編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Goldberg RB, Orchard TJ, Crandall JP, Boyko EJ, Budoff M, Dabelea D, Gadde KM, Knowler WC, Lee CG, Nathan DM, et al.; Diabetes Prevention Program Research Group*: Effects of Long-term Metformin and Lifestyle Interventions on Cardiovascular Events in the Diabetes Prevention Program and Its Outcome Study. Circulation. 2022; 145: 1632-1641. [PubMed]

DPPOS試験における糖尿病の発症率は,プラセボ群で60%,metformin投与群で55%,ライフスタイル介入群で53%とプラセボ群に比べて有意に低下していた。すなわち,DPP試験で認められたライフスタイル介入およびmetformin投与の糖尿病の発症予防効果は延長試験であるDPPOS試験でも認められたといえる。しかしながら,MACEの発症率や心血管アウトカムは3群間で差を認めなかった。
DPP試験開始時に降圧薬やスタチンの服用率はそれぞれ16%と4%にすぎなかったが,DPPOS試験では降圧薬やスタチンが多くの患者に投与されていた。実際,LDL-コレステロールや血圧は3群間でほとんど差がなかった。また,21年の長期間で53~60%に糖尿病が発症したとはいえ,発症早期ということもありコホート全体のHbA1cの平均値は6.0~6.1%であり,高血糖の程度は軽度であった。これらの結果が,ライフスタイル介入およびmetformin投与の心血管イベント発症抑制効果を見かけ上減弱させたのかもしれない。前糖尿病の段階から血管の動脈硬化性病変が進行し,心血管イベントのリスク因子となることが知られているが,そのインパクトについてさらなる検証が必要かもしれない。【片山茂裕

●目的 前糖尿病者におけるDPP試験において,3年間のライフスタイル介入およびmetformin投与は糖尿病の発症を予防することが明らかにされている。今回は,これらの介入を長期間継続した場合にこれらの介入が主要な心血管イベント(MACE)や心血管アウトカムを減少させるか検討した。
主要アウトカムは,初発のMACE(非致死性心筋梗塞,非致死性脳卒中,または心血管死の複合)。
延長心血管アウトカムは,初発の主要イベント,うっ血性心不全または不安定狭心症による入院,冠動脈/末梢動脈血行再建術,冠動脈疾患(血管造影により診断),または無症候性心筋梗塞。
●デザイン DPP(ランダム化,二重盲検,プラセボ対照)の延長試験(DPPOS)。Intention-to-treat解析。
●試験期間 DPPの試験期間は平均3年(1996~2002年)。
DPPOSの追跡期間中央値は21年(DPP終了後18年[2002~2019年])。
●対象患者 DPP試験に参加した前糖尿病患者3,234例。DPP試験開始時の平均年齢51歳,女性68%。
DPP試験の採用基準:前糖尿病(耐糖能異常,空腹時血糖95~125 mg/dL,BMI≧24 kg/m2)。
除外基準:過去6ヵ月以内の心血管イベント発症。
●方法 DPP試験では,metformin群(850 mg 1日2回)(1,082例),ライフスタイル介入群(目標:≧7%の減量,中強度の身体活動≧150分/週)(1,079例),プラセボ群(1,073例)にランダム化された。
その延長試験であるDPPOS試験では,DPP試験終了後,全例にライフスタイル介入を奨励。metformin群では非盲検で投与を継続し,HbA1c>7.0%となった時点で試験薬としての投与を終了。以後のmetformin投与は試験外投与とした。心血管危険因子の治療は担当医療従事者に一任。
本解析では,DPPOS試験において,DPP試験で行われたライフスタイル介入およびmetformin投与がMACEに与える長期の影響を検討した。
●結果 追跡21年におけるMACEの発症は,metformin群101件(5.51/1000人・年),ライフスタイル介入群111件(6.10/1000人・年),プラセボ群98件(5.28/1000人・年)であり,metformin群,ライフスタイル介入群のいずれにおいても,プラセボ群に対する有意なリスク低下は認められなかった(HR 1.03[95%CI 0.78 to 1.37],HR 1.14[0.87 to 1.50])。また,心血管危険因子で調整後もこれらの結果は変わらなかった。
延長心血管アウトカムについても,metformin群,ライフスタイル介入群ともに,プラセボ群に対するリスク低下は認められなかった(HR 1.00[0.80 to 1.25],HR 1.12[0.90 to 1.39])。
追跡期間中に68~74%の患者が降圧薬を,56~62%がスタチンを投与されていた。metforminの試験外投与は全群で増加したが(プラセボ群43%,ライフスタイル介入群28%,metformin群37%),metforminの試験外投与で調整しても解析結果は変わらなかった。
●結論 前糖尿病者において,metforminおよびライフスタイル介入により糖尿病の発症が長期にわたり抑制されていたにもかかわらず,長期のMACE抑制効果は認められなかった。