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動脈硬化惹起性脂質の低下と主要心血管イベント-PCSK9阻害薬alirocumabを検討したODYSSEY 10試験の統合解析
pooled analysis

ODYSSEY 10試験の事後解析から,LDL-Cの低下率および治療中のLDL-Cの絶対値の低下とMACEリスクの低下が関連することが示された。この関連は到達LDL-C<50mg/dL例でもみられた。本結果の妥当性は,現在行われている前向き試験であるODYSSEY OUTCOMESの結果を待ちたい。
Ray KK, et al: Reductions in atherogenic lipids and major cardiovascular events: a pooled analysis of 10 ODYSSEY trials comparing alirocumab with control. Circulation. 2016; 134: 1931-43. PubMed

コメント

alirocumabを用いた10の試験の統合解析からLDL-Cの低下率・低下量と心血管イベントの低下率を比較し,これまでスタチンで示されたCholesterol Treatment Trialists Collaboratorsのまとめた26試験のメタ解析から得られた回帰直線の結果とほぼ一致するものであることが示されたことは十分評価できる。つまり,心血管イベントに関してはLDL-Cはlower is betterという概念を確認したことになる。このことを示したのはIMPROVE-ITという試験であり,スタチンのメタ解析で示せなかったより低いLDL-C 54mg/dLまで回帰直線を延ばすことができたと同時に,スタチン以外の薬剤でもLDL-Cをより下げることに意味があることを示したのである。さらに進んで,alirocumabの治験の統合解析からは,50mg/dL未満までその回帰直線を延ばすことができる可能性を示したことになる。もちろん,この統合解析はアウトカム試験ではないので結論的なことは言えないのであるが,その可能性を示したことになる。もう一点,安全性の問題がある。わが国でも問題となるのは,脳出血をはじめとするLDL-Cの極端な低下がもたらす副反応で,我々にとっては未知の世界である。少なくとも,本解析からは深刻な副反応は示されていないので,これからのPCSK9阻害薬の使用にあたって,一定の安心感を与えてくれる。一方で,長期にわたる副反応については一抹の不安は残る。この点はODYSSEY OUTCOME試験が発表されても,3年という短期間の試験であることから同様の問題は残るであろう。ガイドラインに反映させるべきか十分な議論が必要であると痛感する。(寺本

