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日本のPCI 3試験統合コホートにおけるDAPTスコアの有用性の検証
pooled analysis

PCI施行の日本人において,DAPTスコアは虚血性および出血性イベントリスク例を良好に層別した。ただし,スコア高値例であっても虚血性イベントリスクは非常に低かった。
Yoshikawa Y, et al: Validating utility of DAPT score in a large pooled cohort from three Japanese PCI studies. Circulation. 2017 Oct 5. PubMed

コメント

薬剤溶出性ステント(DES)留置後の2剤(aspirin+ thienopyridine)の抗血小板剤(dual anti-platelet therapy:DAPT)併用期間を短縮し早期short-DAPT へと時代が流れる中で,2014 年に発表された「DAPT 試験」は30ヵ月間のlong-DAPT によるステント血栓症およびMACCE のリスク低減を示し物議を醸した。一方で,当然のことながら出血性イベントは増加したため,long-DAPT の最適な患者群を線引きするためにYehらによって提唱された (JAMA. (16); 1735-9)のが“DAPT score”である。今回の検証は,PCI における日本の代表的な大規模臨床試験であるCREDO-KYOTO/ RESET/ NEXT 試験を個人テータレベルで統合し,DAPT score (DS) の有用性・適合性を後ろ向きに検討した。
DS は高値であれば虚血性イベントが増加,低値ほど出血性イベントが増加するイメージである。今回の検証はそのカットオフを原著に合わせて“2”に設定,結果として同様の傾向が示されたことから,「日本人における層別化にも有用」と結論付けた。しかし実際の数字を比較すると,DS 高値群でのthienopyridine 追加(=DAPT)の恩恵(虚血性イベント減少)は絶対リスク差で3.0%(DAPT 試験)対 1.0%(本検証),DS 低値群でのDAPT の弊害(出血性イベント増加)は1.6%対0.9%といずれもその幅は小さかった。
筆者らも指摘するように本検証にはlimitationが多い。例えば,検証対象がそもそもDAPT vs SAPT(single anti-platelet therapy)のランダム化試験ではないので選択バイアスが大きい。DAPT群がSAPT群の3倍あり,またDS高値群が低値群の倍以上に及ぶためpropensity matchingの症例数が少なく,解析の信憑性が低い。13ヵ月時点でのDAPTの有無で群分けしているが,試験期間を通して継続されたとは限らない,などである。
元来DSは,米英仏の多施設で行われた「DAPT試験」から有意であった虚血リスクと出血リスクを抽出し,統計学的に算出されたいわば自作自演のスコアである。その中には第一世代DES(Paclitaxel-eluting stent)が含まれていたり,高齢がマイナスポイントに振り分けられるなど実臨床からは腑に落ちない点もある。
抗血小板療法の個別化・層別化には大賛成であるが,欧米に比べ虚血性イベントが少なく出血性イベントが多い傾向にある日本人に,このスコアをそのまま適合して良いものだろうか? 筆者らには,是非,予後にまで踏み込んだ“日本版DAPT score”の構築をお願いしたいと思う。(中野

