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第42回日本脳卒中学会学術集会(STROKE 2017)2017年3月16〜19日,大阪
静脈血栓塞栓症を合併した急性期脳卒中患者の臨床的特徴
2017.4.7 STROKE 2017取材班
三村秀毅氏
三村秀毅氏

急性期脳卒中患者における静脈血栓塞栓症(VTE)合併は,脳梗塞例でも少ないとはいえないが,その治療としての抗凝固療法の明確な指針はなく,脳梗塞急性期抗血小板療法との併用で出血リスク上昇の可能性-3月18日,第42回日本脳卒中学会学術集会(STROKE 2017)にて,三村秀毅氏(東京慈恵会医科大学内科学講座神経内科講師)が発表した。

●背景・目的

 直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)は,非弁膜症性心房細動(NVAF)患者における虚血性脳卒中発症抑制ならびにVTEの治療および再発抑制に用いられるが,両疾患では用法・用量が異なる。脳卒中治療ガイドライン2015では,麻痺をともなう脳梗塞・脳出血急性期患者におけるVTE予防目的の抗凝固療法については,行うことを考慮してもよいが,頭蓋内外出血リスクが上昇するため,ルーチン投与を支持する十分な科学的根拠がないとされている1)。また,脳卒中に合併したVTEの治療について,抗凝固療法の明確な治療指針は示されておらず,DOACのVTE治療および再発抑制の臨床試験でも,抗血栓薬前投与例が原則除外されている。

 本研究では,VTEを合併した急性期脳卒中の臨床的特徴を後ろ向きに検討した。

●方法・対象

 発症後7日以内の急性期脳卒中患者を対象とし,経頭蓋超音波で右左シャント陽性,D-ダイマー上昇,もしくは塞栓源不明の症例について,造影CT・下肢静脈エコーでVTEを検索した。VTEの頻度,病型,症状の有無,抗血栓療法の状況,出血性合併症を解析した。

●結果

1. VTE合併率および患者背景

 2012年10月~2016年8月における対象例数は868例であり,232例(27%)にVTE検索を行ったところ,48例(全体の5.5%,検査実施例の21%)にVTEを認めた。

 VTE患者の平均年齢は76歳,男性は21例であった。VTEの病型は,深部静脈血栓症(DVT)単独が40例,DVT+肺塞栓症(PE)合併が8例。症候性はDVT+PE合併の1例のみで,残りは無症候性であった。

 また,VTE合併例の脳卒中の病型は,虚血性が45例(94%)と大部分を占め,出血性は3例(6%)のみであった。虚血性脳卒中の内訳は,脳梗塞39例,一過性脳虚血発作(TIA)6例で,このうち4例は心房細動を有していた。

2. VTE治療前の抗血栓療法の状況

 VTE治療前に投与されていた抗血栓薬などは,抗血小板薬が25例(52%),抗凝固薬8例(17%),遺伝子組み換え組織型プラスミノゲン・アクチベーター(rt-PA)療法または血管内治療が5例(10%)であった。

 抗血小板薬の内訳は,単剤17例,2剤併用(DAPT)2例,単剤+アルガトロバン5例,DAPT+アルガトロバン1例であった。抗凝固薬の内訳は,ヘパリン3例,ワルファリン1例,DOAC 1例,ヘパリン+ワルファリン併用3例であった。

3. VTEの治療(抗凝固療法)

 VTEの診断後,14例(29%)はDOAC,13例(27%)はワルファリン,7例(15%)はヘパリン+ワルファリン併用,6例(13%)はヘパリンで治療された。

 出血性合併症は3例に発現した。1例は,先行治療のアスピリン200mgに加えてVTE治療用量のDOACを開始した患者における脳室内出血で,2例(筋肉内出血,梗塞内出血拡大)では先行の抗血栓療法は行われていなかった。3例はいずれも無症候性DVTで,VTEの診断後ただちに抗凝固療法が開始されていた。

●考察

 脳卒中急性期に下肢麻痺をともなう症例の場合,VTEの発症リスクが増加すると考えられるものの,その頻度は報告によってさまざまである。また,脳梗塞より脳内出血のほうでVTE合併率が高いと報告されている2)。しかし今回の検討で,脳卒中急性期患者において積極的にVTEを検索した結果,脳梗塞でのVTE合併も少なくないと考えられた。

 また,脳卒中急性期に合併するDVTは下腿に限局され,重篤な転帰に至るリスクが低い可能性が指摘されている2)。今回の検討では,約80%の症例にVTEの診断前から抗血栓薬が投与されていたことから,脳卒中急性期に合併するDVTは,症候性中枢型DVTとは異なる治療戦略が必要だと考えられた。

●結論

 急性期脳卒中の5.5%にVTEの合併が認められた。抗血栓薬の併用により,出血性合併症の発症率は上昇する可能性があり,注意を要すると考えられた。

文献

  • 日本脳卒中学会,脳卒中ガイドライン委員会編.脳卒中治療ガイドライン2015.協和企画,東京,2016.
  • Gregory PC, et al. Prevalence of venous thromboembolism in acute hemorrhagic and thromboembolic stroke. Am J Phys Med Rehabil 2003; 82: 364-9.


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