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糖尿病患者における薬剤溶出性ステントの有効性
meta-analysis

糖尿病患者において,薬剤溶出性ステント後の再血行再建術は10%未満と低く, paclitaxel溶出ステントとsirolimus溶出ステント間に血行再建術,主要有害心イベントの差はなかった。
Mahmud E et al: Clinical efficacy of drug-eluting stents in diabetic patients: a meta-analysis. J Am Coll Cardiol. 2008; 51: 2385-95.PubMed

コメント

本論文は,糖尿病患者におけるpaclitaxel溶出性ステント(PES)とsirolimus溶出性ステント(SES)の成績を比較したメタ解析である。 PESとSESの比較ではすでにSchomig A.らによる優れたメタ解析結果が報告されている(J Am Coll Cardiol 2007; 50: 1373-80.PubMed)。これに比べて今回のメタ解析には多くの問題点がある。
  • SESに比べPESではlate lossが有意に大きいことは広く知られている。このような情報は実地臨床でのデバイス選択に影響を及ぼす可能性があり,レジストリーでは患者選択バイアスの存在が排除できない。したがって,SESとPESの比較をレジストリーで行うべきではない。
  • 本メタ解析では論文化されたデータも学会発表の抄録も一緒に取り扱っているが,論文化されていないデータは使用すべきではない。
  • Schomig A.らのメタ解析は患者レベルのデータを用いているが,本メタ解析では論文や抄録に記載されているイベント発生率を用いており,time-to-event解析ができない。さらにはMACEの構成要件が研究ごとに異なっているにもかかわらず,それを同一のエンドポイントとして取り扱うことは不適切である。
  • Schomig A.らのメタ解析ではSESとPESを比較する16のhead-to-headの試験が含まれているにもかかわらず,本メタ解析で解析に含まれたのはわずか5試験のみである。対象とする試験の選択基準が不適切である。
  • 本メタ解析ではhead-to-headの試験のみならず,SESとベアメタルステント(BMS)を比較した試験やPESとBMSを比較した試験も対象としている。head-to-headの試験以外を対象とする場合にはネットワークメタ解析のような複雑な統計学的方法が要求されるが,統計学的方法論の詳細は一切記載されていない。
  • 本メタ解析ではBoston Scientific社がeditorial supportを行ったと記載されている。Boston Scientific社のステントと競合他社のステントを比較する医学研究論文に当該企業がeditorial supportを行うなどというのは,とても許容することのできない利益相反である。
本論文の結論は,「糖尿病患者においてPESとSESの成績は同等」とするものである。しかしながらhead-to-headのRCTの解析におけるPESのTLRについてのodds ratioは1.37(95%C.I. 0.64-2.90,P=0.417)であった。これは糖尿病患者以外の患者も含んだSchomig A.らのメタ解析における,SESの再インターベンションについてのhazard ratio 0.74(95%C.I. 0.63-0.87,P<0.001)とほぼ同等のpoint estimateである。Type 2エラーの可能性も高く,本研究をもって「糖尿病患者においてPESとSESの成績は同等」とはとても言えない(木村)。

背景

目的
現在,冠動脈疾患(CAD)は糖尿病関連死の3/4を占めているが,糖尿病は増加の一途をたどっており,CADの進展により血行再建術が必要になる糖尿病患者は増加することが推測される。非糖尿病患者に比べ糖尿病患者のPCI,CABGの転帰は不良である。ベアメタルステント(BMS)によるPCIは再狭窄率の高さから糖尿病患者での植込みは制限されるが,paclitaxel溶出ステント(PES),sirolimus溶出ステント(SES)はBMSに比べ血行再建術再施行を抑制することが報告され糖尿病患者でのPCI率が上がってきた。
しかしながら,FDAは糖尿病患者における薬剤溶出性ステント(DES)は臨床試験での評価数が十分ではないとしてオフラベルとしている。さらに,この2種類のDESの相対的な有効性は明らかではない。
PES,SESを植込んだ糖尿病患者の転帰は十分に評価されていない。そこで,血行再建術,主要有害心イベント(MACE:死亡,心筋梗塞,再血行再建術)をPESとSESとで比較した。
対象 糖尿病患者におけるPES,DESのランダム化試験(RCT),登録研究。RCTは新規病変への植込みとした。

