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さまざまな脂質低下治療によるLDL-C低下とCVリスク低下の関係
meta-analysis

LDL受容体のアップレギュレーションを介してLDL-Cを低下させるスタチン治療と非スタチン治療では,LDL-C 38.7mg/dL低下ごとの主要血管イベントの相対リスクは同等であった。達成LDL-C値が低いほど主要冠イベントリスクは低かった。
Silverman MG, et al. Association between lowering LDL-C and cardiovascular risk reduction among different rherapeutic interventions: a systematic review and meta-analysis. JAMA. 2016; 316: 1289-97. PubMed

コメント

スタチン以外の薬剤も含めて,LDL-Cの低下量と心血管イベントの発症リスクの関係をみたユニークなメタ解析である。スタチンはもちろん,食事療法や陰イオン交換樹脂(コレスチラミン)や小腸バイパス手術やエゼチミブのようなLDL受容体パスウェイの活性化の有効性が証明されたことは意義のあることと思われる。一方,ニコチン酸やフィブラートもLDL-Cの低下から予測されるイベント抑制効果は,同等かそれ以上となることが示された。これは,LDL-C以外の余剰リスクに効いているとも解釈できるが,スタチンほど多くのエビデンスがなく,スタチンが出てからのエビデンスが十分でないことが問題点としてはある。これに対し,CETP阻害薬ではLDL-Cの低下に見合わないイベント抑制効果(むしろ変化なし)という結果となった。話題のPCSK9阻害薬はほぼ予測通りのイベント抑制効果を示した。これもLDL受容体パスウェイを活性化することを考えると,LDL受容体パスウェイの重要性がクローズアップされてくるものと思われる。
もちろん,これは多くのlimitationのある研究ではある。例えば,スタチン系の薬剤の試験は極めて多く,エビデンスとしても確固たるものがあるが,他の薬剤のものはイベント数が少なかったり,スタチン以前の試験が含まれており,実態とは異なる点である。現在のところ,LDL受容体パスウェイの活性化ということが食事療法も含めて最も確実なイベント抑制効果を示すことを浮き彫りにした解析といえよう。(寺本

目的 スタチンのLDL-Cの低下率に比例した臨床的有効性についてはコンセンサスが得られているが,スタチン以外のLDL-C低下治療の臨床効果は明らかではない。
作用機序の異なる4群9種類の脂質低下治療によるLDL-Cの低下と心血管(CV)リスクの関係を,メタ回帰分析により評価する。
主要評価項目は,主要血管イベント(CV死,急性心筋梗塞[MI]または他の急性冠症候群,血行再建術,脳卒中)。
対象 31万2,175例・49試験。MIを含むCV転帰の報告があるランダム化比較試験(LDL-C低下治療実施群 vs 非実施群,積極的 vs 標準的スタチン治療)。
除外基準:追跡期間<6ヵ月,イベント発症<50件,非アテローム性の競合リスクである心不全・CKDを有する患者が対象の試験など。
■患者背景:平均年齢62歳,女性24%,LDL-C 122.3mg/dL。
試験背景:スタチン治療25試験(17万7,088例),非スタチン治療8試験(食事療法4試験[1,903例],胆汁酸吸着薬2試験[6,084例],回腸バイパス術1試験[838例],ezetimibe 1試験[18,144例]),LDL受容体発現アップレギュレーションを介さないLDL-C低下治療15試験(フィブラート系薬剤9試験[41,520例],ナイアシン3試験[32,995例],CETP阻害薬3試験[29,586例]),PCSK9阻害薬2試験(6,806例)。
主要血管イベント39,465件,平均追跡期間4.3年。
方法 MEDLINE,EMBASEを検索(1966-2016年7月)。原著・レビュー・メタ解析・著者所有の参考文献リスト,過去2年間の学会抄録も調査。
脂質低下治療を次の4群9種類に層別:(1)スタチン治療,(2)主としてLDL受容体発現のアップレギュレーションを介してLDL-Cを下げる非スタチン治療(食事療法,胆汁酸吸着薬,回腸バイパス術,ezetimibe),(3)主としてLDL受容体のアップレギュレーションによらないLDL-C低下治療(フィブラート系薬剤,ナイアシン,CETP阻害薬),(4)LDL受容体と結合してLDL-Cの分解を促進するPCSK9阻害薬(ただし,CV転帰を評価する臨床試験が終了していないため非スタチン治療とはわけて解析)。
各治療によるLDL-Cの絶対低下量(2治療間の達成LDL-C値の差)と主要血管イベントリスクの関係,達成LDL-C値と主要冠イベント(冠動脈疾患死,MI)リスクの関係を評価。
結果 [LDL-C絶対低下量と主要血管イベントリスク]
・主としてLDL受容体発現のアップレギュレーションを介した治療
LDL-C 38.7mg/dL低下ごとの主要血管イベントの相対リスク(RR)は,スタチン治療が0.77(95%信頼区間0.71-0.84,P<0.001),非スタチン治療が0.75(0.66-0.86,P=0.002)で,両者を合わせたRRは0.77(0.75-0.79,P<0.001)であった。
スタチン治療の有効性に一次予防試験(0.70;0.53-0.93)と二次予防試験(0.79;0.73-0.86)の差はみられなかった。また,主要血管イベント低下への寄与率(R²)はLDL-Cの絶対低下量が98%,LDL-Cの低下率が79%であった。
・主としてLDL受容体発現のアップレギュレーションを介さない治療
メタ回帰直線から予測されるRR(以下,予測RR)と従来の臨床試験でのRR(以下,実測RR)をくらべると,ナイアシンはほぼ同等(実測RR 0.94;0.88-0.99 vs 予測RR 0.91;0.90-0.92,P=0.24),フィブラート系薬剤は実測RRのほうが小さく(0.88;0.83-0.92 vs 0.94;0.93-0.94,P=0.02),CETP阻害薬は実測RRのほうが有意に大きかったが明確な臨床効果は示されなかった(1.01;0.94-1.09 vs 0.90;0.89-0.91,P=0.002)。
・PCSK9阻害薬
推定RRは予測RRより低かったが有意差はなく,信頼区間が広かった(0.49;0.34-0.71 vs 0.61;0.58-0.65,P=0.25)。

[達成LDL-C値と主要冠イベントリスク]
5年間の主要冠イベント発生は24試験・11,301例で,達成LDL-C値と有意に関連した。スタチン一次予防試験では達成LDL-C 38.7mg/dL低下ごとにイベントリスクは1.5%(95%信頼区間0.5-2.6%,P=0.008),二次予防試験では4.6%(2.9-6.4%,P<0.001)低下した。
これらの関係にベースライン時のLDL-C値の有意な影響はみられなかった。

(収載年月2016.12)
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