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糖尿病,空腹時血糖と血管病リスクとの関連:Emerging Risk Factors Collaboration (ERFC)
collaborative meta-analysis

糖尿病により血管病リスクは,その他の標準的危険因子とは独立して2倍に増大する。
非糖尿病例では空腹時血糖値と血管病リスクはわずかながら非線形の関連を示す。
Emerging risk factors collaboration: Diabetes mellitus, fasting blood glucose concentration, and risk of vascular disease; a collaborative meta-analysis of 102 prospective studies. Lancet. 2010; 375: 2215-22. PubMed

コメント

2型糖尿病(T2D)が心血管イベントの大きな危険因子になっていることは周知のことであり,米国のコレステロールガイドラインであるNCEPでは,二次予防と同等のハイリスクに位置付けて強力な治療を推奨している。これはHaffnerらが行った7年間にわたる追跡調査で,心筋梗塞発症頻度が,二次予防患者とT2D患者が同等であったというFinnish試験(N Engl J Med. 1998; 339: 229-34. PubMed)に基づくものである。わが国のガイドラインもほぼ同様にT2Dをハイリスクと位置付けているが,いまだFinnish試験のような試験がわが国にはないため,二次予防と同等には位置付けていない。T2Dのリスクが高いことはよく知られているが,とくに食後高血糖のリスクが強調されている。
本試験は空腹時血糖からのリスクを102試験のメタ解析すなわち約70万人のデータで解析するというほぼ決定版ともいえるものである。それによると空腹時血糖100mg/dL未満はほぼリスクにはならないがそれ以上になると18mg/dL上昇ごとに虚血性心疾患の発症率は12%上昇し,126mg/dL以上もしくはT2Dと診断されているもののリスクは約2倍になるという。つまり,耐糖能異常の段階から虚血性心疾患のリスクが上昇することが,証明された。そのほか,女性のほうが,リスクの上昇率が高く,脳出血の発症リスクも高くなることが証明されている。さらに,T2Dにおける高コレステロール血症では200mg/dL以上や収縮期血圧は135mmHg以上で有意に直線的に冠動脈疾患の発症頻度が高まっていることが改めて示された。各国のガイドラインに大きな影響を与えるものと思われる。(寺本

目的 糖尿病が虚血性心疾患の危険因子であることは確立している。しかし,糖尿病との関連度合いが年齢,性,危険因子のレベルによりどのように異なるのかは明らかになっていない。また,糖尿病が心筋梗塞(致死的 vs 非致死的),脳卒中(脳梗塞 vs 脳出血)にどの程度寄与するかも明白ではない。さらに,糖尿病の血管リスクへの関連度に,標準的な危険因子(肥満,脂質,血圧など)がどのくらい影響するかも明確ではない。
2009年,米国予防医療特別委員会(US Preventive Services Task Force)は空腹時血糖値と冠動脈疾患(CAD)に一貫性はないと発表した。また,空腹時血糖値が標準的な危険因子よりも血管リスクを予測するかは確立していない。
そこで,糖尿病および空腹時血糖値と致死的および初発の非致死的虚血性血管疾患との関連を幅広い状況で定量化して評価した。
対象 69万8,782例。102の前向き試験参加者で登録時に心筋梗塞(MI),狭心症,脳卒中の既往のなかったもの。
■患者背景:平均年齢52歳,女性43%,欧州,北米,オーストララシア96%;日本,カリブ海諸国4%,糖尿病既往3万8,851例(7%)。
非糖尿病例では血糖値は肥満,血圧,脂質,炎症マーカーと関連した。
方法 年齢,性,喫煙,収縮期血圧(SBP),BMIで調整後の試験内回帰解析結果を統合し,血管疾患のハザード比(HR)を算出した。
ベースライン時の糖尿病(自己申告,糖尿病治療薬投与,空腹時血糖値≧126mg/dL)とCAD(心筋梗塞初発あるいは致死的CAD),脳卒中(致死的・非致死的脳梗塞,脳出血,分類不能脳卒中),その他の血管疾患(心不全,不整脈,突然死,高血圧,肺塞栓症,大動脈瘤)による死亡との関連を評価。
空腹時血糖値は食後8時間以上または夜間絶食後に測定した。
結果
849万人・年(初発の中央値10.8年)で,致死的あるいは非致死的血管疾患初発は,5万2,765例。

[糖尿病の非糖尿病と比べた虚血性心血管イベント調整後HR]
・CAD:2.00;95%信頼区間1.83-2.19
非致死的イベントより致死的のほうがリスクが高かった。
CAD死:2.31;2.05-2.60,非致死的MI:1.82;1.64-2.03
・脳梗塞:2.27;1.95-2.65
・脳出血:1.56;1.19-2.05
・分類不能脳卒中:1.84;1.59-2.13
・その他の心血管疾患:1.73;1.51-1.98
HRは,脂質値,炎症および腎マーカーで調整後も大きな変化はなかった。

[糖尿病のHR:サブグループ]
CADに対するHRは,女性が男性より(2.59 vs 1.89),40-59歳が≧70歳より(2.51 vs 1.78),現在の非喫煙者が現在の喫煙者より(2.35 vs 1.82),低SBPが高SBPより(平均113mmHg;2.85 vs 157mmHg;1.97)高かった。
一般成人市民での糖尿病罹病率は10%で,血管死の11%が糖尿病によると推定される。

[ベースライン時の空腹時血糖値によるCADのHR]
糖尿病非既往例に比べ糖尿病例では心血管リスクが増大した。
空腹時血糖値はCADと非線形の関連を示し,正常域(70-<101mg/dL)では有意な関連はみられなかった。総コレステロール,non-HDL-C,SBPは直線的に相関し,空腹時血糖値より強く関連した。
糖尿病既往の場合:≧126mg/dL(1万3,122例[4.7%])のHR:2.36;2.02-2.76,<126mg/dL(5,807例[2.1%]):1.61;1.42-1.82。
糖尿病非既往の場合:対照:70-<101mg/dL(18万5,590例[66.5%])と比べた場合,≧126mg/dL(7,240例[2.6%]):1.78;1.56-2.03,110-<126mg/dL(1万9,607例[7.0%]):1.17;1.08-1.26,101-<110mg/dL(3万2,008例[11.5%]):1.11;1.04-1.18,<70mg/dL(1万5,916例[5.7%]):1.07;0.97-1.18。

[糖尿病の脳卒中HR:サブグループ]
リスクは,女性(2.83 vs 男性2.16),若年(40~59歳:3.74 vs ≧70歳:1.80),高BMI(平均30.7kg/m2:2.90 vs 平均21.7kg/m2:1.90)で高い。


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