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心血管低リスク女性における冠動脈石灰化有所見率と予後
meta-analysis

アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)低リスク女性の36%に冠動脈石灰化(CAC)が認められ,ASCVD発症リスク上昇と関連した。CACは古典的危険因子とくらべ予後予測精度をわずかに改善した。
Kavousi M, et al. Prevalence and prognostic implications of coronary artery calcification in low-risk women: a meta-analysis. JAMA. 2016; 316: 2126-34. PubMed

コメント

女性の低リスク患者における,潜在的動脈硬化所見である冠動脈の石灰化病変をリスクとして取り上げるかという,ガイドラインに対する提言に近い論文である。驚くべきことは,ACC/AHAでいう低リスク状態であっても,石灰化病変は約35%に認められるということであり,石灰化病変はイベントの発症の有意な予測能を持っているということである。これが北米,北欧に特徴的なのか今後検討する価値はある。また,CACスコアが100以上であれば,ガイドラインでいう高リスクというカテゴリーと同様のイベント発症予測になるのであり,CACを危険因子の一つに加えることは,十分考慮してもいいのかもしれない。しかし,石灰化病変の発症機序が十分解明されないと,治療介入として,何が的確なのか把握できず,ガイドラインとして提示するには問題が出てくる。すなわち,CAC保有者を対象とした,治療介入試験がないことにはガイドラインとして取り入れるには十分であるとは言えない。しかし,頸動脈硬化などの画像を示すこともそうであるが,リスク管理の要である生活習慣の改善という地道な取り組みのアドヒアランスを上げるには有効な検査となりうるものと思われる。今後,ガイドラインもアドヒアランスの向上という余剰リスクを考慮していく必要があり,その際にこのようなエビデンスをもった潜在的動脈硬化症の評価も必要であると思われる。(寺本

目的 心血管疾患(CVD)は世界的に女性の健康上の重要な問題で,女性におけるCVD危険因子のコントロール不良傾向が懸念されている。女性が長寿であることを考慮すると,リスクが最大になる高齢者の大半を占める女性の一次予防は極めて重要である。リスクの層別アルゴリズムが高リスク患者同定に重要な役割を果たすが,臨床現場でCVD発症の絶対数が多いのは低-中リスク症例である。2007年にMESA(Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis)は冠動脈疾患(CAD)低リスク女性の32%が冠動脈石灰化(CAC)を有し,これらの症例はCAD発症リスクが6.5倍になると発表した(Arch Intern Med. 2007; 167: 2437-42. PMID: 18071165)。2013年のACC/AHA予防ガイドラインでは低-中リスク症例にスタチン治療を推奨しているが,リスクを予測する診断法や検査法検討の可能性を残している。
アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)低リスクの無症候性女性において,CAC検査のリスク層別,推定の有用性を評価するために,住民ベースコホート研究のメタ解析を行った。
主要評価項目は,ASCVD(非致死的心筋梗塞[MI],CAD死,脳卒中の複合エンドポイント)。
対象 6,739例。5つ*の大規模住民ベースコホート研究参加女性で,10年ASCVDリスク**<7.5%のCT検査によるCACスクリーニング(1998-2006)実施例。
各研究除外基準:既往(CAD,脳卒中,糸球体濾過量<30mL/分/1.73m²の慢性腎障害),スタチン治療例,LDL-C≧190mg/dL,>79歳,糖尿病合併患者など。
■参加者・研究背景:平均年齢44-63歳,CAC保有例36.1%(25.2-66.5%),糖尿病2.3-6.6%,早発性CAD家族歴14.0-42.4%,追跡期間中央値7.0-11.6年。
* DHS(Dallas Heart Study),FHS(Framingham Heart Study),HNR(Heinz Nixdorf Recall),MESA,Rotterdam Study
** ACC/AHA pooled cohort equations(年齢,総コレステロール,HDL-C,現喫煙,収縮期血圧,降圧薬使用,糖尿病)で算定。
方法 CACスコアは冠動脈(左主幹部,左前下行枝,回旋枝,右冠動脈)の石灰化容積の合計をAgatston法で定量(数値)化。CAC非保有:CAC=0,CAC保有:CAC>0-100,>100に分類した。
固定効果メタ解析を実施し,CACとASCVDの関係はCox比例ハザードモデルで検討し,CACのASCVDの予測能が古典的危険因子より上回るかはc統計量,continuous net reclassification improvement(cNRI)で評価した。
結果 [低リスク(10年リスク<7.5%)女性におけるCACのASCVD予測]
ASCVDは165例(非致死的MI 64例,CAD死29例,脳卒中72例)。
CAC保有例は非保有例より高齢で,糖尿病,早発性CAD家族歴が多いなど,CVリスクプロファイルが不良だった。
ASCVDの発生比率は1.5-6.0例/1000人・年で,CAC保有例は非保有例にくらべ,ASCVDリスクが高かった(4.33 vs 1.41例/1000人・年:差2.92;95%信頼区間[CI]2.02-3.83,調整HR2.04;95%CI 1.44-2.90)。
CAC>0-100,>100は,ASCVD増加と関連した(それぞれ1.66,8.27例/1000人・年:HR 1.53,4.02 vs CAC非保有例)。
古典的危険因子にCACを追加した場合のC統計量は,0.73(95%CI 0.69-0.77)から0.77(0.74-0.81)へ増加,ASCVD予測能はcNRI 0.20(95%CI 0.09-0.31)。

[低リスク(10年リスク<10%)女性におけるCACのASCVD予測(二次解析)]
7,772例・追跡中央値7.7-11.6年で,CAD 150例(0.5-3.8/1000人・年),うち非致死的MI 93例,CAD死57例。CADリスクはCAC保有例が非保有例より高かった(3.50 vs 0.87/1000人・年:差2.63;1.92-3.34)。CADのHRは,CAC保有 vs CAC非保有:2.46,CAC>0-100 vs CAC非保有:1.80,CAC>100 vs CAC非保有:4.42。

(収載年月2017.03)
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