循環器トライアルデータベース
学会情報

3月11日 Late-Breaking Clinical Trials V: Heart Failure

心不全・LVD非発症CVD BNPに基づく治療 vs 対照 心不全,LVD↓:BNP群>対照群
STOP-HF
The Saint Vincents Screening to Prevent Heart Failure
BNPに基づくプライマリケアにより左室機能不全,心不全発症リスクが低下。
デザイン ランダム化,多施設(39施設),intention-to-treat解析。
一次エンドポイント 心不全(入院)罹患率および無症候性左室機能不全(収縮不全[LVSD]:EF<50%,拡張不全[LVDD]:E/ e'[イープライム]>15)。
対 象  >40歳の高血圧;脂質異常症;糖尿病;血管疾患;不整脈;弁膜症;肥満。
除外基準:LVSD,心不全(HF)など。
■患者背景:平均年齢(BNP群64.1歳,対照群65.4歳),男性(46.3%,44.3%),高血圧(62.1%,61.9%),糖尿病(両群とも18.2%),肥満(25.8%,28.5%),脂質異常症(50.9%,55.5%),不整脈(6.9%,8.0%),心筋梗塞(MI:10.5%,8.3%,危険因子保有数:1(29.3%,30.1%);2(34.6%,35.8%);≧3(27.0%,26.6%)。
脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP:48.2pg/mL,44.8pg/mL),血圧(144.7/81.1mmHg,147.0/80.5mmHg)。
期 間 平均追跡期間は4.2年。
治 療  BNPに基づく治療群(697例):プライマリケア医(GP)による通常のルーチンケアに加え,毎年BNP測定に基づくリスク評価を行い,BNP値による心血管リスク指導を全患者に行い,BNP>50pg/mL例には心エコーを実施しその結果をGPと心臓専門施設がシェアし,ドプラー心エコー,その他の心血管検査などを実施する。
対照群(677例):GPはBNP結果を知らされず,毎年1回以上レビューを行う。GPの依頼があった場合のみ心エコーを実施。
結 果 ・追跡不能例がBNPに基づく治療群70例,対照群69例,同意撤回が92例,132例。
・薬物治療の変化:ACE阻害薬/ARB/アルドステロン拮抗薬投与はBNP群がベースライン時43%→+約14%,対照群が42%→+8%(P=0.02),β遮断薬(27%,25%→両群とも+4%),スタチン(53%,52%→両群とも+8%)。
・血圧は両群で有意に低下(P<0.001)し,BNP高値群で心拍数,LDL-Cが低下の傾向がみられ,対照群の一次エンドポイント例の75%がBNP>50pg/mLであった。
BNPは上昇したが,BNP群で上昇は減少した(13 % vs 26%,有意差なし)。

[一次エンドポイント]
BNPに基づく治療群37例(5.3%。うちLVSD:2.3%,LVDD:2.0%,HF:1.0% )vs 対照群59例(8.7%。2.8%,3.8%,2.1%):オッズ比(OR)0.59;95%信頼区間0.38-0.90(P=0.01)。

[その他]
・死亡:35例 vs 37例。
・主要な有害心イベント:51例(7.3%) vs 71例(10.5%);0.54(P=0.001)。
うち,不整脈:9.9 vs 15.5/1000人・年,心不全:2.7 vs 6.2/1000人・年,MI:2.7 vs 3.8/1000人・年,肺塞栓症/深部静脈血栓塞栓症:1.4 vs 3.8/1000人・年,脳卒中/一過性脳虚血発作:5.5 vs 11/1000人・年。