目的 到達LDL-C<54mg/dLまでの低下による主要心血管イベント(MACE)抑制効果はスタチンとezetimibeによる試験で確認されている。しかし,LDL-C<50mg/dLになった場合にもlower is betterの関連が認められるかは明らかではない。
主にPCSK9阻害薬alirocumabをスタチン最大忍容量に追加した群を対照群(プラセボ,ezetimibe)と比較したODYSSEY 10試験の患者個別データを統合し,LDL-Cの他にガイドラインでの推奨が増えているnon-HDL-C,アポリポ蛋白B 100(apoB)も加え,それらの低下とMACEの関係を評価した。
主要評価項目はMACE。MACEとしてはODYSSEY OUTCOMES試験の一次エンドポイントである冠動脈疾患(CAD)死,非致死的心筋梗塞(MI),虚血性脳卒中,入院を要す不安定狭心症とした。
対象 4,974例・10試験(alirocumab投与[2週間ごとに75・150mg皮下投与]3,182例,プラセボ投与1,174例,ezetimibe投与618例)。
第III相の二重盲検ランダム化比較試験ODYSSEY 10試験の対象:アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)あるいは現行治療ではLDL-Cを十分に低下できないヘテロ接合体家族性高コレステロール血症などの心血管高リスク患者。ASCVD,高リスクでLDL-C<70mg/dL,非ASCVDの高リスクでLDL-C<100mg/dL,トリグリセライド>400mg/dLなどは除外。
■試験背景: 治療期間は24-104週,全対象のおよそ80%に相当する6試験が≧52週追跡。スタチン上乗せ8試験。
■患者背景(プラセボ対照試験[alirocumab群2,324例,プラセボ群1,175例],ezetimibe対照試験[alirocumab群864例,ezetimibe±スタチン群620例]):平均年齢は約60歳,約2/3が男性,大半が白人でBMIは約30kg/m²,およそ1/3が糖尿病を合併し,2/3がASCVD既往,喫煙例は1/5。プラセボ対照試験の約1/3はヘテロ接合体家族性高コレステロール血症。
方法 LDL-Cと治療期間中の初発MACEの関係は,ROC曲線で算出した治療期間中の到達LDL-C値,LDL-Cのベースラインからの低下率で評価。年齢,性別,糖尿病,MI・脳卒中歴,ベースラインLDL-C,喫煙で調整した多変量Cox回帰モデルを使用し,LDL-C 39mg/dL低下ごとのハザード比(HR)を算出した。
結果 [脂質値の変化]
統合した平均脂質値は,試験開始時がLDL-C:123.2-126.8mg/dL,non-HDL-C:154.2-156.9mg/dL,apoB:101.8-104.3mg/dLで,alirocumab群と対照群間に有意差はなかった。治療期間中の達成平均脂質値は,プラセボ対照試験においてはalirocumab群56.9mg/dL(ベースラインからの低下率−55.4%),プラセボ群126.5mg/dL(+2.7%),ezetimibe対照試験では,alirocumab群64.0mg/dL(-48.1%),ezetimibe群100.9mg/dL(-18.0%)。
LDL-C<50mg/dLに到達したものは33.1%(プラセボ対照試験:alirocumab群52.6%,プラセボ群0%,ezetimibe対照試験:alirocumab群44.7%,ezetimibe群6.5%)。
non-HDL-C,apoBも同様の低下がみられた(non-HDL-C:それぞれ82.0mg/dL[-46.9%],156.0mg/dL[+2.6%],91.1mg/dL[-40.3%],128.5mg/dL[-16.8%],apoB:57.1mg/dL[-45.5%],104.1mg/dL[+2.2%],64.9mg/dL[-35.9%],89.2mg/dL[-12.0%])。

[達成LDL-CとMACE]
初発のMACEは104例(中央値36週後),うちCAD死20例,非致死的MI 64例,虚血性脳卒中16例,不安定狭心症4例。
達成LDL-C低値例はMACEのリスクが低かった(LDL-C 39mg/dL低下ごとにリスクは24%低下:調整HR 0.76;95%信頼区間0.63-0.91,P=0.0025)。
non-HDL-C(42mg/dL低下ごとのHR 0.77;0.65-0.93,P=0.0056),apoB(27mg/dL低下ごとのHR 0.72;0.60-0.86,P=0.0002)も,達成低値とリスク低下に強い関係がみられた。

[LDL-C低下率とMACE]
LDL-C低下率とMACEは逆相関し,LDL-C 50%低下によりリスクは29%低下した(0.71;0.57-0.89,P=0.003)。
Non-HDL-C,apoBも同様に50%低下でMACEのリスクがそれぞれ29%,32%低下した(Non-HDL-C:0.71;0.52-0.97,P=0.0323,apoB:0.68;0.54-0.85,P=0.0008)。

[安全性]
治療に伴う有害事象(TEAE),重篤なTEAE(プラセボ対照試験:alirocumab群16.6%,プラセボ群17.2%;ezetimibe対照試験:alirocumab群17.0%,ezetimibe群13.9%),TEAEによる死亡(0.7%,1.1%;0.7%,1.5%),TEAEによる治療中止(6.2%,5.7%;9.7%,10.7%)に,alirocumab群と対照群間に有意差はなかった。
注射部位反応は大半が患者が制御できる軽度なものであったが,alirocumab群で多かった。
LDL-C 39mg/dL低下(オッズ比1.02;95%信頼区間0.96-1.09),50%低下(1.02;0.93-1.13)に伴うTEAEの有意な増加はみられなかった。

(収載年月2017.03)
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