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STEMI 非酸素療法群 vs 酸素療法群 72時間後の梗塞サイズ↑:酸素療法群>非酸素療法群
AVOID 
Air Versus Oxygen In ST-elevation myocarDial infarction
発症後12時間未満で酸素飽和度≧94%のSTEMI患者(63歳)において,酸素療法群は非酸素療法群にくらべ,CKで評価した72時間後の心筋傷害,退院時のMI再発,主要不整脈が多く,心臓MRIで評価した6ヵ月後の梗塞サイズが大きかった。
目 的 酸素療法は1世紀以上にわたり心筋梗塞(MI)疑い例の初期治療で用いられてきたが,低酸素を認めない患者における有益性のエビデンスは限られている。酸素補給は冠血流を低下させ,血管抵抗を増加し,活性酸素種の産生増加により再灌流障害をもたらす可能性がある。
酸素状態正常のST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において,酸素療法を行った場合と行わない場合とで梗塞サイズを比較する。
デザイン ランダム化,多施設。
一次エンドポイント 72時間後の心筋梗塞サイズ(クレアチンキナーゼ,トロポニンIの最大値および曲線下面積[AUC]で評価)。
対 象  638例。救急隊が評価したSTEMI発症後12時間未満,酸素飽和度≧94%,ECG上で隣接2誘導以上のST上昇を認めるprimary PCI施行予定の患者。
除外基準:ランダム化前の酸素療法,意識変容状態など。
■患者背景:平均年齢(酸素療法群63.0歳,非酸素療法群62.6歳),男性(79.8%,78.0%),糖尿病(17.0%,18.4%),高血圧(59.6%,55.2%),脂質異常症(55.5%,52.9%),救急隊到着時の心拍数*(74.0,72.0),収縮期血圧*(両群とも130.0mmHg),酸素飽和度(両群とも98.0%),Killip分類I度(88.9%,87.3%),前壁梗塞(38.0%,33.8%),酸素投与(95.9%,7.7%;P<0.05),酸素量*(8.0,4.0;P<0.05),救急隊到着から病院到着までの時間*(55.0,56.5),心停止(4.6%,3.6%),心原性ショック(5.0%,5.4%)。
手技背景:橈骨アクセス(33.2%,33.3%),ステント植込み(92.7%,90.1%),薬剤溶出性ステント使用(51.4%,51.1%),GP IIb/IIIa阻害薬使用(44.5%,40.4%),血栓吸引(49.1%、47.1%),CABG(2.3%,4.0%),発症からインターベンションまでの時間*(150.5,162.0),病院到着からインターベンションまでの時間*(54.0,56.0)。* 中央値
期 間 追跡期間は6ヵ月。
治 療  酸素療法群(218例):フェイスマスクにより8L/分を投与。
非酸素療法群(223例)。
結 果 [一次エンドポイント]
72時間後のクレアチンキナーゼの最大幾何平均値は,酸素療法群で非酸素療法群にくらべ有意に大きかった(1,948 vs 1,543U/L;P=0.01,AUC:P=0.04)。 トロポニンIによる評価では有意差を認めなかった(57.4 vs 48.0μg/L;P=0.18,AUC:P=0.12)。

[二次エンドポイント]
PCI施行1日後のECGにおけるST部上昇の>70%軽減は両群同等(62.0% vs 69.6%;P=0.10)。
酸素療法群は,6ヵ月後の心臓MRIで評価した梗塞サイズが大きく(重量中央値:20.3g vs 13.1g;P=0.04),退院時のMI再発(5.5% vs 0.9%;P<0.01),不整脈(40.4% vs 31.4%;P=0.05),6ヵ月後のMI再発(7.6% vs 3.6%;P=0.07)が多かった。
死亡には有意差はみられなかった(退院時:1.8% vs 4.5%;P=0.11,6ヵ月後:3.8% vs 5.9%;P=0.32)。

presenter: Dion Stub, MBBS, PhD ( St Paul’s Hospital Vancouver, Canada )
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