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降圧とCVD,死亡の予防
meta-analysis

ベースライン血圧を問わず,さまざまな併存疾患を有する患者で,降圧により血管リスクが有意に低下。収縮期血圧<130mmHgへの降圧,CVD・CAD・脳卒中・糖尿病・心不全・CKD既往例での降圧が支持された。
Ettehad D, et al: Blood pressure lowering for prevention of cardiovascular disease and death: a systematic review and meta-analysis. Lancet. 2015 Dec 23. PubMed

コメント

■2015年に発表されたSPRINT試験と同じく,血圧は低いほど良し。
わが国の高血圧治療ガイドライン2014では,世界の流れにしたがい降圧目標値を高めに設定したばかりであったが,本メタ解析の結果は昨年衝撃的な結果をもたらしたSPRINT試験同様に,the lower the betterを支持する結果となった。
合併疾患にかかわらず収縮期血圧が10mmHg下降することで主要心血管疾患を20%,冠動脈疾患を17%,脳卒中を27%,心不全を28%。全死亡を13%減らすことができるとの結果であるが,腎不全ではその関係は認められなかったという。腎不全に関しては,とくに中等度以上に進行した慢性腎不全では降圧以外の要因が予後を左右するからだと思われる。
注目すべきはベースライン血圧値が130mmHgあるいはそれ以下でも,さらなる降圧のメリットがえられるという結果で,あらためて高血圧は血管にとっての最大の負荷であることを示している。
また薬剤別の検討では,脳卒中予防ではCa拮抗薬が,心不全発症予防では利尿薬がもっとも優れているという結果もこれまでのランダム化比較試験が示したとおりである。β遮断薬に関してのみ主要心血管イベント予防効果が認められていないが,β遮断薬は冠動脈疾患や心不全治療薬として用量調整により個別的に有用性を発揮する薬剤なので,降圧薬としてのメタ解析では不利な結果になるのであろう。
また採用された個々の臨床試験ではむしろ降圧薬を併用している場合が多く,メタ解析から個々の薬剤の特性を見極めるのは難しいのかも知れない。
本メタ解析やSPRINTの結果を受けて,今後世界のガイドラインは降圧目標値をより厳しくする方向に向かうことが予想される。(桑島

目的 降圧治療の心血管疾患(CVD)予防に対する有効性は明確であるが,この有効性にベースライン血圧,併存疾患,薬剤クラスによる違いがあるかは確立されていない。また,降圧治療によりすべての患者でCVDリスクが低下するのかも明らかではない。
降圧がCVDおよび死亡に及ぼす影響を,幅広いベースライン血圧レベル,併存疾患,および降圧薬のクラス別に定量化するため,降圧治療の大規模ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューとメタ解析を実施した。
評価項目は,CVD(心筋梗塞[MI],心臓突然死,血行再建術,脳卒中,心不全),冠動脈疾患(CAD;無症候性MIを除くMI,心臓突然死),脳卒中(一過性脳虚血発作を除く),心不全(新規診断,入院,死亡),腎不全(末期腎不全による透析,移植,死亡),全死亡。
対象 123試験・61万3,815例。1966年1月1日-2015年11月9日に発表されたRCT(降圧薬 vs プラセボ,降圧薬クラス間の比較,降圧目標値間の比較)で,各群を>1,000例・年追跡したもの。高血圧以外が適応の降圧薬の試験も登録した。
■試験背景:降圧薬 vs プラセボ:78試験,降圧目標値間の比較:14試験,降圧薬クラス間の比較:43試験;リスクバイアス不明:10試験,低:113試験;転帰の異質性:低-中等度(主要CVD:I ²=41%,CAD:25%,脳卒中:26%,心不全:37%,腎不全:28%,全死亡:35%)。
方法 MEDLINEを検索(1966年1月1日-2015年7月7日)。選択された論文の参考文献と2007年発表のメタ解析もハンドサーチ。
逆分散重み付け固定効果メタ解析により要約統計量(相対リスク[RR])をプールした。収縮期血圧(SBP)10mmHg低下ごとのリスク低下を,ベースラインSBP(<130,130-139,140-149,150-159,≧160mmHg),併存疾患(CVD,CAD,脳血管疾患,2型糖尿病,心不全,慢性腎臓病[CKD:自己申告・クレアチニンクリアランス<30mL/分])の有無,降圧薬のクラス(5種類:ACE阻害薬,ARB,β遮断薬,利尿薬,Ca拮抗薬)別に解析。
心不全患者では達成血圧がベースライン血圧により大きく異なり,また達成血圧値が報告された試験も少ないため,心不全患者対象の試験は主解析から除外した。
結果 [SBP低下とCVD]
メタ回帰分析の結果,RRはCADと腎不全を除き降圧度に比例して有意に低下した。
SBP 10mmHg低下ごとのリスクの低下は,脳卒中(54試験;RR 0.73[95%信頼区間0.68-0.77])と心不全(43試験;0.72[0.67-0.78])が,他より大きかった(CVD[55試験];0.80[0.77-0.83],CAD[56試験];0.83[0.78-0.88],全死亡[57試験];0.87[0.84-0.91],腎不全[16試験];0.95[0.84-1.07])。

[ベースライン血圧,併存疾患の影響]
ベースライン血圧値を問わず,すべてのイベントでSBP 10mmHg低下によるリスク低下は同等であった(P for trend >0.05)。
併存疾患別では,ベースライン時のCVD既往,CADの有無は結果に影響を及ぼさなかった(交互作用P>0.05,P>0.03))。
脳血管疾患非既往例は既往例より降圧による脳卒中リスクの低下が大きかった(交互作用P=0.0028)。
糖尿病非合併例(RR 0.75)は合併例(RR 0.88)よりCVDリスクの低下が大きかった(交互作用P=0.0006)。
心不全合併例では,降圧により腎不全リスク(2試験・84例)が上昇する可能性が示された。
CKD非合併例(RR 0.68)は合併例(0.84)より降圧によるCVDリスクの低下が大きかった(交互作用P=0.012)。さらに心不全においても交互作用が認められ(P=0.0008),CKD非合併例では有意なリスク低下を認めたが(RR 0.48),合併例では認めなかった(0.95)。

[降圧薬のクラス別解析]
β遮断薬を除き,降圧によるイベントリスクの低下は同等であった。β遮断薬は他のクラスにくらべ,主要CVD(1.17[1.11-1.24]),脳卒中(1.24[1.14-1.35]), 腎不全(1.19[1.05-1.34])のリスク低下が小さく,全死亡では有意差はなかったものの有効性が低かった(1.06[1.01-1.12])。
Ca拮抗薬は他のクラスにくらべ脳卒中予防に優れていたが(0.90[0.85-0.95]),心不全予防効果が小さかった(1.17[1.11-1.24])。一方,利尿薬は他の薬剤にくらべ心不全予防に優れ(0.81[0.75-0.88]),心不全の試験を解析に含めても同様の結果であった。

(収載年月2016.02)
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