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尿中ナトリウム排泄量とCVDの関係に対する高血圧の影響
pooled analysis

低ナトリウム摂取は高血圧の有無を問わず心血管イベント・全死亡リスクと関連したが,高ナトリウム摂取とイベントの関連は高血圧患者のみで認められた。減塩を行うべき対象はナトリウム摂取量が多い高血圧患者のみである可能性が示唆された。
Mente A, et al.; PURE, EPIDREAM and ONTARGET/TRANSCEND investigators: Associations of urinary sodium excretion with cardiovascular events in individuals with and without hypertension: a pooled analysis of data from four studies. Lancet. 2016; 388: 465-75. PubMed

コメント

血圧と心血管疾患発症の関係を,尿中ナトリウム排泄量の観点からこれまで発表されているPURE,EPIDREAM,ONTARGET/TRANSCENDという4つの臨床研究から検討したメタ解析である。
食塩摂取量と心血管疾患発症との関連は高血圧患者のみに認められ,非高血圧患者では相関はみられなかったという結論である。心血管合併症は,高血圧という病態を介して発症するものであり,塩分とは必ずしも直結するものではないことを示唆している点では,意味のある研究といえる。高血圧発症には食塩感受性と非感受性があるとされ,そのような考え方を支持する結果かもしれない。
しかし,以下のような問題点がある。
まずナトリウム摂取量に関して,早朝のスポット尿から24時間尿中ナトリウム排泄量を推定しているトライアルについての分析である点に問題がある。この方法では,食塩摂取量の低い値では実測した値を過大に評価し,摂取量が高いレベルでは過小に評価してしまう可能性が指摘されている。
また,本メタ解析では追跡研究とランダム化比較試験とが混在しているために,対象の臨床的背景は他の薬剤,特に利尿薬などの状況が調整されにくい点がある。(桑島

目的 尿中ナトリウム摂取量と心血管疾患(CVD),死亡の関係はU字型であることが報告されているが,この関係が高血圧の有無により異なるかは明らかでない。
ナトリウム摂取量とCVD・全死亡の関係が高血圧患者と非高血圧者とで異なるかを検証するため,4研究の統合解析を実施した。
主要評価項目は,死亡・CVD(心筋梗塞,脳卒中,心不全)の複合エンドポイント。
対象 4研究*・13万3,118例(高血圧患者63,559例,非高血圧者69,599例)。24時間尿中ナトリウム排泄量と主要評価項目のいずれかの関連を評価した前向き研究。
* PURE(10万1,511例),ONTARGET・TRANSCEND(28,757例),EPIDREAM(追跡期間中のCVD発症例478例とCVD非発症例2,372例を抽出)
■患者背景:平均年齢(高血圧患者58.6歳,非高血圧者50.5歳),CVD既往なし74%,非糖尿病89%。
研究背景:参加国49ヵ国,追跡期間中央値4.2年。
方法 PubMedを検索し(1960年1月1日-2016年4月1日),参考文献も調査。
ナトリウム摂取量の代替指標として,早朝空腹時尿検体から川崎式を用いて推定した24時間尿中ナトリウム排泄量を用い,<3g,3.00-3.99g,4.00-4.99g,5.00-5.99g,6.00-6.99g,≧7g/日群の6群に層別してイベントとの関係を検証。
また,ベースライン時非CVDの98,612例(追跡期間中央値3.7年;CVD発症3,733例)のデータから観察されたナトリウム排泄量と収縮期血圧(SBP),SBPとCVDの関係に基づき,ナトリウム摂取量とCVDリスクの関係をモデル化。モデルから推測される予測ハザード比(HR)を実際のHRと比較することで,ナトリウム排泄量とCVDの関係が降圧のみを介したものかどうかを検証した。
結果 [ナトリウム排泄量と高血圧]
平均推定ナトリウム排泄量は高血圧患者4, 956mg/日,非高血圧者4,823mg/日(P<0.0001)。
高血圧患者におけるナトリウム排泄量<3g/日は7,006例(11%),≧7g/日は7,060例(11%),非高血圧者ではそれぞれ7,547例(11%),6,271例(9%)。
ナトリウム排泄量の増加に伴うSBPの増加は,高血圧患者のほうが非高血圧者より大きかった(ナトリウム排泄量1gあたりのSBP変化量:2.08 vs 1.22mmHg,交互作用P<0.0001)。
拡張期血圧についても同様の結果が示された(0.72 vs 0.52mmHg,交互作用P<0.0001)。

[CVD・死亡との関係]
複合エンドポイントの発症は,高血圧患者6,835件(11%),非高血圧者3,021件(4%)。
高血圧患者ではナトリウム排泄量と複合エンドポイントにU字型の関係が認められ,ナトリウム排泄量4-4.99g/日群(15,700例[25%])を対照とすると,≧7g/日群(調整HR 1.23[95%信頼区間1.11-1.37])と<3g/日群(1.34[1.23-1.47])はいずれもリスクが有意に高かった(ともにP<0.0001)。血圧で調整後もナトリウム高排泄量,低排泄量と複合エンドポイントの関係に違いはなかった。
一方,非高血圧者では,≧7g/日群で4-4.99g/日群(18,508例[27%])とくらべたリスクの増加はみられなかったが(0.90[0.76-1.08]),<3g/日群では有意な増加が認められた(1.26[1.10-1.45],P=0.0009)。
これらの関係は血圧で調整後も有意であった。

[予測モデルとの比較]
ナトリウム摂取量とCVDの関係はSBPとCVDの関係のみに依存すると仮定したモデルでは,予測HRは高血圧の有無を問わずナトリウム排泄量の増加に伴い一貫して増加した。ただし,この増加は高血圧患者のほうが大きかった(P<0.0001)。
一方,実測HRは高血圧,非高血圧ともに予測HRとは一致せず,とくにナトリウム排泄量<3g/日で大きく解離した。高血圧患者では,>4g/日で予測HRと実測HRはほぼ同等であったが,非高血圧者では実測HRのほうが低かった。これらの結果から,一定レベルのナトリウム排泄量では血圧以外のメカニズムも臨床転帰に影響を及ぼしている可能性が示唆された。

(収載年月2017.02)
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