血管死,その他の原因による死亡についても,同様にBMIと死亡とのU型の関連性がみられた。
インド人+バングラデシュ人集団では,BMI 22.6~25.0kg/m2群に比べ,≦20.0 kg/m2群で全死亡リスクおよび癌・非心血管疾患死のリスクが上昇したが,BMI高値例では全死亡リスクおよび原因別死亡のリスクの上昇はみられなかった。

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