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安定型虚血性心疾患患者における自然発症心筋梗塞予防 — PCI vs 至適薬物治療
meta-analysis

安定型虚血性心疾患患者において,PCIは至適薬物治療と比較して全心筋梗塞(MI)の発症は同等であった一方,手技関連のMIのリスクは伴うものの手技非関連の自然発症MIのリスクを有意に低下させ,これに並行して推定死亡率も低下した。
Bangalore S, et al. Percutaneous coronary intervention versus optimal medical therapy for prevention of spontaneous myocardial infarction in subjects with stable ischemic heart disease. Circulation. 2013; 127: 769-81. PubMed

コメント

“目からウロコ”である。これまで「PCIは予後を改善できるか?」という命題を掲げて行われてきた数多くのPCI vs 至適薬物治療(OMT)臨床試験において,手技に関連した心筋梗塞(MI)までもがエンドポイントに設定され「PCIは予後に影響しない」と言われ続けてきた。しかし自然発症のMIとPCI中に生じる心筋障害の予後を同列で語れないのは,感覚的には理解できる。
本研究のポイントは以下の3点である。
① 自然発症MI;PCI<OMT,手技関連MI;PCI≫OMT,総MI;PCI=OMT
② 全死亡・心血管死は自然発症MIのみと関連,PCI群では非ステント群だけが有意に心血管死を減少させていた。
③ 解析された試験がDES時代以前のデータであり,非ステント症例も多く,OMTも現在の基準に照らせば必ずしも“optimal”ではない。
試験デザイン・MI定義やPCI手技・薬物療法基準も異なる試験がエントリーされたメタ解析であるため,残念ながら信憑性には疑問が残る。またPCI症例で自然発症MIが有意に少ないという結果も,絶対リスク減少は3.6/1000 patient-years(NNT;278/年)に過ぎない。この結果はむしろ,PCI群でも併用しているはずのOMTの重要性を再認識させる。
PCI後のMIを手技関連と自然発症に分ける視点は重要である。その上で,PCIが自然発症MIをどの程度抑えるのか?,それが本当に予後につながるのか?,虚血の重症度によって異なるのか?,PCI手技関連MIの定義をどこに設定すると予後との関連が出てくるのか?それとも出てこないのか? -これまでも議論されてきたテーマではあるが,DESが標準的治療となり,かつより厳格な薬物療法が求められる現代において,それらがクリアになることを期待したい。
ちなみに,現在,最新のPCI vs OMT;ISCHEMIA trialが進行中である。 (中野


目的 自然発症MIが死亡に関連することが多数の研究で示されている一方,近年の研究の大半においてPCI手技関連のMIは死亡と関連していない。手技関連MIの頻度は,研究の対象患者,バイオマーカー,閾値の定義によって最大50%まで幅があり,その予後因子としての重要性や,予後不良を示すバイオマーカーの境界線については意見が分かれている。
本メタ解析では,各種MI(自然発症手技非関連MI,手技関連 MI,全MI)との関連についてPCIと至適薬物治療(OMT)を比較した。
対象 12研究*・8,070例(37,548例・年)。安定型虚血性心疾患例においてPCIとOMT(抗血小板薬+抗狭心症薬+脂質低下薬)を比較したランダム化比較試験(RCT)でMIの転帰が報告されている研究。
*ステント使用率<50%(no-stent)研究:ACME-1,ACME-2,ALKK,AVERT,DEFER,MASS I,RITA-2,SWISS II。
ステント使用率≧50%(stent)研究:BARI 2D(PCI stratumのみ),COURAGE,JSAP,MASS II。
追跡期間:平均5年(1.5~10.2年)。
方法 2012年10月第2週までに発表されたRCTをPubMed,Embase,CENTRALで検索。検索用語は‘coronary artery disease’,‘ischemic heart disease’, ‘angina’,‘percutaneous coronary intervention’,‘percutaneous transluminal coronary angioplasty’,‘revascularization’。検索で確認されたオリジナル研究,メタ解析,レビュー論文の参考文献もチェック。言語制限なし。MIのアウトカムの報告が無い研究については著者に照会。
自然発症手技非関連MI,手技関連MI,全MI,全死亡,心血管死について,1000例・年あたりの発生率を使用し,summary-based変量効果モデル,混合効果ポアソン回帰モデルによりlog incident rate ratio(IRR)を算定。no-stent研究/stent研究で層別化。
結果 [自然発症手技非関連MI]
PCIによりOMTに比べ24%低下。
1,000例・年あたりの発生率13.68 vs 17.30(変量効果ポアソン回帰モデル:IRR=0.76;95%信頼区間CI 0.58-0.99,summary-based変量効果モデル:0.77;95%CI 0.60-0.99)。
異質性は中等度(I ²=31.6%),出版バイアスは認められなかった。
non-stent研究/stent研究別の解析でも結果は同様であった(P for interaction=0.53)。

[手技関連MI]
PCIによりOMTに比べ317%上昇。
1,000例・年あたりの発生率4.60 vs 1.01(変量効果ポアソン回帰モデル:IRR=4.17;2.53-6.88,summary-based変量効果モデル:3.22;2.01-5.16)。
異質性は無く(I ²=0%),出版バイアスは認められなかった。
non-stent研究/stent研究別の解析でも結果は同様(P for interaction=0.56)。

[全MI]
PCIとOMTで同等。
1,000例・年あたりの発生率は18.28 vs 18.31(変量効果ポアソン回帰モデル:IRR=0.96;0.74-1.21,summary-based変量効果モデル:0.94;0.71-1.25)。
異質性は中等度(I ²=50%),出版バイアスは認められなかった。
non-stent研究/stent研究別の解析でも結果は同様(P for interaction=0.99)。

[死亡]
全死亡,心血管死ともに,自然発症手技非関連MIの推定値と平行してPCIにより非有意に低下していた。
全死亡:1000例・年あたりの発生率16.20 vs 18.47(変量効果ポアソン回帰モデル:IRR=0.88;0.75-1.03,summary-based変量効果モデル:0.88;0.74-1.04)。
心血管死:6.47 vs 8.01(変量効果ポアソン回帰モデル:0.70;0.44-1.09,summary-based変量効果モデル:0.74;0.49-1.11)。心血管死についてはno-stent研究においてのみPCIに関連する低下が認められた(P for interaction=0.03)。

[感度分析]
非虚血例を含む研究(AVERT,DEFER)を除いた解析においても同様の結果であった。
自然発症手技非関連MI:IRR=0.79;0.67-0.92),全MI:0.89(0.68-1.17)。

[メタ回帰解析]
PCI群におけるステント使用率,OMT群におけるLDL-C値,治療群のクロスオーバーと,全死亡,自然発症MIとの有意な関連は認められなかった。

(収載年月2013.08)
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