抗血栓トライアルデータベース
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日本で行われた主なトライアル
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[対象患者の疾患別]重複あり
一次予防
心血管疾患
心房細動
脳血管疾患
その他

一次予防

JPAD編集委員コメントあり アテローム性動脈硬化症の既往のない2型糖尿病日本人患者において,低用量aspirinはすべての脳・心血管イベントリスクを減少させなかった。致死的な心血管イベントや脳卒中に対しては,有意な発症抑制効果を示した。大規模試験にかかわらず,イベント発症率は予想より低かった。aspirinは出血性脳卒中を増加させず,重篤な消化管出血の増加は小さいものであり,忍容性に優れていた。

JPAD cerebrovascular event編集委員コメントあり 血圧の高い2型糖尿病患者において,aspirinが脳血管イベントを抑制する可能性が示された。

JPPP編集委員コメントあり アテローム動脈硬化性リスク因子を有する60歳以上の日本人患者において,低用量aspirin 腸溶錠1日1回投与は非投与にくらべ,心血管死+非致死的脳卒中+非致死的心筋梗塞の複合エンドポイントを抑制しなかった。


心血管疾患

BAT編集委員コメントあり
日本における抗血栓療法中の出血イベント発症率は,試験デザインが異なるにもかかわらず,西洋諸国と同様であった。抗血小板薬併用療法は,出血イベントリスク上昇と独立して関連がみられた。

BAT retrospective study編集委員コメントあり
日本人の脳内出血患者において,抗血小板薬かつ/またはwarfarinの前投与は,小脳出血,血腫拡大,早期死亡の予測因子であった。

IMPORTANT 編集委員コメントあり
日本人のST上昇型心筋梗塞患者において,primary PCIはインターベンション施行前の血栓溶解療法に比し長期予後が良好であり,血栓溶解療法後facilitated PCIはprimary PCIと同様に有効であった。

j-Cypher 編集委員コメントあり
SES植え込み施行患者において,aspirinおよびチエノピリジン系薬剤の両剤の中止はステント血栓症リスク上昇と相関がみられたが,チエノピリジン系薬剤のみ中止では相関は認められなかった。ランドマーク解析によると,チエノピリジン系薬剤のSES植え込み後6ヵ月以上の使用には明らかな臨床ベネフィットは示されなかった。

JEPPORT 編集委員コメントあり
PCIを施行する日本人の急性冠症候群患者において,abciximabは主要冠イベント発生を抑制せず,出血および血小板減少症を増加させた。

J-LANCELOT 編集委員コメントあり
日本人のACSおよび高リスクのCAD患者において,標準的な抗血小板療法にPAR-1阻害薬atopaxar(E5555)を追加すると,臨床的に重要な出血を増加させずに主要有害心臓事象(MACE)を抑制する可能性が示された。検討した全用量にて有意な血小板凝集が得られたが,肝機能異常およびQTcFの用量依存性の増加が認められた。

PRASFIT-ACS 編集委員コメントあり
日本人のACS患者において,prasugrel負荷用量20mg/維持用量3.75mgはTRITON-TIMI 38の結果と同様に虚血イベント発症率の低下と関連しており,臨床的に重篤な出血の発症率も低い傾向であった。

PRASFIT-Elective 編集委員コメントあり
待機的PCIをうける日本人冠動脈疾患患者において,日本人にあわせた用量のprasugrelのリスク・ベネフィットが支持された。

心房細動

ARISTOTLE-J 編集委員コメントあり
日本人の心房細動患者において,apixaban 2.5mg,5mg各1日2回,12週間投与は忍容性が認められた。

Fushimi AF Registry編集委員コメントあり
Fushimi AF Registryは,日本の都市社会での心房細動管理の現状を示すユニークな研究である。本研究より,心房細動患者において,ガイドラインの推奨と実地臨床の不一致を示唆する経口抗凝固薬の不適切使用が明らかになった。

HAT 1
わが国において,warfarin投与を受けている高齢の心房細動患者は現在のところ少ない。高齢の心房細動患者は今後増えるとされており,安全かつ適切な抗凝固療法が求められる。

J-RHYTHM Registry anticoagulation編集委員コメントあり
わが国では脳塞栓リスクが比較的低い心房細動患者にもwarfarinが広く処方されており,患者の半数はCHADS2スコア0か1であった。

