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ESC2011 Hot Line I

HCS 
Homburg Cream and Sugar
耐糖能正常の冠動脈疾患患者において,空腹時および食後トリグリセライドは心血管イベントを独立して予測。
背景・目的 心血管イベント高リスク患者における空腹時トリグリセライド(TG)のリスク層別能は明らかではなく,食後TGが二次予防のリスク修飾因子か否かもわかっていない。また,高リスク患者において食後TGと耐糖能を同時に評価した前向き研究はない。
冠動脈疾患(CAD)患者において,耐糖能および従来の危険因子に食後TG動態を加えると,心血管イベント予測能が改善するかを検討する。
[一次エンドポイント]心血管死,心血管疾患による入院の複合エンドポイント。
デザイン 前向き観察研究。
期間 追跡期間は18ヵ月。
対象 514例。18歳以上の冠動脈造影で確認された安定CAD。
除外基準:心筋梗塞現病または亜急性(≦30日);心臓外科術予定例;EF<35%または心不全を発症しているものなど。

■患者背景:平均年齢66.4歳,男性82.9%,現喫煙18.9%,家族歴31.7%,高血圧92.9%,血圧126.7/74.6mmHg,心拍数66.7拍/分,BMI 28.9kg/m2,腹囲103.6cm。
代謝背景:耐糖能正常24.5%,耐糖能異常(IGT)29.2%,糖尿病46.3%,メタボリックシンドローム53.7%,空腹時血糖120.7mg/dL,HOMA指標3.54,HbA1c 6.17%,総コレステロール173.0mg/dL,HDL-C 44.8mg/dL,LDL-C 105.1mg/dL。
治療状況:抗血小板薬97.3%,ACE阻害薬/ARB 95.5%,β遮断薬93.5%,利尿薬43.9%,スタチン94.6%。

検査法 糖尿病治療例は経口TG tolerance試験(脂質負荷試験):脂肪75gを含有した乳飲料250mLを経口摂取。
糖尿病非治療例は経口脂質負荷試験+3時間後の経口糖負荷試験:脂質負荷試験を実施し,3時間後に75gのブドウ糖を溶かした水250mLを経口摂取。
脂質負荷試験開始時,3時間,4時間,5時間後に採血し,12ヵ月後,18ヵ月後に追跡面談。
空腹時および食後最高TG値を三分位にわけ,転帰との関連を評価する。
結果 食後血糖と脂質負荷試験を合わせて実施することは,臨床現場で可能であることが示された。
食後TG代謝は耐糖能に依存する。

・食後TG代謝
空腹時TG:全例の平均値156.1mg/dL,非糖尿病108.1mg/dL,IGT/糖尿病171.8mg/dL(P<0.001)。
絶対TG上昇:134.2mg/dL,103.6mg/dL,144.1mg/dL;P<0.001。
曲線下面積:1082mg/dL,788.3mg/dL,1177mg/dL;P<0.001。
相対TG上昇(vs 空腹時):195.4mg/dL,200.3mg/dL,194.4mg/dL;P=0.15。
・食後最高TGは一次エンドポイントを予測しなかった(食後最高TG値>305mg/dL vs 198-305mg/dL vs <198mg/dL;P=0.22)。空腹時TGは予測したが(P=0.01),年齢,性,HDL-Cなどで多変量解析後,有意差は消失した。
・空腹時TG>150mg/dL例では心血管イベント発症率が高い(vs 106-150mg/dL,<106mg/dL;P=0.04)。
・サブグループ解析
IGT/糖尿病患者:空腹時・食後TGは上昇するものの,心血管イベントを独立して予測はしない。
正常糖代謝患者:空腹時(>150mg/dL vs <106mg/dL:ハザード比3.10;95%信頼区間1.06-9.06,P=0.04)。
食後相対TG上昇(>210% vs <171%:4.45;1.33-14.91,P=0.02)のいずれも,心血管イベントを独立して予測する。

presenter: Ulrich Laufs , MD ( Saarland University Hospital,German )

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