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糖尿病合併の有無によるDES留置後のDAPT期間-長期 vs 短期
pooled analysis

糖尿病はDES留置後のMACEの独立した予測因子ではあるが,糖尿病の有無を問わずDAPT長期施行の短期施行にくらべたMACEのリスク低下は認められず,出血リスクが上昇した。
Gargiulo G, et al: Short term versus long term dual antiplatelet therapy after implantation of drug eluting stent in patients with or without diabetes: systematic review and meta-analysis of individual participant data from randomised trials. BMJ. 2016; 355: i5483 PubMed

コメント

糖尿病は動脈硬化の発生・進展,血栓形成,PCI後の内膜肥厚を助長する。本メタ解析は,LST(late stent thrombosis)の懸念が払拭されている第二世代以降のDES(主としてEESとZES)を留置した糖尿病(DM)症例を対象に,主としてclopidogrel + aspirinによるDAPTの妥当な継続期間を検討した。これまでの短期(3〜6ヵ月)と長期(12ヵ月)DAPTの優劣を検討した9つのRCTの中で,I-LOVE-IT 2・ISAR-SAFE・IVUS-XPLを除いた6つのトライアルを患者ベースで解析しており,EBMとしての信憑性は高い。
文章では解りにくいので表にまとめてみた。

表

DM群ではMACE,特にMI発症が多く,DMの有無に関わらず1年間のDAPTでは抑制されなかった。またDM群においては,long DAPT群で出血イベントが増えるものの大出血には差が出ず,ステント血栓症は大幅に減少したという結果であった。患者ベースでの解析とは言え試験によりMIや出血の定義は異なるが,焦点はDAPT期間の「妥当性」をどこに求めるか,という点にある。
筆者らは,ステント血栓症に関しては,頻度が少なく試験ごとのバラツキが大きく結果的にMIや心臓死に差がついていないこと,出血イベントに関してはリスクの低い試験が多く過小評価だった可能性,等を挙げ,short-DAPTを推奨する論調を繰り広げている。
ステント留置後のDAPTの主たる目的はステント血栓症の予防である。またDM症例のようなハイリスク群では二次予防への期待もあるが,今回の検討から1年間(“long”DAPT)では短すぎるのかもしれない。
本メタ解析をどう解釈し臨床に活かして行くべきか。読者の皆さんのご判断にお任せします。(中野


目的 2剤併用抗血小板療法(DAPT)はPCI施行後患者の標準治療であるが,至適施行期間は,特に薬剤溶出性ステント(DES)留置例ではまだ明確になっていない。また,糖尿病患者では血小板,トロンビン活性化が亢進し,aspirinやclopidogelなどの薬剤反応が低下するとされているが,DAPT至適期間の選択に糖尿病を考慮すべきかも明らかになっていない。
DES留置後のDAPT長期(12ヵ月),短期(≦6ヵ月)実施の臨床転帰に糖尿病が及ぼす影響を検討するため,患者個人データを用いて糖尿病合併の有無でDAPT短期,長期実施を比較する統合解析を行った。
主要評価項目は,1年後の主要有害心イベント(MACE:心臓死,心筋梗塞[MI],definite/ probableステント血栓症の複合エンドポイント)。
対象 データ収集不可84例を除く11,389例・6ランダム化比較試験(RCT)*
除外基準:DAPT 12ヵ月と>12ヵ月を比較したRCT。
* DAPT 3 vs 12ヵ月:OPTIMIZE(3,119例),RESET(2,117例),6 vs 12ヵ月:EXCELLENT(1,443例),SECURITY(1,399例),6 vs 24ヵ月:ITALIC(1,894例),PRODIGY(1,501例)
■糖尿病合併の有無による層別:糖尿病例3,681例(32.1%[63.7歳]);インスリン治療例677例(5.9%[62.8歳]),非糖尿病例7,708例(67.2%[62.8歳])。
長期DAPT群:糖尿病例1,853例;インスリン治療例340例,非糖尿病例3,848例。
短期DAPT群:それぞれ1,828例;337例,3,860例。
方法 2015年11月に,Medline,Embase,Cochrane database,国際学会抄録から,DES施行後のDAPT実施期間を直接比較した(短期[3-6ヵ月] vs 長期[≧12ヵ月])RCTを検索し,患者の個人データを統合した。
結果 [患者背景]
糖尿病例は非糖尿病例より高齢(平均年齢:DAPT長期群63.7歳 vs 62.8歳;短期群63.6歳 vs 62.8歳)で,女性が多く(36% vs 28%;34.2% vs 27.8%),心血管疾患が多かった(高血圧:87.4% vs 75.1%;87.0 % vs 74.5%,高コレステロール血症:72.3% vs 60.7%;71.9 % vs 60.1%,MI既往:22.6% vs 21.2%;25.2 % vs 20.2%,PCI/CABG歴:19.5/7.7% vs 15.7/5.6%;21.4/7.3% vs 16.6/5.4%,脳卒中既往:4.4% vs 3.3%;6.2% vs 3.1%,クレアチニン>106.08μmol/L:10.9% vs 7.4%;8.2% vs 6.9%)。また糖尿病例は,罹患枝・治療血管・病変・分岐部病変治療数が多いなど冠動脈疾患がより重症で,留置ステント数,ステント長が大きく,ステント径は小さかった。

