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3月10日 Late-Breaking Clinical Trials II: Interventional

NSTE-ACS rosuvastatin 冠動脈造影前投与 vs 前投与なし 造影剤腎症↓:前投与>前投与なし*
PRATO-ACS 
Protective effect of Rosuvastatin and Antiplatelet Therapy On contrast-induced acute kidney injury and myocardial damage in patients with Acute Coronary Syndrome
スタチン投与歴のない非ST上昇型急性冠症候群患者において,冠動脈造影前の高用量rosuvastatin投与は,急性造影剤腎症の発症を抑制。
デザイン ランダム化,オープン。
一次エンドポイント 急性造影剤腎症(CI-AKI)(造影剤投与後72時間以内における血清クレアチニン0.5mg/dL以上,または25%以上の上昇)
対 象  543例。早期の冠動脈造影を要する,CCUに入院したスタチン投与歴のない非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)患者。
■背景:年齢(スタチン群66.2歳,対照群66.1歳),女性(34%,34%),BMI(26.2kg/m²,26.6kg/m²),非ST上昇型心筋梗塞(MI)(92.4%,92.1%),不安定狭心症(7.5%,7.9%),高血圧(56.7%,54.8%),糖尿病(19.8%,22.6%),MI既往(9.5%,5.9%),PCIまたはCABG既往(11.9%,7.1%),クレアチニンクリアランス<60mL/分(41.7%,41.7%),LDL-C(135.2 mg/dL,135.8mg/dL),血糖値(131.7mg/dL,137.3mg/dL)。
期 間 追跡期間は30日間。
試験期間は2010年7月〜2012年8月。
治 療  スタチン群(271例;冠動脈造影前に標準的な腎症予防に加えrosuvastatin 40mg単回投与,その後20mg/日) vs 対照群(272例;標準的な腎症予防のみ)。
標準的な造影剤腎症予防:輸液(生理食塩水)(造影剤投与前後12時間に静脈投与)およびN-アセチルシステイン(造影剤投与前後24時間に経口投与)。
退院後は,スタチン群ではrosuvastatin 20mg/日を継続,対照群ではatorvastatin 40mg/日。
結 果 手技背景:ランダム化から造影剤投与までの時間(スタチン群22.5時間,対照群23時間),造影剤使用量>140mL(46.4%,40.1%),多枝病変(48.8%,47.6%),内科治療(21.4%,23.8%),CABG(10.7%,11.9%),PCI(67.9%,64.3%)。

[一次エンドポイント]
スタチン群6.7% vs 対照群15.1%(P=0.001):調整オッズ比0.38;95%信頼区間0.20-0.71。

[その他]
30日後までの有害イベント(死亡,透析を要する腎不全,MI,脳卒中,持続性腎障害のいずれか)の発生は,スタチン群3.6% vs 対照群7.9%(P=0.036)。

