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154,052例における高感度心筋トロポニン濃度と初発心血管リスク
meta-analysis

CVD非発症の一般住民・臨床試験登録例において,正常範囲内であっても高感度心筋トロポニン高値は,危険因子とは独立して初発CVDリスク上昇と関連した。最も強い関連がみられたのは致死的CVD。
Willeit P, et al: High-sensitivity cardiac troponin concentration and risk of first-ever cardiovascular outcomes in 154,052 participants. J Am Coll Cardiol. 2017; 70: 558-68 PubMed

コメント

心筋収縮に必要不可欠な蛋白質である心筋トロポニン(cTn)の血中濃度計測は1990年代に始まり,特異性はもちろんのこと高感度アッセイ法の確立によりトロポニンI(cTnI)もトロポニンT(cTnT)も正常値範囲内での臨床的意義の検討が可能になった。本研究はCVD既往のない症例でのcTnの臨床疫学的意義を明らかにするため未発表データ(PROSPER trial)も含めてメタ解析し,正常値範囲内であってもcTn高値は低値よりも他の危険因子とは独立して心脳血管イベントの発生率が有意に高かった。cTn値には閾値はなく連続量として対数線形的にイベント発生と関係している。無症候性虚血,不整脈の偶発的出現による血中cTn値の変動は当然予想されるので,15万例以上のメタ解析により有意差が出たと考えられる。
冠動脈硬化病変の程度と血中cTn値が正相関を示すのでプラーク破綻が無症状で生じたことによる冠動脈末梢微小循環障害や,心不全や心房細動における交感神経系やRA系の賦活化にcTn高値が由来する可能性がある。スタチン研究の黎明期のWOSCOPS trialの最近の報告では,スタチンによりCVDリスクが低下すると血中cTn値も低下している(J Am Coll Cardiol 2016; 68: 2719–28. PubMed)。cTn値は年齢,性別,BMI,血圧,NT-proBNP,CRP,HT,DMと正相関し,eGFRと負相関を示し,交絡因子が非常に多い。特に,cTnとNT-proBNPは各々独立して予後と関連するので,交絡因子の相互作用に留意する必要がある。cTnTの方がcTnIよりも予後との関連性が少し強い可能性があるが,RocheとAbbottとの闘いともみえる。cTnTとcTnIの同時計測による予後予測に相違があるかが興味深い。地域性や人種によりcTn値の優位性が異なっており,一部の研究ではcTn値とCHD/脳卒中との関連を認めていない。今回のメタ解析には日本人のデータは含まれているがその比率が低いので,日本人のみのデータでのcTn値の有用性を明らかにする必要がある。(星田


目的 1990年代初期のトロポニンアッセイ登場以来,診断,心筋梗塞(MI)の急性期治療の基礎となった心筋トロポニンであるが,高感度アッセイの開発で低濃度の高感度心筋トロポニン(hs-cTnI, hs-cTnT)測定が可能になり,MIが疑われる症例における早期の心筋傷害が識別でき,診断精度が向上した。さらに,従来の“トロポニン陽性,陰性”という分類による急性心筋梗塞の診断から,連続測定値で定量的に判断でき,臨床的に明らかな心筋ダメージや心血管疾患(CVD)の既往のない症例でもトロポニンを検出できるようになった。一方で,一般住民において心筋トロポニン(cTn)上昇とCVD初発リスクの関連を示唆する発表があるものの,研究により推定効果の調整などが異なるため解釈や比較は困難だった。
PROSPER(Pravastatin in Elderly Individuals at Risk of Vascular Disease Study)試験の新しい解析結果を受け,一次予防における高感度トロポニン(hs-cTnI, hs-cTnT)とCVDの関係を明らかにするため,CVD既往のないもので実施された試験を統合したメタ解析を実施した。
評価したCVDは,致死的冠動脈疾患(CAD),非致死的MI,全脳卒中の複合エンドポイント。
対象 154,052例・28研究(欧州18研究,北米7研究,アジア1研究,世界共同2研究:hs-cTnI測定17研究,hs-cTnT測定11研究)。
研究登録基準:高感度アッセイでhs-cTnI, hs-cTnTを測定したもの,ベースライン時にCVD既往例を登録していなくて,>1年後のCVDの結果が報告されているもの。
■患者背景:平均年齢56.1歳,男性52.8%,白人88.6%,高感度アッセイでのトロポニン検知可能例80.0%(hs-cTnI測定試験:82.6%,hs-cTnT測定試験:69.7%)。
・PROSPER試験(CVD既往のない4,402例;平均年齢75歳,男性45%):hs-cTnT検知可能例は3,853例(87.5%),中央値7ng/L,正常範囲内(≦14ng/L)は85%。
方法 PubMed,Web of Science,EMBASEで,2016年9月までに心筋トロポニンと初発CVD(CAD,脳卒中,あるいは両方)の関係を報告した前向き研究を系統的に検索した。さらに,Bruneck Studyの連絡著者を通して未発表の表形式データを入手した。
CVDリスクの推定はランダム効果モデルでメタ解析を行った。
結果 [統合解析]
致死的CVD(hs-cTn分布を3つに分けたうちの下位1/3群とくらべた上位1/3群の相対リスク;95%信頼区間[CI])は7,775例(1.67;1.50-1.86),CVD 11,763例(1.43;1.31-1.56),CAD 7,061例(1.59;1.38-1.83),脳卒中2,526例(1.35;1.23-1.48)。
試験間の異質性は,脳卒中(I ²:0.0%)では低く,致死的CVD(84.1%),CVD(82.8%),CAD(77.6%)は高かった。致死的CVDとの関連が北米の試験で,またhs-cTnIを測定した試験よりもhs-cTnT測定試験で強く,さらにCVDとの関連は非白人での研究でより強かった。致死的CVDには出版バイアスがみられた。

[PROSPER試験]
平均追跡期間8.2年の致死的CVDは694例,CVD 519例,CAD 405例,脳卒中269例。hs-cTnT濃度とCVDに対数線形の正の相関がみられた(hs-cTnT最低値群とくらべた最高値群の調整ハザード比[HR]:CVD 1.55;95%CI 1.23-1.96,致死的CVD 2.16;1.74-2.67,CAD 1.85;1.42-2.42,脳卒中1.21;0.88-1.67)。さらにCRP,推算糸球体濾過量,NT-proBNPで調整すると,リスクがいくらか減弱したが関連は持続した(致死的CVDのHR:1.83,CVD:1.32,CAD:1.60,脳卒中:1.11)。→詳細はPROSPERサブ解析参照

hs-cTnTを従来の危険因子(年齢,性,施設,喫煙,糖尿病歴,収縮期血圧,総コレステロール,HDL-C)に基づく予測モデルに追加すると,致死的CVD予測能が改善した(C index:0.600→0.628;改善0.028[95%CI 0.007-0.050],P=0.018,categorical NRI*;0.123[0.074-0.153]**,continuous NRI;0.357;0.277-0.436**)。一方,CVDはcontinuous NRIがわずかに改善した(0.152;0.052-0.253,P=0.003)のみだった。
*net reclassification index;10年リスク(<15%,15-<25%,≧25%),** P<0.001。

(収載年月2017.10)
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