[糖尿病の一次エンドポイントへの影響]
糖尿病例は非糖尿病例にくらべ一次エンドポイント(MACE)が有意に多かった(3.3% vs 2.3%:調整ハザード比:2.30;95%信頼区間1.01-5.27[P=0.048])。
糖尿病(P=0.046),虚血血管数(P=0.004),ステント長/患者(P=0.002)はMACEの独立した予測因子であった。

[糖尿病合併有無による一次エンドポイントのDAPT長期 vs 短期]
糖尿病の有無にかかわらず,1年後のMACEにDAPT期間の長さによる有意差は認められなかった(糖尿病例3.3% vs 3.2%:1.05;0.62-1.76[P=0.86],非糖尿病例2.1% vs 2.5%:0.97;0.67-1.39[P=0.85];非糖尿病の交互作用P=0.33)。
サブグループ(性別,≧65歳,急性冠症候群,多枝病変)内でも同様だった。

[出血イベント]
糖尿病例,非糖尿病例間に有意な大・小出血差は認められなかった(1.6% vs 1.4%:0.62;0.19-2.02[P=0.43])。しかし,糖尿病例では長期DAPT例は短期例にくらべ大・小出血が有意に多く(2.1% vs 1.1%:1.89;1.10-3.27,[P=0.02]),非糖尿病例での増加は非有意であった(1.6% vs 1.2%:1.43;0.96-2.11[P=0.08]);非糖尿病の交互作用P=0.37)。
大出血は糖尿病例・非糖尿病例の長期DAPTで一貫して増加したが,有意な増加は非糖尿病例のみであった(0.8% vs 0.4%:2.56;1.08-6.07[P=0.03]);交互作用P=0.69)。

[心筋梗塞]
MIのリスクは糖尿病例で非糖尿病例にくらべ有意に上昇し(2.1% vs 1.5%:3.66;1.25-10.69[P=0.018]),MACE増加の大きな要因であった。しかし,DAPT期間による有意な違いはみられなかった(糖尿病例2.0% vs 2.1%:0.95;0.58-1.54[P=0.82],非糖尿病例1.4% vs 1.6%:1.15;0.68-1.94[P=0.60])。

[definite/ probableステント血栓症]
糖尿病例のほうが非糖尿病にくらべ有意ではなかったが多かった(0.6% vs 0.4%:1.89;0.31-11.38[P=0.49])。
糖尿病例では長期DAPT群のほうが短期よりもリスクが低かった(0.4% vs 0.9%:0.26;0.09-0.80[P=0.02])。一方で,非糖尿病ではこのような関連はみられなかった(0.4% vs 0.3%:1.42;0.68-2.98[P=0.35],交互作用=0.04)。

(収載年月2017.02)
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