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ASTRONAUT
Aliskiren Trial on Acute Heart Failure

目的 左室収縮能の低下した慢性心不全入院患者において,標準的な治療に直接的レニン阻害薬aliskirenを追加した場合の退院後の予後改善効果を検討。

一次エンドポイントは,6か月後までの心血管死,心不全による再入院の複合エンドポイント。
コメント JAMA. 2013; 309: 1125-35. へのコメント
直接的レニン阻害薬(アリスキレン)が,左室機能の低下した(EF≦40%)心不全患者の予後を改善しなかったという今回の成績は,RAASの上流抑制が下流抑制下(ACE阻害薬/ARB, β遮断薬投与下)では有効性が得られないことを意味する。アリスキレン投与群では,高カリウム血症,低血圧,腎機能障害が多く,これらの有害事象が,NT-ProBNPの低下で示される心筋負荷の軽減作用を相殺している可能性が高い。心血管・腎イベント高リスクの2型糖尿病患者を対象としたALTITUDE試験で,アリスキレン投与による脳卒中リスクが懸念されたため早期に中止された経緯がある。今回の試験で,予後の悪化はみられなかったが,糖尿病群と非糖尿病群のアウトカムに有意差がみられたことから,アリスキレンをRA系阻害薬に上乗せするのはやはり糖尿病患者に有害である可能性が強く示唆される。低血圧,高カリウム血症,腎機能障害がこの差に関与しているかもしれないが,アリスキレンの有用性を見出すためには非糖尿病患者における心不全の大規模試験が必要なのかもしれない。(
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(欧米およびアジアの316施設),modified intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は11.3か月(中央値)。
登録期間は2009年5月~’11年12月。
対象患者 1,639例。過去に1か月以上の標準治療を要する慢性心不全(CHF)の既往があり,BNP高値(BNP≧400mg/dLまたはNT-proBNP≧1,600pg/mL),および入院を要する水分過負荷を有する18歳以上のEFが低下した(EF≦40%)CHFで,血行動態が安定しているもの。
除外基準:登録前3か月以内の心筋梗塞(MI),心臓手術または脳卒中,eGFR<40mL/分/1.73 m²など。
■患者背景:年齢64.6歳,男性77.2%,BMI 27.2kg/m²,白人70.6%,虚血性心不全63.6%,NYHA心機能分類III~IV度64.5%,心不全入院歴67.1%,EF 27.9%,収縮期血圧123.3mmHg,心拍数77.9/分,BNP 447pg/mL,NT-proBNP 2,718pg/mL,eGFR 66.7mL/分/1.73 m²,既往(高血圧:75.9%,冠動脈疾患:54.6%,心房細動:41.9%,糖尿病:41.0%,腎不全:20.6%,慢性閉塞性肺疾患:19.9%)。
治療背景:利尿薬95.9%,ACE阻害薬またはARB:84.2%,β遮断薬82.5%,鉱質コルチコイド受容体拮抗薬57.0%,digoxin 38.9%,植込み型除細動器(ICD)15.7%,心臓再同期療法(CRT)6.7%,永久ペースメーカー11.2%。
治療法 aliskiren群(808例):標準治療+aliskiren 150mg/日(忍容性に応じて300mg/日まで増量)。
プラセボ群(807例):標準治療+プラセボ。
結果 [一次エンドポイント]
両群間に有意差は認められなかった。
aliskiren群201例(24.9%),プラセボ群214例(26.5%):ハザード比0.92;95%信頼区間0.76~1.12(p=0.41)。
複合エンドポイントそれぞれの結果は下記の通り。
心血管死は77例(9.5%) vs 85例(10.5%):0.92;0.68~1.26(p=0.60)。
心不全による再入院は153例(18.9%) vs 166例(20.6%):0.90;0.72~1.12(p=0.35)。
[二次エンドポイント]
12か月後の心血管死,心不全による再入院の複合エンドポイントに有意な群間差はみられなかった(283例[35.0%] vs 301例[37.3%]:0.93;0.79~1.09, p=0.36)。
心血管イベント(心血管死,心不全による再入院,致死的・非致死的MI,致死的・非致死的脳卒中,心臓突然死からの蘇生の複合エンドポイント)の初発に有意な群間差はみられなかったが(293例[36.3%] vs 321例[39.8%]:0.88;0.75~1.03, p=0.12),このうち致死的・非致死的MIは,aliskiren群のほうが有意に少なかった(18例[2.2%] vs 38例[4.7%]:0.47;0.27~0.83, p=0.009)。
[有害事象]
有害事象による試験薬投与中止に有意な群間差はなかった(21.2% vs 20.1%)。
aliskiren群では,腎機能障害または腎不全(16.6% vs 12.1%, p=0.01)および低血圧(17.1% vs 12.6%, p=0.01)の割合が有意に高かった。高K血症については有意な群間差はなかった(20.9% vs 17.5%, p=0.09)。
★結論★左室収縮能の低下した慢性心不全入院患者において,標準的な治療に直接レニン阻害薬aliskirenを追加しても,退院後6か月後および12か月までの心血管死,心不全による再入院の複合エンドポイントは抑制されなかった。
文献
  • [main]
  • Gheorghiade M et al for the ASTRONAUT investigators and study coordinators: Effect of aliskiren on postdischarge mortality and heart failure readmissions among patients hospitalized for heart failure. JAMA. 2013; 309: 1125-35. PubMed
  • [substudy]
  • 糖尿病合併の有無とaliskiren-糖尿病合併例は41%。退院後の転帰は非合併例で改善したが,合併例では悪化。
    退院後の転帰を糖尿病合併例(662例:aliskiren群319例,プラセボ群343例)と非合併例(953例:489例,464例)で比較した結果(事前に計画されていたサブグループ解析):糖尿病合併例のインスリン投与42%,経口血糖降下薬53%。
    6か月後の心血管死,心不全による再入院(一次エンドポイント)に対するalisikiren治療と糖尿病との交互作用は認められなかった(合併例:99例 vs 100例;ハザード比1.13[95%信頼区間0.86~1.50],非合併例:102例 vs 114例;0.80[0.61~1.04];p=0.08 for interaction)。しかし,12か月後には有意差がみられた(135例 vs 136例;1.16[0.91~1.47],148例 vs 165例;0.80[0.64~0.99];p=0.03 for interaction)。
    12か月後の全死亡にもaliskirenと糖尿病の有意な交互作用が認められた(72例 vs 57例;1.64[1.15~2.33],72例 vs 91例;0.69[0.50~0.94];p<0.01 for interaction)。
    また,糖尿病非合併例ではaliskiren群でプラセボ群にくらべ1,6か月後のNT-proBNP,1,6,12か月後の血漿トロポニンI,アルドステロンが有意に低下したが,合併例では1か月後の血漿トロポニンI,アルドステロンが低下したのみ。
    カリウム上昇(≧6mmol/L)にaliskirenと糖尿病の交互作用の傾向がみられた(31例 vs14例:2.39[1.30~4.42],32例 vs 26例:1.17[0.71~1.93];p=0.07 for interaction):Eur Heart J. 2013; 34: 3117-27. PubMed

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収載年月2013.03
更新年月2013.12