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Nov. 5 7:30-8:45AM

Ask the Experts
ガイドラインはリアルワールドに適応できるか
ATE. 702. What Is the Real World Clinical Applicability of Guidelines?

今年,JNC 7(The Joint National Committee on Prevention, Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood Pressure 7: 米国高血圧合同委員会第7次報告)が発行された前後の降圧治療と血圧の変化がCirculation誌に発表された。最も顕著な変化は併用投与の大きな増加で,2009-10年のNHANES調査では血圧コントロール率は高血圧患者で47%,降圧治療を受けた患者で60%に上昇している(Circulation. 2012; 126: 2105-14)。
2003年にJNC 7が発行されてからおよそ10年。その発行が待たれているJNC 8だが,エビデンスに基づいた心血管疾患リスク低下のための包括的ガイドライン(GL)になるといわれている。臨床現場(real world)が求めている,そして実行・適応が可能なGLとはどういうものなのか?
11月5日,米国心臓協会学術集会(AHA)2012において,「What Is the Real World Clinical Applicability of Guidelines?」と題したセッション(Ask the Experts ATE 702: 司会;米国・William Weintraub氏)が行われ,GLがどう作成されているのか,日常臨床に適用できるのか,欧州でのGLの実施状況について発表された。

医師はGL推奨治療の対象が自分の患者と一致しているかをみるべきである。


Sidney C Smith, Jr.
MD, FACC, FAHA, FESC

「医師が日常臨床でもっともよく診る患者はGLに含まれているか?」を発表したのは,ノースカロライナ大学のSidney C Smith, Jr.氏。1984年のペースメーカー植込みGLから始まった米国心臓病学会財団/米国心臓協会(ACCF/ AHA)診療GLの歴史を振り返りながら,GLはエビデンスに基づいた治療法を選択するためにあり,診療内容の評価に使われるようになっていると述べた。氏らは2009年に’08年9月時点のGLを調査し,エビデンスレベル(LOE)の高い推奨が少ないことを発表した(16のGLでLOE Aは11%,Cが48%,推奨クラスIかつLOE Aはわずか9%)。また,多くの患者にGLの推奨が適応できるものの,一方で,女性やその割合が劇的に増加している高齢者,人種/民族別,合併症例などはランダム化比較試験に基づくエビデンスが不足しているとした。現在,作成が進められているJNC8を含む包括的心血管予防GLでは,クリニカルクエスチョン(CQ)を作成し,それに対する推奨の裏付けとなるエビデンスのレベルをきわめて慎重に吟味している。しかし,前述のようにエビデンスが乏しい集団があるため,すべてのCQ,すべての患者に対して推奨が提示されることを期待してはならないとした。JNC 8は2013年に発行されるのではないかと結んだ。

ガイドラインは患者の日常ケアに使用できる。


Glenn N. Levine
MD, FAHA, FACC

「GLは“what to do”を示すものではなく,治療法を決定する過程において“assist”するものである」と言うのは,「GLの利用実態」を発表したベイラー医科大学のGlenn N. Levine氏。たとえば,ST上昇型心筋梗塞のGLの,AHAサイトでの2011-2年の閲覧状況は,ユニークビジターが62,000以上,ページビュー75,000以上であった。また循環器医への調査では,ACCF/ AHA GLは日常診療に役立つという回答が93%と高く(医学雑誌は79%),循環器診療で最も有用なGL/出版物は?という質問への回答はACCF/ AHA GLが94%と群を抜いて高く,GLを意識していないものはわずか2%,さらにACCF/ AHA GLをどのくらい患者ケアに適用しているかについては,全例が14%,大半の症例が69%で,一部の症例は15%だった。また,心筋梗塞の急性期治療では,GL推奨薬のアドヒアランスが高いと入院中の死亡率が低いことも紹介した。さらにPubMedで“guidelines+ACC+AHA”を検索すると1,200本の文献が,グーグルで“ACC/AHA Guidelines”を検索すると41万件が表示されることなども紹介。このように,GLは日々の患者管理,診療内容の評価,学習リソース,医学生や研修医の教育ツールとして利用されており,「GLは臨床現場,日常臨床に適用できるか?」という問いに対し,“Yes!”と結んだ。

欧州におけるCAD二次予防GLの目標達成率はまだ低い。


David Wood
MB, ChB, MSc, FRCP, FRCPE, FFPHM, FESC

「欧州におけるGLの実施状況」を発表したのは,英国のインペリアル・カレッジ・ロンドンのDavid A Wood氏。欧州20ヵ国以上の病院,8ヵ国の一般開業医を対象に冠動脈疾患(CAD)二次予防に対するESC GLの実施を評価している横断調査EUROASPIRE(European Action on Secondary Prevention through Intervention to Reduce Events) IIIから,病院では薬物治療の実施率は高いが(抗血小板薬約90%,β遮断薬80%,ACE阻害薬/ARB70%,スタチン80%),喫煙率は50%,肥満がおよそ3分の1,腹部肥満がおよそ4分の3,GL推奨の血圧,脂質,血糖値の未達成者が半数近いことを紹介したうえで,心血管保護のためのアドバイスを患者が受けたか,過体重であることを告げられたかなどの施設間差が非常に大きいことが喫煙率や肥満率の高さに,血圧や脂質の管理不十分が薬物治療実施率の高さにつながっているとした。一般開業医の調査でも喫煙率や肥満率はやはり高く,血圧などのコントロールが不良だったが,GL推奨の薬物治療実施率は低かった。生活習慣や危険因子の管理プログラムに参加するよう勧められた患者は17%に過ぎず,10年CAD発症リスクの自己認識率も低かったが,これらは国による差も大きかった。最後に氏は,各国の医療制度の違い,循環器専門医と一般開業医,あるいは患者の知識やスキル,喫煙などの環境因子,医療経済などがこの調査結果に影響を及ぼしたと指摘した。

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