J-RHYTHM Registry paroxysmal vs. permanent
永続性心房細動患者における血栓塞栓イベントの粗発生率は,発作性患者にくらべ高かったが,warfarin使用およびCHA2DS2-VAScスコア構成項目で補正後,発作性患者と永続性患者の血栓塞栓イベントリスクは同程度であった。

J-RHYTHM Registry target INR values編集委員コメントあり
非弁膜症性心房細動患者,とりわけ70歳以上の患者における血栓塞栓イベント予防について,PT-INR 1.6~2.6は安全かつ有効である。2.6~2.99も有効だが,大出血リスクがわずかに上昇した。

J-RHYTHM Registry warfarin use編集委員コメントあり
日本人の心房細動患者において,抗凝固療法に関するガイドラインのアドヒアランスは限定的であった。

J-ROCKET AF 編集委員コメントあり
脳卒中リスクのある非弁膜症性心房細動患者における脳卒中,全身性塞栓症予防について,日本人にあわせた用量でのrivaroxaban投与は,用量調節warfarin投与に対し,安全性に関して非劣性が認められた。有効性については強い抑制傾向が示された。

J-ROCKET AF in relation to age
高齢の日本人非弁膜症性心房細動患者に対し,出血事象の発現はwarfarinに比べrivaroxabanで高値であったが,脳卒中または全身性塞栓症の発症は抑制傾向にあり,投与にあたっては,リスクとベネフィットを考慮することが重要である。

J-ROCKET AF renal impairment 編集委員コメントあり
腎機能障害を有する心房細動患者では,脳卒中や全身性塞栓症のリスクのみならず,出血リスクも高いことから,これらの患者に対する抗血栓療法においては,そのリスク/ベネフィットバランスが重要となる。心房細動患者において,rivaroxabanの用量調節warfarinに対する安全性および有効性は,中等度腎機能障害患者および腎機能正常患者で一貫しており,中等度腎機能障害患者に対するrivaroxabanの減量投与の妥当性が認められた。

JAST
NVAF患者においてaspirin 150-200mg/日投与は脳卒中予防に対して有効でなく,安全性も認められなかった。日本人NVAF患者における脳血管イベントの最適予防治療を確立するために,さらなる前向き試験の実施が必要である。

BAT retrospective study編集委員コメントあり
日本人の脳内出血患者において,抗血小板薬かつ/またはwarfarinの前投与は,小脳出血,血腫拡大,早期死亡の予測因子であった。

S-ACCESS編集委員コメントあり
日本人の脳梗塞患者において,再発予防のためのsarpogrelate投与は,aspirin投与に対し非劣性基準に合致しなかった。出血イベントはsarpogrelateの方がaspirinに比し少なかった。日本人患者におけるaspirinの効果は西洋諸国と同様であった。

Sadanaga T et al 編集委員コメントあり
経口抗凝固療法を受けている心房細動患者において,D-dimer は血栓塞栓イベント,心血管イベント両方の有用なマーカーかもしれない。

Takeuchi F et al
International Warfarin Pharmacogenetics Consortium(IWPC)薬理遺伝学アルゴリズムは,必要とするwarfarin用量が少なく過剰投与リスクのある日本人患者において,臨床応用性を有する。


脳血管疾患

BAT編集委員コメントあり
日本における抗血栓療法中の出血イベント発症率は,試験デザインが異なるにもかかわらず,西洋諸国と同様であった。抗血小板薬併用療法は,出血イベントリスク上昇と独立して関連がみられた。

BAT blood pressure levels編集委員コメントあり
抗血栓薬投与中の血圧上昇は脳内出血発生と明確に関連しており,脳内出血を避けるためには適切な血圧管理の重要性が示唆される。血圧値と頭蓋外出血との関連は認められなかった。

CSPS post hoc analysis
糖尿病患者は脳梗塞再発のリスクに著しくさらされている。cilostazolはラクナ梗塞患者における血管イベント再発予防に有用であり,高リスク患者(糖尿病かつ/または高血圧)においても効果があると考えられる。

CSPS 2編集委員コメントあり
脳梗塞後の患者において,cilostazolはaspirinに比し脳卒中リスク,出血リスクを抑制したことから非劣性と考えられ,優越性の可能性も示唆された。

EDO編集委員コメントあり
非心原性脳梗塞患者において,edaravoneはozagrelに対し非劣性を示した。edaravoneはozagrelと少なくとも同等の有効性を有する。

Fukuuchi Y et al 編集委員コメントあり日本人の非心原性脳梗塞患者において,血管イベント再発予防のためのclopidogrel 75mg/日投与は,ticlopidine 200mg/日投与に比し安全である。