presenter: Kenneth McDonald, MD ( St Vincent's University Hospital, Ireland )
EF低下,高齢収縮性心不全 digoxin vs プラセボ 全入院↓:digoxin>プラセボ*
DIG
Digitalis Investigation Group
ACE阻害薬と利尿薬を投与されているEFが低下した高齢の慢性心不全患者において,digoxinは30日後の全入院を有意に抑制。
背 景 2010年に米国で医療保険改革法(New Health Care Reform Act)が成立し,メディケア,メディケイドは過剰な再入院に対する診療報酬を削減するよう義務付けられた(2012年10月1日施行)。digoxinは古くから使用されている安価な心不全治療薬で,ガイドラインでもEFが低下した心不全患者において心不全による入院の抑制に有効として推奨されている。今回は,1990年代に北米で実施された慢性心不全(CHF)患者を対象としたdigoxinのランダム化プラセボ対照試験(DIG試験 DB)の参加者から,メディケア加入資格年齢である65歳以上の高齢者を抽出し,digoxinの全入院抑制効果を解析した。
デザイン ランダム化比較試験のpost hoc解析。
一次エンドポイント 30日後の全入院。
対 象  3,405例。DIG試験参加者(EF≦45%,洞調律の外来CHF患者6,800例)のうち≧65歳のもの。
■背景:平均年齢72歳,女性25%,非白人11%,BMI(digoxin群25.9 kg/m²,プラセボ群26.2kg/m²;P=0.04),心拍数78bpm,収縮期血圧128mmHg,血清クレアチニン1.4mg/dL,EF 29%,心胸郭比0.54,NYHA心機能分類III/IV度(36%,35%),心不全罹病期間30ヵ月,心筋梗塞既往68%,狭心症(28%,29%),高血圧(46%,48%),糖尿病(29%,30%),CKD(62%,61%),労作時呼吸困難77%,安静時呼吸困難(21%,23%),肺浮腫(17%,16%),digoxin投与歴(44%,43%),ACE阻害薬94%,利尿薬(81%,82%),ニトログリセリン(45%,46%)。
期 間 追跡期間は90日。
治 療  digoxin群(1,693例) vs プラセボ群(1,712例)。
結 果 [一次エンドポイント] digoxin群で有意に減少した(5.4% vs 8.1%;ハザード比0.66;95%信頼区間0.51-0.86(P=0.002)。

[その他]
30日後の心血管疾患による入院:3.5 % vs 6.5%;0.53;0.38-0.72(P<0.001)。
30日後の心不全悪化による入院:1.7% vs 4.2%;0.40;0.26-0.62(P<0.001)。
30日後の全入院+全死亡:6.0% vs 8.7%;0.69;0.53-0.88(P=0.003)。
60日後の全入院:0.76;0.63-091(P=0.003)。
90日後の全入院:0.75;0.63-0.88(P<0.001)。

presenter: Ali Ahmed, MD,MPH ( University of Alabama at Birmingham, USA )
心不全入院患者 aliskiren vs プラセボ CVD死+再入院↓:aliskiren≒プラセボ
ASTRONAUT 
Aliskiren Trial on Acute Heart Failure Outcomes
左室収縮能の低下した慢性心不全入院患者において,標準的な治療に直接的レニン阻害薬aliskirenを追加しても,退院後6か月後および12か月までの心血管死,心不全による再入院の複合エンドポイントは抑制されなかった。→文献情報コメント 堀 正二)
拡張性心不全 sildenafil vs プラセボ 運動耐容能:sildenafil≒プラセボ
RELAX 
Phosphodiesterase-5 Inhibition to Improve Clinical Status and Exercise Capacity in Heart Failure with Preserved Ejection Fraction
拡張性心不全患者において,血管拡張作用をもつホスホジエステラーゼ-5阻害薬シルデナフィル(sildenafil)を投与しても24週後の運動耐容能の改善はみられず。
デザイン ランダム化,プラセボ対照,二重盲検,多施設(米国の11施設)。
一次エンドポイント 治療開始から24週間後の最大酸素摂取量(peak VO2)の変化。
対 象  216例。NYHA心機能分類II-IV度,EF≧50%の拡張性心不全患者で,peak VO2が正常値の60%未満,呼吸交換比≧1.0,かつ,NT-proBNP≧400pg/mLもしくは<400pg/mLだが肺動脈楔入圧上昇を伴うもの。
■背景:年齢(sildenafil群68歳,プラセボ群69歳),女性(43%,53%),BMI(33,33kg/m²),NYHA心機能分類(II度:49%,45%,III度:51%,55%),既往(高血圧:80%,90%;P<0.05,冠動脈疾患:42%,36%,糖尿 病:42%,44%,心房細動:52%,50%),EF(60%,60%),NT-proBNP(757,648pg/mL),peak VO2(11.7,11.9mL/kg/分), 6分間歩行距離(308m,305m)。
期 間 追跡期間は24週間。
治 療  sildenafil群(113例;12週目までsildenafil 20mg 3 回/日,その後24週目まで60mg 3回/日) vs プラセボ群(103例)。
結 果 [一次エンドポイント]
有意な群間差はみられなかった(P=0.90)。