presenter: Anna Toso, MD ( Misericordia e Dolce, Prato Hospital, Italy )
手術不適応の高リスク大動脈弁狭窄 新デバイス vs 第1世代デバイス CVD:新デバイス≒第1世代(非劣性)
PARTNER II 
手術不適応の高リスク大動脈弁狭窄患者において,新しいロープロファイルデバイス* による経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVR)の1年後の心血管転帰は第1世代デバイスに対して非劣性。
* 2010年発表のPARTNER試験 DBで検討された第1世代デバイスは周術期合併症リスクが増大するため,このリスクを軽減するように新デバイスが設計され臨床現場で使用され始めている。
コメント 石灰化抑制処理した生体弁とバルーン拡張型ステントを組み合わせたSAPIENシステムは,重度の症候性大動脈弁狭窄症で手術不適応例において最適な内科治療よりも臨床的有用性が確立されている。今回は,SAPIENの合併症を減らすために作られたSAPIEN XTと従来のSAPIENとを対比しており,30日後,1年後の臨床転帰は両システムで同等であったが,重大な血管合併症や出血イベントはSAPIEN XTのほうが有意に少なかった。SAPIEN XTのほうがシースサイズが小さいことが関連しているのであろう。一方,SAPIEN XTでは大動脈基部との密着性を高め弁周囲逆流を予防する工夫がされているが,大動脈弁逆流の程度はSAPIENと同等であることが少し物足りない点である。以前のPARTNER cohort A trialより今回のSAPIEN群は脳卒中や死亡率・大出血の頻度が低下しており,術者の技量も格段に向上していると思われる。SAPIEN XTが今後のスタンダード治療になることが期待される(コメント:星田 四朗)。
デザイン ランダム化,多施設(アメリカの28施設),intention-to-treat解析。
一次エンドポイント 1年後の全死亡,介護が必要な脳卒中,大動脈弁狭窄再発による再入院,手技関連合併症。
非劣性:1年後の全死亡,介護が必要な脳卒中,大動脈弁狭窄再発による再入院の複合エンドポイント。
対 象  560例。心エコーによる大動脈弁弁口面積(aortic-valve area: AVA)<0.8cm²(あるいはAVA index<0.5cm²/m²),平均大動脈弁圧較差(aortic-valve gradient: AVG)>40mmHg,最高大動脈弁通過血流速度>4.0m/秒,NYHA心機能分類≧II度,心臓医,2名の外科医が合併症または死亡リスク>50%としたもの。
除外基準:大動脈弁輪径<18mmあるいは>25mm,EF<20%,血清クレアチニン>3.0mg/dLあるいは透析患者,1ヵ月以内の心筋梗塞など。
■患者背景:平均年齢(新デバイス群84.0歳,第1世代デバイス群84.6歳),男性(49.6%,51.4%),手術リスク:STSスコア(10.3,11.0),NYHA III-IV度(96.8%,96.0%),冠動脈疾患(65.5%,67.4%),既往:心筋梗塞(19.4%,21.0%);PCI(31.7%,36.2%);CABG(26.8%,26.1%);脳血管疾患(10.9%,12.7%),末梢血管疾患(31.0%,27.2%),糖尿病(35.9%,36.2%),心房細動(36.6%,40.6%),恒久性ペースメーカー植込み(20.8%,17.0%)。
AVA(両群とも0.6 cm²),AVG(45.2mmHg,45.5mmHg)。
期 間 追跡期間は1年。
登録終了2012年2月10日,追跡終了2013年3月1日。
治 療  新世代デバイス群(284例):コバルトクロム製のSAPIEN XT生体弁。
第1世代デバイス群(276例):ステンレス製のSAPIEN生体弁。
結 果 解析例は30日後:新世代デバイス群269例,第1世代デバイス群253例,1年後:219例,200例。
新世代デバイス群で減少したのは,手技時間:101.0分,109.6分,麻酔時間:197.6分,212.0分(P=0.02),≧2の弁使用:3例,10例(P=0.05),手技中止:2例,8例(P=0.06),手技中のIABP:1例,6例(P=0.06)。

[一次エンドポイント]
・非劣性:新世代デバイス群94例(33.9%)vs第1世代デバイス群93例(34.7%):ハザード比0.97(95%信頼区間0.73-1.30,P[log rank]=0.863);新世代デバイスの非劣性P=0.0034。
複合構成各エンドポイントは全死亡22.5% vs 23.7%,介護を要する脳卒中:4.5 % vs 4.6%,再入院:17.4% vs 19.0%といずれも両群間に有意差はなかった。
・30日後の複合エンドポイントは48例(17.0%)vs 42例(15.3%);P=0.60。
複合構成各エンドポイントは全死亡:3.5% vs 5.1%,介護を要する脳卒中:3.2% vs 3.0%,再入院:11.6% vs 10.2%といずれも両群間に有意差はなかった。

[その他]
・30日後の重大な血管イベント:9.6% vs 15.5%(P=0.04),障害が残る出血(disabling bleeding):7.8% vs 12.6%(P=0.06),重大な出血:15.7% vs 16.4%(P=0.84),血管合併症(穿孔:0.4% vs 4.8%,P=0.003,解離:4.3% vs 9.2%,P=0.03)。
・1年後の心機能は両群とも改善し両群間差はなかった。
・1年後のAVA,AVGも群間に有意差はなかった。

