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ステント内再狭窄治療におけるDCB vs. DES再留置_DAEDALUS study -2
The Difference in Anti-restenotic Effectiveness of Drug-eluting stent and drug-coated balloon AngiopLasty for the occUrrence of coronary in-Stent restenosis.

pooled analysis

ステント内再狭窄の治療において,ベアメタル(BMS)植込み後再狭窄(BMS-ISR)患者では,薬剤コーティングバルーン(DCB)と薬剤溶出ステント(DES)再留置の有効性・安全性は同等。一方,DES植込み後再狭窄(DES-ISR)患者においては,DCBよりDES再留置が有効性は高いが安全性は同等。
Giacoppo D, et al. Drug-Coated Balloon Angioplasty Versus Drug-Eluting Stent Implantation in Patients With Coronary Stent Restenosis. J Am Coll Cardiol. 2020; 75: 2664-78. PubMed

コメント

「ダイダロス」は,ギリシャ神話に登場する職人で斧や水準器を発明した名工であり,その名は「巧みな人」を象徴する。
DEADALUS studyは,ステント内再狭窄(in-stent restenosis:ISR)に対するDCB vs. DESの有効性・安全性を比較したRCTのpooled analysisで,過去最大規模の症例(10試験,1976例,2080病変)を患者ベースのデータを用いて丁寧に解析しているのが特徴である。
その症例数は,有効性(3年間の再々治療;TLR回避)を検討するには十分と考えられる。結果,DCBよりDES(再)留置のほうが有効で,とくに小血管・病変長20 mm以上・DES-ISRなど条件の悪いISRで有意差がついた。一方,BMS-ISRに対しては,ほぼ同等だった。はたして,その違いはどこに起因するのだろうか?
興味深いのは,TLRの累積発生グラフである。半年以内はグラフが重なり,1年以降はほぼ平行線をたどり,DCBとDESが乖離するのは半年から1年の間に限局している。この期間におけるDES-ISRへの効果の違いが趨勢を決したわけである。
新生内膜増殖が主体となるBMS-ISRに対してDES-ISRのメカニズムが異なるのは想像に難くない。IVUSやOCTによる研究で,DES-ISRにはステント拡張不良や断裂・変形の頻度が高く,とくに第二世代DESでその傾向が顕著であることが示されている。こうした病態に対しては,内膜増殖を抑制するだけのDCBでは再々狭窄を防ぐに不十分で,2つ目のステントで支え直す必要性が示唆される。PEPCAD China ISR ・RESTORE を除く8試験が欧州発である本pooled analysisでは,coronay imagingへの言及はなく,メカニズムに関しては不明である。また,ステント留置期間が長くなると新規動脈硬化 (in-stent neoatherosclerosis)が増えてくる。DES留置後のほうが早期に発現し,石灰化の頻度も高いという報告もある。neoatherosclerosisに対する両者の有効性の違いも興味深いが,本研究ではステント留置期間への言及はない。この点もlimitationである。
一方,安全性については「有意差なし」と強調されているが,実際の数字(Hazard ratio)は総死亡;0.81,心臓死:0.61とDCB群で少ない傾向だった。その要因は不明だが,もう少し症例数が増えたり,観察期間が長くなったら,どうなるのだろう。つまり,ISRとくにDES-ISRはDES再留置で,という単純な話ではないかもしれない。
やはり,再狭窄のメカニズムに合わせた最適な治療法の選択が理想である。そこはcoronary imagingが自由に使える「巧みな」日本人の出番ではないか,とも思う。(中野

目的 ステント内再狭窄に対する治療として,薬剤(paclitaxel)コーティングバルーン(DCB)による血管形成術と薬剤溶出ステント(DES)再留置の2つが最も一般的かつ有効とされるが,どちらがより優れているかについていまだコンセンサスを得るに至っていない。
DAEDALUS studyはステント内再狭窄の有効な治療法について検討した大規模共同pooled analysisであり,DCBとDES再留置を比較した既存の無作為化10試験の患者データを基に分析した。

今回のpre-specified解析では,対象となるステント内再狭窄をベアメタルステント(BMS)後とDES後に分けて検討。
有効性の一次エンドポイントは,3年後の標的病変への再血行再建(TLR)率。
安全性の一次エンドポイントは,3年後の全死亡,MI,標的病変の血栓症の複合。
対象 1958例。BMS留置後にステント内再狭窄が生じたBMS-ISR群 710例(724病変)vs. DES留置後のDES-ISR群 1248例(1338病変)。さらにDCB群またはDES再留置群に割り付け。
結果 [有効性の一次エンドポイント:3年後のTLR率]
・BMS-ISR群:治療法の違いによる差は認められなかった[DCB 9.2% vs. DES再留置 10.2%; HR 0.83; 95%信頼区間(CI)0.51~1.37]。

・DES-ISR群:DES 再留置にくらべDCBで有意にリスク増加(20.3% vs. 13.4%; HR 1.58; 95%CI
1.16~2.13; P =0.003)。

結果は多変量補正後も一貫していた(BMS-ISR群の補正後HR 0.78; 95%CI 0.46~1.32 vs. DES-ISR群の補正後HR 1.74; 95%CI 1.24~2.45; 交互作用のP =0.012)。

[安全性の一次エンドポイント:3年後の全死亡,MI,標的病変の血栓症の複合]
・BMS-ISR群:治療法の違いによる差は認められなかった(DCB 8.7% vs. DES再留置 7.5%; HR 1.13;
95%CI 0.65~1.96)。この結果は,多変量補正後も一貫していた(HR 0.98; 95%CI 0.53~1.82)。

・DES-ISR群:DCBでリスクが低下していたが,ぎりぎり有意差なし(DCB 9.5% vs. DES再留置
13.3%; HR 0.69; 95%CI 0.47~1.00)。多変量補正後も同様だった(HR 0.66; 95%CI 0.43~1.03)。

[二次エンドポイント:全死亡・心臓死・非心臓死・MI・標的病変血栓症・TLR・標的血管再血行再建 (TVR)の個別および複合エンドポイントよび複合イベント]
・BMS-ISR群:治療法の違いによる差は認められなかった。多変量補正後も同様。

・DES-ISR群:全死亡および心臓死において,DES再留置にくらべDCBでリスク低下が認められたが,有意差には達しなかった。
虚血によるTLRおよびTVRはDCBにくらべDES再留置で有意に低下。

[BMS-ISRとDES-ISRでの比較]
・3年後のTLR率はDES-ISR群にくらべBMS-ISR群で有意にリスク低下(9.7% vs. 17.0%; HR 0.56;
95%CI 0.42~0.74)。

・DCBではBMS-ISR群でTLRリスクが低下(HR 0.42; 95%CI 0.28~0.62)。DESはBMS-ISR群・
DES-ISR群間にリスクの差は認められなかった。

・3年後の全死亡,MI,標的病変の血栓症リスクにおいて,BMS-ISR群・DES-ISR群間に有意差は認められなかった(HR 0.75; 95%CI 0.54~1.07)。

(収載年月2020.08)
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