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第77回日本循環器学会学術集会(JCS 2013) 2013年3月15〜17日,横浜
高周波アブレーション施行時の新規経口抗凝固薬による周術期抗凝固療法の安全性
2013.4.16
かせ野健一氏
かせ野健一氏(福井大学)

発作性心房細動に対する高周波アブレーション施行時の周術期抗凝固療法として,新規経口抗凝固薬のダビガトラン,リバーロキサバンはワルファリンと同様に有用である−2013年3月15〜17日に開催された第77回日本循環器学会学術集会で,かせ野健一氏(群馬県立心臓血管センター,現・福井大学)らが15日のポスターセッションにて報告した。

●背景・目的

心房細動患者のアブレーション治療における周術期の抗凝固療法については,治療域のワルファリンを継続投与することにより,出血性合併症リスクを上昇させずに血栓塞栓症を抑制しうることが示されている。しかし,新規経口抗凝固薬(ダビガトラン,リバーロキサバン)の周術期投与の安全性については明確にされていない。そこで,高周波カテーテルアブレーションを施行する心房細動患者196例において,ダビガトランおよびリバーロキサバンの周術期投与の有効性および安全性を検討した。

●方法・結果

新規経口抗凝固薬はアブレーション施行日の朝投与を中止し,翌朝再開した。リバーロキサバンは15mg/日とし,75歳を超える症例には10mg/日を,ダビガトランは全例220mg/日を投与した。ワルファリンは周術期も投与を継続し,70歳未満ではプロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)2.0〜3.0,70歳以上は1.6〜2.6になるよう管理した。手技中はヘパリンを全例に活性化凝固時間(ACT)300〜350秒を維持するよう投与,手技後は24時間10,000単位を投与した。

リバーロキサバン投与例は62例,ダビガトラン投与例は84例,ワルファリン投与例は50例であった。年齢(59歳,59歳,64歳,p=0.005)とクレアチニンクリアランス(CLcr,102mL/分,99mL/分,89mL/分,p<0.001)には有意差を認めたが,女性の割合(29%,30%,30%),高血圧既往(39%,35%,32%),糖尿病既往(5%,6%,12%),心不全既往(0%,0%,6%),脳梗塞既往全群0%,CHADS2スコア(0点61%,63%,54%,1点31%,33%,40%,2点以上8%,4%,6%)には差を認めなかった。ワルファリン群の平均PT-INRは2.34であった。

平均手技時間はリバーロキサバン群146分,ダビガトラン群157分,ワルファリン群159分,電気的除細動実施例は19例(31%),16例(19%),12例(24%)で,いずれも有意な群間差はみられなかった。

周術期の合併症に有意な群間差は認められなかった。脳卒中/一過性脳虚血発作/全身性塞栓症は全群で認められず,MRI上の無症候性脳病変が検出されたのは各群1例であった。出血性合併症についても,リバーロキサバン群8例(13%),ダビガトラン群4例(5%),ワルファリン群7例(14%)と有意な群間差はみられなかった。このうち,心タンポナーデがリバーロキサバン群およびワルファリン群各1例,鼠径部血腫がリバーロキサバン群7例(11%),ダビガトラン群4例(5%),ワルファリン群6例(12%)であった。

●結論

発作性心房細動に対する高周波アブレーション治療施行患者において,新規経口抗凝固薬のダビガトラン,リバーロキサバンによる周術期の抗凝固療法は,塞栓症および出血性合併症の頻度がいずれもワルファリンと同程度であった。この結果から,新規経口抗凝固薬はワルファリンの有用な代替薬となりうることが示唆された。


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