循環器トライアルデータベース
HOME
トライアル検索
フリーワード検索
*検索について
トライアル名検索
1 4 5
A B C D E F
G H I J K L
M N O P Q R
S T U V W X
Y Z
疾患分類検索
薬効分類検索
薬剤名検索
治療法検索
キーワード検索
掲載トライアル一覧
学会情報
meta-analysis, pooled analysis
日本のトライアル
Trial Review
用語説明
Topic
開設10周年記念座談会
開設5周年記念座談会
AHA2012/ISH2012特別企画
このサイトについて
ライフサイエンス出版のEBM関連書籍
meta-analysis, pooled analysis
← meta-analysis, pooled analysis のトップページへもどる
非ST上昇型急性冠症候群における侵襲的治療開始の至適タイミング:ランダム化比較試験のメタ解析
collaborative meta-analysis

侵襲的治療早期開始の待機的開始にくらべた死亡率低下は認められなかった。しかし,高リスク患者では早期開始による死亡抑制の可能性が示された。
Jobs A, et al: Optimal timing of an invasive strategy in patients with non-ST-elevation acute coronary syndrome: a meta-analysis of randomised trials. Lancet. 2017; 390: 737-46. PubMed

コメント

NSTE-ACS急性期の対応は早期侵襲的治療で衆目の意見は一致し,EBMも出揃っている。また,心原性ショック(血行動態不安定)・急性心不全合併・致死性不整脈・薬剤抵抗性狭心症状・ST上昇型への移行,等のSTEMIに準じる超ハイリスク症例へのimmediate(2時間以内)invasive strategyにも異論は無いであろう。議論となりエビデンス確立も不十分なのが,今回のテーマである「超ハイリスク以外の症例は,いつやるの?」である。
本メタ解析はRCTの個人データにまで踏み込んで統合し,これまで証明されてはなかった「ハイリスク」症例でのearly(24時間以内)invasive strategyの有用性;死亡・心筋梗塞といったハードエンポイントへの寄与を証明した点が画期的である。
一方で,いくつかの問題点を指摘しておきたい。
・採用されているRCTが2003年から2016年と多岐にわたる。さらに2010年以前の報告が症例数ベースで3/4を占めている。つまりPCIデバイスや薬物療法が時代には合っていない。
・2003年から2008年に登録され(2009年に発表),現在のガイドラインの根幹をなすTIMACS試験が6割近くの症例数を占めている。「ハイリスク」症例の定義も同試験の結果が概ね踏襲されている。
・試験ごとに治療開始のタイミング;early vs delayedの定義が異なり,一部オーバーラップしてしまっている。
・心筋マーカー(陽性)が「ハイリスク」4項目の一つであるが,判断材料が高感度トロポニンからミオグロビンまで試験ごとに異なるため,感度が一定でない。
このメタ解析を受けて,心から「ハイリスク!?,今でしょ!」と言えない理由がこの辺りにある。(中野

目的 中等度-高リスクの非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)にはルーチンの侵襲的治療が推奨されているが,治療開始のタイミングは患者のリスク,エビデンスのない専門家の意見,GRACE(Global Registry of Acute Coronary Events)リスクスコア>140,TIMACS(Timing of Intervention in Acute Coronary Syndrome)の事前設定サブグループの結果などに基づいており,至適タイミングは明確には定義されていない。また治療開始のタイミングによる死亡抑制効果を検証できるだけの検出力を持つトライアルはなく,これまでのメタ解析では死亡や非致死的心筋梗塞(MI)の差を検出できず,示されたのは再発・難治性虚血および入院期間のみが早期治療のほうが待機的治療よりも改善したことで,結果不一致のため高リスク例のサブグループ解析もできなかった。
NSTE-ACS患者における侵襲的治療(冠動脈造影)開始のタイミングによる死亡を検討するためランダム化比較試験(RCT)の患者個人あるいは標準化された表形式データを統合し,高リスクサブグループも加えて解析した。
主要評価項目は全死亡。
対象 5,324例・8試験*。NSTE-ACS患者において冠動脈造影実施を早期(ランダム化から24時間以内)と待機的(24時間以降)で比較したRCTで,入院中のランダム化から少なくとも30日間の死亡の報告があり,治験責任医が背景,転帰の患者データの提供に同意したもの,あるいは標準化表シートの表形式データ(TIMACS)。
■追跡期間中央値180日(30-732日)
*ABOARD, ELISA, ELISA-3, ISAR-COOL, LIPSIA-NSTEMI, RIDDLE-NSTEMI, Sciahbasi, et al, TIMACS
方法 MEDLINE(2016年12月20日まで),Cochrane Central Register of Controlled Trials(12月21日まで),Embase(2017年1月2日まで)を検索した。
変量効果モデルを使用し,ハザード比(HR)を統合した。
侵襲的治療開始タイミングの時間依存性検証のため追跡期間をランダム化から退院,退院から追跡終了までにわけた。高リスクサブグループの定義は,ベースライン時の心筋生化学マーカー陽性,糖尿病,≧75歳,GRACEリスクスコア>140。
結果 [全死亡]
277例(5%)。うち121例(44%)は入院中に,156例(56%)は退院後に死亡した。
いずれの追跡期間でも,早期・待機的治療の全死亡に対する有意な影響はみられなかった(全追跡期間HR 0.81;95%信頼区間0.64-1.03,P=0.0879)。試験間の異質性はみられなかった(I ²=0%,各追跡期間の異質性P>0.5)。
post-hocメタ回帰分析でも,死亡に冠動脈造影実施開始タイミングによる差はなかった。

[非致死的MI]
338例(6%)。どの追跡期間でも治療間に有意差はなかった(全追跡期間0.91;0.57-1.46,P=0.7014)。試験間に高い異質性がみられた(I ²>50%,各追跡期間の異質性P<0.05)。
post-hocメタ回帰分析で,待機的治療群において,冠動脈造影実施開始がランダム化から24時間以内,24時間以降で有意な関係がみられた。

[高リスクサブグループ]
早期治療群のほうが待機的治療群よりも死亡率が低かったが,有意な交互作用がみられたサブグループはなかった。
心筋生化学マーカー陽性例(4,206[79.0%])では219例(死亡の79.1%)が死亡(0.761;0.581-0.996),糖尿病例(1,441例[27.1%])の死亡は105例(37.9%:0.67;0.45-0.99),≧75歳例(1,282例[24.1%])は136例(49.1%:0.65;0.46-0.93)。GRACEリスクスコアを前向きに算出していた4試験(ELISA-3,LIPSIA-NSTEMI,RIDDLE-NSTEMI,TIMACS)の4,288例(80.5%)で,死亡例は277例(86.3%),スコア>140例(1,519例):HR 0.70;0.52-0.95。

(収載年月2017.11)
▲pagetop
    --------------------
© 2001-. Life Science Publishing Co., Ltd
 
携帯版 EBM LIBRARY