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aspirinの体重ならびに用量による血管イベントおよび癌リスクに対する効果:ランダム化比較試験の患者個人データの解析
pooled analysis

aspirinの血管イベント予防効果は,用量,体重により異なることが示された。aspirinの同一用量処方one-dose-fits-allアプローチは適切ではない可能性が高く,今後はより個別化治療戦略が必要となる。
Rothwell PM, et al: Effects of aspirin on risks of vascular events and cancer according to bodyweight and dose: analysis of individual patient data from randomised trials. Lancet. 2018; 392: 387-99. PubMed
Theken KN, et al: Weight-adjusted aspirin for cardiovascular prevention. Lancet. 2018; 392: 361-62. PubMed

コメント

ランダム化比較試験の結果のメタ解析を,各試験に参加した個別症例データから解析した意欲的研究である。各種ランダム化比較試験が施行された時期,目的にはばらつきがある。単なるメタ解析ではなく,個別症例の情報を再集積するindividual levelメタ解析は信頼性が高い。しかし,個別のランダム化比較試験にて仮説を検証し,その仮説の堅牢性を高めるメタ解析に対して,本研究では,体重によるアスピリンの効果のばらつきという新たな仮説を作る研究になっている。

アスピリンは循環器領域の薬剤としてもっとも堅牢なエビデンスを有する薬剤であった。しかし,少数例のグループに分けて解析すれば効果の高い症例グループと相対的に効果の少ないグループがある。患者集団を対象として検証された仮説を集団を構成する全患者にあてはめるEBMから,個別最適化治療を目指すPrecision Medicineへの時代の転換はアスピリンのような薬剤使用まで含む大きな流れとなろうとしている。(後藤)。


目的 aspirinは,COX-1を不可逆的にアセチル化することにより血小板によるトロンボキサン産生をほぼ完全に抑制するが,血管イベントの長期予防効果は中等度である。一因として,患者の体格にかかわらず同一用量を処方するone-dose-fits-allアプローチとの関連が考えられる。これまでに実施されたaspirinの血管イベント予防に関するランダム化比較試験(RCT)は低用量または高用量のいずれにおいても,同一用量を処方したaspirinとの比較にとどまり,体格と用量との関係から検証した試験はない。
血管イベントの一次予防効果において身長,体重などが低用量および高用量aspirinの有効性に与える影響を評価するために,RCTの患者個人データの統合解析を実施し,脳卒中二次予防試験で検証した。さらに大腸癌の長期リスクも検討した。
対象 117,279例・10試験。血管イベント一次予防効果に関するRCT。
■患者背景:体重中央値[60.0-81.2 kg,P <0.0001; 男性(81.0 kg),女性(68.0 kg)]。
方法 Antithrombotic Trialists’ (ATT) Collaboration,Cochrane Collaboration Databaseなどからaspirin群と対照群を比較したRCTを同定,年齢,性別,体重,身長および血管リスク因子(喫煙状況,糖尿病の有無),主要血管イベント(不安定狭心症,TIAを除く脳卒中,心筋梗塞,心血管死など),大出血,癌,追跡期間中の死亡に関する患者個人のデータを抽出した。RCTは,予防効果別(一次,二次)および用量別[低用量(≦100 mg),高用量(≧300 mg)]に,intention-to-treat解析に基づきaspirinの予防効果を検証。また,体重(<70 kg vs. ≧70 kg)で二分し,aspirinの予防効果はCox比例ハザードモデルによりaspirin群,対照群のハザード比を算出。さらに,体重を10kgごとに層別した場合の効果についても評価した。全心血管イベントリスクに対するaspirinの効果は,年齢(<70歳 vs. ≧70歳),性別,喫煙状況(現喫煙 vs. 前喫煙 vs. 非喫煙),BMI(<25 kg/m² vs. ≧25 kg/m²),アスピリン製剤の剤形(腸溶性または徐放性 vs. standard release),追跡期間(<3年 vs. ≧3年)でさらに層別して解析。1,000例以上を対象とした脳卒中二次予防5試験(1試験は体重,身長のデータなし)で検証した。また,大腸癌の20年リスクに対するaspirinの予防効果は,血管イベント一次予防に関する試験の追跡期間調査のデータから体重で層別して解析した。
結果 [低用量aspirin]
低用量aspirin(75~100mg)の体重別(<70 kg vs. ≧70 kg)の心血管イベント統合オッズ比(OR)は,<70 kg : 0.77(95%信頼区間 0.68~0.87, P <0.0001; 異質性P =0.32 vs. ≧70 kg : 0.94(0.86~1.04, P =0.24; 異質性P =0.50)であった 。低用量aspirinの心血管イベント低減効果は,体重の増加とともに減弱した(交互作用P =0.0072)が,対照群にくらべ特に効果が高かったのは体重50-69 kg群で[ハザード比(HR)0.75(95%信頼区間 0.65~0.85, P <0.0001],とりわけ毎日服用している群で高かった[HR 0.68(0.56~0.83), P =0.0001]。一方,この効果は,体重<50 kg群では認められず[1.25(0.74~2.09), P =0.40],全死亡リスクが増加した[1.52(1.04~2.21), P =0.031]。また,aspirinによるリスク低減効果は,年齢および糖尿病の有無には依存しないが,喫煙者では低下した(交互作用P =0.0026)。体重≧70 kg群では,低用量aspirinは初発の心血管イベントによる死亡の増加[OR 1.33(1.08~1.64), P =0.0082],特に心筋梗塞と関連していた[1.73(1.20~2.49), P =0.0035]。大出血リスクの増大は≧90㎏群ではみられなかった。
低用量aspirinによる脳卒中二次予防試験での検証結果も,一次予防の場合と同様であったが,特に女性において体重による効果の差が大きかった[<70 kg:HR 0.68(0.56~0.83); P =0.0001, ≧70 kg:1.02(0.77~1.35);交互作用P =0.022 ]が,女性では体重<50 kg群でも効果が認められた[0.50(0.29~0.84), P =0.0094]。