目的 DAPTスコア(DS*)はDAPT(Dual Antiplatelet Therapy)試験から作成されたPCI施行後の虚血・出血リスクを推定するツールである。しかし,その有用性を検証した外部試験は少ない。
日本人でのPCI試験を統合した大規模コホートにおいて,DSによる慢性期の虚血および出血リスクの層別化の有用性,および薬剤溶出性ステント(DES)留置後のDSに基づいたDAPT実施期間の延長がリスクを低下できるかを後ろ向きに検証する。
主要評価項目は,虚血一次エンドポイント(心筋梗塞[MI],ARC[Academic Research Consortium]定義のdefinite/ probable ステント血栓症[ST]の複合エンドポイント),出血一次エンドポイント(GUSTO基準中等度-重症)。
*-2-10ポイント(0:<65歳,-1:65-<75歳,-2:≧75歳,2:静脈グラフトに対するステント,うっ血性心不全(CHF)既往あるいはEF<30%,1:現喫煙あるいは1年以内の喫煙,糖尿病,AMI,ステント径<3mm,PCI・MI既往,paclitaxel溶出ステント)あり,DS=1はDS中等度,<1はDS超低値。
対象 12,223例・3研究*。DES留置成功例で13ヵ月後の虚血性・出血性イベント回避例,退院時のDAPT実施例。
■患者背景:DS高値(≧2)例:3,944例(32%),低値(<2)例:8,279例(68%)。
*CREDO-Kyoto registry cohort-2(Coronary REvascularization Demonstrating Outcome Study in Kyoto Registry PCI/ CABG registry cohort-2):多施設登録研究,2005年1月-’07年12月に初回血行再建術を施行した連続症例6,206例。追跡期間(中央値)は5.1年。
RESET(Randomized Evaluation of Sirolimus-Eluting Versus Everolimus-Eluting Stent Trial):2010年2月-7月に登録した2,975例におけるall-comerの多施設ランダム化比較試験(RCT);sirolimus溶出ステント群 vs everolimus溶出ステント(EES)群。追跡期間は3.1年。
NEXT(NOBORI Biolimus-Eluting Versus XIENCE/PROMUS Everolimus-Eluting Stent Trial):2011年5月-10月の登録3,042例におけるall-comerの多施設RCT;EES群 vs biolimus溶出ステント群。追跡期間は3.1年。
方法 3研究の患者個人データを統合し,13ヵ月以降36ヵ月後までの虚血性・出血性イベントリスクをDS別(高値 vs 低値)で比較し,両群でのDAPTの実施状況とリスクの関係を評価した。13ヵ月の時点でDAPTを継続していたDAPT実施群は9,371例(76.7%)だった。
DAPT実施期間の決定は医師に委ねられており,患者背景も異なるため,propensity score matchingコホート(5,704例)で探索的解析(長期DAPTと転帰の関係におけるDS高値 vs 低値)を実施した。
MIはCREDO-KYOTOではARTS(Arterial Revascularization Therapies Study)の定義を,RESET,NEXTではARCの定義を採用した。
虚血・出血一次エンドポイントおよび各エンドポイントの差をlog-rank検定で評価し,累積発症率をKaplan-Meier法で推定した。
結果 [患者背景:DS高値群 vs 低値群]
DS高値群よりも低値群のほうが高齢(62歳 vs 72-71歳[DAPT実施-非実施群]),女性(17-18% vs 29-30%),脳卒中既往(10-7.4% vs 12-9.4%),末梢動脈疾患(5.9-4.5% vs 7.2-6.2%),心房細動(5.3-6.9% vs 7.0-8.5%),悪性腫瘍(4.4-5.4% vs 8.4-9.5%),貧血(10-8.9% vs 12-9.7%)が有意に多かったが,発症時が急性心筋梗塞(19-29% vs 8.2-12%),糖尿病(68-63% vs 33-27%),現喫煙(46-53% vs 12-15%),CHF歴(16-13% vs 1.9-1.7%),EF<30%(5.2-5.0% vs 0.4-0.5%),MI既往(33-29% vs 16-11%),血液透析(6.2-3.7% vs 3.8-2.8%)は高値群のほうが有意に多かった。
手技背景としては,多枝病変(62-59% vs 53-52%)などの病変複雑度,ステント長>28mm(59-58% vs 46-45%)の使用はDS高値群のほうが多かった。
また,退院時の薬物治療実施率はDS低値群よりも高値群のほうが高かった(スタチン:73-66% vs 66-61%,β遮断薬:42-35% vs 30-28%,ACE阻害薬/ARB:68-69% vs 57-53%)。

[13ヵ月ランドマーク解析による臨床転帰:DS高値群 vs 低値群]
PCI施行から13ヵ月以降の累積3年虚血一次エンドポイント発症率は,DS高値群のほうが低値群よりも有意に高く(虚血イベント:57例[1.5%] vs 69例[0.9%],P=0.002),出血イベントは同群で非有意に低かった(81例[2.1%] vs 215例[2.7%],P=0.07)。
二次エンドポイントは,心臓死(2.0% vs 1.4%),MI(1.5% vs 0.8%),ST(0.7% vs 0.3%)の3年累積率は,高値群で有意に多かったが,非心臓死(2.4% vs 3.9%),GUSTO重症出血(1.0% vs 1.6%)は低値群で有意に多かった。

[13ヵ月後のDAPT実施,非実施による,propensity score matchingコホートの背景と転帰]
DS高値群1,590例(13ヵ月後のDAPT実施群:795例,非実施群:795例),低値群4,114例(それぞれ2,057例)。糖尿病,MI歴,脳卒中既往,透析,左主幹部病変へのPCIは前者に多く,AMI症例,肝硬変は後者で多かった。ステントタイプ,薬物治療も両群で相違が認められたが,これは新しい試験であるRESET,NEXTにおいてDAPT実施群がより多かったことによる。
DS高値群での3年累積虚血一次エンドポイントは,DAPT実施群のほうが非実施群より少ない傾向がみられた(0.9% vs 1.9%,P=0.10)が,出血一次エンドポイントに両群間差はなかった(1.9% vs 2.2%,P=0.76)。
一方で,DS低値群での3年累積出血一次エンドポイントはDAPT実施群のほうが多い傾向にあった(3.2% vs 2.3%,P=0.08)が,累積虚血一次エンドポイントは同等だった(08% vs 1.0%,P=0.51)。

(収載年月2017.12)
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