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RAS阻害薬の蛋白尿への影響
-ARB vs プラセボ(その他の降圧薬),ACE阻害薬,ARB+ACE阻害薬の併用投与
meta-analysis

ARBは蛋白尿の度合い,基礎疾患とは独立して蛋白尿を抑制する。ARBとACE阻害薬に抗蛋白尿効果に差はみられないが,両薬剤の併用投与による有効性はいずれの単独投与よりも大きい。
Kunz R et al: Meta-analysis: effect of monotherapy and combination therapy with inhibitors of the renin angiotensin system on proteinuria in renal disease. Ann Intern Med. 2008; 148: 30-48.PubMed

コメント

腎疾患患者に対するRAS阻害薬の蛋白尿抑制効果を6181例を含む49のトライアルをメドラインとコクランライブラリーから検索してメタ解析を行った研究である。RAS阻害薬は蛋白尿抑制に有用であるというこれまでもいわれてきたことを確認した成績ではあるが,注意すべきことがいくつかある。まず蛋白尿抑制はあくまでも代理エンドポイントであり,真のエンドポイントである末期腎不全や死亡と必ずしも結びつくものではないことである。また解析の対象となったトライアルは症例数が20人未満といった少人数を対象にしたトライアルまで含まれていることで均質性の問題が捨てきれない。また基礎腎疾患も糖尿病,非糖尿病などいろいろであるが主にRAS阻害薬の有用性が認められたのは糖尿病を対象としたプラセボとの比較試験である。蛋白尿の抑制や腎機能悪化の予防には降圧そのものも重要であると思われる(桑島)。

背景

目的
蛋白尿は慢性腎臓病の進展および末期腎不全の発症リスクを増大させる。ARB治療によるRAS阻害は,降圧効果とはある程度独立してRAS活性に依存して尿蛋白排泄量を減少させるが,臨床試験から発表されているARBの抗蛋白尿効果にはばらつきがある。また,ARBの抗蛋白尿効果がACE阻害薬と同等なのか,ARBとACE阻害薬の併用投与が単独投与より有用か否かは明らかではない。そこで,腎症を有する患者におけるARBの尿蛋白量への有効性をプラセボ,その他の降圧薬と比較するシステマティックレビューとメタ解析を実施した。腎転帰の改善のためには蛋白尿の持続した低下が必要と思われるため,ARB治療は数ヵ月から1年未満の試験を選別した。
対象 微量アルブミン尿・糖尿病性およびその他の原因による蛋白尿を有する患者におけるARB治療中の尿蛋白排泄量の変化を,プラセボあるいはその他の降圧薬治療と比較した結果が報告されているランダム化試験(RCT)。ACE阻害薬とARBの併用治療と単独投与の比較も実施。アルブミン尿,蛋白尿を定量的またはスポット尿により測定,アルブミン/クレアチニン比,蛋白/クレアチニン比を算出し,並行群間比較あるいはクロスオーバーで4週間以上追跡したRCTを選択した。

■試験背景:49のランダム化比較試験(6181例):ARB vs プラセボ比較は12試験,ARB vs Ca拮抗薬比較は9試験,ARB vs ACE阻害薬比較は23試験,ARB vs ARB+ACE阻害薬比較は16試験,ARB+ACE阻害薬 vs ACE阻害薬阻害薬比較は23試験。
微量アルブミン尿が認められる糖尿病患者が対象の試験は10試験,蛋白尿を有する患者を対象としたものは39試験。1群に割り付けられた症例数の中央値は18例,100例を超えるものは5試験。
クオリティ(盲検化,intention-to-treat解析)にはばらつきがあった。
糖尿病性腎症患者では24群間比較,非糖尿病性腎症患者では19群間比較,両者では6群間比較。追跡期間は1〜4ヵ月が72群間比較(追跡期間中央値3ヵ月),5〜12か月が38群間比較(9ヵ月)。

方法 MEDLINE,Cochrane Library Central Register of Controlled Trials(1990年1月〜2006年9月発表文献)をMedical Subject Heading termsおよびキーワード(angiotensin-receptor-blockers, ARB一般名[losartan, valsartan, irbesartan, candesartan, telmisartan, eprosartan, olmesartan], proteinnuria, albuminuria, microalbuminuria, diabetic nephropathies)で検索。選択した試験の参照文献リスト,関連発表をスクリーニングし,その他の追加しうる試験を専門家に問い合わせた。
結果 抗蛋白尿効果 ARBはプラセボ,Ca拮抗薬よりも蛋白尿を抑制するが有意ではない。ACE阻害薬とは同等。 ARB+ACE阻害薬併用投与は各単剤投与よりも蛋白尿抑制効果が大きい。 ・ARB群 vs プラセボ群:1〜4ヵ月の治療による蛋白尿発症率平均比は0.57(95%信頼区間0.47-0.68),5〜12ヵ月治療は0.66(0.63-0.69)。 ・ARB vs Ca拮抗薬:1〜4ヵ月が0.69(0.62-0.77),5〜12ヵ月が0.62(0.55-0.70)。 プラセボ群,Ca拮抗薬群と比べたARB群の効果は有意ではなかった。1〜4ヵ月はP=0.07,5〜12ヵ月はP=0.30。 ・ARB群 vs ACE阻害薬群:1〜4か月は0.99(0.92-1.05),5〜12ヵ月は1.08(0.96-1.22)。 ・ARB+ACE阻害薬群vs ARB群:1〜4か月は0.76(0.68-0.85),5〜12ヵ月は0.75(0.61-0.92)。 ARB+ACE阻害薬群vs ACE阻害薬群:1〜4か月は0.78(0.72-0.84),5〜12ヵ月は0.82(0.67-1.01)。

有害反応 試験薬の有害反応の評価の詳細な方法を報告できた試験はわずか33%で,評価タイミングを明記したのは26%,再現可能な評価法を記載したのは16%に過ぎなかった。 86%が試験薬投与中止の原因をめまい,高カリウム血症,咳,アレルギー,高血圧発作としたが,頭痛,疲労感,悪心嘔吐,高・低血糖発作は少なかった。 治療群ごとの投与中止は29試験が報告したが,13試験は全対象での投与中止率のみの記載で,7試験は記載がなかった。

本解析の限界 選択したトライアルの大半が小規模で試験の質にばらつきがあり,有害反応に関し信頼できるデータを供していない。蛋白尿の抑制は腎障害の重要な進展の単なるサロゲートに過ぎない。
結論 ARBは蛋白尿の度合い,原疾患とは独立して蛋白尿を抑制する。この有効度は対照がプラセボ,Ca拮抗薬であれ差はない。蛋白尿抑制効果におけるARBとACE阻害薬の差はみられないが,両薬剤の併用投与による有効性はいずれの単独投与よりも大きい。患者にとって重要な有害反応および転帰が明らかではないため,本解析結果を臨床現場に適用するのは限定される。

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