[高用量aspirin]
高用量aspirin(300~325 mgまたは500 mg)による心血管イベント一次予防効果は,体重の増加に伴い上昇した。体重≧70 kg例に対するaspirin 投与量325 mgのHRは,0.83(0.70~0.98, P =0.028),体重≧90 kg例に対するaspirin 投与量500 mgの心血管イベントのHRは0.55(0.28~1.09, P =0.086),心血管イベントまたは死亡のHR:0.52(0.30~0.89, P =0.017)。高用量aspirinによる心血管イベント抑制効果は,体重≧70 kg例に300-325 mg投与した場合,および体重≧90 kg例に500 mg投与した場合に高かった。一方,大出血は体重の増加とともに増加の傾向が認められた[交互作用P =0.087]。心血管イベント,心血管死,全死亡の一次予防における至適aspirin用量を体重別にみると,50-69 kg群は75~100 mg,70-89 kg群は300~325 mg,体重≧90 kg群は≧500 mgと示唆された。

[癌発症リスクに対する効果]
大腸癌の20年リスクに対するaspirinの効果は,体重の増加に伴い減少した。低用量aspirin(75~100 mg)による大腸癌リスクは,<70 kg例で低下した[HR 0.64(0.50~0.82), P =0.0004]が,≧70 kg例では有意差は示されなかった[0.87(0.71~1.07), P =0.32]。血管イベント一次予防におけるaspirinとプラセボ対照試験から追跡期間中の癌発症についてのデータを抽出すると,癌関連死数とaspirinに関連は認められなかったが,<70 kg例における5年追跡後の癌関連死は減少していた。aspirinと初発の癌発症全体との関連は認められなかったが,追跡調査開始後3年間の癌発症率は≧70歳かつ<70 kgの女性で高かった[1.44(1.11~1.87), P =0.0069]。

(収載年月2018.08)
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