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TAVRを施行する大動脈弁狭窄患者における早期脳血管イベントの予測因子
meta-analysis

TAVR後30日以内の脳血管イベント予測因子は,女性,CKD,登録日,新規発症心房細動。
Auffret V, et al. Predictors of early cerebrovascular events in patients with aortic stenosis undergoing transcatheter aortic valve replacement. J Am Coll Cardiol. 2016; 68: 673-84. PubMed

コメント

TAVRが重症ASの低手術リスク例に適応拡大するには周術期合併症が問題となる。脳血管イベント(CVE)の頻度は2.5-3%まで低下したが,MRIでしか判明しない無症候例が非常に多く,最も恐ろしい合併症の一つである。CVEのリスク因子はこれまでも検討されているが,報告により異なっている。塞栓保護デバイスや最適な抗血栓療法が議論されているが,信頼あるCVEのリスク因子を知ることは個々のTAVR治療に重要である。本研究はTAVR 30日後までの臨床的CVEの予測因子をメタ解析で検討した。女性・CKD・各施設の登録期間の前半・術後発症心房細動がCVEリスク増加と関連したが,アプローチ経路や人工弁の種類には差を認めなかった。
女性のほうが大動脈弁輪径や左室流出路径が小さく,人工弁の位置決めや挿入時に元来の弁と人工弁との機械的相互作用が増加しCVEリスクと関連する。PARTNER試験で,女性によくみられるより小さい大動脈弁輪面積がCVEリスクを上昇させたことと一致する。TAVR例のCKDは高度動脈硬化性疾患と同等で,大動脈弁や大動脈壁の動脈硬化病変が進行していると想定される。TAVR時に頸動脈フィルターデバイスを用いると2/3の症例で大動脈弁や大動脈壁から遊離した組織片が検出される。しかし,糖尿病・末梢動脈疾患・冠動脈疾患はCVEのリスク因子ではない。一般に,CKD例はCVEリスクを40-45%増加させ,これは心血管疾患例でより明らかであることが報告されており,慢性炎症・酸化ストレス・交感神経活性亢進・易血栓性が関連しうる。CKD例に対するCVE予防のための抗凝固療法のガイドラインは確立されておらず,CKD例は出血傾向を認めるので抗凝固薬の導入は躊躇されるのが課題である。
経心尖アプローチはカテーテルが大動脈弓を通らないのでCVEが少ないとするメタ解析があるが,他のメタ解析ではこれは支持されていないので,現時点ではアプローチ経路はCVEと関連しないと考えたい。各施設の登録期間の前半にCVEが多いのは単なるラーニングカーブではなく,患者選択基準・デバイス改良・操作手技の改善が考えられる。バルーン後拡張は術後死亡と関連する弁周囲逆流を改善させるが,周術期1週間以内,特に1日以内のCVEと関係する。最もCVEと関連するのは術後新規の心房細動(TAVR例の5-30%)で,術後1-30日のCVEと関連し,入院中の持続ECGモニタリングの重要性が再認識され,不整脈の持続時間にかかわらず抗凝固療法の適応である。(星田

目的 経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)後の脳血管イベントは最近では2.5-3%に減少したが,依然として重大な合併症のひとつである。多くの危険因子が提示されているものの,予測因子は確立されていない。
TAVR後30日以内の臨床的に妥当な脳血管イベント予測因子を探索する。
対象 64研究・72,318例。対象≧50例,TAVR後の脳血管イベント発症率を候補予測因子の有無で比較した研究のうち,それらの因子について脳血管イベントのリスク比(RR)の算出が可能な定量データがあるもの。
除外基準:症例報告など。
■研究背景:登録期間2005年1月-’14年12月,論文発表期間2010-’15年,サンプルサイズ72-11,310例,追跡期間1-48ヵ月。
患者背景:平均年齢78.6-84.5歳,男性47.6%,脳卒中既往7.3-23.0%(44研究),心房細動(AF)既往5.4-50.6%(38研究),アプローチ(59研究)(経大腿動脈77%,経心尖18%,鎖骨下動脈3%,経大動脈1.5%),弁の種類(63研究)(バルーン拡張型[Sapien]11研究,自己拡張型[CoreValve])10研究,Sapien・CoreValve 42研究)。
方法 PubMed,EMBASEを検索(2003年1月1日-’15年12月9日)。
脳血管イベントは,30日後の脳卒中・一過性脳虚血発作(TIA),全脳卒中,major(重大な)脳卒中,入院中の脳卒中・TIA,脳卒中,重大な脳卒中の順に同定。同定した転帰を統合して要約RRを算出。患者関連因子,手技関連因子の合計16因子を解析。
結果 [脳血管イベント]
TAVR後30日以内の脳血管イベント発症は2,385例(3.3%)。
発症率は1~11%で,単施設研究(中央値4%)と多施設共同研究(3%)の差はなく,イベント判定の有無による違いもみられなかった。
平均短期死亡率は7.1%。

[患者関連因子]
検討した因子は,年齢(≧90歳),性別,肥満(BMI≧30kg/m²),糖尿病,AF既往,既知の冠動脈疾患,慢性腎臓病(CKD;eGFR<60mL/分/1.73m²),末梢動脈疾患。
脳血管イベントリスクと関連したのは男性(RR 0.82;95%信頼区間0.70-0.97,P=0.02,I ²=0%)と CKD(1.29;1.03-1.63,P=0.03,I ²=0%)。
出版バイアスは認められなかった。

[手技関連因子]
検討した因子は,アプローチ(経大腿動脈[TF] vs 非TF),弁の種類(自己拡張型[CoreValve] vs バルーン拡張型[Sapien]),登録日(施設の登録期間の前半 vs 後半),valve-in-valve,弁塞栓・移動,バルーン後拡張,抗血小板薬(単剤 vs 2剤併用),AFの新規発症。
有意に関連した因子は,登録日(前半の登録)(1.55;1.16-2.08,P=0.003,I ²=0%)とAF新規発症(1.85;1.20-2.84,P=0.005,I ²=0%)。
バルーン後拡張も,統計学的有意ではなかったがリスク増加傾向を示した(1.43;0.97-2.10,P=0.07,I ²=0%)。
出版バイアスはみられなかった。

(収載年月2017.01)
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