Fukuoka Stroke Registry 編集委員コメントあり心原性脳塞栓症後,脳卒中前のPT-INR≧2.0は転帰良好と関連していた。

Hagii J et al編集委員コメントあり
rivaroxaban関連脳内出血は大出血リスクが高い患者で発症したが,warfarin関連脳内出血に比べ血腫が小さく,血腫拡大はみられず,機能転帰は良好で生存率も高かった。

J-ACT
alteplaseを0.6mg/kg投与した日本人患者における転帰および症候性頭蓋内出血の発症率は,過去の0.9mg/kg投与の結果とほぼ同等であったことから,日本人患者におけるalteplase 0.6mg/kg投与の有効性と安全性は,北米やEUで報告されている0.9mg/kg投与のデータとほぼ等しいであろうことが示唆された。

J-MARS編集委員コメントあり
日本人の虚血性脳卒中患者において,発症後3時間以内のalteplase 0.6mg/kg静注は安全かつ有効であることが示唆された。

JASAP編集委員コメントあり
虚血性脳卒中(脳梗塞)患者の再発予防において,徐放性dipyridamole+aspirin合剤(ER-DP+ASA)のaspirin単独に対する非劣性は認められなかった。ただし,サンプルサイズが小さく,イベント発症率が低く,試験期間が短かったため,結論を出すには至らなかった。

Kimura K et al編集委員コメントあり
虚血性脳卒中患者におけるtPA静注前の臨床因子,MRI所見のうち,静注1時間後の再開通の独立阻害因子はT2*強調画像でのM1 susceptibility vessel signのみであった。

MELT Japan編集委員コメントあり
本試験はrt-PA静注療法の認可を受けて早期に中止されたため,一次エンドポイントの有意差は認められなかったが,発症から6時間以内の中大脳動脈閉塞患者において,UK局所動注は機能転帰を改善する可能性が高いことが示唆された。

RESCUE-Japan retrospective survey編集委員コメントあり
tPA静注+血管内治療併用の有効性は,脳底動脈および中大脳動脈閉塞患者では示されたが,内頸動脈閉塞患者では示されなかった。

SAMURAI編集委員コメントあり
alteplase 0.6mg/kg静注を受けた虚血性脳卒中患者における3ヵ月後の臨床転帰は,0.9mg/kg静注の市販後調査と同様であった。

SAMURAI CT versus DWI編集委員コメントあり
超急性虚血性脳卒中患者において,拡散強調画像(DWI)を用いて評価したAlberta Stroke Programme Early CT Score(ASPECTS)はCT-ASPECTSより約1点低かった。両方とも血栓溶解療法後の症候性脳内出血,3カ月後の自立の有用な予測因子であった。

SAMURAI DWI-ASPECTS編集委員コメントあり
虚血性脳卒中患者において,血栓溶解療法前に拡散強調画像(DWI)を用いて評価したAlberta Stroke Programme Early CT Score(ASPECTS)は3カ月後の機能的転帰および生命状態,36時間以内の症候性脳内出血の独立予測因子であった。

SAMURAI rtPA Registry SITS-MOST criteria
alteplase 0.6mg/kg静注を受けた日本人脳梗塞患者において,SITS-MOST基準に合致していなかった患者の3ヵ月後の機能的転帰および生存率は基準に合致していた患者に比較するとやや不良であったが,脳内出血リスクは認められなかった。

SAMURAI DWI-ASPECTS編集委員コメントあり
虚血性脳卒中患者において,血栓溶解療法前に拡散強調画像(DWI)を用いて評価したAlberta Stroke Programme Early CT Score(ASPECTS)は3カ月後の機能的転帰および生命状態,36時間以内の症候性脳内出血の独立予測因子であった。

SUMO
rt-PAの認可はわが国の脳梗塞治療の過程に劇的な変化をもたらした。rt-PA静注療法実施率は,特にstroke unitを有する施設で増加した。


その他

Komatsu T et al
抗血小板薬を投与されている患者に対して侵襲的内視鏡術を実施する場合,直前の投薬中断期間はaspirin投与において3日間,ticlopidine投与において5日間,aspirin+ticlopidine投与において7日間で十分であることが示された。

Saito H et al
遺伝子組み換えヒト可溶性トロンボモジュリン(ART-123)は低用量heparinに比し,より有意に播種性血管内凝固症候群(DIC)を改善し,出血症状を軽減した。