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第78回日本循環器学会学術集会(JCS 2014)2014年3月21〜23日,東京
心房細動患者における抗凝固療法の実態およびニーズ調査
2014.4.21
浅田智哉氏
浅田智哉氏

 心房細動患者の多くは,経済的負担を加味しても,副作用が少なく脳卒中予防効果が高い薬剤を望む-3月22日,第78回日本循環器学会学術集会にて,浅田智哉氏(国家公務員共済組合連合会KKR高松病院薬剤科)が発表した。

●背景

 近年,日本では心房細動患者数が増加しており,それにともない同患者で発症リスクが高まる心原性脳塞栓症も増加している。これまで,心原性脳塞栓症予防には長年にわたりワルファリンが用いられてきたが,2011年以降,新規経口抗凝固薬が選択肢に加わった。

 心房細動患者566例に対する抗凝固薬の処方状況(2011年3月~2013年8月)について調査を行ったところ,ワルファリン処方患者232例のうち42例が新規経口抗凝固薬に変更されたが,患者希望や有害事象により12例がワルファリンに再変更されていた。新規経口抗凝固薬を新しく処方された83例のうち9例も他剤に変更されており,その背景には抗凝固薬に対する何らかの患者ニーズがあるものと考えられた。抗凝固薬に対する患者の評価ならびにニーズの把握は,良好なアドヒアランスの維持とそれにもとづく効果的な心原性脳塞栓症予防を得るうえで重要である。そこで,心房細動患者における抗凝固療法の実態およびニーズについて,アンケート調査を実施した。

●対象・方法・患者背景

 対象は心房細動患者172例で,抗凝固薬服用の有無は問わなかった。2013年10月30日~2014年2月10日,心房細動に対する認識度,服薬アドヒアランス,服用する薬剤全般に関するニーズ,抗凝固薬に対するニーズについて,薬剤師による聞き取り調査を行った。

 対象患者は男性が70%,塞栓症低リスク(CHADS2スコア0~1点)の患者が約3割を占めた(0点7%,1点23%,2点35%,3点17%,4点9%,5点6%,6点2%)。抗凝固薬はワルファリンが58%,リバーロキサバンが13%,ダビガトランが8%,非服用が20%であった。心房細動の病型は発作性が43%,持続性が22%,永続性が36%であった。

●結果

 心房細動に対する認識度(以下,パーセントで示す)は良好で,多くの患者は自身が心房細動であることを認識しており(87.6%),心房細動では脳卒中リスクが高くなること(78.4%),脳卒中予防のために服薬の必要な場合があること(75.5%)を理解していた。

 現在脳卒中予防薬を服用していると正しく答えた患者は88.3%と多く,この質問に是と答えた患者に飲み忘れについて尋ねたところ,76.2%が「ほとんどない」と回答し,服薬アドヒアランスは比較的良好であった(「服薬忘れ月1回」13.5%,「月2~3回」6.3%,「週1~2回」3.2%,「週3~5回」0.8%,「毎日ある」0%)。

 1日の服用回数については,過半数が1回を希望した(57.0%)。1回あたりの服用個数については,1個(43.0%)およびどちらでもよい(40.7%)の回答で二分し,複数個の希望は14.5%と少なかった。処方形態については,一包化を希望する回答が大多数を占め(67.4%),ついで,どちらでもいい(17.4%),シートでばらばらのまま(14.0%)であった。

 どのような抗凝固薬を望むか,8つの選択肢を設け複数回答可として尋ねたところ,「副作用が少ない」82.0%,「脳卒中予防効果が高い」73.3%,「1日の服用回数が少ない」62.2%,「飲み合わせの注意が少ない」61.6%,「食事の制限が少ない」59.3%,「支払額が少ない」57.6%,「1回の服用個数が少ない」54.7%,「採血検査が必要のない」39%の順に希望が多かった。

 また,費用対効果について,検査費などを含まないとして,(A)1ヵ月あたり5,000円程度(新規経口抗凝固薬を想定),(B)1ヵ月100円程度(ワルファリンを想定)として2択の質問を行った。服薬回数は「A:1日1回だが支払い額が高い」33.1%,「B:1日複数の錠剤を服用するが安い」65.7%が有意に高かった。食事制限は「A:食事の制限はないが支払い額が高い」45.9%,「B:食事の制限があるが安い」53.5%と差はなく,効果については「A:Bと比較すると脳卒中予防効果が高いが支払い額も高い」77.9%,「B:Aと比較すると脳卒中予防効果は少し劣るが安い」20.9%と支払額が高くても,高い予防効果を望む患者が有意に高かった。出血リスクについても同様に「A:Bと比較すると脳内出血の危険性が低いが支払い額が高い」77.3%,「B:Aと比較すると脳卒中予防効果は少し劣るが安い」20.9%と出血リスクが低いことを望む患者が有意に高かった。採血要否は「A:毎回採血検査をしなくてよいが支払い額が高い」39.0%,「B:毎回採血検査をする必要があるが安い」60.5%と,採血に関しては大きな障害となってないことがわかった。

 以上をまとめると,経済的負担が増加しても脳卒中予防効果がより高く,副作用である脳内出血のリスクが低い抗凝固薬が望まれることがわかった。

●まとめ

 心房細動患者は病識,抗凝固薬に関する認識がともに高く,抗凝固薬の服薬アドヒアランスは良好であった。患者は,1日1回服用であること,一包化できることなど,患者はなるべく簡便に服用できる薬剤を望んでいた。それとともに,経済的負担を考慮しても効果が高く,副作用が少ないことが重要視されていた。


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