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米国心臓協会学術集会(AHA 2013)2013年11月16~20日,米国・ダラス
NVAF患者における経口抗凝固薬の中止リスクは高い
2013.11.28
Sameer Ghate氏
Sameer Ghate氏

NVAF患者における経口抗凝固薬の中止リスクは高く,120日後に47.3%が中止していた-第86回米国心臓協会学術集会(AHA 2013)にて,Sameer R. Ghate氏(University of Utah,米国)が11月17日に発表した。

●背景・目的

非弁膜症性心房細動(NVAF)患者における脳卒中予防は,これまでワルファリンが唯一の標準治療として用いられてきた1)。近年,NVAF患者を対象とした大規模臨床試験の結果が相次いで発表され,脳卒中または全身性塞栓症の発症抑制に対して,新規経口抗凝固薬はワルファリンに対し非劣性を示し2, 3),実地臨床にも普及しつつある。しかし,現在,その治療実態については明確になっていない。

本研究は,Truven Health MarketScan Research(1,800万人[心房細動患者は約158万人]を擁する米国の商業的健康保険)のデータベースを用いた後ろ向きコホート研究として,経口抗凝固療法を受けているNVAF患者における薬剤中止率,および中止に関連する因子を検討することを目的に行った。抗凝固薬の中止は,薬局での処方が60日間ない場合と定義した。

●方法

対象は,2010年10月~2012年1月に新規に経口抗凝固療法を開始し,6ヵ月以上継続して追跡を行った18歳以上のNVAF患者11,825例である。内訳は,ワルファリン群7,911例,新規経口抗凝固薬群3,914例(リバーロキサバン64例,ダビガトラン3,850例)。これらの患者について,経口抗凝固薬の中断,変更,中止,試験終了のうち,もっとも早いイベントが起こるまで追跡を行った。なお,弁膜症,登録前12ヵ月間に心臓手術を受けた患者,経口抗凝固薬を変更した患者は除外した。

●患者背景

対象患者の平均年齢は68.2歳で,男性が59.5%を占めた。脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)既往は4.7%,出血の既往は6.7%(消化管2.0%,脳内0.3%,その他4.4%)であった。併発疾患は高血圧がもっとも多く42.6%で,他は糖尿病15.3%,うっ血性心不全14.8%,冠動脈疾患14.7%,腎疾患7.0%などであった。

●結果

追跡期間は平均417日,中央値435日で,この期間中に5,598例(47.3%)が経口抗凝固薬を中止した。中止までの期間は平均120日,中央値88日であった。

Cox比例ハザードモデルを用いて,経口抗凝固薬の中止に影響する因子,およびそのハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を求めた。その結果,中止のリスク低減に寄与する因子は,新規経口抗凝固薬の使用(ワルファリンに対し,HR 0.91,95%CI 0.86-0.97,p=0.002),脳卒中/TIA既往(HR 0.65,95%CI 0.56-0.75,p=0.000),肺塞栓症既往(HR 0.71,95%CI 0.58-0.88,p=0.001),糖尿病(HR 0.84,95%CI 0.77-0.90,p=0.000),うっ血性心不全(HR 0.80,95%CI 0.74-0.87,p=0.000)であった。

また,年齢が高いほど中止リスクが低かった(18~34歳に対し,45~54歳:HR 0.56,95%CI 0.44-0.71,55~64歳:HR 0.42,95%CI 0.33-0.53,≧65歳:HR 0.32,95%CI 0.24-0.43,すべてp=0.000)。

逆に,出血の既往は中止リスクの上昇の因子であった(HR 1.20,95%CI 1.08-1.34,p=0.001)。

●結論

実臨床下において,NVAF患者における経口抗凝固薬の中止リスクは高く,120日後に47.3%が中止していた。とくに出血既往患者では中止のリスクが高かった。一方,脳卒中/TIA既往および肺塞栓症既往患者では,経口抗凝固薬の中止リスクが低く,また新規経口抗凝固薬はワルファリンに対し中止のリスク低減に寄与することが明らかになった。

文献

  • Hart RG, et al. Antithrombotic therapy to prevent stroke in patients with atrial fibrillation: a meta-analysis. Ann Intern Med 1999; 131: 492-501.
  • Patel MR, et al. Rivaroxaban versus warfarin in nonvalvular atrial fibrillation. N Engl J Med 2011; 365: 883-91.
  • Connolly SJ, et al. Dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2009; 361: 1139-51.

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