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2型糖尿病患者における血糖コントロールの心血管疾患への影響
meta-analysis

2型糖尿病患者において,積極的血糖コントロールにより死亡リスクを増大することなく冠動脈疾患は有意に抑制されるが,脳卒中,死亡の有意な抑制効果は認められない。
Ray KK et al: Effect of intensive control of glucose on cardiovascular outcomes and death in patients with diabetes mellitus: a meta-analysis of randomised controlled trials. Lancet. 2009; 373: 1765-72. PubMed

コメント

■コメント 弘世 貴久
■コメント 寺本 民生

最近(2004~2009年)発表された血糖コントロールの大血管症,死亡率抑制効果を検討したメガスタディ,4つのメタ解析である。それぞれのスタディでは一次エンドポイントとして心筋梗塞や総死亡などで有意な抑制効果が得られなかったどころか,ACCORDでは死亡率の有意な増加があった。しかし,これらを4つの試験を統合的に解析し,検出精度をあげたところ少なくとも非致死的心筋梗塞,CADを有意に抑制することが明らかとなった。UKPDS80の結果も踏まえ,早期の厳格な血糖コントロールの必要性を再認識する必要があろう。(弘世

糖尿病治療が,2型糖尿病に特有な細小血管症の発症予防に有効であることは多くの研究で明らかにされているが,死にいたる大血管障害や総死亡に対する効果については,議論のあるところである。ACCORD試験は,強力で急激な血糖低下が,むしろ総死亡を増加させたということで議論を呼んだ。この点はADVANCE試験で,穏やかな血糖低下では,総死亡が増加しないことより,低血糖や,体重増加という血糖の急激な低下に起因する悪影響が出てきたのではないかと推測されている。いずれにしろ,大血管障害や総死亡に対する血糖コントロールの優位性が十分に確立されていないのが現状であり,それゆえAHAやADAの血糖コントロールの推奨レベルがIIb(どちらかというと有用性,効果があると考える根拠が乏しいか,そのような意見が少ない)と表現されているのである。このメタ解析は5つのRCTで3万人を超える対象者が含まれており,エビデンスレベルに寄与する検討である。基本的には,いくつかの単独の研究で示されている心筋梗塞予防には有効であるが,脳卒中や総死亡の抑制効果ははっきりしないという結論である。しかし,UKPDSの延長した研究では,総死亡抑制効果も示されており,血糖コントロールは大規模というより時間軸で効果を発揮する可能性を考えておかなければならない問題と思われる。もう1点は,治療法に問題がある可能性も考えておく必要があるものと思われる。新たな薬剤の出現が望まれる。(寺本

