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米国心臓協会学術集会(AHA 2014)2014年11月15~19日,米国・シカゴ
NOAC服用中に発症した心原性脳塞栓症の重症度および機能的転帰
2014.12.11
富田泰史氏
富田泰史氏

NOAC服用中に発症した心原性脳塞栓症の重症度および機能的転帰は,抗凝固療法がなされていない症例や,ワルファリンを服用していてもプロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)が治療域以下であった症例より良好-11月16日,第87回米国心臓協会学術集会(AHA 2014)にて,富田泰史氏(弘前大学大学院医学研究科循環器腎臓内科学講座)が発表した。

●背景・目的

非弁膜症性心房細動患者における脳卒中および全身性塞栓症予防について,新規経口抗凝固薬(NOAC)はワルファリンに比べ,好ましいリスク・ベネフィットを示した1~3)。さらに弘前大学ならびに弘前脳卒中・リハビリテーションセンターの研究グループは,実地臨床下におけるNOAC服用中の脳内出血は,ワルファリン服用中に発症した脳内出血と比較して血腫量が小さく,血腫拡大はみられず,機能的転帰も良好であったことを既に報告している4)。一方,ワルファリンは適切な治療域を維持することが必要であり,入院時のPT-INRが治療域内であった脳卒中症例は,治療域以下であった症例と比較して重症度や退院時の機能的予後が良好であり,また死亡率の低下とも関連していたことが報告されている5, 6)。そこで本研究では,NOAC服用中に発症した心原性脳塞栓症患者における脳卒中重症度および機能的転帰について,ワルファリン服用中の発症例,ならびに抗凝固療法がなされていなかった症例との比較を行った。

●方法

2011年4月から2014年3月までの3年間に,644例が心原性脳塞栓症のため弘前脳卒中・リハビリテーションセンターに入院した(発症から7日以内の急性期治療のため516例+発症から60日以内のリハビリテーションのため128例)。このうち,発症から48時間以内に入院し,発症前のmodified Rankin Scale(mRS)が0~1であった355例を本研究の対象とした。全ての対象患者は,急性期治療から回復期リハビリテーションまで施設完結型医療を実施し,一貫した治療を行った。

対象患者のうち,262例(74%)は抗凝固療法がなされていなかった。ワルファリン服用は79例(22%),NOAC服用は14例(4%,ダビガトラン9例+リバーロキサバン5例)であり,さらにワルファリン服用例は,入院時のPT-INR値にもとづき治療域以下例(PT-INR<1.6,63例),治療域内例(同≧1.6,16例)に分けて解析を行った。

●結果

1. 患者背景および転帰
対象患者の年齢は同程度であったが,ワルファリン治療域内例では男性が多かった(p=0.04)。CHADS2スコア中央値(抗凝固療法なし例3[四分位範囲2~4],ワルファリン治療域以下例3[3~5],治療域内例3[3~4],NOAC例3[1~4],p=0.01)ならびにHAS-BLEDスコア(それぞれ3[2~3],4[3~5],3[2~5],2[2~3],p<0.001)について,有意差を認めた。

入院時の重症度(NIHSS)は,ワルファリン治療域内例ならびにNOAC例において抗凝固療法なし例,治療域以下例と比較して低値であった(p=0.006)。退院時の機能良好例(mRS 0~1)の割合は,ワルファリン治療域内例10/16例(63%),NOAC例9/14例(64%)で,抗凝固療法なし例80/262例(31%),治療域以下例21/63例(33%)と比べ有意に多かった(p=0.005)。また,急性期ならびにリハビリテーション治療を含めた入院期間も治療域内例22日,NOAC例14日となっており,抗凝固療法なし例75日,治療域以下例78日に比べ有意に短縮された(p=0.0002)。

2. NOAC例における服薬管理状況
NOAC例における心原性脳塞栓症発症前の服薬管理状況を調査したところ,通常の服用下で発症した症例は3/14例(21%)のみであり,3/14例(21%)はNOAC内服開始後14日以内,4/14例(29%)では一時的に中断中,4/14例(29%)ではアドヒアランスが不良であった。一時中断中に発症した2例は入院時のNIHSSが22および27と高く,退院時の機能的転帰も不良であった(mRS 5および6)。

●結論

NOAC服用中に発症した心原性脳塞栓症の重症度および機能的転帰は,ワルファリン治療域内の症例と同程度であり,抗凝固療法がなされていなかった症例ならびにワルファリンを服用していても治療域以下であった症例より良好であった。さらに,NOAC例における薬物療法の管理状況(アドヒアランス,一時中断,NOAC開始直後)は,NOAC関連心原性脳塞栓症の発症に関与する可能性が高いと考えられた。

文献

  • Connolly SJ, et al.; RE-LY Steering Committee and Investigators. Dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2009; 361: 1139-51.
  • Patel MR, et al.; the ROCKET AF Investigators. Rivaroxaban versus warfarin in nonvalvular atrial fibrillation. N Engl J Med 2011; 365: 883-91.
  • Granger CB, et al.; ARISTOTLE Committees and Investigators. Apixaban versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2011; 365: 981-92.
  • Hagii J, et al. Characteristics of intracerebral hemorrhage during rivaroxaban treatment: comparison with those during warfarin. Stroke 2014; 45: 2805-7.
  • Hylek EM, et al. Effect of intensity of oral anticoagulation on stroke severity and mortality in atrial fibrillation. N Engl J Med 2003; 349: 1019-26.
  • Nakamura A, et al. Intensity of anticoagulation and clinical outcomes in acute cardioembolic stroke: the Fukuoka Stroke Registry. Stroke 2013; 44: 3239-42.

Tomita H, et al. Severity and Functional Outcome of Patients With Cardioembolic Stroke Occurring During Novel Oral Anticoagulant Treatment


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