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米国心臓協会学術集会(AHA 2013)2013年11月16~20日,米国・ダラス
アブレーション周術期における抗凝固療法
-血栓塞栓症および出血性合併症に対するワルファリンと新規経口抗凝固薬の比較(メタ解析)-
2013.11.27
Dan Musat氏
Dan Musat氏

アブレーション施行周術期の抗凝固療法に関するメタ解析の結果,新規経口抗凝固薬はワルファリンに対し,血栓塞栓合併症の上昇は認められず,出血性合併症については有意に低い-第86回米国心臓協会学術集会(AHA 2013)にて,Dan L. Musat氏(Valley Health System, Columbia University College of Physicians & Surgeons,米国)が11月18日に発表した。

●背景・目的

心房細動患者に対するカテーテルアブレーション(以下,アブレーションと略す)施行周術期の新規経口抗凝固薬の使用とその転帰については,すでにいくつか報告されている。しかし,個々の試験は小規模であり,アブレーション周術期に新規経口抗凝固薬を使用した際の血栓塞栓症あるいは出血性合併症のリスクを検証するためのエビデンスとしては十分ではない。そこで,アブレーション周術期に新規経口抗凝固薬(リバーロキサバンまたはダビガトラン)およびワルファリンを使用した際のベネフィット/リスクを評価するため,これまでの報告にもとづきメタ解析を行った。

●方法

2010年10月~2013年6月,Pubmed Central,Ovid-Medlineおよび過去3年間の学術集会(米国心臓病学会[ACC],欧州心臓病学会[ESC],米国心臓協会[AHA],米国不整脈学会[HRS])の抄録集にて,(1)アブレーション施行予定の心房細動患者を登録,(2)周術期の出血および血栓塞栓合併症を報告,(3)周術期に新規経口抗凝固薬を用いている,(4)周術期にワルファリンを継続投与または中断してヘパリンブリッジングを施行している試験を検索。言語の制限は設けなかった。

試験結果の統合には固定効果モデル,不均一なサンプルおよび結果にはランダム効果モデルを用いた。

●結果

23試験(論文12件+抄録11件),7,754例(新規経口抗凝固薬群3,136例,ワルファリン群4,618例)を対象とした。新規経口抗凝固薬群のうちリバーロキサバンの使用は326例(10.4%)であった。

1. 患者背景
年齢は新規経口抗凝固薬群60.7歳,ワルファリン群62.5歳,男性は74.8%および70.6%であった。平均CHADS2スコアは1.1および1.2,発作性心房細動は62%および57%で,両群間で特に差異はみられなかった。

2. 抗凝固療法
アブレーション術前の休薬について,新規経口抗凝固薬は,多くの施設で1ないし2回分の服用が控えられ,再開は手技施行日の夜もしくはそれよりも早い時期であった。ワルファリン群では,全体の73%(3,371例)がアブレーション周術期に中断せず,継続して投与されていた。ワルファリン群のブリッジングには低分子量ヘパリンが用いられた。

3. 手技の特性
アブレーションの手技としてはおもに肺静脈隔離(PVI)が用いられ,新規経口抗凝固薬群,ワルファリン群とも施行時間は同程度であった。術中は,多くの施設で,活性化凝固時間(ACT)を>300秒に維持するように規定されていた。

4. 合併症
すべての合併症は新規経口抗凝固薬群171例(6.7%)に発症し,ワルファリン群345例(9.8%)にくらべ抑制された(オッズ比[OR]0.71,95%CI 0.59-0.87,p=0.0008,I2=37%)。このうち,血栓塞栓合併症は18例(0.7%)および21例(0.6%)で同程度であった(OR 1.24,95%CI 0.69-2.21,p=0.47,I2=0%)。

出血性合併症は155例(5.6%)および334例(9.2%)で,新規経口抗凝固薬群で抑制された(OR 0.67,95%CI 0.54-0.82,p<0.0001,I2=34%)。大出血は1.1%および1.7%と抑制傾向(OR 0.70,95%CI 0.47-1.04,p=0.08),小出血は4.9%および7.7%と新規経口抗凝固薬群で抑制された(OR 0.67,95%CI 0.53-0.85,p=0.0009)。

●結論

アブレーション施行周術期の抗凝固療法について,新規経口抗凝固薬はワルファリンにくらべ,血栓塞栓合併症の発症リスクを上昇させることなく,出血性合併症を有意に低下させ,両者をあわせたすべての合併症を抑制した。本メタ解析より,アブレーションの周術期管理として,新規経口抗凝固薬はワルファリンの代替薬として有用であることが明確になった。今後,これらの結果をさらに強固とするためには,ランダム化比較試験による検証が求められる。


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