目的 2型糖尿病が心血管疾患(CVD)の危険因子であることは確立しているが,血糖コントロールのCVDへの影響は明らかになっていない。
血糖コントロールとCVD,細小血管疾患が危険因子とは独立して関連するとの観察研究結果を受け,より積極的な血糖コントロールが死亡を含む長期イベントを抑制するかを検討するランダム化試験(RCT)が実施されてきたが,細小血管疾患は抑制するものの大血管疾患予防効果は確められていない。
その結果,アメリカ心臓協会(AHA),アメリカ心臓病学会(ACC),アメリカ糖尿病学会(ADA)は血糖コントロールによるCVDへの有効性はエビデンスレベルAで推奨レベルはclass IIbとしている。
RCTは危険因子の修正によりイベント数不足,不十分治療期間などにより有効性をみるには検出力不足であるため,メタ解析により血糖コントロールレベルによるCVDへの有効性を評価する。
対象 3万3,040例(積極的治療1万7,267例,標準治療1万5,773例)。5つのRCT(UKPDS:UKPDS 33+UKPDS 34,PROactiveADVANCEVADTACCORD):2型糖尿病患者における積極的血糖コントロールを血糖降下度が大きく異なる(HbA1cで測定)対照治療(プラセボ,標準治療,緩徐な血糖コントロール)と比較したRCT;一次エンドポイントがCVDで有効性が評価できる終了結果が示されている試験,あるいは非致死的心筋梗塞(MI),冠動脈疾患(CAD:致死的・非致死的MI),脳卒中,全死亡への有効性が評価できる情報がある試験;安定症例のみで実施された試験。
■患者背景:平均年齢62歳,2型糖尿病罹病期間8年,男性62%,喫煙率16%,収縮期血圧140mmHg,LDL-C 116.0mg/dL,BMI 30kg/m2
試験背景:発表年・追跡期間[人・年](UKPDS : 1998年・10.1年[4万6,237人・年], PROactive : 2005年・2.9年[1万5,059人・年], ADVANCE : 2008年・5.0年[5万5,700人・年], VADT : 2009年・5.6年[1万30人・年], ACCORD : 2008年・3.5年[3万5,879人・年])。積極的治療 : UKPDS(sulphonylurea, インスリン, metformin ; 目標空腹時血糖値<108mg/dL), PROactive(pioglitazone 15~45mg+現行治療), ADVANCE(gliclazide 30~120mg±metformin, thiazolidinedione, glinide, acarbose, インスリン ; 目標HbA1c≦6.5%), VADT(metformin最大用量+rosiglitazone[BMI>27]あるいはglimepiride+rosiglitazone[BMI<27]), ACCORD(metformin, sulphonylurea, glinide, thiazolidinedione, acarbose, インスリン, あるいはこれらの併用 ; 目標HbA1c<6%)。
方法 Medline, Cochrane Central, EmBaseで1970年1月~2009年1月に発表されたRCTの文献を, “cardiovascular disease”, “diabetes mellitus”, “glucose”, “HbA1c”で検索。
各試験のraw dataから算出したオッズ比を用い有効性の重み付けはrandom-effects(変量効果)モデルを使用し,積極的治療と標準治療を比較した。
結果 平均追跡期間は4.95年(16万2,905人・年)。
HbA1cの変化:ベースライン時7.8%→積極的治療6.6% vs 標準治療7.5%。
[非致死的MI,CAD,致死的・非致死的脳卒中,全死亡]
・非致死的MI(1497例):積極的血糖コントロール治療743例(10.0例/1000人・年) vs 標準治療754例(12.3例/1000人・年); オッズ比0.83(95%信頼区間0.75-0.93)。
・CAD(2318例) : 1182例(14.3例/1000人・年) vs 1136例(17.2例/1000人・年); 0.85(0.77-0.93)。
・致死的・非致死的脳卒中(1127例): 588例(6.8例/1000人・年) vs 539例(7.7例/1000人・年); 0.93(0.81-1.06)。
・全死亡(2892例): 1573例(18.3例/1000人・年) vs 1319例(18.6例/1000人・年): 1.02(0.87-1.19)。
積極的血糖コントロール治療の有効性の推定において,非致死的MI(I2=0.0%;0.0-69.3,P=0.61), CAD(I2=0.0%;0.0-52.7,P=0.78)は試験間に異質性は認められなかった。
しかし,同治療の脳卒中,全死亡抑制効果は有意ではなかった。脳卒中には異質性はみられなかったが(I2=0.0%;0.0-62.0,P=0.70),全死亡は異質性が高かった(I2=58.0%;0.0-84.4,P=0.049)。
イベント比でみても,積極的血糖コントロール治療は標準治療よりも非致死的MI,CADを有意に抑制したが,脳卒中,全死亡は抑制しなかった。
[その他]
・心不全:積極的血糖コントロールは心不全を有意に抑制しなかった ; 1.08(0.90-1.31)。しかし,顕著な異質性がみられ(I2=62.9% ; 1.74-85.96, P=0.029), glitazone投与は心不全のリスクを増大した(I2=89.9% ; 63.05-97.26,P=0.002)。
・心血管死,非心血管死(UKPDSを除く2万8,420例での検討):積極的血糖コントロールの死亡への影響は心血管死であるか否かによるの違いはなかった。
・積極的血糖コントロールは標準治療に比べ低血糖が多かった:38.1% vs 28.6%。重篤な低血糖は2.3% vs 1.2%と高率ではなかったが積極的血糖コントロールは標準治療のおよそ2倍の頻度であった。
試験終了時,積極的血糖コントロール例は標準治療例よりも2.5kg体重が増加した。

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