[二次エンドポイント]
24週後の6分間歩行距離に有意な群間差はなかった(P=0.92)。
階層的スコアリングにより評価した臨床状態*にも有意な群間差はなかった(P=0.85)。
* 「最初に死亡」が最低スコア,「ミネソタ心不全QOL質問票のスコアが最も大きく改善」が最高スコア。「治療効果なし」をアンカースコアとして比較。

[その他]
追跡期間中の血清クレアチニン,シスタチンC,NT-proBNP,エンドセリン-1,尿酸値は,sildenafil群でプラセボ群にくらべて有意に増加した(P<0.05)。
安全性(死亡,心血管疾患または心腎疾患による入院,有害事象,重篤な有害事象)については有意な群間差はなかった。

presenter: Margaret Redfield, MD ( Mayo Clinic, USA )
正常血圧,急性中等度リスク肺塞栓症 tenecteplase vs プラセボ 死亡,血行動態の破綻↓tenecteplase>プラセボ*
PEITHO 
Pulmonary Embolism Thrombolysis
正常血圧の急性中等度リスク肺塞栓症(PE)患者において,標準抗凝固治療+血栓溶解薬tenecteplaseの単回ボーラス投与により,7日以内の死亡,血行動態の破綻が有意に抑制されるも,出血リスク上昇。
デザイン ランダム化,プラセボ対照,二重盲検,多施設,intention-to-treat解析。
一次エンドポイント 7日以内の全死亡あるいは血行動態の破綻(hemodynamic collapse)。
対 象  1,005例。18歳以上の急性の症候性PEで,血行動態の破綻がなく,右室機能不全+心筋傷害が確認され,その確認から2時間以内のもの。
■平均年齢(tenecteplase群66.5歳,プラセボ群65.8歳),女性(264/506例,268/499例),体重(82.5kg,82.6kg),血圧(130.8/78.6mmHg,131.3/79.2mmHg),心拍数(94.5拍/分,92.3拍/分),静脈血栓塞栓症既往(24.9%,29.5%)。
各確定検査はPE:CT(94.9%,94.6%),右室機能不全:心エコー(54.9%,51.1%),心エコー+spiral CT(30.4%,34.5%),spiral CT(14.6%,14.4%),心筋傷害:トロポニンI,T(99.8%,100%)。
期 間 追跡期間は30日。
試験期間は2007年11月-’12年8月。
治 療  ランダム化時に未分画heparin(UFH)をボーラス静注。
tenecteplase群(506例):tenecteplase体重調整ボーラス投与*+UFH注入, 2日目以降はUFH,低分子量heparin,あるいはfondaparinuxを7日後まで,ビタミンK拮抗薬を30日後まで投与。プラセボ群(499例)。
*<60kg:30mg,60-<70kg:35mg,70-<80kg:40mg,80-<90kg:45mg,≧90kg:50mg。
結 果 [一次エンドポイント]
tenecteplase群13例(2.6%)vsプラセボ群28例(5.6%):オッズ比0.44;(P=0.015)。
死亡は6例(1.2%)vsプラセボ群9例(1.8%);P=0.43,血行動態の破綻は8例(1.6%)vs 25例(5.0%);P=0.002(もっとも多かったのが低血圧/血圧低下8例 vs 18例,次いでカテコラミン系薬剤投与3例 vs 14例)。

[その他]
・非頭蓋内出血がtenecteplase群で有意に増加:大出血(32例 vs 6例),小出血(165例 vs 43例);いずれもP<0.001。また,脳卒中も同群で増加(12例 vs 1例,P=0.003,うち脳出血が10例 vs 1例)。
・75歳以下の一次エンドポイントのオッズ比:0.33,>75歳:0.63。
・PE再発:1例 vs 5例(P=0.12),挿管/人工呼吸器:8例 vs 15例(P=0.13),オープンラベルでの血栓溶解療法:4例 vs 23例(P<0.001)。
・重篤な有害事象:29例 vs 39例(P=0.19)。
・30日以内の全死亡:12例 vs 16例(P=0.42)。

presenter: Stavros Konstantinides, M.D, PhD ( University of Mainz, Germany )
* 有意差あり。
UP
--------------------
(c) copyright 2001-. Life Science Publishing Co., Ltd
EBM LIBRARY