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収縮機能の低下した心不全患者(HFrEF)における突然死リスクの低下
pooled analysis

臨床試験に登録された収縮性心不全外来患者における突然死が経時的に低下したが,これは死因に対するエビデンスに基づく治療の累積ベネフィットと一致していた。
Shen L, et al: Declining risk of sudden death in heart failure. N Engl J Med. 2017; 377: 41-51. PubMed

コメント

1995年〜2014年にわたる19年間に施行された12の大規模RCTから,心不全(HFrEF)における突然死が年次を追って減少していることが本メタ解析で示された。本研究で突然死に関する因子として,高齢・男性・左室収縮率低値,血圧低値,頻脈,心不全症状,NT-proBNP高値,虚血性心不全,心筋梗塞の既往,糖尿病・腎機能障害の合併が明らかになり,冠血管再建術施行,β遮断薬の投与は突然死の減少と関連していた。すなわち,ガイドラインで推奨されている抗心不全治療が突然死の抑制にも寄与していることが示されたが,突然死の全死亡に対する割合は,年次で明らかな減少はなく30~35%と変化していないことも認識しておく必要がある。しかし,突然死患者の減少は,ICDのベネフィットが減少していることを示唆しており,今後,突然死ハイリスク患者の同定がICD治療の適応決定に求められることになろう。(


目的 駆出率の低下した収縮性心不全(HFrEF)患者における心室性不整脈による突然死は少なくない。ICDは突然死のリスクを低下させるが,コストや合併症などの問題がある。一方で,有効な薬物治療が加わり併用投与が増えるなど,推奨薬物治療(ACE阻害薬,ARB,β遮断薬,ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)でも突然死のリスクが低下してきている。
症候性のHFrEF患者におけるランダム化比較試験(RCT)の患者データを統合し,薬物治療による突然死リスクの低下の変化を検証した。
対象 40,195例。1995-2014年に実施された12*のRCT登録のHFrEF患者。
RCTは>1,000例で,慢性外来患者で症候性(NYHA心機能分類II-IV度),EF≦40%,死因判定されている試験とした。
除外:登録時のICD植込み例(心臓再同期療法付き例も含む)。
*RALES(実施期間1995-’98年), BEST(’95-’99年), CIBIS-II(’95-’98年), MERIT-HF(’97-’98年), Val-HeFT(’97-2000年), SCD-HeFT(’97-’03年), CHARM-Alternative(’99-’03年)・Added(’99-’03年), CORONA(’03-’07年), GISSI-HF(’02-’08年), EMPHASIS-HF(’06-’10年), PARADIGM-HF(’09-’14年)。
■患者背景:平均年齢65歳,男性77%,NYHA II~III度95%,EF 23%(BEST)-32%(GISSI-HF),虚血性心不全62%,ACE阻害薬,ARB使用>90%(ACE阻害薬投与不可のCHARM-Alternativeを除く)。
方法 経時的突然死の傾向は重み付き多変量回帰法で評価し,各トライアルにおける突然死の調整ハザード比はCox回帰モデルで算出した。最も早い時期に実施されたRALES試験のプラセボ群を対照群とした。突然死の累積発生率は,ランダム化から異なる時点で評価し,心不全の診断からランダム化までの期間(≦3ヵ月,>3-6ヵ月,>6-12ヵ月,>1-2年,>2-5年,>5年)ごとの検討も行った。
突然死の交絡因子(年齢,性,EF,NYHA心機能,原因[虚血性,非虚血性],心筋梗塞[MI]・高血圧・糖尿病既往)保有数も確認し,突然死の重要な予測因子として推定糸球体濾過量(92%),NT-proBNP(38%)を検討するため欠損データを補完した。
結果 [突然死患者背景]
突然死は3,583例で,突然死非発生例にくらべ高齢で,男性,虚血性が多く,心機能,収縮期血圧が低下し,心不全の症状不良,MI・糖尿病既往,腎機能不全も突然死と正の関係がみられた。また,非突然死例にくらべ冠動脈血行再建術非実施が多く,VAL-HeFT,CORONA,GISSI-HF,PARADIGM-HFではNT-proBNPが高かった。さらに,突然死例は非突然死例よりもβ遮断薬の使用が少なく,利尿薬,ジギタリス,ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の使用が多かった。

[各トライアルでの突然死]
年間突然死亡率は,6.5%(RALES)から3.3%(PARADIGM-HF)へと最新のトライアルで低下した(P for trend=0.02)。60歳以上の虚血性心不全のみで実施したCORONA試験(5.2%)は低下の傾向と異なり高く,BEST,Val-HeFTは心不全の悪化による突然死が除外されていたが,これらの例も含めた感度分析からは突然死の経時的な急減傾向が示された。
Val-HeFT,GISSI-HFを除き対照群よりも試験薬群のほうが突然死亡率は低かった。トライアルを変量効果としてランダム化された群で調整すると,19年で突然死は44%低下したが(ハザード比0.56;95%信頼区間0.33-0.93,P=0.03),さらにベースライン時の変数で調整すると経時的なリスクの低下は減弱した(0.90;0.61-1.32,P=0.60)。しかし,試験薬群での突然死の低下は有意であった(0.86;0.81-0.92,P<0.001)。

[追跡期間と突然死]
90日後の累積突然死はRALESで2.4%,最新のPARADIGM-HFでは1.0%。各トライアルで,180日後の累積突然死は90日後のおよそ2倍で,最新のトライアルでより低い傾向がみられ,特に3年後の追跡で顕著だった。
累積突然死のリスクは診断からの経過時間が長いほうが有意に上昇したが,診断から≦3ヵ月のものの累積突然死が,ランダム化までの時間が長いものより多いというエビデンスはなかった。

[EFによる突然死]
EF<30% vs 30-35%,<25% vs 25-35%でみると,EFの低い例のほうが突然死リスクが高かった。

(収載年月2017.12)
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