presenter: Martin B Leon, MD ( Columbia University Medical Center, US )
PCI biolimus溶出ステント(BES)vs everolimus溶出ステント(EES) TLR:BES≒EES(非劣性)
NEXT  Japanese
NOBORI™ Biolimus-Eluting versus XIENCE™/PROMUS™ Everolimus-eluting Stent Trial
PCI施行1年後の標的病変再血行再建術と8-12月後のセグメント内遠隔期損失径において,生体吸収性ポリマーを使用したバイオリムス(biolimus)溶出ステントは,耐久性ポリマーを使用したeverolimus溶出ステントに対して非劣性。
コメント 日本から発信された本試験は,COMPARE IIと同様,biodegradable polymer biolimus-eluting stent(BP-BES ; NOBORI®)とdurable polymer everolimus-eluting stent(DP-EES;Xience® or Promus®)とのランダム化比較試験である。1年間follow-upした今回の検討では,TLRとlate lossといったソフトエンドポイントが一次エンドポイントに設定されている点が大きく異なる。
患者背景での差異は,NEXT trialの対象が主として安定型狭心症であり,より高齢・糖尿病・高血圧・PCI歴・脳卒中歴が多く,病変背景としてはより長く,小血管であった。すなわち,COMPARE IIよりも組みし難い対象であったと推測される。一方90%近い症例にIVUSが併用されているのは,日本ならではである。
その結果,in-segment late lossはBP-BES群;0.03±0.39mm vs DP-EES群;0.06±0.45mm,TLRは共に4.2%であった。またステント血栓症は両群とも他の試験より圧倒的に少なかった。今後IVUS/ 光干渉断層法(OCT)によるミクロな解析や内膜機能比較もサブ解析として予定されている。
ハードエンドポイントではなくまずはソフトエンドポイントで比較した真意は不明であるが,DESとしてのパフォーマンスが同等である,という今回の結果を受けて,ポリマーが関与するとされる長期成績の解釈が単純化できるかもしれない(コメント:中野 明彦)。
デザイン ランダム化,多施設(日本の98施設),intention-to-treat解析。
一次エンドポイント [有効性]1年後の標的病変再血行再建術(TLR)。
[安全性]3年後の死亡,心筋梗塞(MI)。
[血管造影]8-12ヵ月後のセグメント内遠隔期損失径。
対 象  3,235例。PCI施行患者(all-comers)。
■患者背景:平均年齢69歳,男性77%,糖尿病46%,高血圧(biolimus溶出ステント[BES]群81%,everolimus溶出ステント[EES]群82%),スタチン使用(77%,75%),PCI歴(50%,51%),急性心筋梗塞(5.1%,4.5%),安定CAD(83%,84%),脳卒中既往(10%,11%),多枝病変51%,SYNTAXスコア10。
病変背景:標的病変(左主幹部:2.4%,2.3%;左前下行枝:42%;左回旋枝:22%,24%,右冠動脈:33%,31%),分岐部病変(43%,45%),多枝治療(13%,11%),staged PCI 27%。
手技背景:総ステント長/患者(33.0mm,32.9mm),最大拡張圧(17.2atm,16.9atm;P=0.03)。
血管造影背景(BES群1,960病変,EES群1,930病変):病変長(19.5mm,19.3mm),参照血管径(2.62mm,2.61mm),最小血管径(0.77mm,0.75mm),径狭窄率(71.0%,71.4%),手技後のステント内最小血管径(2.51mm,2.47mm;P=0.006),セグメント内径狭窄率(22.2%,21.1%;P=0.005)。
期 間 追跡期間は3年。今回の発表は1年後の結果。
登録期間は2011年5月2日-10月25日。
治 療  BES群(1,617例・2,059病変) vs EES群(1,618例・2,010病変)
結 果 手技時間はBES群72.6分,EES群71.3分。ステント植込み成功率は両群とも99.6% ,入院中の主要な合併症非発生率は96.8%,96.7%。

[一次エンドポイント]
1年後の累積TLR(BES群4.2% vs EES群4.2%),8-12ヵ月後のセグメント内遠隔期損失径(0.03mm vs 0.06mm)ともにBES群のEES群に対する非劣性が示された(いずれも非劣性P<0.0001)。

[その他]
標的血管再血行再建術(6.8%,6.5%),全死亡(2.6%,2.5%),MI(3.3%,3.1%)は両群間差はなかった。
definiteステント血栓症:0.25% vs 0.06%(P=0.18)。
stent fracture:3.1% vs 0%(P=0.004)。
peri-stent contrast staining:2.7% vs 1.4%(P=0.24)。

→文献情報

presenter: Masahiro Natsuaki, MD ( Kyoto University Graduate School of Medicine, Japan )
非保護左主幹部分岐部病変 DK crush法 vs Culotte法 MACE↓:DK crush 法>Culotte法*
DKCRUSH-III 
DK Crush versus Culotte Stenting for the Treatment of Unprotected Distal Left Main Bifurcation Lesions-III
PCI cangrelor vs clopidogrel CVD+ST症↓:cangrelor>clopidogrel*
CHAMPION PHOENIX 
非チエノピリジン系の抗血小板薬であるADP受容体P2Y12阻害薬cangrelor静注はPCI施行例で大出血リスクを増大することなく,周術期のステント血栓症を含む虚血性イベント,死亡を有意に抑制。 →文献情報コメント 星田四朗)
* 有意差あり。
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