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ST上昇型心筋梗塞患者における血栓吸引
pooled analysis

ST上昇型心筋梗塞患者において,PCI中のルーチンの血栓吸引による臨床転帰の改善は認められなかった。血栓量が多い患者では血栓吸引により心血管死のリスクが低下するが,脳卒中と一過性脳虚血発作のリスクは増加する可能性が示された(Thrombectomy Trialists Collaboration)。
Jolly SS et al:Thrombus aspiration in ST-segment-elevation myocardial infarction: an individual patient meta-analysis: Thrombectomy Trialists Collaboration. Circulation. 2017; 135: 143–52. PubMed

コメント

PCI時に血栓吸引療法を先行させることは,末梢へ飛散する血栓やプラーク破片の量を減らし,no reflow現象の軽減,心機能の改善に寄与する可能性があると考えられてきた。しかし,血栓吸引についてはその効果を疑問視する結果も出ている。今回のメタ解析では,無作為化試験のTAPAS,TASTE,TOTALの3試験について解析を行った。血栓量が多いと末梢塞栓や,no reflow現象の軽減など,血栓吸入療法の有効性がより高いと期待されるが,このメタ解析では,血栓量が多い場合には脳卒中と一過性脳虚血発作のリスクが増加するという残念な可能性が示された。心血管死は減少したとしている。
技術的な改良がなされた血栓吸引療法によるトライアルが将来求められると結論付けている。新たなデバイスの開発とそれに期待された有効性や安全性との間には解離があることもあり,臨床への導入には慎重な姿勢が求められることを改めて示したともいえる。血栓吸引療法についてのメタ解析であり,貴重な論文である。(中村


目的 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)に対するPCI施行中の血栓吸引については,最近の研究結果から有効性が疑問視され,脳卒中のリスクが増加する可能性が示唆されている。
統計学的検出力が十分なランダム化比較試験(RCT)がないため,STEMI患者におけるPCI中の血栓吸引の有効性とリスクを検証するために患者データを用いたメタ解析を行った。
有効性の一次エンドポイントは,30日後の心血管死。
安全性の一次エンドポイントは,30日後の脳卒中・一過性脳虚血発作(TIA)。
対象 18,306例・3試験*(血栓吸引+PCI併用群9,155例,PCI群9,151例)。STEMI患者において血栓吸引+PCIとPCIを比較した対象数≧1,000例のRCT。PCI施行例のみを解析。
* TAPAS(1,071例),TASTE(7,244例),TOTAL(10,732例)。
■患者背景:平均年齢(血栓吸引+PCI群63.3歳,PCI群63.1歳),男性(75.7%,76.5%),Killip分類IV度(両群とも0.8%),現喫煙**(39.9%,42.4%),高血圧(46.6%,46.5%),糖尿病(15.5%,15.9%),心筋梗塞(MI)既往(10.0%,10.3%)。
手技背景:発症からPCIまでの時間(190.0分,185.5分[P=0.025]),橈骨アクセス(67.4%,67.6%),bivalirudin使用(42%,40.8%),未分画ヘパリン使用(84%,84.8%),GP IIb/IIIa阻害薬使用**(32.3%,35.1%),造影剤使用量**(171mL,168mL),透視時間**(13.2分,12.3分),TIMI thrombus grade(5[完全閉塞]:40.8%,41.1%,4[>2mmの血管にdefinite血栓あり]:18.2%,17.8%,3[0.5-2.0mmの血管にdefinite 血栓あり]:16.6%,14.5%),ダイレクトステント**(39.5%,21.1%),薬剤溶出性ステント≧1本植込み(44.3%,44.1%),ステント数(両群とも1.4本),総ステント長(28mm,28.1mm),ステント径(3.2mm,3.1mm),治療枝(左主幹部:両群とも0.9%,左前下行枝:43.1%,44.1%,左回旋枝:15.3%,15.4%,右冠動脈:45.1%,44.5%)。
退院時処方:aspirin(97.4%,97.3%),ticagrelor(両群とも24%),prasugrel(11.4%,11.3%),clopidogrel(60.3%,59.9%),スタチン(両群とも95.3%),ACE阻害薬・ARB(72.8%,73.7%),β遮断薬(84.3%,84.9%),経口抗凝固薬(5.8%,5.9%)。** P<0.001
方法 Medline,EMBASE,Cochrane Central Register of Controlled Trialsを検索(2016年9月2日まで)。
TAPAS試験は脳卒中・TIAデータを前向きに収集しなかったため,安全性の解析から除外。TASTE試験ではイベントの判定が行われなかったため,退院時診断と死亡登録から転帰データを取得した。
結果 血栓吸引群からPCI群へのクロスオーバーは5.5%,PCI群から血栓吸引併用群は6.8%。

[有効性の一次エンドポイント]
30日以内の心血管死に有意な両群間差は示されなかった(血栓併用吸引群221例[2.4%] vs PCI群262例[2.9%]:ハザード比[HR]0.84;95%信頼区間0.70-1.01,P=0.06)。
1年後の心血管死も同様であった(3.7% vs 4.2%:0.90;0.78-1.04,P=0.15)。

[安全性の一次エンドポイント]
30日以内の脳卒中・TIAに差はなかったが(66/8,518例[0.8%] vs 46/8,476例[0.5%]:オッズ比[OR]1.43;95%信頼区間0.98-2.10,P=0.06),試験レベルの有意な交互作用が認められた(P=0.02)。

[その他]
30日以内の全死亡(2.5% vs 3.0%),MI(1.0% vs 1.1%),うっ血性心不全(1.6% vs 1.5%),標的血管再血行再建術(TVR)(2.3% vs 2.6%),心血管死+MI+心原性ショック+うっ血性心不全+ステント血栓症+TVRの複合エンドポイント(7.0% vs 7.6%)にも有意な群間差はなかった。

[サブグループ解析]
血栓量が多い患者(TIMI thrombus grade≧3)では,血栓吸引群は心血管死が少なく(170例[2.5%] vs 205例[3.1%]:HR 0.80;0.65-0.98,P=0.03),脳卒中・TIAが多かったが(55例[0.9%] vs 34例[0.5%]:OR 1.56;1.02-2.42,P=0.04),TIMI thrombus gradeと転帰の有意な交互作用は認められなかった(それぞれP=0.32,P=0.34)。
ClinicalTrials.gov No.:NCT02552407

(収載年月2017.04)
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