・RCTは下記13試験(PES vs SESが4試験*,SES vs BMSが4試験**,PES vs BMSが5試験***,糖尿病患者のみでの検討はISAR-DIABETES)の2,422例。
* ISAR-DIABETES, TAXi, SIRTAX, REALITY
** SIRIUS, DIABETES, SES-SMART, RAVEL
*** TAXUS II, TAXUS IV, TAXUS V, TAXUS VI, ISAR-Test

・登録研究は下記16研究の10,156例。
Cosgrave et al., RESEARCH/ T-SEARCH, SOLACI, STENT, C vs. T REWARDS, TC-WYRE, Prairie Institute, Stankovic et al., SIRIUS-DIRECT, Berenguer et al., German Cypher-Stent Registry, ARTS II, PORTO I, MILESTONE II, ARRIVE 1, ARRIVE 2

方法 MEDLINE,EMBASEを2002年1月〜2007年2月,検索した。この時期の主要な国際心臓会議(American College of Cardiology:ACC,American Heart Association: AHA,European Society of Cardiology: ESC, Transcatheter Cardiovascular Therapeutics: TCT, Paris Course on Revascularization)における抄録,発表もレビュー。
検索用語は“drug”,“eluting”,“stent”を“registry”あるいは“registries”と合わせ,それから“clinical”,“trial”あるいは“trials”で検索した。
結果

RCT

  • 推定標的病変の血行再建術(TLR):PES群8.6%(95%信頼区間6.5〜11.3%)vs SES群7.6%(5.8〜9.9%),推定MACE:15.4%(12.4〜19.1%)vs 12.9%(8.5〜19.2%)で両群間に有意差は認められなかった。
  • PES vs SESの4試験におけるTLRも両群間に有意差はなかった(PES vs SESのオッズ比1.37;95%信頼区間0.64〜2.90,p=0.42)。
  • Silber score*>5の5試験でもTLR:8.9%(6.2〜12.6%)vs 8.0%(5.4〜11.6%),MACE:16.2%(12.8〜20.4%)vs 13.8%(8.7〜21.0)で有意差はみられなかった。
    * 十分な検知力,多施設,独立したイベント評価委員会を設置している,一次エンドポイントを設定しているといった試験デザインの質を構成する因子を評価する。
  • 8試験(TAXUS-IV, TAXUS-V, ISAR-DIABETES, SIRTAX, REALITY, DIABETES, SES-SMART, RAVEL)でのステント血栓症は1.48%(0.74〜2.63%)vs 0.55%(0.11〜1.59%),Silber score>5の試験では1.23(0.34〜3.12)vs 0.42(0.01〜2.34)。

登録研究

  • 推定標的血管血行再建術(TVR)はPES群5.8%(95%信頼区間3.8〜8.5%)vs SES群7.2%(4.6〜11.2%),推定MACEは10.1%(7.3〜13.8%)vs 11.9%(8.6〜16.4%)で,いずれもPES群で低めであったが両群間に有意差はなかった。
  • 論文が雑誌に発表された研究(SOLACI, STENT, Prairie Institute, Stankovic et al., German Cypher-Stent Registry, PORTO I, ARRIVE 1)では,TVR:10.5%(5.0〜20.8%)vs 10.5%(3.8〜25.7%),MACE:16.9%(12.7〜22.2%)vs 15.9%(9.6〜25.3%)で,イベント率が高かった。
  • 学会などで発表された研究では,TVR:4.2%(3.0〜6.0%)vs 5.7%(4.0〜8.0%),MACE:7.1%(5.1〜9.9%)vs 8.2%(5.1〜12.8%)。


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